小説版イバライガー/第18話:ショートサーキット(後半)

Bパート
あのとき以来、ルメージョは息を潜めて成り行きを見守っていた。
前回の戦いでは、特異点へのアクセスが起こった。
ルメージョは、時空の狭間に封じられている初代イバライガーを救出しようとするシンたちを逆用して、一気にケリをつけるつもりだった。
そのために蓄えてきたネガティブエネルギーの大半を使い、数多くのゴーストを生み出し、イバライガーたちの拠点に正面攻撃を仕掛けたのだ。
作戦は、完璧だった。
シンやワカナが何をしようと、ヒューマロイドたちがどう抗おうと、デッドエンドだったはずだ。
だが、イバライガーブラックを見落としていた。
いや、意識から隠されていた。このボディとなっている『ナツミ』という女のしわざだ。
身体はすでに自分のものだ。記憶や知識も取り込んだ。
だが、わずかに残った意識が抵抗を続けている。取るに足らないはずの感情が、ルメージョの意識からイバライガーブラックの存在を逸らしていた。
結局、作戦はイバライガーブラックの介入によって失敗した。
ちっぽけなものに邪魔された。
もう二度と、あのようなチャンスはあるまい。
別の時空にアクセスする危険性は、イバライガーたちも理解している。
初代イバライガーの救出に成功した以上、シンたちがもう一度同じことをするとは思えない。
こちらも大量のエネルギーを消費してしまった。
大規模な策を仕掛けるには、時間がかかる。
今は、別の手段を考えるべきだった。
それは、ある。
予定通りにはならなかったが、あの作戦は完全に失敗したわけではないのだ。
ダマクラカスンは、瀕死のイバライガーたちにとどめをささずに撤退してきた。
『声』を聞いたと言う。
初代とR、特異点の中に入った二体のイバライガーの身体の中からの『声』だ。
奴らを利用して、こちら側に出てきた何かがいた、ということだ。
その何かは今、黒い霧となって暴れまわっている。
こちらにはコンタクトしてこようとしないが、アレは間違いなくジャークだ。
しかも並みのジャークではない。
おそらく『奴』だ。
その身体を形成するはずだった莫大なエネルギーは、ブラックのオーバーブーストとイバライガーR、イバガールの連携攻撃によって時空の向こう側へと吹き飛ばされてしまったが、『奴』の一部だけは喚び出せた、ということだろう。
つまり、今の『奴』は不完全だ。
本体を向こう側に残したまま、端末だけが顕現したような状態のはずだ。
身体を持たないジャーク。
それは、ある意味で、より純粋なジャークとも言えるが、こちら側で活動するには非効率的だ。
霧状の姿は、いわば剥き出しの本体だ。
大気中にはネガティブと同様にポジティブも存在する。
それらに直接晒されれば、エネルギーの多くが対消滅で失われてしまう。
ネガティブもポジティブも、この世界で力を発揮するには『依り代』が必要なのだ。
それがジャークでありイバライガーなのだ。
だから『奴』は今、自らの身体を生み出そうとしているはずだった。
何の脈絡もなく野放図に暴れているように見えるが、そうではあるまい。
人間たちからエモーション・ネガティブを補給し、身体を再構築しようとしているはずだ。
ただ、今のままでは時間がかかりすぎる。騒ぎを起こせばイバライガーたちも現れ、戦えば、さらに多くのネガティブを失う。
霧状だから消滅させられずにいるようだが、シンたちも、そろそろ本腰を入れてくるだろう。
もしブラックと直接やり合うようなことになれば、どうなるか分からない。
前回の最後に、イバライガーRがダマクラカスンに遣おうとしていた時空突破の技も危険だ。
不発に終わったようだが、直撃を受けていれば四天王といえども消滅しかねない。
「……仕方ないねぇ。これ以上、遊ばせておくわけにもいかないようだし……用意してやるよ。アンタに相応しい、とびっきりのボディをね……」
薄ら笑いを浮かべて、ルメージョは立ち上がった。
「行くよ、お前たち。ジャークが望む滅びを生み出すために、ね……」
氷の舞を残して、ルメージョの姿は闇の中に消えていった。
「はい、お茶」
カオリが差し出したお茶を、ワカナは一気に飲み干して寝転がった。
「そっか、ダメだったかぁ…」
「仕方ねぇだろ。初めての試みだし、上手くいく可能性もあるってだけなんだしな……」
