広告漫画だけで食べていけるの?
ボクは広告漫画を描く仕事をずっと続けてきている。
最初にやったのは25歳くらいの頃だから、もう四半世紀以上やっていることになる。
でも、ずっと続けてはいるけれど、広告漫画だけでやれた時期っていうのは、ほぼゼロに近い。
ボクの場合は「広告」と「広告漫画」の兼業なんだよ。
そうだから漫画もやってこれたと思うの。
漫画だけに打ち込もうとしてたら、もっと早くにツブれてたと思うんだ。
漫画をやめないために漫画以外をたくさんやる。
矛盾してるっぽいけど、それがボクのまんが道だったんだ。
広告漫画だけで食べていくのは難しい
いきなりで申し訳ないけど、広告漫画だけで食べていくのはキビシ~のではないかと思わざるを得ないんだよなぁ。
いや、不可能じゃないとは思うんだけど、それを実現するには、実力、商才、運に恵まれてないとダメだと思うし、それなら普通の漫画家としてヒットを目指すほうがマシだと思うのよ。
つ~か、そこまでして広告漫画だけに打ち込むメリットって、ボクはあんまり感じないのよね。
だってさ、広告漫画って自分で描く題材を選べないんだよ。
内容自体は作者に委ねてもらえることも少なくないんだけど、題材は選べない。
一般商業誌でも、編集部から「○○を描いてみないかね?」って言われることはあると思うけど、それより、たぶん(精神的に)キツイと思うのよ。
丸っきり興味ないジャンルの二次創作やるほうがマシってレベルだと思うの。
漫画が好きであればあるほどキツイと思うのよ。
カネのためにやるとしても、そういうふうに割り切れるほどに稼ぐのは、さらにキツイ。
そういう状態で描きたくない漫画を描き続けるのって地獄だと思うの。
好きなこと、こだわってることであればあるほど、それを犠牲にするのは辛いもん。
なので、広告漫画についてアレコレコ書いておいて何だけど、漫画だけやりたい漫画家のままで広告漫画専業で食っていくというのは、あまりオススメできないんだよね。
漫画さえ描けりゃ内容は何でもいいって人ならアリだろうけど、ほとんどの作家にとっては面倒くさくて、やり甲斐のない仕事になっちゃうと思うんだよね。
もし漫画だけで食っていきたいのなら、まずは普通の漫画家としてやっていく道を目指して、その上で副業として広告漫画も請け負うとかね、そういうカタチしかないと思うんだ。
普通に雑誌等で連載・読切を描きつつ、広告用の漫画も請け負う形式。
実際、これが一番多いんじゃないかな。
ボクも最初はそうだった。
フツーにデビューして、フツーに漫画家やって、その後に広告の仕事を覚えて、徐々に「広告漫画&広告」に変わっていったんだから。
なお、この場合、必ずしも雑誌でデビューして……ではなくても道はあるように思う。
ボクの時代は、まだネットもなく、自費出版では採算が合わなすぎたし、コミケも始まったばかりで、一部のエロ同人でもない限りは売上なんかゼロに等しかったから、自力だけで作家活動していくなんてコトは(あくまでも当時は)考えもしなかったけれど、今はだいぶ事情が違う。
オリジナル作品を有料配信してくれるオンラインサービスなどを利用する手もあるし、自分で電子出版する手もある。
著名な作家でも、今はそういう方法で稼いでいる方もいらっしゃる。
ユーチューバーが動画で、ブロガーがブログで食っているように、同じことを漫画でやれればいいのだ。
とにかく、何らかの形で自分の作品を発表して収益につなぐようにして、それで足りない分を広告漫画を請け負って補う、というのなら、漫画だけで食っていくのは可能だと思う。
ただし、それが普通にデビューして、普通の漫画家として食っていくのよりラクかと言えば、そういうものではないと思うけど。
(また、その場合でも広告漫画で嫌な思いをしないで済む程度には、広告についても学んでおくべきだと思うし)
ボクは「広告と漫画が融合した変異体」
ボクが広告漫画をずっとやっているのは、漫画だけじゃなくて「広告制作も好き」だからなんだ。
