打ちあわせや営業に行くときの恰好で工夫していること
フツーの恰好でいいと思うよ。
一応は相手に失礼のない恰好がいいと思うので、パジャマ姿やジャージで行くのはどうかと思うけど、別にスーツをビシっとキメていかなきゃいけないってモンでもない。
つ~か、そんなビシッとした制作者さんって、会ったことないや。
ただね、それなりの恰好をすると、ホンのちょっとだけラクになるとも思っている。
ボクがそう思ってるだけで、実はどうでもいいコトなのかもしれないけど。

フツーでいいけど、ボクはフツーじゃない道を選んだ
ボクは、ある時期から髪を伸ばし、ポニーテールにして、作務衣を着て、雪駄を履いて……というスタイルにした。
最近知りあった人にしてみれば、ボク=ポニーテールをすぐに思い浮かべると思うけど、元々は全然フツーだったのよ。
自分が髪を伸ばすなんて考えたコトもなかった。
ましてや、ちょっと油断すると飛天御剣流が撃てそうなくらいにまで伸ばすなんて。
そうするようになったのは、それ以前の、フツーの恰好をしていた当時、客先で気になってたコトがあったからだ。
ボクが本当に漫画家かどうか、お客が心配しているような反応を示すことがけっこう多かったんだよ。
そりゃまぁねぇ、漫画家だって人間だからフツーの恰好に決まってるんだけどね。
耳から墨汁出したり、爪がGペンになってたりはしないよ。
でもお客にしてみると、漫画で広告するなんてのは特別すぎるコトなんだ。
だからアポイント取った時点で「漫画家が来るぞ」って思ってる。
漫画家に会うなんて、滅多にないことなんですよ。
我が社にパンダが来るくらいにレア。
ところが実際に現れるのは、ドコから見てもフツーの、というより頼りがいがなさそうな奴でしょ。
コイツ、本当に漫画家なのかって、不安に思っちゃうようなんだ。
それで根掘り葉堀り聞いてくる。
色々ツッコまれる。
コイツは漫画家なんだ、プロなんだ、任せていいんだと納得するために、色々聞かずにいられない。
まぁ当然の心理だよね。
自分の会社の大事な仕事を任せるんだから、得体のしれない「自称漫画家」じゃ安心できない。ましてボクは有名人でも何でもないし、すっごい実績があるわけでもなかったから、なおさら。
ボクはそれに1つ1つ答えていくのだけど、答えながらも「不安から仕事が始まるのって、あまりよくないよな~」と、いつも思っていたんだ。
ちゃんとやっていれば、その後の仕事ぶりで不安は解消できるんだけど、お客は漫画の出来自体の良し悪しはわからないから、納品までの段階では、まだ不安が消えてないんだよね。
依頼者の不安が解消されるのは、その漫画広告を実際に使ってみて、一定の成果を感じてからなんだ。
つまり終わっちゃってから、ようやく気付く。
なので、ちゃんとやれば次からは問題ないんだけど、最初の時はお客は不安を抱えたままになりがちなのよ。
そういう状態だと、色々やりづらいんだよね。
不安だから色々ツッコミも多くなる。
でも、そのツッコミは素人考えのズレたものであることが多くて、むしろ仕事を引っかき回すだけ。
任せるしかないんだから任せてよって思うんだけど、心配に思われているから任せきってもらえない。
なので、そういう不安を少しでも和らげられないかな~と思って、ボクは「漫画家のコスプレ」をするようになったんだ。
フツーじゃなさ=漫画家コスプレの効能
それが、ポニーテールで作務衣で雪駄なスタイル。
それほど奇抜じゃないけれど、少なくともフツーの会社員のハズがないっていう姿にしたの。
ひと目でカタギじゃないとわかるっていうか。
そういう奴が、ペッタペッタと雪駄を鳴らして会社に入ってくる。
それだけでフツーだった日常が、フツーじゃない空間になってしまう。
なまじ普段見慣れている場所だからこそ、そこに居るハズのないモノが居ると、異次元になっちゃうんだ。
受付のオネーサンも、デスクのオニーサンも、課長さんも、部長さんも、社長さんも、一気にフシギ時空に引きずり込まれちゃう。
すると、打ち合わせもスムーズなんだよ。
なんせ場所がドコであろうが、すでにボクのフシギ時空なんだから。その場の空気を自分色に染めちゃってるようなモンなんだ。
相手は「何かフツーじゃない人来た!」って思っていて、その「フツーじゃなさ=漫画家」ということで納得しやすくなってるんだ。
