カソクキッズ2ndシーズン6話:スケールを支配する力(ミクロ編)

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まだまだ続く電磁気力の世界

 前回の5話で重力、電磁気力と、マクロなスケールで支配的な力を紹介してきたから、この6話(後編)では、残りの「強い力」と「弱い力」を紹介する……はずなんだけど、全ページの半分までは、ず〜っと電磁気力の話になってしまった。

 いやぁ、むりやりな屁理屈を考えてキッズたちに『ミクロの決死圏』をやってもらったんだけど、どんだけ小さくなってもず〜っと電磁気力のスケールなのよ。それで、強い力や弱い力が出てくるスケールに到達するまでに何ページもかかっちゃったのよ。

 

 もっとも……。

 弱い力は、すでに登場していたとも言える。

 電気力と磁力は同じもの、ということで電磁気力として統一されたわけだけど、実は電磁気力と弱い力も同じものとして統一されているのだ。これはワインバーグ・サラム理論といって、統一された力は「電弱力」と呼ばれている。

 だから、電磁気力の世界は、弱い力の世界でもあったことになるのだ。

 もっとも、宇宙が誕生したときには全てが1つになっていたはずだから4つの力の全部も1つのはずで、最終的には全てを1つとして扱える「大統一理論」が必要になるのだけど、それはまだ当分完成しそうにない。
 強い力はともかく、重力を1つの理論でまとめあげるには、時空どころか次元まで含めた理解が必要で、でも人類にはまだ、他の3次元以上の次元を認識したり、その仕組みを解析したりできる技術も知識もない。こうだったら筋が通るはずという仮説はいくつもあるけど、証明できないのだ。
 なので、今のところは4つの力を3つにできたトコまでなの。

 でも……とにかく、今回は強い力と弱い力のスケールまで行かなきゃならない。
 その「強い力」が出てくるのは、原子核の中くらいまで行ったときだ。

 

正確な比率の原子と原子核は描けない!?

 原子サイズでは電磁気力が強いけど、原子核ほどのスケールまでいけば、強い力のほうが大きくなってくる。

 ここでボクはキッズに「へ? 原子と原子核って、そんなに大きさ違うの?」とツッコんでもらったんだけど、これも本当に打ち合わせでボクが口にしたこと。

 いや、原子核が原子よりずっと小さいということは知っていたんだけど、どのくらい違うのかはわかってなかったのよ。実際に原子核と原子を見比べてみたことなかったからねぇ。バレーボールとビー玉くらいの差かなぁとか、ぼんやり思ってたわけ。だって解説イラストとかじゃ、そのくらいだったりするじゃん。

 でも……。

 原子が野球場だとしたら、原子核はパチンコ玉くらいなんだって。

 ということは……原子のスケールで描いたら原子核は小さすぎて見えない!! ていうか描写できない!!
 電子はもっと描きようがない!!(しかも、どこにいるかもわからない!)

 こりゃあ、正しいスケール比率で描くのは無理だわ……。

 原子の中は「原子雲」と呼ばれるスッカスカの真空で、その真ん中に原子核があって、原子雲の中のどこかに電子がいる(電子がどこにいるかは不確定性原理で特定できない)。
 これを野球場サイズに拡大して正確な比率で描いたとしても、原子核はパチンコ玉でしかないのだから、Aゼロくらいの紙でも収まらないだろう。電子どころか原子核でさえ、どこに描いてあるのか全くわからないはずだ。しかも原子雲は真空そのものなんだから、紙にはなにも描かれてないのと一緒。これが原子の絵ですと言っても、デカくて真っ白な紙があるだけになっちゃう。

 ……いやぁ、これほど大きさが違うとは思ってなかったよ。
 この世のどこにも「正しい比率の原子内部図」なんてものはないんじゃないかなぁ?

 もっとも、原子核スケールまで来ると光学的な方法で見るのは最初から不可能なんだけどね。
 このくらいミクロになっちゃうと、見ようとする対象が光の波長の長さより小さくなっちゃうので、光では見れないんだ。つまり、データ的な解析で「ある」と確認することが「見る」ってことであって、写真や映像のように見ることは決してできないんだ。

 ……それにしてもさぁ……野球場サイズのスッカスカの真空の中にパチンコ玉1個なんて、何もないのと一緒みたいなもんじゃん。
 つまり原子って、ドレもコレもスッカスカなわけじゃん?
 なのに、そのスカスカが集まると物質として触れちゃうって、なんかヘンな気がしない?