漫画をやめようと思ったことは一度もないけれど、広告業のほうもやめたくない。
広告は広告で面白くて、やりがいもあって、収入にもつながっているからやっている。
だから、仮に漫画制作だけで食っていけるとしても、ボクは広告の仕事もやめないだろう。
そのくらいには広告という仕事にも魅力を感じているのよ。
そうだから続けてこれたのよ。
最初からそうだったわけじゃないよ。
ボクは二十歳のときに新人賞を獲って、漫画家デビューした。
その後、生活のために就職したけど、そのせいで漫画が疎かになっちゃって、デビューした編集部とも疎遠になってしまい、それで会社を辞めて、先輩漫画家のアシスタントをしながら、もう一度別な雑誌に投稿して、2度目の新人賞を獲って、それからは読切を何度か描いて、やがて連載をもらうけど、すぐに連載誌が休刊しちゃって(今にして思えば、そうだったから未熟なボクに連載が回ってきたんだろう)、それで路頭に迷って「広告漫画」というやり方を思いつき、それを実現するためにデザイン会社に就職して広告を学び、数年後に独立して、それからも紆余紆余しまくって今ココ……という感じ。ここまで約30年。
雑誌連載をしていたときだけは漫画家専業だったけれど、それは最初のほうの、わずか数ヶ月程度のホンの一時期。
それ以外はず~っと漫画家とナニカの兼業。
漫画家であることを捨てたことは一度もなかったけど、漫画がほとんど休業になっちゃってた時期も短くはないし、漫画やってるときもソレ以外も常にやってて、しかも収入面ではソレ以外のほうが大きかったりするの。
今でも。
広告漫画をやろうと考えたのは、広告を学ぶ前だった。
連載してた雑誌が突然休刊になってしまい、漫画家っていう職業の不安定さを身をもって味わって、こりゃあ生活人として考えると危ないなぁと思ったのがキッカケ。
当時ボクには、結婚を前提にお付き合いしているカノジョ(今のカミサン)がいたから、一定の生活力とソレを維持する力を一刻も早く手に入れたかったの。
自分はね、好きなことやってんだから貧乏でもいいんだけど、カノジョまでは巻き込めないでしょ。
でも好きな人を諦めたくはないし、相手だってボクの身勝手で捨てられちゃたまんないでしょ。
結婚するからには、それなりの生活を継続できるアテってのが欲しかった。
「苦労を共にしてくれ」とか何とか言うにしてもね、苦労前提で結婚する気にはなれなかったの。
パートナーを幸せにしたい。
自分の手で、幸せにしたい。
自分の好きな人が幸せになった姿をそばで見ていたい。
その幸せを一緒に分かち合いたい。
そう思うから結婚するんだ。
自分の都合だけ考えるわけにはいかないのよ。
それでも、漫画を忘れることもできなかった。
だから二兎を追うことができる道を探して、広告漫画というのを思いついたんだ。
広告の世界で漫画を描きつつ、チャンスがあればオリジナル作品にも挑んでいく。
当時(30年近く前)のボクが最初にイメージしたのはソレだった。
この時点では、漫画を続けながら安定的な収入源も確保したいっていう都合のいいコトを望んだだけで、広告そのものに強い興味があったわけじゃないんだ。
広告に魅力を感じるようになるのは、この1~2年後。
ボクは、都合のいい考えを実現するために、まず、広告会社に就職した。
広告の世界で漫画をやるといっても、広告のことがわからないではやりようがないから、まずは広告を学ぶことにしたの。
広告的には何のキャリアもないに等しかったけど、運良くグラフィック・デザイナーとして雇ってもらえた。
しかも、その会社には漫画に理解あるプランナーがいて、さらに入社数ヶ月後に先輩デザイナーが大挙して退職してボクだけになってしまうという事件が起こり、何にも知らないボクが事実上のチーフデザイナーとして戦わなきゃならない状況に追い込まれた。
そのおかげで、ボクはいきなり広告漫画を手掛けるチャンスに恵まれた。
先のプランナーが、そういう企画を次々と提案してくれたんだ。
デザイナーとしてはヒヨッコにもなってないから、そっちには期待できないでしょ。
