小説イバライガー第17~18話/筆者コメンタリー

2018年4月28日

 小説イバライガーの17~18話に関する筆者コメンタリー。
 濃いエピソードが続いたので、息抜き的なお話にしたのが17話。主人公たちの環境が変わるので、日常を描写しておかなきゃならないしね。
 それに今後のことを考えると、このへんでミニライガーRとミニガールを登場させておかないと先々で困っちゃう。あまり先送りしてると登場後の扱いがぞんざいになりかねないし。

目次

第17話コメンタリー

制御しきれなかった

元々はここで格好良くクロノブレイクを決めさせてあげるつもりだったのだけど、単なる大技ではなく、文字通りの必殺技として設定し直したせいで、そういうわけにいかなくなった。だって決まっちゃったら復活したばかりのダマクラカスンがいきなり退場ってことになっちゃうんだもの。そんなわけでRさんには悪いけど、必殺技初登場は空振りということに。
でも空振りしたならダマさんは元気ってことになっちゃうわけで、アレコレ悩みまくった結果、その後の流れに大きく影響する意外な展開に……。いやぁ、基本的なプロットは固めてから書いているというのに、ちょっとしたことで歴史って大きく変わっちゃうものなんだなぁ(笑)。

傷ひとつないRの横顔に、次々とフラッシュが……

ここはイバライガーショーの後に毎回行われているグリーティングそのものなシーン。実際のイバライガーたちもサービス満点で、大勢のファンの一人一人に応えて握手したりサインしたり記念写真を撮ったりを行っている。この小説版ではイバライガーは本当に実在するという設定(いや実在するんだけど設定通りのヒューマロイドとして、という意味ね)なので、ショーの世界とは若干違うのだけど、こういうシーンはどこかに入れたかったんだ。

パニックを抑えるための超法規的措置

前回の事件はそれまでと違って大っぴらで、大勢の目に触れる事件として描いた。いつまでもコソコソしているとスケールの大きな話を描きづらかったので、今後のために大事件にせざるを得なかったの。そして、そうなるとジャークだのイバライガーだのの存在が公表されちゃうことになるのは必然なので、そしたらどうなるかを考えて、こういう展開に。でも、このへんの流れは執筆開始前に考えていた通りだよ。
なお、Rがガールの応対に「そんなポーズどこで覚えた?」とツッコむのは、以前にイバライガーのグラビア用撮影会をやったときにスタッフの一人が口にしたセリフ。いや本当に色っぽいポーズしてたんだよね(笑)。

代金がTDF持ちだとわかった瞬間……

このへんは作者の妄想。一度でいいからお金を思いっきり使ってみたいじゃん。リミッター完全に外してやりたい放題してみたいじゃん(笑)。

NPLプール

14話で登場したPIAS用設定の1つ「ナノ・パーティクル・リキッド」は、その場の勢いで生まれただけのものだったんだけど、意外に応用が利きそうだと思えたので、レギュラーな小道具として使っていくことに。
イバライガーたちは自己修復できるけれど、腕1本が一瞬で再生するといった描写は避けている。修復はできるけれど、人間が怪我を治すよりもちょいと早いという程度だと考えているの。だって一気に失った腕を元通りにするとなると、どう考えても周囲から必要な元素とかを集めてきて、それらを組み上げなきゃならないでしょ。それってトンデモないエネルギーが必要なはずなんだ。もし元素合成だったら放射線とかも出てしまう。
そういうわけで急に腕が生えたりっていう描写はできないんだけど、その手のシーンはカッコいい。なんとかして、やってみたい。そう思って、このNPLを使うことにした。こいつさえあれば、そうした描写も可能になると思うから。今後、NPLを使ったブラックの荒技なんかも出てくる予定だよ。

イバライガーの存在自体が社会にとって脅威

そうなるはずだ、と思う。イバライガーがどれほど正義の心を持っていても、社会は彼らを恐れるはずだと。
ただボクは、彼らが迫害されるシーンなどを描こうとは全く思っていない。そのためもあって超絶の力を持たせた。迫害しようにも強すぎて取り押さえようがないレベルの力の差を持たせることにしたの。
もちろん、それで根本的な解決はしない。物語の最後に、全てが終わった後に、この問題は必ず残ってしまう。そのときどうするかは一応決めてあるのだけど、その構想通りになるかどうかは終わってみなくてはわからない。
ただ、どういう答えにするにしても、イバライガーたちや読者を不愉快にさせるようなことにだけはしないと決めてるよ。そんなの、誰よりもボクが嫌だから。