シンも、隣に寝転がってゴロゴロしている。
「……とにかく、シンもワカナも今日は失敗だったわけか。まだまだ未熟よのぉ」
最初からゴロゴロしていたマーゴンが笑った。
「うるせぇ! お前はいいよな、ゴロゴロしてただけなんだから!」
「何を言ってる! この休憩室だって、地下の銭湯だってボクが作ってやったんだぞ?」
「銭湯いうな!」
「え、銭湯でいいんじゃない? 私、あの富士山好きだよ」
「えええ~~、ガール、マジなの?」
ねぎと遊びながら、カオリは相変わらずのバカトークを聞いていた。
久しぶりに、みんなが集まっていた。
全員ではない。初代はまだ動けないから接続されているミニライガーも動けない。博士たちも付き添ったままだし、ミニブラも帰ってきていない。
Rは、また地下のプールに行っているらしい。本当に全員が集まれるには、まだしばらくかかりそうだ。
カオリは、この部屋が好きだった。
基地の1階の西側、元々は事務室だった部屋である。
みんなが、それぞれに忙しくしている間に、マーゴンが食堂兼休憩室として整えたのだ。
もっとも、整っているかどうかはよくわからない。
どこから持ってきたのか畳とか囲炉裏とかあるし、その向こうにはお好み焼き用のデッカい鉄板や焼き芋の屋台まである。
先日は、お茶のサーバーを小便小僧デザインに変えようとして全員に「悪趣味すぎる!」と叱られていたし、その前にはIHクッキングプレートにシンとワカナが「アチチ!」と言ってるラクガキを描き込んで、怒ったワカナに追い回されていた。
それでもカオリは、この部屋が好きだった。
食べ物があるから……じゃない。それもあるけど、それだけじゃない。
この部屋は優しい。
このところハードな戦いが続いた。
かろうじて乗り切ったけど、もう少しで大勢の犠牲者が出るところだったし、以前の基地もなくなっちゃった。
ようやく助け出した初代イバライガーは今も目覚めなくて心配だし、その上、あのヘンテコな霧。
みんな普通の顔をしているけど、本当は不安でいっぱいのはず。
だからこそマーゴンは、いつも以上にイタズラに一所懸命になってる。
みんなを笑わせる。落ち込ませない。そのために頑張ってくれているのだ。
イバライガーの力は、エモーション・ポジティブっていう感情エネルギーの力。
つまり笑顔や元気が一番大事。
このヘンテコな休憩室は、そのため。
マーゴンなりに色々気を使ってくれた優しさが詰まってる。
みんな、それがわかってる。文句言いながらも通じ合ってる。
ミニライガーを除けばカオリが最年少だけど、みんなバカ。素敵なバカ。
それがカオリには、たまらなく嬉しいのだ。
ただ……。
気になることがある。
言ったほうがいいのかな? どうしよう?
カオリはちょっと戸惑ったが、意を決してバカトークに割って入った。
「あのぉ……こないだのオバケのことなんですけど……」
「心配すんなよカオリ。確かに、あの霧はヤバイ。でも、オレたちがきっと何とかするから……」
「いや、そうじゃなくて……」
全員の視線が、カオリに向いた。
うわ、なんか緊張する。なんか食べたい。いっぱい食べたい。でも食べると喋れない。
「あの……その……さっき、初代の手当てを手伝いに行った時、ミニライガーたちが言ってたんですけど……あの子たちが見たっていうオバケは、黒い霧じゃないような気がするんですけど……」
「え?」
「ほら、最初の時も『何かぼんやりしたモノが初代のカプセルを覗き込んでいた』って言ってたじゃないですか。で、ちょっと気になって訊いてみたら、黒い霧じゃなくて、イバライガーっぽい何かだったって……」
「ええええっ! イバライガーの幽霊!?」
「そんなアホな!」
うわぁあん、やっぱりアホって言われちゃったあぁああ。
「でも……でもぉ、本当にそう言ってたんですぅう。ねぎも、時々、何もないトコをじぃ~っと見てたりするしぃ~~~」
「う~ん、けど、子供や動物は大人には見えない妖精を見てたりするもんだからなぁ……」
「ちょっと待って」
全員が笑う中、イバガールが口を挟んだ。
「案外、笑えない話かもしれないよ。幽霊かどうかは知らないけど、私も何かの気配を感じることあるのよ。たぶんRも感じてると思う。ワカナやシンは何ともない?」
シンとワカナが黙り込んだ。
あ、やっぱり何かある?