だから漫画家のキャリアを使った広告企画でやっていくしかなかったんだよね。
そしてソレがツボった。
時代がバブル期だったから、アホな広告企画でも売れたんだよ。
つ~か、むしろそういうのがウケた。
ボクは同業他社とのプレゼン競合に連勝し、漫画しか知らないくせに腕利きの広告制作者と見なされるようになってしまった。
全部、偶然のおかげなのだけど、そういう体験をしたせいで、ボクは広告そのものにも惹かれるようになった。
いくら漫画広告が得意と言っても、ソレばっかりやってたわけじゃないからね。
普通の広告もたくさん手掛けつつ、ココ一番ってときに漫画を切り札に使う。
そして他社を出し抜いて勝つ。
漫画は他社が持っていないワイルドカードみたいなモンだった。
通常戦力でギリギリまで戦って、最後の最後のところでフッと不敵に笑って真の力を見せる。
そういう感じだったんだよ。
そんなコトを何度も体験したら、そりゃハマるでしょ(笑)。
ボクはそうやって「広告と漫画が融合した変異体」になっていったんだ。
漫画以外のコトもできないと広告漫画もできなかった
以来ずっと、広告界で生きてきた。
漫画の仕事も、漫画界から広告界へ出張営業しているわけじゃない。
広告界の中に「広告漫画界」という住み処を作って、そこでやっている。
広告の漫画しかやらないというわけではないので、普通の漫画家をやるときは漫画界へ出張する。
漫画になったり広告になったりのコウモリさんなのだけど、自分の立場ははっきりさせているつもり。
「お前はどっちの味方だい!?」ってシーマ・ガラハウさんにツッコまれたら、迷わず「広告」と答える。
ディフォルトが広告だから、広告漫画もやってこれたんだから。
広告業界で漫画をやっていくには、漫画を描く以外のコトもできないと厳しいのよ。
出版社だったらね、漫画家は漫画描いていれば、ソレ以外は編集部でやってくれるでしょ。
漫画家じゃなくても、小説家でもコラムニストでもいいけど、とにかく編集するのは編集部。
だけど一般企業には編集部なんかないのよ。
だから「漫画を描いて」っていう言葉には「編集やデザインや印刷の手配もやって」が自動的に含まれているコトが多いんだ。
いや、一般企業の人だって、漫画に編集やデザインが含まれてるとは思ってないよ。
思ってないと思いたい。
でも、この場合の漫画は「広告漫画」で、企業側は漫画を作ってるんじゃなくて、広告を作ってると思っているんだよ。
漫画が主役の広告だけど、全体として広告は広告。
そして広告制作なら編集やデザインが含まれてるのはアタリマエ。
ソコをやらない広告制作会社なんかないもんね。
企画やコンサルがメインの会社や広告代理店、印刷会社だと制作部門を持たない場合もあるけど、その場合でも制作のアテはあって、全部コミコミで引き受けるのが普通だから「コミコミじゃない広告仕事」なんてのは、一般企業は考えてもいないんだ。
引き受けるからには全部やってくれるに決まってると考えているの。
家を建てるときだって、設計士、大工さん、電気工事、水周りなど別々のプロが必要だけど、それを施主が個別に頼む例は滅多にないでしょ。
全部面倒見てくれる建築会社に丸ごと任せるのが普通。
それと同じ。
そういう認識だから、広告漫画を引き受けるには編集やデザインもできないと厳しくなるんだ。
少なくとも一般企業とダイレクトに取引するのは難しいのよ。
いくら漫画だけ出来上がっても、それを世の中に見せる方法がなければ無意味だから、お客が二の足を踏んじゃうんだよ。
そういうわけで、広告漫画の世界で漫画を引き受けることは、広告全体を引き受けるのと同義だと思うしかなかったんだ。
それでボクは、漫画以外の色々を覚えた。
広告屋になったコトを後悔はしてないよ。
漫画界に住み続けていたら、どこかでヒット作を生み出していたかもしれない。
あるいは、ずっと打ち切り常連のまま今日まで漫画界にしがみついていたかもしれない。
いずれにしても、あのときに広告界に飛び込まなかったら、ボクはカミサンと結婚できなかっただろう。
