カソクキッズ取材:KEK探訪(STF/ATF/KEKB)
カソクキッズの連載は2008〜20015年だから、これ以前にも何度もKEKを取材しているんだけど、このときはカソクキッズ本編の連載がいったん終了して、その後の外伝として『ILC特番』というのを描くことになったので、そのために改めて取材したんだよね。
なので、このときの取材はILC(International Linear Collider:インターナショナル・リニア・コライダー/国際リニアコライダー)寄りの視点になっている。
これから作られるはずのILCの重要部分がKEKではすでに作られていて、実際に見ることができたんだ。
なお、ILCについては「カソクキッズ19話:「宇宙の重力」の謎に挑む!」の記事中でも紹介しているし、KEKBについても「カソクキッズ12話:ガマの油と反物質」「カソクキッズ13話:世界最強の加速器とは!?」などで紹介しているので、そっちも参照して欲しい。

STF(超電導RF試験施設)
これが世界でただ1つの次世代直線型加速器として建造される予定の「国際リニアコライダー(ILC)」に組み込まれる超伝導加速空洞の試験機。
「クライオモジュール」と呼ばれていて、内部は液体ヘリウムでマイナス271度に保たれ、超伝導状態になってるのだ。
おおおっという感じでビームパイプがどこまでも……に見えるけど、実はクライオモジュールは20メートルちょいだけ。あくまでも試験用だからね。
でも実物では、これが約10キロも並ぶのだ。(しかもソレが2つ)
クライオモジュールをつくってる施設の中。う~ん、いかにも研究所っぽい。
ここはクリーンルームで立ち入り禁止。
なんのためのクリーンルームなのかは知らないけど、まぁ加速器の中は真空じゃなきゃいけないからねぇ。
そういやフォトンファクトリーを見学したときにビームパイプをアルミホイルで巻いてホイル焼きにして内部を真空にして空気のカスさえない状態にしてるのを見たっけ。
なんでもない通路もソレっぽいので撮影。こういうトコをロケ地に貸し出せば、研究費捻出できるんじゃないのかなぁ?
画面右端にクライオモジュールのパイプが見える。レールの上に乗っていて、押してみたら動いた。こういう方法で搬入してつないでいくんだろうなぁ。
なお、STFの入り口には、実際にILCができたときに加速トンネル内を整備するトラックの模型も飾られていた。
それがね、まるでメーサー殺獣光線車みたいな姿なのよ。トンネル内壁の天井とかもメンテしなきゃならないから、そのための設備が荷台に積んであるんだけど、本当にメーサー光線車っぽいのよ。もう、そこだけでボク、ワクワクしてたのよ(笑)。
ATF(先端加速器試験施設)
ATF内部へとつながる通路。こういう通路ってリアル感だよなぁ。いやリアルそのものなんですけど。
なお、コントロール室は建物の外にあるプレハブ小屋。内部はかっこいいモニタが並ぶ映画さながらのハイテクルームなんだけど、それでもプレハブ小屋なの。相変わらずアメニティには予算を使わないんだよなぁ(苦笑)。
ど~んとあるのが線形加速器。
手前の「Dont’ touch」と書かれているトコでビームが生成され、それが線形加速器を通って、その先に送られるのだ。
生成したビームの入口部分アップ。この手前の電子銃で電子ビームをつくっているのだ。
ちなみに電子銃ってのは、昔のブラウン管テレビなどにも組み込まれていたもので、ソレ自体はさほど珍しいものじゃない。ま、ここにあるのは出力が桁違いだけど。
ビームパイプが並んでいる。ここの線形加速器は150メートルくらいかな。
電子銃から発射されるビームが弾丸なら、この線形加速器部分はバレルというところなのだけど、加速器研究のコミック化では武器に例えるのはNGだったので作中では別な解説に。
線形加速器から続くダンピングリング(円形加速器)の中。ゴチャゴチャした機械が山ほど。中央にある黒いブロックは鉛。手で積んでガムテープで止めてあった。割とアバウトだな~と思ったけど、伸縮するガムテは非常に有効なのだそうだ。
ううっ、いちいちソレっぽい。ここで仮面ライダーの……いや、イバライガーのロケやりたいっ!