つい先日まで農業関係の研究施設だった場所

元々は、以前と同様の小さな隠れ家になるつもりで書き進めてきたのだけど、実際に書く段階になったら、かなり大規模な施設ということになった。
すでに彼らは政府から見ても重要人物だし、実際にジャークの脅威が実在する以上、金に糸目はつけないレベルで対応してもらえるに決まってると思ったからだ。なので、つくばにたくさんある研究所の1つが居抜きでシンたちに提供される、ということになった。
どの研究所かは劇中で明確にしていないけれど、今後、基地内を詳しく描写しなきゃならないので、自分がよく知っている場所の1つをモデルにさせてもらった。ボク、研究所等でいくつかの科学漫画を連載させてもらってたので、打ち合わせや取材で何度も訪問したことがある施設にしたの。お世話になったのに接収してしまってごめんなさい(笑)。

位置情報サービスを利用したモンスターを捕まえるゲーム

もちろん、アレだ。流行した当時、ボク自身はスマートフォンを持ってなかったのでプレイしたことはない。でもカミサンがやってるのを横目で見てたし、一番旬な時期には、公園や各種施設などでスマホ見ながらうろつき回る人を何度も見たし、実際に、あのゲームのせいで研究施設に侵入してしまう人もいて対策も考えられていたことは知ってるので、ネタに利用させてもらったの。

キョンシー?

若い人はピンと来ないかもしれないけど、ようするに中国版ゾンビだ。かつて『霊幻道士』という映画がヒットして、そのスピンオフのテレビドラマ『来来(らいらい)キョンシーズ』というのも人気番組になったことがあったの。
キョンシーというのは動く屍体で、死者に線香を供えなかったりするとキョンシー化して襲ってきたりするらしい。両腕を前に伸ばして、ピョンピョンと跳ねるような動き。ただし、顔に道士のお札が貼ってあると大人しくて、道士の命令に従う。ミニライガーたちにはお札が貼ってあるので、大人しいほうのキョンシーごっこだよ。

八つ墓村か

八つ墓村は何の関係もない。ミニライガーたちがキョンシー役ならイモライガーは道士役のはずなんだけど、何か間違えているらしい。

バリボリはカットして翻訳しろよ!!

カオリが口いっぱいに頬張っていても言葉が通じるのはワカナだけらしい。ミョーな特技を持たせてしまったものだ(笑)。

科学者にも幽霊をバカにしたりはしない人は多い

これは本当。漫画の仕事を通じて大勢の科学研究者と出会ってきたけど、幽霊などのオカルトを頭ごなしに否定する人には出会ったことがないし、逆に霊を見たと告白してくれた人までいた。むろん、ほとんどの人は信じてはいない。オカルトの大半は、もっと合理的な解釈で説明できることが多いからだ。ただ、合理的解釈が可能だからといって、それ以外の可能性を否定できるわけじゃないので、わからないことはわからないとしか言わないのだ。
そういうわけで、ボクが出会った方々は非科学的なことでも非科学的というだけでバカにしたりはしなかったよ。いい人たちに学べたなぁと思ってる。

ピラミッドパワーが乱れる

ますます若い人にはわからんネタだろうなぁ。昔、流行ったのよピラミッドパワーってのが。それこそ『月刊ムー』的な雑誌で何度もネタにされてたのよ。

君にはアレが博士に見えるのか!?

このセリフは前触れもなく、いきなり飛び出した。この辺りの展開で悩んで、いくつかのパターンを書いてみたら、その中でいきなりイバライガーRが言い出したって感じだったの。で、このセリフで以降の展開が大きく変わった。ここまでの流れも変わった。このセリフが出てきたので、一度ここまで書き進めていたものを全部捨てて、冒頭のダマクラカスン撤退の理由、幽霊騒ぎなどを書き直していったんだ。

ケーブルによるダイレクトアクセス

実際のステージショーにも稀に出てくるダメージ版初代イバライガーは、本当にかなりのダメージを受けている痛々しい姿だ。この小説版では片腕がもぎ取られたことになってるので、さらに痛々しい。そして動けない。執筆前にイメージしていたときは、救出された後はすぐにダメージが修復される予定で考えていたのだけど、それは途中でやめた。いくつか理由はあるんだけど、大きいのは作劇上の理由と、設定上の理由の2つ。それについては20話以降のコメンタリーで。