それは、愛する娘にも出会えなかったということだ。
それだけは嫌だ。
だから、もしも30年前に戻ってやり直せたとしても、ボクは今と同じ道を選びたい。
娘が生まれてこない未来は選びたくない。
ただ、娘が生まれた後の時間軸では、ちょっとだけ自分に助言したいけどね。
もうちょっと上手くやれよ、と。
バカなことばっかりしてたからなぁ。
色々やって稼いで生き延びる
ボクは、漫画だけで食べてこられた時期は「ほぼゼロ」だ。
100万円を超えるような大きな漫画案件を受注したとしても、それはそのときだけのこと。
年間トータルで考えると「漫画以外の収入」のほうが圧倒的に多い。
というよりも、そうした収入があるからこそ、漫画の仕事もやっていられるというのが本当のところなんだ。
ボクは漫画と広告のどっちがメインというわけでもなくて、自分にやれることなら何でも引き受けるという感じでやっているのだけど、仮に漫画メインだったとしても、イロイロやれたほうが有利なのは間違いない。
漫画の原稿料以外に、イロイロの部分でも稼げるからね。
例えば、表紙込み20Pの漫画冊子を作るとする。
ページ単価は仮に2万円(モノクロ)と仮定する。
広告漫画としては安めだけど計算しやすいから。
20P冊子なら大抵は漫画16Pなので、2万円×16P=32万円のギャラ。
表紙用のカラーイラストも描くとしても、総額33~35万円ってトコじゃないかな。
カラーにしては安いけど、表紙はオマケしてよって言われることだってよくあるからなぁ。
けど冊子として世に出すには、これ以外に各ページのレイアウト、表紙周りのデザイン、表2、表3ページの編集作業などが必要なんだ。
漫画ページは全面漫画なんだから、編集といってもページ全面に漫画を配置してノンブル付ける程度の単純なモノなので、1ページの編集データ制作は1,000~2,000円くらいしか請求できないと仮定しよう。実際そんなモンだし。
でも、その程度の一番単純なレイアウトの場合でさえ、自分でやれば単価1,000円の場合でもプラス1万6千円稼げる。
さらに、ハシラの部分に何かミニ記事を追加するような場合は、記事自体はクライアント支給だとしても単価3,000円(先の単価1,000円より2,000円アップ)は請求できそうだ。
漫画の総ページ数の半分の8ページにハシラ記事が付くとしたら、合計2万4000円は上乗せできる。
さっきのページ編集と合算すると、これだけで5万円多く稼げている。
しかも、まだ終わりじゃない。
表紙のデザインワークで2万円、表4で1万円、表2~3ページの編集も各1万円なら、さらに合計5万円増やせる。
これで33~35万円の仕事が45万円くらいになったわけだ。
その上、近頃は冊子だけじゃなく、インターネット上でも公開するケースが多い。
元々が広報用だから、多くの人に見てもらいたいからね。
すると漫画のWEB版が必要になる。
単純なWEBデータだとしても5~10万円くらいにはなるだろう。
スマートフォン版まで考えるのなら、さらに5万円はイケる。
ここまでの合計は60万円。
企画料や営業経費も請求できれば、もっと上乗せできる可能性もある。
企画料は、漫画本編のギャラの1割前後なら良心的な数字と言えるだろうから、約3万円としておこう。
営業経費は見積り総額の5%程度なら認められやすい。
ここまでの総額63万円なら、これまた3万円乗っけられる。
以上、全部を合算すると66万円だ。漫画だけのときの倍額近い。
丸ごと漫画の20ページの冊子を作るのだとしても、漫画以外の編集、装丁、デザイン、印刷データ作成、WEBデータ作成などまで請け負えば、こんなに違ってくるのだ。
漫画そのものじゃなくて、漫画を世間に見せるためのアレコレもやる。
同人の「薄い本」になるトコまでやる。
そうしていれば最低でも数万円、多ければ倍額くらいまで収入を増やせるんだよ。
それに、自分でやれるコトが多ければ多いほど、ちょこっとサービスしてあげたりすることも出来る。