「……気のせい……だと思ってたんだけどな。色々あったし、環境が変わったし、そのせいで神経が過敏になってるんだろうって……」
「でも、みんなもそうなら……あの霧みたいなのが、まだどこかに……」
シンが立ち上がり、ワカナがグローブを握った。
「あ、大丈夫、大丈夫! そういうのじゃないハズだから! 気配は感じるけど、嫌なものじゃないのよ。むしろ、その気配に身体を委ねたくなるような何かなの」
イバガールが、慌ててフォローした。
そうなのか、悪いものじゃないんだ。よかった。
「守護霊様だな」
マーゴンが厳かっぽく、つぶやいた。
「早速、この部屋に鳥居とか神棚とかを追加しなきゃ」
「これ以上、ミョーなアイテム増やすなって!」
みんなが、謎の気配について議論し始めた。
やっぱり何かいるのかなぁ。でも、確かに怖い感じはしないし……。
カオリは、まだ設置されてない神棚に手を合わせた。
どうか、みんなが元気でいられますように。
『いいんですか、イバライガーR? またジャークが現れるかもしれないのに……』
「だからこそ、キミが必要なんだよ、ミニR」
二人ともNPLプールの中だ。
こうしていれば、ミニライガーRは実体化していられる。
『すみません、私が、このプールを出ることができれば……』
ミニRが、プールのふちを握りしめた。
普通に動いている。
だがそれは、NPLを通してRと直結されているからだ。プログラムの不足部分をRがサポートしているからだ。
身体を動かすということを覚えさせる。慣れさせる。
そうやって、ミニRのコアを成長させるしかない。
それは難しくなかった。
もうじき、サポートを切っても基本動作は可能なレベルになるだろう。
けれど、このプールから出ることはできない。
イバライガーRがプールを出ると、ミニRの身体は崩れ去ってしまうのだ。
何度やっても同じだった。
どうしても安定しない。何かが足りない。
やはり、この方法では無理なのか。擬似コアでは、イバライガーは生み出せないのか。
だが、どうしても新しいサポートロイドが必要なのだ。
それも早急に。
別の方法はあった。
その方法で、ブラックは自らの分身=ミニライガーブラックを生み出している。
しかし、それには全員が強硬に反対している。
ブラックが行ったのは、自らのコアをえぐり出し、その一部を核として増殖させるやり方だ。
かなり無謀なやり方だった。
ナノパーツで構成されたイバライガーと言えども、コアだけは別だ。
コアは身体的な重要器官ではないが、魂のようなものだ。それを傷つけるということは、自分の一部を失うことだ。
場合によっては自我を失い、二度と元に戻れなくなるかもしれない。それは事実上の死なのだ。
ブラックは、その賭けに勝ったが、危険すぎる行為だったのは間違いない。
自分やガールが、同じ結果を得ることができると考えるわけにはいかない。
それに……自分には、欠けているものがある。
未来の記憶だ。
自分もガールも、起動し、この世界に来てからの記憶しかない。
だがブラックは、それ以前のことを覚えているという。
それがブラックとの大きな差だった。全く同質のヒューマロイドでありながら、まるで違う。
『R、少しわかってきたような気がします……』
ミニRがつぶやいた。
『私の身体も、コアも、すでに完成しています。ただ……』
「エモーション……か……」
『そうです。私はまだエモーションに認められていない。そんな気がします』
エモーションに認められる。
それは、ルメージョが言った言葉だ。
前回の戦いのとき、エキスポ・ダイナモが機能しないPIASのソウマに向かって言ったという。
Rも感じていたことだった。エモーションには、何か意思のようなものがある。
その意思と1つになったとき、本当の力を引き出すことができる。
ブラックと戦ったときに、それを感じた。ジャーク化した『ねぎ』を助けたときにも。
そして、この世界に初めて来たときにも。
いつも遠くに霞んでいて届かない何か。
そこに一瞬だけ、届いた。何かとつながった。そういう感じだった。
ミニRは、まだそれがない。
だから、このプールを出ることができない。自分自身を形作れない。
その原因は、自分にある。
記憶がないから、渡せるものがない。
自分の記憶や知識をどれだけ擬似コアに移植しても、決定的な何かが足りない。
エモーションの……感情エネルギーの力を使っていても、なぜ使えるのかはわからない。
