カソクキッズ25話:たまVSノーベル賞学者!!

トップクォークって本当にクォークなのか??
25話は、素粒子関連の知識についてのおさらいだ。
おさらいなんだから、基本的にはここまでに描いたことがベースになってるんだけど、まぁ、同じことの繰り返しだけじゃ面白くないので、いくつか新しいネタも組み込んでいる。
そのために、小林誠博士に登場してもらったの。
キッズたちは知らないことは喋れないし、フジモト&タカハシ博士は「ここはキッズたちに発表させる場」ということをわきまえてるはずだから余計な口出しは控えるだろうし、となると乱入者がいないと新ネタを出しにくいもんね。
(「じん」あたりだと無謀な暴走をしてくれるから、そこにツッコむ形で博士に新ネタ喋らせやすいんだけど、今回のメインは「たま」で、彼女は普段ボケていても実際にはそれなりに理解できてる子なので、小林博士くらいの乱入でないと知らないネタに引っ張れないんだ)
で、小林博士に持ち込んでもらった新ネタが、素粒子(クォーク)の重さ(質量)。
ここまでにクォークは何度も登場したけれど質量については触れてこなかったので、ここで扱うことにしたの。
素粒子の質量は「GeV(ジー・イー・ブイ、もしくはジェブと読む)」で表す。
「GeV」はエネルギー量を表すものだけど、質量はエネルギーと同じものだからね。
で、8ページ目(単行本では5ページ目)でクォークそれぞれの質量が紹介される。
軽い順番に
アップ=約0.002~0.003GeV
ダウン=約0.004~0.006GeV
ストレンジ=約0.1GeV
チャーム=約1.3GeV
ボトム=約4GeV
トップ=約172GeV<参考>
電子=約0.0005GeV
陽子=約1(0.938)GeV
となっている。
…………………………。
トップ重すぎ!!
劇中でもキッズたちにツッコんでもらったけど、いや実際、質量違いすぎてビックリだよ。
同じクォークなのに、トップはアップの約6万倍も重いんだぜ。これで同じ仲間とか言われても……。
本当にクォーク理論って合ってるのか??

クォークの産地
25話では、先のクォークの質量と関連して「クォークの産地」というネタも出てきた。
約172GeVもあるトップクォークは、KEKでは作れなかった。
実際に発見したのはアメリカ・フェルミ研の加速器「テパドロン」で、1994年のこと。
その後、2010年頃からジュネーブのLHCでもトップクォークを作れるようになったけど、日本では無理。トップクォークを探していた当時よりずっとパワーアップした今のSuperKEKBでも無理だ。
だから、トップクォークはアメリカの特産品。
一方、KEKの加速器KEKBは、別名「Bファクトリー」と呼ばれるようにB中間子を中心に研究していて、ボトムクォークをたくさん作り出している。
だから、ボトムクォークは日本の特産品。
この特産品というのは、打ち合わせの際に本当に博士が言ったことで、素粒子でさえ産地で考えるのかとボクは驚いたもんだ。
あまりにも印象的だったので、漫画にもそのまま描いたの。
こういう感覚って、一般人はなかなか気づけない部分だからね~(笑)。

なお、劇中ではヒッグス粒子はヨーロッパ(スイス・ジュネーブ)の特産品になるかも、と書いているけれど、これも日本の特産品になるかもしれない。
実際にヒッグス粒子を発見したのはCERNの加速器「LHC」だけど、量産するには向いてないんだ。
ヒッグス粒子を量産するには、ILC=国際リニアコライダーがいる。
ILCは、まさにヒッグス粒子量産に都合のいいエネルギー領域に向けて設計される加速器で、これはまだ作られていない(2018年現在)けど、日本の東北……宮城県北端から岩手県にかけてが候補地になっている。
なので、もしもILCが本当に日本に作られることになれば、ヒッグス粒子こそ日本の一番の特産素粒子になるかもしれないのだ。
他にもILCでは、ダークマターの正体と言われている超対称性粒子なども発見できる可能性があるし、そうなると日本はまさに素粒子大国。
素粒子物理学は、世間一般の日常とは懸け離れた基礎科学研究だから、ぶっちゃけ「それがわかったからって何の役に立つのかわからない」なんだけど、何の役に立つかわからないというのは、それだけ世界を一変させちゃうようなスゴいものかもしれないということでもある。
電子の発見が現在の世界を支えているように、劇的に世の中を変えるようなものが素粒子研究から生まれてくる可能性は小さくないのだ。
だからこそ、ILCはぜひ日本に作ってほしい。
2018年は、ILC誘致を承認するかどうかを日本政府が判断する年だと言われているのだけど、この100年に1度のビッグチャンスを見逃さないでほしいなぁ。このことは、科学に興味のあるなしだけじゃない。次の時代のリーダーシップを取れるかどうかの話なんだから。
たま
この25話では、たまが中心だ。
「たま」は、元々おとなしい子として設定していた。頭はいいけど無口で引っ込み思案。友達もあまりいない。
当初は、そういうキャラのつもりで考えていた。
だけど、いざ描くとなったら、無口であるけど別に引っ込み思案ではないキャラになった。
一番最初のイントロダクションの段階では4人の中の1人に過ぎなかったんだけど、第1話では早くも一番目立つシーンを割り振られたりして、気付いたときには「周囲に振り回されないマイペースな子」になっていた。
今だと、ガルパンあんこうチームの「冷泉麻子」が近い感じ。あ、言っとくけどコッチのほうが4年以上先だからね、真似てないぞ。
で、そのたまが、このエピソードで大活躍する。
冒頭、いきなり電子を金魚すくい。
原子の中の電子は「電子雲」と呼ばれる状態になっていて、どこかにはいるけどどこにいるかは特定できないはずなんだけど、それを一発ですくっちゃうのだ。
さらに、原子核から中性子を取り出す。「強い力」でくっついている原子核から軽く引き剥がしてしまう。
その上、その中性子からクォークのアップとダウンを取り出してみせる。
科学的な解説をしつつ、科学的に不可能な行為のオンパレード。なんてカソクキッズの世界を理解した行動なんだ。頼もしい(笑)。
こういう描写は、たま以外には似合わない。
じんは、どんどん暴走して関係ない脱線になっちゃうし、ぽには大雑把すぎて細かいことは苦手だし、めがは理屈に囚われて飛躍ができない。
たまがいてこそのカソクキッズなのだ。
たまを、こういうふうに育てたのは、ボクじゃない。
もちろんボクが育てた部分もあるのだけど、一番の功労者は作画担当スタッフだ。
作画担当が生き生きと、たまを描いてくれた。
色んなアドリブで、ボクのシナリオにはなかった要素を生み出してくれて、それにボクが応じて、どんどん個性的なキャラになっていった。
こういうふうに、作者の思惑を超えてキャラクターが成長していってくれるというのは、とても嬉しい。
キャラが勝手に動く、というやつで、キッズたちは、まさにそれだった。
そういうキャラクターたちを生み出せた、出会えたというだけでも、描いてよかったと心から思えるんだ。
※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。









うるの拓也












