広告漫画の打ちあわせって、どんな感じ?(ギャグ漫画家的コミュニケーション術)
打ちあわせはとっても重要だから、ものすごくマジメに必死にやってるぞ。
マジメにフザケてるぞ。
今はネットで大抵の連絡はつく。
進捗を報告したり、描いたモノを見せたりするだけなら、わざわざ出向いて打ち合わせする必要なんかない。
実際ボクも、そういうコトはメールだけで処理しちゃってるケースのほうが多い。
客先に何かを持っていって見せるなんてことは、もう何年もやってない気がする。
ボクにとって打ちあわせというのは、仕事そのものの話より大事なモノを感じ取るためのものなんだ。
その場の空気。微妙な表情や口調の変化。
相手と直接会わないと気付かない些細なこと。
そういう部分を感じておくことが、後の局面で大きく影響してくるのよ。

実況! 広告漫画の打ちあわせ
打ちあわせ、かぁ。
え~っと……いや、フツーなんだけどね。
え、そのフツーがわからないって?
それじゃあ、ボクの打ちあわせを思い出して披露してみようか。
以下は、とある研究機関での打ちあわせだよ。
うるの「ちわ~っす」
監修A「これ出たよ~」
うるの「うわ、寄生獣のミギーじゃん! オレ全然出ないのに!」監修A「一発で出たよ」
うるの「ぬぅううっ、くやしいっ!」監修B「じゃ、そろそろ始めましょうか。今月は超弦理論の話ですよね」
うるの「チョーゲンリロン? なにそれ?」監修B「それじゃホワイトボードで説明しましょう」
カキカキカキ……(ホワイトボードが、わけのわからない数式や図で埋まっていく)監修B「え~っと、アレがこうで、ソレがナニで……」
カキカキカキ……(ホワイトボードが、さらにわけのわからない数式や図で埋まっていく)うるの「お~、ミギーが伸びる~~」
「カワイイよね~~」
監修B「……説明、聞いてます?」うるの「あ、はいはい、聞いてる聞いてる! そのヘンな数式っぽいのは『ゴルゴダの星に集まれ』っていうウルトラサインでしょ」
監修B「ちがいます!!」うるの「エータ(η)っての、ニョロニョロの顔文字に見える~~~」
監修A「わはははは!!」
監修B「ハナシ聞けってば!!」
……と、こんな感じなんだけど。
え、違う? そんなハズがない?
仕方ないなぁ。
それじゃ別なときのコトを思い出してみよう。
監修A「今月は反物質についてです」
うるの「あ、知ってる! 星野之宣の『2001夜物語』に出てきた悪魔の星だ!」
監修B「そうそう、星野之宣いいよね~~」監修C「彼はJ・P・ホーガンのSF小説のコミック化もやってるよね」
監修A「ロバート・L・フォワードの『竜の卵』もいいよね~~」うるの「『エヴァンゲリヲン』で撃ってた陽電子砲も反物質なんでしょ」
監修C「そうそう、アレは……」うるの「ヤシマ作戦で日本中の電力を集めるけど、アレが高エネルギーってコト?」
監修B「そういや『トップをねらえ!』のバスターマシン3号は……」うるの「『ガンダムSEEDディスティニー』でコロニー使ってビームを曲げるのも加速器と同じ原理なのかなぁ?」
監修A「え~、この数式ではm2が質量で、Vが微分です。V”は微分を3回やるということで、微分3回=質量ってコトです」
うるの「……はぁ……」監修A「ちなみに、このファイ(φ)がヒッグスです」
うるの「ええっ、ファイってヒッグスなの!?」監修A「そうですけど?」
うるの「そ、それじゃあ仮面ライダーファイズは質量3倍!?」監修A「何を言っている!?」
……と、ホラ、やっぱりこんな感じ。
いやネタじゃなくて、本当にこういう打ちあわせなんだってば。
いつも、こんな感じなの。こういう打ちあわせして、そういう漫画描いてるの。
え? ソコじゃなくて他との打ちあわせを紹介しろ?
じゃあ……。
うるの「……というわけで、このファイル『06』を……」
担当者「ちょっと待って。その『06』っての、やめない?」
うるの「へ、マズイっすか?」担当者「うん。だって……」
うるの「だって?」担当者「『06』だと、どうしてもザクを思い出してしまうだろ?」
うるの「いやいやいや! フツーは思い出さないから!!」
うるの「……というわけで、どうぞボクにお任せください!」
担当者「そう言えば、うるのサンはご当地ヒーローの仕事もしてるんですよね?」うるの「よくぞ聞いてくれました! 実はアレがナニで、ソレがコレで……」
(そのまま1時間以上、ヒーローのことばかりアツく喋り続ける)うるの「……というわけで……あれ、仕事の話、しませんでしたね。ま、いっか。ソッチは何とかしますから、お任せください!」
担当者「う、うん……そんじゃ任せるわ……」
……ナニ? もう黙れ?