ちょこっとだけど、そういうのがけっこう効くんだ。
いわゆる営業サービスで、ボクは割とやってあげている。
営業に通うのだってコストなんだ。
足しげく通って、ペコペコして何とかして仕事を拾ってくる苦労を考えたら、多少のサービス分を描いてあげたり作ってやったりして喜んでもらって、そういう旨味を期待してもらって次も仕事を出してもらうっていうほうが、ずっとラクなのよ。
営業コスト分を制作に置き換える。
そのほうがボクにはラクなんだ。
だから、そう考えることにしてるの。
さすがに何十万円分もの編集工程をタダにすることはできないけど、2~3割程度なら目をつぶってあげて、次の機会を得るほうが効率いいってコトもあるんだよね。
それに、漫画を描かないときも、漫画家であることは応用できるんだ。
ボクは漫画以外の仕事も「漫画家の仕事」だと思ってやっている。
漫画家ならではの目の付け方、構成。ストーリーテラー的な企画や演出。
そういうモノが武器になるんだ。
広告を長くやってると、デザインだけでなく、プランニングにも、コンサルにも、プロデュースにも関わっていくことが多くなり、やたらと肩書きが増えちゃったりする(さすがにソレを全部名刺に記載したりはしない)のだけど、プランナーになったのではなくて「漫画家が考えるプラン」、コンサルも「漫画家のコンサル」だと思ってやってる。
漫画家っていう視点そのものを武器にしてるんだ。
いずれにしても、漫画をメインにしたからって、漫画だけやってれば食っていけるとは思ってないんだ。
漫画を世の中に出すためのアレコレも何とかしなきゃ漫画もやれないのが、ボクが味わった現実ってヤツだから。
広告漫画にも「本当のオリジナル作品」を生み出せる可能性が
ボクは広告漫画専門でず~っとやってきた。
それはつまり、広告に漫画を利用され続けてきたとも言える。
利用されたくてそうしてきたわけだけど。
でも、広告漫画はボクのゴールじゃない。
「その先」へ進むためのステップだと思っている。
広告に利用されるだけではなく、こちらも広告を利用させてもらうための。
企業とコラボして、オリジナル作品を生み出していく。
広告作品じゃなく、普通のオリジナル作品を作るのだ。
テレビ番組がそうであるように、映画製作がそうであるように。
企業をスポンサーにして、作者自身が本気を出せるオリジナル作品を創っていく。
つまり、出版社じゃなくて企業に原稿料を出してもらうんだ。
作品づくりを企業に支えてもらう。
その代わりにスポンサーの広報にも協力する。
それが、ボクが目指すカタチだ。
それが可能であることは、身を持って知っている。
ボクの長期連載作品『カソクキッズ』は、そういう作品だから。
『カソクキッズ』は「高エネルギー加速器研究機構(以下KEK)」のWEBサイトで連載された作品。
KEKに出資&監修してもらっていて、同機構の広報に活用してもらっているけれど、作品それ自体は、完全にボクのオリジナル作品なのだ。
依頼を受けたことがキッカケではあったけど、依頼通りにやったわけじゃない。
漫画の依頼が来る半年以上前から、ボク自身が描きたくなっていて、そこに実際に連載の話が来たから、自分からも踏み込んで、自分が描きたいものを自分で考えて描いてきたんだ。KEKの監修者たち(カソクキッズ保護者会と呼ばれている)も、それを認めてくれた。
本当に科学監修に徹してくれて、ボクの自由にさせてくれた。
しかもカソクキッズは、最初からKEKの広報など目的にしていない。
広報企画から派生したものだけど、ボクにとっては自分自身が楽しんで描いた「特殊な業界を舞台にした漫画」というだけだし、監修者たちは「21世紀の新しい科学の教科書をつくるプロジェクト」という目標を掲げていた。
関係者全員が、広報のためじゃなくて、読者みんなの財産になるものを目指して取り組んでいたんだ。
広報ということを考えなかったわけじゃない。
特定の組織の広報用の作品なんかにしないほうが、広報効果につながると思ったから、そうしたんだ。