赤ん坊がどうやって立ち上がったのか、いつ言葉を覚えたのか、自分ではわからないようなものなのだ。
なぜブラックにだけ、記憶があるのだ。
未来で何があったのだ。なぜ自分たちは生まれたのだ。エモーションとは、ジャークとは、そしてイバライガーとは何なのだ。
「……焦ってどうにかなることじゃない。エモーションの力は必ず応える。そう信じるしかないさ。それに……」
続く言葉を言いかけたとき、二人同時に振り返った。
『イバライガーR! この反応は……!?』
「ああ、ジャークだ。しかも、この場所は……!!」
正面を突破された。
このPIAS基地は、ゴースト程度の攻撃なら何体が押し寄せても十分に対処できる。
だが、攻撃は内側からだった。
黒い霧が換気配管を通じて侵入し、ゲートを制御するスタッフに取り憑き、ジャーク化させたのだ。
むろん、そうした箇所にもエモーション・ネガティブを探知するセンサーはセットされていたが、あの霧はポジティブに擬態できるらしい。
シンから報告は受けていた。にもかかわらず、後手に回った。
イバライガーの存在を公表し、あいつらが大っぴらに活動できるようになったが故に、こちらはバックアップや事後処理が中心となりつつあったことも、セキュリティ強化が遅れた原因の1つだろう。
研究自体は継続されていたが、前回の事件で、現在のPIASではゴーストはともかく、幹部クラスのジャークには対抗できないと判断された。
PIAS開発のための予算の一部も削減され、イバライガーたちの新基地に回されていた。
ジャークの脅威がある以上、それは止むを得ないことだったが、ソウマは納得してはいなかった。
オレも戦えるはずだ。
誰にも報告していないが、シンがPIASを装着したとき、それまで以上のパワーが出ていた。
つまりPIAS自体は、今の状態でも十分にジャークに対抗できるはずなのだ。
何かの理由で、本来の性能が出せていないというだけだ。
ならば、それをこそ研究すべきだ。PIASさえ完全に稼働できれば、ヒューマロイドや民間人に頼らなくてもジャークは殲滅できる。
振動が伝わってきた。まもなく、この部屋に侵入してくる。
緊急警報は、周辺地域はもちろん、国のトップレベルにまで伝わっているはずだが、援軍は期待できない。
通常戦力がどれほど集まったところで、ジャークには対抗できないのだ。当てになるのは、イバライガーたちだけ。
奴らは来る。
ここが襲撃された瞬間に察知したはずで、シンたち人間はともかく、ヒューマロイドは、5分とかからずに駆けつけてくるだろう。
だが、ソウマはそれを待つ気にはなれなかった。
カプセルに入る。インナースーツは普段から装着済みだ。
内部をNPLが満たしていく。
わからない何かがあるのなら、実戦でそれを掴んでやる。
感情が奴らの、そしてPIASのエネルギーだというのなら、好きなだけ使うがいい。
俺に力をよこせ。ジャークを、イバライガーたちを超えさせろ。
バイザーがONになり、視界がひらけた。
研究室の壁に、亀裂が入っているのが見えた。
そこに向かって、ソウマは走った。ブレードを展開し、壁ごと切り裂く。
壁の向こう側から、ゴーストの悲鳴が聞こえた。
亀裂から、無数の触手が伸びてくる。後方に飛んで躱した。着地の瞬間には、両手に銃を構えていた。
フルオートで撃ち抜く。十数発のMCB弾が、さらに数千の散弾となって、触手をミンチと化しつつ壁を貫いていく。
再チャージのために銃をホルスターにしまうと同時に、ボロボロになった壁が崩れ落ちた。
「ふふふ、お上手よ。手馴れた戦い方……。そういうトコはシンより上ねぇ」
予想していた声だ。
前回は、コイツにやられた。
忘れろ。あの時は女の姿に油断した。今は違う。外見に惑わされるな。
コイツは化け物だ。ゴーストどもを遥かに上回り、イバライガーにも匹敵する怪物なのだ。
さっきまでのような攻撃は通用しない。あの力を、シンが使ってみせた力を引き出せなければ勝てない。
ソウマは、必死で心を静めた。
俺の感情など、全てくれてやる。力をよこせ。この女を殺せる力を。
「……感じるわ。いい覚悟ね。その怒り。憎しみ。私たちジャークにふさわしい……」
ルメージョの言葉とともに、PIAS内部のNPLが変色し始めた。
透明だった液体が、黒く変わっていく。
なんだ、これは。あの霧か。侵食されている?