なお、この写真は次のエリアの写真。目に入ったから撮影しちゃったけど。
ビームの中の粒子は均一ではなく、向きもイマイチなので、ダンピングリングで粒子の密度を高め、均一にして超高品質の超平行ビームにしてから、次のステップへと送るんだよね。
ダンピングリングは、その名の通り一周約140メートルのリング(本番ではもっと大きい)。
ここでグルグルとビームを回して、粒子の向きが揃った高品質ビームにするのだ。つまり「競馬のパドックのビーム版」なんだよね。
もう、こういうのをテキトーに合成するだけでもリアルなSFメカつくれそうだよなぁ。
ここがダンピングリングからつながる次のステップで、ビームを収束させていくライン。
密度が高くて超平行になった高品質ビームをさらに絞って、ナノビームにしていく。そうやって数ミクロンの1点に全エネルギーが集中するようにするのだ。
赤い4極電磁石でビームを絞っていくらしい。曲げる磁石、整える磁石、絞る磁石など色々あって、最近はボクも、磁石の種類を見ればソコで何をやってるのかわかるようになってきた(笑)。
さっきのダンピングリングの裏側。
ビームを加速させるための電磁波を発生させるクライストロンと一緒に制御システムがズラっと並んでいる。こういうのもSFマインドをくすぐりまくる。
ね、それっぽいでしょ。それっぽいでしょ!
こういうトコをくぐり抜けてミレニアム・ファルコンが飛んでたよねぇ。この奥にデススターの反応炉があったんだよねぇ。
この手前にリアルにつくったガンプラ置けば、それだけで実写ガンダムな気分に……
とにかくアレもコレも撮影しとく。だってアレもコレもイイんだもん。何だかわからんがイイんだもん。
やっぱりイイ!
制御システムのとこを反対側から撮る。反対側もイイ。
この感じ……あとちょっとで反応炉だな。い~や、ある!反応炉はあるんだ!だって見たもん!
……上に上がってみた。さっきまでの制御室やダンピングリングや加速器は、この下にあるのだ。
氷の惑星ホスの反乱軍の基地内って、こんな風景じゃなかった?どっかそのへんにスノースピーダーあるんじゃないの?
と思ったら、またまたデススターっぽい。
どこもパイプだらけ。超伝導は液体ヘリウムで冷やしているけど、それ以外は水冷なので、そういうパイプとかも多いんだろうなぁ。
KEKB(Bファクトリー)
ここからはKEKB……Bファクトリーと呼ばれる施設にある「Belle測定器」だ。
今ではKEKBは「SuperKEKB」にパワーアップし、Belle測定器も「Belle II 測定器」に改造されたんだけど、この当時はまだ「Belle」から「Belle2」に改造される途中だった。
この測定器、ビルの4階分くらいあってデカイんだよ。この測定器の中で電子ビーム(物質)と陽電子ビーム(反物質)が衝突するのだ。
測定器の中。本当は空洞じゃなくてユニットが組み込まれるんだけど、今はまだ入ってない。
何がなんだかわからないほど沢山の検出器に覆われている。
ビームが衝突して粒子が崩壊すると、凄まじい数の別の粒子が生まれる。それを全部チェックするのだ。
爆発の破片を全部捉えるより精密な同時ロックオン。人類の科学って知らない間に随分進んでるんだなぁ……
生まれる粒子の一部は、この検出器さえ貫いて飛んでいく。どこでどんな反応があったかを調べることで、どんな粒子がどれだけ生まれたかを確認するわけだ。
ほとんど光速で飛んできて衝突も一瞬。その一瞬をものすごく細かくチェックするんだって……
ヒッグス粒子が見つかったりと、世界中の加速器が活躍している時期に、日本は実験を休んで改造してていいのかと危惧しちゃうけど、この改造で性能は40倍に跳ね上がるらしく、ということは40年分の実験を1年でやれちゃうことになるのだから、今こそ改造して、今後は標準理論の先にある世界に挑んでいく、ということらしい。
ビームは、このトンネルの真ん中よりもやや奥のほうで衝突する。
電子と陽電子のエネルギー量は同じではないので、衝突後は手前のほうにブーストする。粒子はほぼ光速だから、相対性理論に基づいて時間が…寿命が伸びる。つまり、それだけ長い距離を飛んでくれて観測しやすくなる……ということらしい。
こういう感じ、いいっ!