科学の面白さ、楽しさを感じてもらうことに徹したほうが、結果的に科学全体にも、KEKの広報にも寄与するはずだと考えたんだ。
そして実際にそうだったからこそ、当初の予想を大きく上回る成果も出せた。
カソクキッズはKEKの顔というほどになり、通常の広報では届かない数のファンを獲得し、その中からは将来の科学者候補になりそうなスーパー小学生などもたくさん生まれた。作品自体は広報を意識していないけれど、結果=成果から見れば、ものすごくコストパフォーマンスのいい広報だったはずだ。
そういう事例はカソクキッズだけじゃない。
ボクは他にも、企業コラボで描いた自分のオリジナルと断言できる作品がいくつかある。
依頼がキッカケだったものもあれば、ボクのほうから提案して描かせてもらったものもある。
勝手に自分で描いちゃった作品に、後からスポンサーしてもらったコトもある。
そしていずれも、いかにもな広報・広告漫画よりも、ずっと大きな広報効果につながった。
広告用に描かなかったからこそ、広報効果を上げられたんだ。
さらに、他の事例だってある。
ボクが設定、シナリオ、各種グラフィックデザイン、広報などを担当している茨城のオリジナルヒーロー『時空戦士イバライガー』だ。
ご当地ヒーローとして知られているけれど、実はアレは完全なオリジナル作品。
運営元の「茨城元気計画」代表の卯都木睦氏が考案し、造型も自分でやって、単独で立ち上げた。
ボクは立ち上げ1年後くらいに卯都木氏と出会い、以降ずっと作品世界の設定や広報などを手伝っている。
当初は綿密に設定されていなかったアレコレを、後から補完していくようなモンだ。
ガンダムの「ミノフスキー物理学」とか「AMBACシステム」みたいなモンだよね。
劇中の描写を合理的に解釈できる設定を、後付けで作ってきたんだ。
子供向けヒーローショーの内容をガチなSFドラマとして解釈可能なようにしていくっていうのは、厄介だけどスゴく楽しい。
KEKで学んだことが、ずいぶん役に立ったよ。
このイバライガーは、今も完全自主営業で、しかも「本業」として活動している。
ボランティアでやってるわけじゃないの。
ヒーローだからボランティア活動に協力したりはするけれど、イバライガーの活動そのものはボランティアじゃないのだ。
自費出版・自主営業でオリジナル作品を続けていくというのと同じなんだ。
だからイバライガーは、本当はご当地ヒーローじゃない。
地域を盛り上げるご当地ヒーローという役目も兼ねているというだけで、実際にはオリジナル作品なんだ。
県や市町村、各種企業などをスポンサーにして活動を続けているけど、広報用の作品ではないのよ。
自分たちの作品を自分たちで続けているだけなのよ。
広報用じゃないからこそ、広報効果も高い。
カソクキッズと同じなんだ。
やれるんだ。
そういう方法で作品を描きたい人たちを支えていくことはできる。
ボクみたいな無名の漫画家でさえ、やれたことだ。
イバライガーだって、最初は無名だった。
代表者自身がたった一人で、ラジカセを持って出動して、パフォーマンスして、徐々に認められていき、仲間が増えて、今のスタイルに成長していったんだ。
ボクたちは実際にやった。
今も続けている。
他の人たちにやれないとは思えない(やり方はそれぞれ違うだろうけど)。
もちろん、決してラクな道じゃない。
「カソクキッズ」連載中にボクは何度も挫けそうになったし、イバライガーも慢性的な資金不足に泣かされ続けている。
それでも続けてこれたのは、どうしても描きたい、続けたいという強い想いがあって、なおかつ、その気持ちを受け止めてくれる周囲の人々がいてくれたからだ。
ラクして、やりたいことをやっていられるような甘い道はどこにもないのよ。
茨の道をあえて進む。
その先に楽園があるかどうかもわからない。
それでも行く。行かずにいられない。
周囲が意義や価値を認めてくれるかどうかも関係ない。
世間が何を言おうがオレは行かずにいられないんだっていう、それくらいの気持ちでないと続かないんだよね。
