カソクキッズ1話:エネルギーの情報量
エネルギーってナニ?
イントロから続く第1話は「エネルギーについて」を扱う事になった。
ま、いいんだけど、そもそもエネルギーって何なんだ?
いや、だってさ、エネルギーはエネルギーでしょ?
スタッフ同士で話し合ってみたんだけど、答えは出ないんだよ。
給食の献立表に書いてあった「エネルギーになるもの」とかさ、そういうのが思い出されるだけで「エネルギーとは何か」はちっとも分からない。
でも、それでいいんだ。
ボクは自慢じゃないが、物理は赤点だ(ほんとに自慢じゃないな……)。
だから、分からない子供たちの気持ちが分かるっ!
そうだ、ボクは子供たちの代表として、KEKの専門家たちと会っているんだ。
アホっぽくても、バカだと思われてもいい。とにかく聞いてみよう!
というわけで、ミーティングの席で聞いてみた。
「エネルギーって、よ~するにナニ?」
列席の先生たちは、しばらく考えていて、こう答えた。
エネルギーとは「可能性」のことだ、と。
そうか! 可能性なのか!
………………。
うわぁああああああ!
もっと分かんなくなっちゃったよぉ!
なんなんだ、可能性って!?
い、いや、落ち着け! 説明を聞くんだ!
……………………………………。
……や、やっぱりイマイチ分かんない……。
……………………………………。
少し、分かった……。でも、まだピンと来ないなぁ。
ボクがバカだからかなぁ?
単に教えるというのではなく、目の前でプロフェッショナル同士の議論が展開されているのだ。
既知のことでも、その解釈、例え方などに関しては議論になっちゃう。
研究者は、そう簡単に妥協しないのだ。
カソクキッズの会議は、漫画の打ち合わせ、なんてもんじゃないのだ。
そういうシーンを見ているうちに、ボクにもボンヤリと見えてくる。
ボンヤリだから、わかったわけじゃない。
それでも、ボクも素人なりにツッコんでみる。
だって素人のボクが分からなきゃ意味がないんだから。
それにしても、トンデモない連載だ。
ボクがやってて……いいのかなぁ?
エネルギーってナニ?:その2
そういう打ち合わせを経て、担当の山中博士から「エネルギーについて」をまとめた解説文が届いた。
漫画のシナリオになるよう、会話形式でまとめられていて、ボケもツッコミもある。
科学者ってボケもウマイんだ!?
すげ~な、山中先生。
さて、そんな山中先生が書いてくれたノリノリの解説文。
ソレを読んで、やっとアタマが整理できた。
そうか、可能性っていうのは「エネルギー保存則」のことか。
物理が赤点でも、それは知ってる。
エネルギーは決してなくならない。
エネルギーは「物質」になったり「力」になったり「高さ」になったりする。
けれど「あり様が変わる」だけのことで、増えも減りもしない。
つまり、エネルギーは何にでも変わるってことで、それが「可能性」なんだ。
なるほどなぁ……。
でも……。
ソレはソレとして、漫画になるように、これをまとめ直さなきゃならない。
それは、すごくドキドキ。
漫画にするっていうのは、自分のコトバに置き換える事でもあって、ソレはボクの解釈に置き換えるっていうこと。
ボクの解釈が間違ってたら、全部間違ってしまうわけだ。
そして、ボクは本当に分かったわけじゃないと思うんだよな。
エネルギー=可能性という解釈については、わかったと思うんだけど、エネルギーそのものについて、しっかり理解できたとは言いがたい。
でも、描くしかない。
ボクが今回分かった事を、ボクなりに描くしかないんだ。
だから開き直って描く。
間違ってたら先生たちがツッコんでくれるだろうから、気はラクだし。
そうやって描いた「エネルギーってナニ?」のエピソードをKEKで披露した。
多少、セリフや解説文の直しは出たから花丸ではなかったけれど、赤点というほどヒドくもなかったみたい。
ああ、よかった。
適当な情報量って難しい
科学って、色々な事が相互に関係しあっている。
不思議の国のアリスみたいに、アレを知るにはコレを知ってなきゃ、コレを語るにはソレを先に言わなきゃ……といった具合にね。
エネルギーについて説明するために山中博士が作ってくれた解説に「仕事」に関する文章があった。
ここで言う「仕事」とは科学のコトバとしての「仕事」。
なるほど、エネルギーは「仕事」をするから、これは関連の深いモノだ。
でも……。
子供たちに限らず、人間は一度に多くのことを受け止める事はできないと思うんだ。
いくら関連があるからといっても、一度の情報量が多すぎると混乱してしまって、結局何も届かない、というコトになりかねない。
ボクなんか、学生時代に授業でやったことなんか、ほとんど覚えてないもん。
どんどん解説していくんじゃなくて、読者が受け止められるペースを読みながら、少しづつやらないと本末転倒なんだよな。
このエピソードのテーマは「エネルギーは様々なモノや現象にカタチを変えるだけで無くなることはない(=エネルギー保存則)」ということ。
コレをちゃんと伝えなきゃならない。
たったソレだけ、と思う人もいそうだけど、一般的な漫画では、ヒロインのピンチに主人公が駆け付けたシーンから始まって、敵役とニラミ合い、対決ムードがどんどん高まったところで「続く」なんてのも珍しくないでしょ。
この場合は「主人公登場!」というだけだぜ?
それで18ページ必要だったりするんだ。
カソクキッズの1話ごとのページ数は決まってないのだけど、それでも予算には限度があるし、こっちも限界を超え続けていたら死んでしまうので、好きなだけページを使えるわけじゃない。
ネット上では10ページ前後だけど、それはパソコン画面で見やすいように1ページを3分の2に分割して表示しているからで、通常のページ数では7ページほど。
ボケやギャグも十分に入れなきゃならない。
エネルギー保存則を語るだけでも足りない気がするのに「仕事」の話まで入れるのは大変なコトなんだ。
それじゃ、切り捨てていいのか?
いや、正しい理解に役立たないようでは、それこそ失敗以外の何モノでもない。
そうは言っても、無理に詰め込むのもダメ。
これは漫画だ。教科書じゃない。
知識を身につけるというより、科学への興味を引き出すことのほうが大事なはずだ。
科学ってめんどくせ~と思わせないようにしなきゃ。
興味さえあれば、他の解説書や教科書で十分学べるんだから。
どんどん加えていくのは簡単だ。
逆に、切り捨てていくのは、本当に大変。
でも、あえて切るっていうことをやっていかないと、全てを失ってしまうと思うんだ。
持ちきれないものを持たせたら、丸ごと捨てられちゃうもん。
結局、「仕事」はコラムとして、漫画本編とは切り離して掲載した。
関連はあるから、無視する事もできないしね。
誰かの頭の隅っこに、ちょっとだけ引っ掛かってくれたらいいな。
※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)
※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。