なお、さっきまでの測定器がある場所もけっこうな高さで、工事現場みたいな櫓を組んであるんだけど、登るのちょっとドキドキした。素粒子研究者って鳶職みたいなこともするらしい。
こういうアングルって、巨大施設でないと、なかなか撮れないんだよな~~。
そういうわけで撮っておく。
こっちも。
ここも。
加速器の取材に来て、こういうのばかり撮っていると「もっと実験施設を撮影してよ」って言われそうなんだけど、皆さん微笑んで見守ってくださいました。もちろん加速器や測定器もバリバリ撮影したけど、こういうのも撮らずにいられないもんねぇ。
外に出る。外も、いかにも特撮ロケ地な風景。
また別な建物の中に入る。どこに入っても特撮ロケ地。
ほら、やっぱりロケ地だ!
ここは今回の見学とは、あまり関係ない場所なんだけど、ボクが何を見てもワクワクしてたので、サービスで「こっちも見る?」って案内してくれたの。そりゃもぉ見れるモンは全部見ますぜ!
はい、ここを宇宙戦闘機とかモビルスーツが発進していくわけですよ。いきま~すなんですよ。そういうシーン描くときに使えるんですよ、こういう写真が。(たぶん)
こんなトコも撮っておく。ライダーとショッカーって、こんなトコで戦ったりしてたよねぇ?
見える、ボクには見えるんだ!ここで戦うヒーローの姿が!!
これはオマケ。写真の1枚をアニメの背景っぽくイジってみた例。
このくらいまでの加工なら小一時間でやれちゃうので、こんな感じにしてから漫画レイアウトに持ち込み、さらに加工を加えてキャラや他の背景と馴染むバランスに整えていくことが多いのだ。
……というわけで「STF(超電導RF試験施設)」「ATF(先端加速器試験施設)」「KEKB(Bファクトリー)」を一気に紹介してみた。
この多くは一般公開のときに実際に見られるので、ぜひ見学してみてね〜〜。
※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

これが世界でただ1つの次世代直線型加速器として建造される予定の「国際リニアコライダー(ILC)」に組み込まれる超伝導加速空洞の試験機。
おおおっという感じでビームパイプがどこまでも……に見えるけど、実はクライオモジュールは20メートルちょいだけ。あくまでも試験用だからね。
クライオモジュールをつくってる施設の中。う~ん、いかにも研究所っぽい。
ここはクリーンルームで立ち入り禁止。
なんでもない通路もソレっぽいので撮影。こういうトコをロケ地に貸し出せば、研究費捻出できるんじゃないのかなぁ?
画面右端にクライオモジュールのパイプが見える。レールの上に乗っていて、押してみたら動いた。こういう方法で搬入してつないでいくんだろうなぁ。
ATF内部へとつながる通路。こういう通路ってリアル感だよなぁ。いやリアルそのものなんですけど。
ど~んとあるのが線形加速器。
生成したビームの入口部分アップ。この手前の電子銃で電子ビームをつくっているのだ。
ビームパイプが並んでいる。ここの線形加速器は150メートルくらいかな。
線形加速器から続くダンピングリング(円形加速器)の中。ゴチャゴチャした機械が山ほど。中央にある黒いブロックは鉛。手で積んでガムテープで止めてあった。割とアバウトだな~と思ったけど、伸縮するガムテは非常に有効なのだそうだ。
ダンピングリングは、その名の通り一周約140メートルのリング(本番ではもっと大きい)。
もう、こういうのをテキトーに合成するだけでもリアルなSFメカつくれそうだよなぁ。
ここがダンピングリングからつながる次のステップで、ビームを収束させていくライン。
赤い4極電磁石でビームを絞っていくらしい。曲げる磁石、整える磁石、絞る磁石など色々あって、最近はボクも、磁石の種類を見ればソコで何をやってるのかわかるようになってきた(笑)。
さっきのダンピングリングの裏側。
ね、それっぽいでしょ。それっぽいでしょ!