広告コラボで作家を支える仕組みを目指したい
ボクにとって広告漫画を描くのは、企業スポンサーでコンテンツを支えていく仕組みづくりのための第一歩に過ぎない。
今は広告作品を描くことで、漫画の力を企業に知ってもらう段階。
飯を食っていくためにも、まず収入になることをやるしかなかったというのもある。
でも、そういう中から、本当にオリジナル作品を描ける道も見出せた。
そして実際に体験してみて思った。
漫画って、企業側から見たら、ローリスク・ハイリターンな投資先だと思うんだ。
たった一人の漫画家が、ときに何十億、何百億ものお金を生み出すこともあるのに、それを支えるコストは、従業員一人を維持する程度でも済むんだから。
例えばカソクキッズの場合は、連載を続けるためのランニングコストを出資してもらったカタチだ。
十分というほどではないのだけど、作品自体はボクのものだから、単行本化して販売することはできる。
このルールなら、出版社から原稿料をもらっている時と同じようなものなんだ。
単行本の面倒まで見てくれるわけじゃないんだけど、どこかの出版社に売り込むことはできる(実際、カソクキッズの一部エピソードをまとめたモノは『マンガでわかる素粒子物理学』と改題されて出版された)し、今は電子出版やネット通販で著者直売でやっていく道もある(そっちも今は始めている)。
ボクは、そういうことまで見越して連載をやっていた。
作品を生み出す部分を支えてもらえるのなら、その先は作者の力量の問題だ。
いいものを描ければ、それは売れる。自分で売るにせよ、誰かに売ってもらうにせよ、とにかく誰かが買いたくなる作品を描けたなら、売って稼ぐ道はある。
だからボクは自分で営業して、一般企業や組織にスポンサードしてもらって、自分のオリジナル作品を生み出すということを何回もやってきた。
これからも、やっていくつもりだ。
企業から出資を受けても、媚びない。
だけど、ちゃんと出資者たちの利益や思惑も考慮する。
広報用作品にするつもりはないけれど、その作品を通じてスポンサーにも何かを還元することもも忘れない。
広告漫画を長くやってきたおかげで、そういうことも自然と考えられるようにもなった。
その作品を支えていることが企業のメリットになればいいんだから、やり方はいくらでもあるんだ。
スポーツ選手を「社員」ということで受け入れて支援して、その代わりゼッケンに自社ロゴを入れてもらったり、自社広告に出てもらったりするのだって同じなんだから。
冒頭で触れた通り、ボクは広告漫画だけで食べていけたことはない。
でも、自分がそうだからって、他の人までそうだとは思わない。
ボクは広告も好きになったから、そうしただけだ。
飽きっぽい性格だから、漫画だけにしないほうが漫画も長続きするってだけなのよ。
なので、広告漫画の世界にも、漫画一本でやっていく可能性はあると思っている。
今はないに等しいと思うけれど、将来、それを実現できる道はあると思うんだ。
そのためには、消耗品的に使い捨てられる広告漫画ではなく、企業コラボでオリジナル作品を生み出していくようなやり方を、もっと広めていかなきゃと思う。ボク自身も、そういう作品を志して、企業と接していかなきゃと思う。
そうやって、自分だけでなく、他の多くの漫画家や漫画家志望者にチャンスを作れたらいいなって。
漫画文化に理解のある人たちや、漫画家自身、その関係者などの中には、漫画家を支援する活動に取り組んでくれている人たちがいる。
ボクの取り組みも、その1つのつもりだ。
企業コラボで作家を支える仕組み。
ボク一人でも、いくつかの事例を作ることはできたんだ。
もっと広めていければ、さらに事例を増やしていければ、より多くの作家を支援できるかもしれない。
そういう未来のために、ボクは広告漫画を描いている。
そういう未来につながる広告漫画を描いていきたい。
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。









うるの拓也












