お客は漫画家を何て呼ぶの? やっぱ○○先生?
人によるよね。
状況によっても違うかな。
ボクの場合は基本的には「○○さん」。
スタッフにも先生とは呼ばせてない。
自分でも先生だとは思ってないしねぇ。
けど、ファンの方とイベントでお会いしたりすると「先生」と呼ばれる。
まぁ、ボクだって好きな作家さんとお会いしたら先生って呼ぶと思うんで、そういうモンだと思って、そのままにしてるの。
それにお客が先生と呼んでくれたら、それはそれでいいやと。
先生と言われると気恥ずかしいような気持ちにはなるんだけど、そのままにしておいたほうが都合がいいこともあるんだよね。

先生と呼ばれる都合のよさ
広告漫画の仕事を、とある代理店経由でやってたとき。
代理店経由だと、ボクはお客とは直接面識はなくて、営業や打ち合わせなどは代理店任せな状態になる。
けど、代理店さんは漫画の専門家じゃないので、お客が無茶を言っても上手く説得できないときがあるんだ。
そういうときに、ボクが「先生」として呼ばれる。
説得できないからってお客の言うがままにしていたら、それはそれで問題になりかねないから「漫画家の先生ご本人にわざわざ来ていただきました」という形を取るわけ。
広告代理店には我儘を言うお客も「先生」が出てきちゃうと、我を通しにくくなるのよ。
一般的に漫画家を「先生」と呼ぶのは知られているし、実際、代理店のスタッフも先生として失礼のないように扱っているのを見ちゃうと「うわ、作家先生が出てきちゃったよ」ということになるもんね。
ボク自身は先生ヅラして偉そうに振る舞うことはないけど、穏やかに話していても、それはそれでプレッシャーにはなるんだ。
「こんな穏やかな人でもこのままじゃマズイと思うようなコトなのか。自分たちは、そういう無茶を言ってしまっていたのか」と思わせることができるでしょ。
なので「先生」として出ていくだけで、モメていたコトを収めることができたりもするの。
ね、都合がいいでしょ。
あとね、ボクと実際に喋るときは「さん」な人でも、周囲には先生として紹介してるっていうケースもあるみたい。
これも、そのほうが都合がいいから。
タダの「○○さん」なら、依頼する客先に呼びつけるのが普通だけど、相手が「先生」ってコトだと、こっちから訪ねていかないと失礼だって主張できる。
メールだけでも済むことなんだけど、直接お会いしてご挨拶しないと失礼でしょ、と。
だから「先生」との打ち合わせのために出張させてくれ、と。
そう言って会社に出張費出してもらって、経費で1~2日小旅行できちゃう(笑)。
ボクが「先生」だと、会社にそういうコトが言えるみたいなんだよ。
いや実際に、そういう理由でご来社された方が幾人かいらしたの。
九州、大阪、北海道……海外の方もいたな。
大阪の方には気に入っていただいて、その後数年間、毎年1~2回、訪ねていらっしゃって、その度にコッチでノンビリして帰ってたな~。
ボクは「ああ、先生呼ばわりには、そういうメリットもあるのか~」と感心したモンだ。
そういうわけで、ボクの場合は基本的には「さん」で、でも「先生」と呼びたい人も好きにしてくれという感じでやってるんだ。
何と呼ばれようと、コッチは変わりないもんね。
「オイ」とか「オマエ」だったら、ムカっと来るけどさ。
仲良くなると先生じゃなくなる
ボクは、できるだけお客と仲よくなろうと思っている。
これまでに度々触れているけど、創作っていう仕事はメンタルがとても大きく影響する。
仕事として割り切ることができない部分が、どうしてもあるんだ。
だからボクは、嫌いな人のために本気を出せない。
自分自身のオリジナル作品を描くなら依頼者が誰でも関係ないのだけど、広告漫画は「依頼者のために描くモノ」だからねぇ。
好きになれない依頼者のままでは、本気になったつもりで取り組んでも「つもり」にしかならないんだ。
ノれないの。
だから、どんな人でも、その人のいいところ(あくまでもボクにとって是と思える部分)を見つけて、好きになろうと努力する。
いい面しかない人なんてのはいないから嫌な部分も必ずあるのだけど、そこは見ない。
見なかったことにする。
けど、いくら肯定的に接しても、相手までコッチを肯定的に見てくれるとは限らないので、ボクはズッコケてみせたり、バカトークしたり、色んな方法で相手をほぐしていくようにしている。
で、そうやっていると、最初は「先生」と呼んでいた人が、だんだんと「うるのさん」と呼ぶようになってくるんだよね。
まぁ、バカなのがバレちゃうんだから、先生とは呼べないわなぁ。
でも、それこそがボクが待っていた反応だ。
先生と呼ばれなくなり、互いに対等になり、やがてはタメグチ近い口調の友だちみたいな付きあいになる。
そうなることを望んでいるんだ。
だから、ボクのほうから誘うの。
コッチが先にバカになって見せなきゃ、心を許してくれないもんね。
隙を見せて油断を誘う。
最初はものすごく真剣にバカやってるわけよ。
それが意識しないでバカやれるようになったら、本物の関係になったと判断するの。
ボクは先生呼ばわりしてもらえるほどのキレ者じゃないのよ。
ビシっと恰好いいセリフを決めて、お客に惚れ込んでもらうなんて無理なのよ。
だからバカになる。
いや、本当にバカだと思われたらマズイから、バカだけどタダのバカじゃないと思われるための努力は続けるんだけどね。
なお、そのくらいの関係になれば、もう「恰好」も気にしなくていいので、作務衣と雪駄じゃなくても平気。
フツーにTシャツ一枚で出掛けることも多いよ。
「先生」じゃない関係になっちゃえば、小道具がなくても魔力は使えるからね(笑)。
※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。









うるの拓也












