広告漫画でも単行本を出してもらえる……なんてコトはないよね?
まぁ確かに、広告漫画を単行本にするのは難しい場合が多いよなぁ。
何せ、そのときの広告・宣伝・広報のために作ったモノなんだから、広告主にとっては単行本にする理由がない。
むしろ困ることになりかねない。
そのキャンペーンはもうやってないとか、商品もないとか、下手すりゃ会社もないとか。
商品やサービス、その宣伝企画なんてのは、そのときそのときに合わせてやっていることだから刹那的なんだよね。
プッシュしてるときは何としても消費者に覚えてもらいたいけど、終わって次のナニカに移ったら、それまでのコトはキレイさっぱり忘れてもらいたいくらい。そういうモノを単行本にして後々まで引きずるってのは、まぁ、普通はやらないだろうなぁ。
でも、そうだからって可能性がないわけじゃない。
実際ボクは、元々は広告漫画だったけど単行本になった作品があるし、今後単行本にできそうなモノもある。
どういう作品がそうなるのか、ちょっと考えてみよう。
お客との良好な関係が道を拓く
広告主の企業が単行本を出してくれるというのは、まずないと思っていい。
では、企業じゃなくて作者名義で自分で出版するのはアリか、というと、コレも色々難しいことがある。
まず第一は著作権や版権。
そうした権利の全部が作者に帰属すると契約書などを交わしているなら権利的な問題はないだろうけど、大抵の場合は、そういうわけにはいかないんだよね。
ボクの経験では、一定の範囲で作者の権利を認めてくれる企業は少なくないけど、だからといって全面的に認めてもらえるというコトも、まずないっていう感じ。
だいたい企業側にしてみたら、作者が勝手に「自社の広告」を世間にバラまいちゃうなんてコトを認められるわけがない。
漫画が広告に効果的だったとしても、どこで、いつ、どのくらい出すか、といったコントロールが効かないようでは、危なくて使えないからね。
だから作者の権利を認めるにしても、必ず制限はかかる。
モノが広告物である以上、著作権はともかく版権のほうには、それなりの制限事項がかかるのは止むを得ない……というよりも、企業側から見たら言うまでもないことなので、特にそういう契約や話し合いがなかったとしても、勝手に自分の権利だと思い込むべきじゃない。
訴えられて裁判沙汰になるかもしれないし、それで勝ったとしても、そういうヤツだと知られてしまえば、もう二度と広告漫画を発注する人はいなくなるだろうし。
お客を敵に回すような真似は慎むべきだから、もし、どうしても広告漫画を何かに利用したいのなら、必ずお客と相談して納得してもらうべき。
というよりも、そういう時に納得してもらえる人間関係を築いておくことが、広告漫画制作では特に重要なんだよ。
単行本のためじゃなく、普段の仕事を円滑にするためにね。
そして、ちゃんと筋を通せば、広告・広報漫画が単行本になる可能性はゼロではない。
ボクはこれまでに3つの作品が単行本になっているから。
もっとも、その中の2つは、単行本というより「厚めの同人誌」程度のモノで、一般書店では扱われていない。
でも商品として売られていて、作者には販売部数(出版部数ではない)に対して事前に取り決めた額のマージンも支払われるので、単行本と見なしていいと思うよ。
残りの1つは、本当に大手出版社から出た単行本で、これは全国どこの書店でも買える。
いや、買えた、だな。
なんせ初版しか出なかったし(苦笑)。
けど、ちゃんと著作者として印税(料率が低めで部数も少ないからわずかでしたが)ももらえたし、今後だって続編などを出せる権利はボクが有しているから、普通の漫画家と変わらないでしょ?