Rが、特異点の中で掴んだもの

この霧の正体は次回の18話で予想され、19話でかなり確実になり、24話あたりではっきりして、実際に本体を得て姿を見せるのは30話近くまで引っ張ることになると思っている。まだボンヤリだけどラスボスにもつながる重要キャラだからね。

 

第18話コメンタリー

慌てて赤ちゃんを抱っこして、もしも転んだら大変

いや本当にね、転んだら大変だと思うんだ。こういうときにはパニックを起こさないように声をかけてあげなきゃって思うんだ。

ただの戦闘員じゃない

イバライガーのステージショーには、様々なタイプの戦闘員が登場する。基本は緑色の全身タイツだけど、赤いのや黒いのや黄色いのもいるし、子供のジャークまでいる。
この小説版では、いわゆる怪人や戦闘員たちに固有のキャラ付けを行っていない(ガチストリーリーでそれをやるとギャグになっちゃうんだよね)ので、ステージ同様には描いていないのだけど、こういう部分でチラチラとステージからのフィードバックも入れておきたいんだ。

ガールと一緒に練習した合体技

大気中では急激に減少してしまう感情エネルギーをケーブルを通じて直接イバガールに送り、ガールの出力をアップさせるという技。こういうこと、やると思うのよね。ちなみに、エターナル・ストリングスという技名は、たぶん即興。ちゃんと考えてたわけじゃなくて、その場でソレっぽいのを思いついたから言ってみたというだけだと思う。こういうときに呼吸が合ってしまうのがワカナとガールなのだ。

守るために戦っているんだ

さらっと言ってるけど、このセリフは、このイバライガーの物語でとても重要。テーマそのものと直結している大事な要素なんだ。

毒づきながらスマホをポケットに……

出動中のシンやワカナはイヤ・レシーバーをつけているけれど、普段まで付けているのはうっとおしいから、出動していないシンはスマホ、というわけ。でも、いつ何があるかわからない状態が日常でもあるのだから、常に情報共有状態なのだろうとも思う。イバライガーたちはなおさらで、まさにWiFi常時接続になってるんだろうなぁ。

イバライガー専用の湯治場みたいなもの

いや、当初はね、もっとカッコイイ施設だったのよ。実際に書き始めるまで、そのつもりだったのよ。でもマーゴンが勝手に……。とはいえ、結果的にこのほうがイバライガーらしい気がする。ヒューマロイドたちが、どうみても銭湯で傷を癒している図というのが、彼らには似合ってる気がするんだ。そういうシーンでもサマになるのがイバライガーなのよ(笑)。

アヒルちゃん

マーゴンならやるよな、と思って浮かべたアイテムなのだけど、この後、意外に引っ張った(笑)。

オレたちの手で造られる最初のイバライガー

ステージショーに登場する主要キャラで、この時点までに出てきていないのは、ミニライガーR、ミニガール、ハイパーイバライガー、ブラットイバライガーの4体だ。
このキャラたちは、これまでのイバライガーのように未来から来るわけじゃない。前にも書いたけど、そうそう都合よく未来から援軍が来たら、ご都合主義すぎて緊張感も何もなくなってしまうからねぇ。かといって、現代の技術でイバライガーが造れてしまうというのもイマイチだ。また、イバライガーブラックがミニブラックを生み出したのと同じ手段を何度もやるのも興ざめだ。
なので、それぞれがどのようにして登場するかは苦心した。
その最初の1人が、このエピソードで登場するミニライガーRなんだ。

いつもガールはワカナを抱っこする

たぶん、シンも抱っこされている。どう考えても人間業では、溢れかえるマスコミをかわして絶対に追跡されないように撤収するとか無理だと思うし。ヘリとか衛星とかで追跡されたら逃げるの難しいだろうけど、恐らく民間のヘリは飛行禁止になってるだろうし、衛星は……う~ん、どうしているんだろう? 何かのジャミングでゴマかしているのかなぁ? いや、こんだけの事件が各国にバレないわけがないんだから、水面下では世界規模で様々なことが起きているはずだもんねぇ。そっちをネタにしてスピンオフのエスピオナージ小説が書けちゃうな(笑)。

ミニライガーたちが本来の役目に立ち返るのは当然

いや別に当然ってもんでもないんだけどね。
元々、初代イバライガーは、Rやガールやブラックの出現は予期していなかったわけで、だからこそ3体ものミニライガーを連れてきたのだろう。でも今はRたちがいるので、初代だけに集中しなくてもいいはずなんだ。みんなのバックアップでもいい。
ただ、ミニブラック、ミニR、ミニガールは、他のミニライガーとは別物なんだよね。ミニライガーはミニライガーというサブ・ユニットだけど、ミニブラックやミニRは「小さいイバライガー」なんだ。便宜上ミニライガーと呼ばれているだけで、実は別物。そう考えないと筋(特にミニブラックが存在する理由の)が通らないと思ったので、この小説版ではそういう扱いになってるの。