 素粒子とか量子とかの超ミクロワールドって、狸に化かされてるような気分になってくるよなぁ(苦笑)。

 

呪文が飛び交う超ミクロな世界

 そういうわけで、その後、原子核スケールまで行って、原子核も描いてみたのだけど、当然ながら単なるイメージであって本当はどうなってるのかは誰もわからない。つ〜か、見る、描くという行為自体が不可能なものなので、どんなふうに描いても「ソレっぽいだけで本当にはならない」んだよね。

 それに原子核って陽子と中性子の集まりではあるけど、集まった時点で1つの原子核なんで、小さい粒の集合体というのともちょっと違うんだと思うの。なんかゴチャっとしたものが絶えずブルブルと振動している、という感じなんだろう。いや、それもイメージでしかないんだけど。

 そして、その決して実物を見ることはできない世界こそが、強い力や弱い力のスケールなのだ。

 強い力、ってイマイチなネーミングだと思うんだけど、でも、これは本当に強い力だ。

 原子核の中では、陽子と中性子がくっついている。原子番号を陽子数とも呼ぶように、陽子がいくつあるかで原子の種類は変わる(本当はそれだけじゃないから、そんなに単純でもないんだけど今は他のことは置いておく)。
 でも陽子というのは、プラスの電荷を持っている。当然だけどプラスとプラスは反発しあう。磁石の同じ極同士をくっつけるのは超大変だ。弱い磁石ならともかく、それなりの磁石となれば、どうやってもズレちゃってくっつけられない。ましてや、その状態をずっと保つなんて無理。

 なのに、そのプラス同士をくっつけ続けるほどの力。
 それが「強い力」なのだ。

 ただ、それほどに強い力でありながら、その力が届く距離はすごく小さい。
 原子なんて大きすぎて無理。原子核の中の陽子同士くらいの、超ミクロな距離にしか効かないのだ。すげぇ強力だけど射程が異常に短いんだよね。

 ちなみに、この「強い」とか「弱い」ってのは、電磁気力を基準にして「それより強い/弱い」ということで、重力は全部の中で一番弱い。だけど重力が弱くなっちゃうのは力の大部分が別の次元に漏れちゃってるせいで、本当はずっと強いとも言われていて、どうもややこしい。個人的には面白いと思うんだけど、まだはっきりしないことだから、それを前提にして漫画描くわけにもいかんしねぇ(苦笑)。

 そして、いよいよ「弱い力」

 これは力といっても、他の力とは違って、ボクの印象では「魔力」みたいな感じ。
 粒子を他の粒子に変化させる力が、弱い力なんだ。
(射程は強い力よりも、さらに短いらしい。隣の人だけにかけられるモシャスみたいなもんか)

 ある粒子が生まれ、それが崩壊し、別の粒子に生まれ変わる。そういうことを延々と繰り返しているのが、この宇宙。
 崩壊とは別な粒子になることであって、それを司っているのが弱い力の相互作用なんだ。

 なので、それを語るシーンの博士たちは魔女っ子ぽく描いて、と作画担当にオーダーしたの。
 ボクがイメージしてたのは『魔法使いサリー』とか『魔女っ子メグちゃん』とか、新しくても『おじゃ魔女どれみ』ってトコだったんだけど、仕上がってきたのは『プリキュア』だった。いや文句は全くない。ボクのイメージが古いだけだから(笑)。

 でもまぁ、こういうのを描いちゃったこともあって、ボク的には素粒子の世界では常に「まはりく まはりた」とか「ぴぴるま ぴぷるま ぷりりんぱ」とか「ぴんぷる ぱんぷる ぱむぽっぷん」とか「ぴ〜りか ぴりらら ぽぽりな ぺ〜ぺると」とか、そういう呪文が飛び交ってるイメージになってしまった。
(やはり呪文が古いけど、すぐに諳んじられるのはこれくらいなのよ。魔女じゃなくてもいいなら「あぶどる だむらる おむにす のむにす べるえす ほりまく」とか「臨兵闘者皆陣列在前」とかも言えるよ)

 

マクロを知るにはミクロを見ろ!

 そんなわけで原子核……陽子や中性子のスケールまでを見ていった2ndシーズン6話だけど、その先のクォークサイズは、描きようがなかった。

 光学的に見れないってのは原子核でも同じだけど、クォークとなるとねぇ……イメージとして描くことすら困難なのよ。

 ほとんど大きさ自体がないし、どんな形に描いても「形状でイメージすること自体が誤り」ってことになっちゃうんだよね。普段の解説図では球体として描写してるけど、そもそも球体として考えるのも正確ではない(球なら内部があることになって一番根源的な物質ではなくなってしまう)し、超弦理論ではヒモだとも言ってるし、とにかく、どう描いてもNGな描写になっちゃうんだ。

 それでも概念の解説だけなら球でいいと思う(というか他に描きようがない)んだけど、このエピソードではキッズたちが小さくなって見ているという設定になってるから「もしも見えたらどんなふうか」を考えなきゃいけなくて、でもクォークの見え方を考えるのは不可能なんで、諦めてもらうしかなかったのよ。

 

 ……で、カソクキッズでは、そのどんな方法でも描けない素粒子の世界をずっと描いてきた。

 KEKの目的は「宇宙、生命、物質の本質を探る」だから、素粒子を調べるのは宇宙を探ることなんだ。もっともマクロな宇宙を知るために、もっともミクロな素粒子のスケールを見ている。

 物事の本質を知るには、見えているスケールじゃなくて、1つ下の階層を見なきゃいけないんだって。出来上がったグラフィックがどうなっているかを知るには、そのレイヤーをチェックしなきゃダメ、みたいなことかな?

 とにかく、そういうことだから最大のものを調べるには、一周回って最小の世界を調べなきゃならないんだ。
 ウロボロスの蛇みたいだよなぁ。そういや宇宙図によく出てくるし。

 

 

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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