他にもいくつか、後々ボクが単行本化できる可能性のある作品はある。
実際に単行本を出すとなれば、企業側との話し合いは必要だけど、ボクが「これはイケそうだな」と思っている作品に関しては、たぶん許可されるだろうと思っている。
単行本化できそうな作品の共通点
こうした単行本化もできる、あるいはできそうな作品というのには、共通項がある。
まず、刹那的な広告漫画ではないということ。
ようするに、あんまり広告っぽくないってコト。
特定の商品やサービスがド~ンと出てくる露骨に広告用に描かれたモノは、まずダメなんだよね。
そういうのが一番多いんだけど。
ただ、そうではないモノもそれなりにあるんだ。
主に、広告というよりも広報なモノで、特定のナニカではなく、もっと普遍的なモノを題材にしている作品。
ご当地漫画や学習漫画などがそういう作品になりやすいんだけど、企業漫画の場合でも、企業や商品そのものではなく「その企業が目指すビジョンや志を体現した漫画」みたいな作品だと、やっぱり広告っぽくないモノになり、普通の漫画として読者の共感を得たりできるんだよね。
そうした作品はボクも単行本にまとめておきたいし、また、その許可が得られる可能性も高い。
元々がただの広告企画じゃなくて、地域や企業のアイデンティティを委ねてもらってるようなモンだから。
そういう仕事を任されるということは、それだけ信頼関係も生まれているということなので、単行本化も任せてもらえる可能性が高いってコトなのよ。
その企業のメンツをツブすような扱いはしないって信じてくれていれば、たぶんイケル。
次に、作者のオリジナリティ部分が多いこと。
絵はもちろん、ストーリー構成、セリフ、主張するテーマなどが、作者のものになっている作品ってコトだね。
原作もらって、その通りに描きました的なモノでは、さすがにボクも単行本なんて言い出せないもん。
ま、そういう仕事はしてないけど。
自分の考え、自分の思いをシナリオやネームで依頼者に叩き付けて、その内容に承認と共感を得て描いた作品なら、それは最初から作者のオリジナルだし、そうであることを周囲もわかってくれているから、単行本化を認めてくれる。
そういう感じなんだよね。
あと、もう1つが先に触れた「お客との良好な関係」だ。
単行本にしたいんだけど……と、気軽に相談できる関係。
お互いの立場や状況を理解しあっていて、できるだけ協力してやろうと思っている関係。
お客とそういう関係を築けると、普通はNGなコトもやれたりする。
そういうわけで、恐らく9割くらいの広告漫画では、単行本はあり得ないだろうと思うけど、残り1割には、単行本にして後々まで残せる作品も混じるんだ。
どれだけ広告を手掛けても、作家であり続けること
あ、そうだ。
先の3つの他に、その根本になってるコトが、もう1つあるな。
それは「作家であり続けること」だ。
広告漫画を描き続けていると、いつか「広告業者」になりきってしまって、作家の部分が消えてしまう例が少なくないんだよ。
実際、やってるコトの大半は業者的だし、お客からも作家扱いされないことのほうが多いし。
それに営業的には業者になっちゃったほうがラクだったりもするからねぇ。
だから最初は作家意識を持っていても、だんだんと業者化していって、いつの間にか「商売のためだけにやってる人」になり切っちゃう。
そういう例をけっこう見てきたんだ。
そりゃボクだって、そういう部分はあるよ。
なくちゃ仕事にならない。商売には違いないんだから。
デビュー以来、お金にならない漫画を描いたことは一度もない(プレゼンや企画提案のために描いたけど採用にならなかったモノは除く)し、商売のために作家の部分を我慢して、いまいち納得できない作品を描いちゃったコトだって度々ある。
けど、どんなに業者的になっても、作家であることを忘れちゃダメだと思う。
誇りを捨てるなとかってコトじゃなく、作家だということが最大の武器だからだ。
「作家」は、他の業者にはない武器なんだよ。
作家として、どうしても捨てられない何か。どうしてもやりたい何か。
そういうモノを持っているというのは、それ自体が力なんだ。
そういう部分が、お客との打ち合わせや雑談の中でチラチラと顔を出す。
するとお客は「ああ、この人は漫画業者じゃなくて、漫画家なんだな。本気なんだな」と感じてくれる。
その本気っぷりが信用になって、チャンスにつながる。
業者になりきったほうが営業はラクなんだけど、作家でないと届かないモノってのもあるんだよ。
そもそも単行本化してもらえる「広告用だけど広告的ではなくて、オリジナリティのある作品」が生まれるのも、作家の部分があってこそだしね。
だから、どんなに業者的になっても「作家」を手放しちゃダメだ。
9割業者的にやっていても、根っこに作家を保ち続けていれば、いつか必ず「作家として挑める仕事」に巡り合えると思う。
そして、そういうモノは単行本にもなるんだよ。
ちなみに、業者であることが悪いわけじゃないよ。
ボクだって業者だし、業者である部分にも誇りを持っている。外に対しては業者であるべきだとも思っている。
ただ内側では、自分自身に対しては、作家の部分を大事にしたほうがいいと思っているんだ。
そこが拠り所だし、捨てるには、あまりにももったいないモノだもんね。
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。









うるの拓也