「この間はオモチャだなんて言って悪かったわね。謝罪するわ。そのPIAS、そしてあなた。どちらもとても魅力的よ。ジャーク最強の力……その依り代としてね……」
依り代、だと?
まさかPIASに取り憑くというのか。このオレごと?
ソウマは絶叫したが、その声は黒い液体に飲み込まれた。
『見えた。だいぶやられているようだ。目標まで、あと8秒。このまま突入する!』
「了解! けど、オレたちが着くまで無理はするなよ。ミニライガーはいないんだからな!」
『わかってるわよ、シン!』
通信を切った。ワカナはかなり無茶な飛ばし方をしているが、それでも先行するイバライガーRとイバガールより、数分遅れる。
その数分が、命取りになりかねない。
「カオリ、他の反応はないか!?」
「ひみゃのほほろは……ふめぇひょはいふのははひはいはいふぇふは……」
「今のところは……。ルメージョがいるのは間違いないです……だって」
運転しながらワカナが翻訳した。
ワゴンの後席でモニタリングしているカオリの口の中には、たこ焼きが詰まっている。
喋れないレベルにまで詰め込んでいるということは、それだけ必死だということだ。
カオリだって、それなりの戦いを見てきた。
それが、こんなに早く呼吸困難レベルになっている。かなりヤバい状況だ。
「ひょへと……こにょ反……応……は……恐らくはあの黒い霧だと思いますぅう~~」
途中から、たこ焼きを飲み込むのに成功したカオリが応える。シンは、ちょっとホッとした。
「わかった。とにかく反応に注意していてくれ」
通信から1分が過ぎた。すでに戦いは始まっているはずだ。
ミニライガーたちも、初代イバライガーとの接続を解除して出撃準備に入っているはずだ。
準備でき次第、マーゴンが連れてくることになっている。
ミニライガーとの接続を切れば、初代はまた危篤状態に戻りかねないが、今は他に手はない。
あの霧。そしてルメージョ。
もしかしたらダマクラカスンまで出てきているかもしれない。
四天王クラスが、同時に3体。
考えただけでも全身が総毛立つ。
ガール対ルメージョ、R対ダマクラカスン。
その他のゴーストや戦闘員は自分とワカナで引き受けるにしても、黒い霧の力は未知数だ。
全力を尽くして、なお足りない。
それでも行かなくてはならない。見捨てるわけにはいかない。
2分。拳を握りしめた。
「きっと来るわよ。アイツが気づいてないわけがないし、むしろ、すでに動き出していると考えたほうが自然よ」
前を睨んだまま、ワカナが言った。
その通りだ。イバライガーブラック。奴も必ず現れるはずだ。
味方になってくれるとは言い切れない危険な奴だが、援軍として期待できる力はブラックしかいない。
3分。煙が見えた。
今すぐドアを開けて飛び出したい衝動に駆られながら、シンはじっと前を睨んだ。
ED
現場は静かだった。
イバライガーRとイバガールは、建物にゆっくりと近づいていった。
ゲートが折れ曲がっている。それにしがみつくように職員が倒れていた。
そっと触れると、腕がおかしな方向に曲がった。骨が、砕けている。
あの霧に取り憑かれて、ジャーク化した証拠だ。
常人の何倍ものパワーを出せるようになるが、人間の身体はそのパワーに耐えられずに壊れてしまうのだ。
今は、意識がない。霧も体内には残っていない。
だが、周囲は濃厚なジャーク反応に満ちている。反応が強すぎて察知しにくいほどだ。
ひしゃげたドアが、揺らいだ。
影に、何かがいる。
身構えるRとガールの前に、赤黒く変色したPIASが現れた。
次回予告
■第19話:超時空からの使者
(アザムクイド変異体、ミニライガーR、ハイパーイバライガー登場)
TDF隊員ソウマのPIASがジャークに取り憑かれて、最大最強の四天王「アザムクイド」が復活しようとしている! ソウマを助けてアザム復活を阻止するために戦うイバライガーたち。そのピンチに、ついに初代が目覚めて……!!
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!
※このブログで公開している『小説版イバライガー』シリーズは電子書籍でも販売しています。スマホでもタブレットでも、ブログ版よりずっと読みやすいですので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです(笑)。









うるの拓也