だって本当にこうなんだもん。
ものすごくリアルに再現すると、こうなっちゃうんだもん。
ふざけてるわけでも、ダラけてるわけでもないぞ。
真剣勝負でこういう会話してるんだぞ。
フザけることで色々探り出す
前半のバカ科学トークは、ボクの連載科学ギャグ漫画『カソクキッズ』のモノ。
ボケたりツッコんだりしながら、自分なりのとっかかりを探しているの。
難しい研究そのものについてのとっかかりも探るけど、それ以上に、博士、研究者という、浮世とはちょっと違う世界の人たちと自分たちの接点を探っているんだ。
マンガは、結局はドラマでありキャラクターだと思うから。
いくら広告や広報のためだろうが、漫画である限り、キャラとドラマから離れられないんだよ。
そして科学そのものを題材にしてる以上、その世界で生きている人たちの生の姿をちゃんと捉えなきゃならないんだ。
「難しいことばっかり言ってる頭のイイ人たち」っていう、ありがちな記号だけで描写してたら、読者の共感なんか得られないもん。
だからボケまくり、脱線しまくって、研究から離れた生の博士たちを引っ張り出そうとしてるのよ。
その人たちをそのまま漫画に描くわけじゃないけど、それでも、特殊な専門分野で生きてる人たちも、自分たちと同じように笑ったりボケたりする人間なんだという部分を肌で感じなきゃ、と思っているんだ。
説明を受けたり、何かを取り決めたりすることよりも、そっちが大事だと思ってる。
だって説明や取り決めだったら、メールのやり取りだけでもやれるもん。
むしろ、そのほうが便利なくらい。
現場でしか感じられない、生のモノ。
それを感じるために打ちあわせしてるようなモンなんだよ。
そして後半の、ヒーローの話ばっかりしてた打ち合わせは、初めて会った新規のお客との打ち合わせのときのコト。
1時間以上、仕事とは関係ないヒーロートークしちゃったのは、少々やりすぎなんだけど、もちろんソレしか話さなかったわけじゃないぞ。
商談時間は90分くらいだったから、約30分は仕事関係の話もしてるんだから。
その上で、その後1時間くらいが脱線のヒーロー談義。
むろん、その話に客が興味(仕事としてではなく)を示したからこそなんだけど、単にシュミの話をしただけじゃないんだ。
ご当地ヒーローという活動に、どういう思いで関わってるのか。
どんな体験をして、何を感じているのか。
どんな志が活動を支えているのか。
自分がどんな人間かを伝えるために、ヒーロートークをしてるんだよ。
単にボクはこんな人間ですって言っても、それだけじゃ伝わらないから、ヒーロー活動という実際の体験を語ることで伝えるの。
自主活動だからギャラなんかもらってない。
それでも、やる。
やるからには手も抜いてない。
無償でも、やってよかったと思う素敵な物語はたくさん生まれる。
お金だけじゃないんだ。
そういうコトを伝えるために脱線してるの。
直球でボクはカネだけじゃないよって言っても、ヘンにカッコつけてるだけに聞こえちゃうし、本気でカネじゃない人だと思われても困るから。
だって、お金欲しいもん。
欲しいから仕事してるんだから。
ただ、カネだけの視点でも漫画って描けないんだよ。
気持ちも動かないとやれない。
そうじゃないと作品に魂を注げないんだ。
そういうのって、創作者じゃない人にはピンと来にくい部分があるんだけど、ピンと来なくても「この人はそういう人なんだな」という程度には、わかっていて欲しいのよ。
ビジネスだけじゃなく、そういう作家的な部分も受け入れて欲しい。
だから脱線トークを使って、そういう部分をチラ見させておくんだ。
相手の反応も見ながら語り、どの程度まで作家のこだわりを受け入れてくれそうかを量ってもいる。こっちの脱線にどれだけ付き合ってくれるかで、相手が自分をどう思っているかも見えてくるしね。
ここでの反応をしっかり確認しておくことが、その先の仕事を進めるために、とても重要なんだよ。
このときは1時間も脱線できた。
つまり上々の成果。
ボクが作家としてこうしたい、ああしたいと提案したときに、この人はそれを聞いてくれそうだと思えたから。
提案が常に通るわけじゃないけど、少なくとも耳を傾けてはもらえるだろう。
ボクも、身構えずに素直に提案できそうだ。
それを量る。
打ち合わせでは、そういうコトのほうが大事だと思っているの。
ホントにね、仕事そのもののコトだけなら、メールで事足りるんだ。
けど、メールだけでは読み切れない取引相手の生の部分があって、そこをしっかり見て、できれば自分の色を注いでおいて、後で何かがあったときにボクを受け入れやすい人に近づけておく。ちょっとだけウイルス注射してワクチン作らせておく、みたいなモンかな。
打ちあわせって、そういうモンだと思ってる。
バカトークだからスゲェ楽しいんだけど、そのバカにも、それなりの理由と役割があるんだよ。
一応、計算しながらバカやってるの。
ま、現場では本当にバカになっちゃってるときもあるんだけどさ。
延々と世界のバカCM集を見るだけの打ち合わせもあったな~~。
アレ、楽しかったな~~。実際の仕事とは全然関係なかった気がするけど。
お客も楽しんでたよな~~。
あれから何年も経ったけど、ドジをしてもミスをしても、ボクを忘れずに使い続けてくれてるもんな~~。
一緒にバカになって笑いあえてしまえば、他のコトなんかどうにでもなるんだよな~~。
※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。









うるの拓也