こういうトコをくぐり抜けてミレニアム・ファルコンが飛んでたよねぇ。この奥にデススターの反応炉があったんだよねぇ。
この手前にリアルにつくったガンプラ置けば、それだけで実写ガンダムな気分に……
とにかくアレもコレも撮影しとく。だってアレもコレもイイんだもん。何だかわからんがイイんだもん。
やっぱりイイ!
制御システムのとこを反対側から撮る。反対側もイイ。
この感じ……あとちょっとで反応炉だな。い~や、ある!反応炉はあるんだ!だって見たもん!
……上に上がってみた。さっきまでの制御室やダンピングリングや加速器は、この下にあるのだ。
氷の惑星ホスの反乱軍の基地内って、こんな風景じゃなかった?どっかそのへんにスノースピーダーあるんじゃないの?
と思ったら、またまたデススターっぽい。
どこもパイプだらけ。超伝導は液体ヘリウムで冷やしているけど、それ以外は水冷なので、そういうパイプとかも多いんだろうなぁ。
ここからはKEKB……Bファクトリーと呼ばれる施設にある「Belle測定器」だ。
この測定器、ビルの4階分くらいあってデカイんだよ。この測定器の中で電子ビーム(物質)と陽電子ビーム(反物質)が衝突するのだ。
測定器の中。本当は空洞じゃなくてユニットが組み込まれるんだけど、今はまだ入ってない。
何がなんだかわからないほど沢山の検出器に覆われている。
生まれる粒子の一部は、この検出器さえ貫いて飛んでいく。どこでどんな反応があったかを調べることで、どんな粒子がどれだけ生まれたかを確認するわけだ。
ヒッグス粒子が見つかったりと、世界中の加速器が活躍している時期に、日本は実験を休んで改造してていいのかと危惧しちゃうけど、この改造で性能は40倍に跳ね上がるらしく、ということは40年分の実験を1年でやれちゃうことになるのだから、今こそ改造して、今後は標準理論の先にある世界に挑んでいく、ということらしい。
ビームは、このトンネルの真ん中よりもやや奥のほうで衝突する。
こういう感じ、いいっ!
こういうアングルって、巨大施設でないと、なかなか撮れないんだよな~~。
そういうわけで撮っておく。
こっちも。
ここも。
加速器の取材に来て、こういうのばかり撮っていると「もっと実験施設を撮影してよ」って言われそうなんだけど、皆さん微笑んで見守ってくださいました。もちろん加速器や測定器もバリバリ撮影したけど、こういうのも撮らずにいられないもんねぇ。
外に出る。外も、いかにも特撮ロケ地な風景。
また別な建物の中に入る。どこに入っても特撮ロケ地。
ほら、やっぱりロケ地だ!
ここは今回の見学とは、あまり関係ない場所なんだけど、ボクが何を見てもワクワクしてたので、サービスで「こっちも見る?」って案内してくれたの。そりゃもぉ見れるモンは全部見ますぜ!
はい、ここを宇宙戦闘機とかモビルスーツが発進していくわけですよ。いきま~すなんですよ。そういうシーン描くときに使えるんですよ、こういう写真が。(たぶん)
こんなトコも撮っておく。ライダーとショッカーって、こんなトコで戦ったりしてたよねぇ?
見える、ボクには見えるんだ!ここで戦うヒーローの姿が!!
これはオマケ。写真の1枚をアニメの背景っぽくイジってみた例。







うるの拓也