一方、ボク自身も、コスプレして「そういうキャラ」になっているから、自分のペースで堂々と喋れる。
だから自信がありそうに見えて、最終的に「プロにお任せします」「うむ、吉報を待っていてくれたまえ。わっはっは」的な展開になりやすいってわけ。
で、そうなると、その後も自分のペースでやれて、意見も聞いてもらえて、そのおかげで良い結果につながりやすくなって……と、色々都合がいいの。
ボクにも、お客にも。
なのでボクはコスプレで、フシギ時空に引きずり込んでいるんだ。
こっちはパワーアップ、相手はパワーダウン。
相手が宇宙刑事でない限り、そうそう負けないでしょ。
ポニーテールは、けっこう邪魔なんだよね。
短く伸ばしてる程度じゃギョーカイに大勢いそうだから、ボクはかなり長くしたんだけど、洗うのは大変だし、油断してるとトイレで便座に座るときに巻き込みかねないし、うっかり縛りを解くと落ち武者みたいになっちゃうし。
松本零士キャラの陰の苦労が初めてわかったな。
まぁ、漫画家のコスプレなんだから、ベレー帽をかぶるとかね、そういうのでもアリかもしれないし、胸にガンダムが描かれたシャツ着て、アニメ缶バッジがいっぱいで萌えイラスト入りのバッグ持っててもソレっぽいかもしれないんだけど、前者だとモデルが大御所すぎて恐れ多いし、後者だと別な意味で不安にさせちゃう気がするので「漫画家=職人」と見なして、そういうコスプレにしたのよ。
あ、そうそう。
ビシッとキメ過ぎないってのも、かなり気にした。
つまり、どこかダメな部分、隙を作るって感じにしたいと思ったんだ。
漫画の仕事って専門分野すぎるんだよ。
一般の人は何もわからないから、とにくボクが仕切るしかない。
極論すると「黙って言うこと聞いて」ってコトになっちゃうんだ。
けど、お客にしてみたら、自分がカネ出してるのに何でも言いなりって、ちょっと面白くないと思うんだよね。
何を言っても「ソレはこう、アレはこう」って言い返されちゃうとコンチクショーって感じやすい。
しかも相手がキチッとスーツ着て、キレ者っぽく眼鏡をクイッとやりながら喋ったりすると、ますますコンチクショーに感じるんじゃないかなぁ。
こっちのほうが頭いいんだからバカは黙ってろ的に感じちゃうんじゃないかなぁ。
皮肉の1つも言いたくなるんじゃないかなぁって。
だから、ズッコケようと思ったの。
ほらほら、ボクってダメな奴でしょ、決まってないでしょ。
でも、そういう奴だからこそ、この特殊なジャンルではトンガってるんですよ。
特殊な領域を離れたら、ボクなんかウンコ漏らしのダメ人間なんですよ。
マトモな世界では、あなたの足元にも及ばないんですよ。フシギ時空の生き物なんです。
で、今はフシギ時空の仕事なんで、カタギの人に向かないのはアタリマエなんです。
だから安全なトコに下がっていて欲しいんですよ。
あなたまでフシギな生き物になることはないんですよ。
そういうコトをスタイルで伝えようと思ったわけ。
ボクが仕切っても、フシギ時空だから仕方ないとあきらめてもらうために。
そんなわけで「漫画家っぽくて、失礼すぎなくて、でも真っ当な世界ではダメっぽい恰好」って考えて「ポニーテールで作務衣で雪駄」にしたんだ。
むろん、こんなコケおどしで何でもすっきり解消できるとは思ってないけど、ホンのちょっとだけの効果はあるように感じている。
実際、コスプレし始めてからのほうがスムーズに仕事できてるから。
コスプレすることでボクのほうが変わったことを自覚してないだけの可能性も否定できないんだけど、それならそれで効果アリってコトだしね。
以前は、ボクが訪ねていっても、他の社員さんにまで振り返られるなんてコトはなかったし、多少関心を持った人でも「今のヒト誰?」ってなモンだったんだけど、今は「い、今の方、どなたですか!?」らしい。
すると後日電話しても「あのときの漫画家先生ですね」と、誰もが覚えていてくれたりもする。
それだけでもラクなんだよね。
そういうわけで、客先に出向く恰好は(失礼じゃなければ)何でもアリだとは思うけど、工夫してみることで、仕事を楽にできるかもしれないとは思うよ。
※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。









うるの拓也