そこに立つはずの自分の分身は、まだいない

この18~19話でミニライガーRが登場するけど、ミニガールはその次のエピソードで出てくる。しかもステージショーの世界では、ミニガールを生み出したのはイバライガーブラックということになっている。バックアップシステムを持たないという弱点を突かれ、イバガールが絶体絶命のピンチに陥ったときに、ブラックに抱かれて奇跡のように登場したのがミニガールなんだ。
しかも、そのときのショー・シナリオを書いたのはボク。
なので、この小説版でも同じ設定を踏襲することになる。それを考慮してショーのシナリオを書いていたんだから。もうちょっと待っててね、イバガール。

MLR-P01

これは博士たちが仮につけたコードで、あまり意味はない。最初はマジックで殴り書きでもいいかと思ったんだけど、それではあまりにミニRが可哀想なので、ちゃんとした刻印にした。

新たなイバライガーを生み出す……

その場だけの思いつきだったNPLを、こういうふうに応用してみたの。現代の技術でイバライガーと同等のヒューマロイドを組み上げるのは、きっと難しいと思ったの。どう解析しても、今の技術ではカバーできない部分があるんだろうなぁと。だけど何とかしなきゃならないので、こんな方法を考えたの。

ちっぽけなものに邪魔された

前回の戦いでは、ブラックの登場が鍵だった。土壇場でオイシイところに現れて、全てをひっくり返す一撃。いかにもブラックらしいのだけど、策士であるルメージョが、ブラックがそういう奴だというのを計算に入れてなかったというのは、どう考えてもおかしいんだよね。
なので、ルメージョの中にいる『ナツミ』が何かをしたんだと考えた。第1話以来ず~っとルメージョ状態だけど、戦ってるのよ、ナツミちゃんも。

ある意味で、より純粋なジャーク

「ジャーク=エモーション・ネガティブに取り憑かれた者」ということでやってるわけだから、エネルギーそのものがジャークの本体なわけだ。前にも書いた気がするけど、こういう「意思を持つエネルギー」ってのはSFによく出てくるアイデアで、でもボクは、むしろ我々のほうが「肉の身体を持つエネルギー」というような考え方でやっているところがある。
科学漫画連載のために素粒子物理学をちょっとだけ学んだとき「エネルギー保存則=我々も含めて万物はエネルギーが形を変えたもの」が印象に残ったんだよね。これ、当たり前といえば当たり前なんだけど、今まであまり意識しなかったんだ。
でもそれは、そこらのモノだって生き物だって何でも元々はエネルギーだってことなんだよね。しかも宇宙には、そのエネルギー的な状態のほうが遥かに(そりゃもぉ圧倒的に)多い上に、エネルギーと表現されているものの多くも実は物質なんだ。ビームなどは物理攻撃とは別に考えられているけど、あれも素粒子などをぶっ放してるわけで、その素粒子は物質の最小単位なんだから、やはり物質。物理で殴るとか言うけど、本当はビームで撃つのだって物理で殴ってるのと同じなんだ。
だから、ボクらが生命=意識のあるモノとして考えるイメージとは全く別の意識を持つモノがあってもおかしくないのでは……というか、そっちのほうが宇宙スケールではディフォルトだったりしないのかなって思ったりするの。ジャークって、そういう存在として描いてるんだ。

イバライガーの幽霊

ようやく出てきたアレ。ステージショーでも年に1~2度くらいしか出てこないレアヒーローのアレ。詳しいことはまだ語らないけど、アレだよ(笑)。

イバライガーRに欠けているもの

いや本当は欠けていないんだけどね。覚えてないだけで失ってはいない。でも、まだRは、そのことに気付けないんだ。しかもRは真面目すぎるから……。

私たちジャークにふさわしい……

ソウマくんがジャークに取り憑かれるというのは、ここまで書いてきて即興で思いついたこと。彼の今後の運命を考えると、一度くらいはこういう目に遭っておいたほうがいいと思ったの。彼はとても重要なキャラなんだ。

四天王クラスが、同時に3体

いきなりオオゴトにしてしまった。そこまで考えてなかったのに。どうしよう?

 


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