小説版イバライガー/第33話:オーバーブースト(前半)

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OP

 ランペイジが、次々と倒されていく。
 破片ごと対消滅させているから、再生もできない。

 シンはまだ、ここにはいない。力はセーブされているはずだ。
 それで、この威力。
 これがイバライガーRの新たな力……レディアンスか。

 攻撃をかわしてRが飛ぶ。フェアリーと並んだ。

「おかえり。会えたんだね、もう一人の自分と」
「ああ。焼き鳥屋で一杯やってきた。そっちは女子会だったって?」
「うん、すっごく楽しかった!」

 二人が握手をかわしている。
 なんだ? 何かが見える。感じる。ガールからRへ、何かが伝わっている?

 Rが降りてくる。すぐにランペイジに取り囲まれたが、Rはなんでもないように歩きながら拳を打ち込み、一撃で確実に1体を倒している。

「すごいな、R。これが新しいR……ダブルRの力か。待った甲斐があった」
「ありがとうございます、初代イバライガー。あなたにもメッセージがあります。受け取ってください」

 差し出された手を握った瞬間、初代は真っ白な世界に引き込まれた。

 シンとワカナが微笑んでいた。

 

Aパート

 歩み寄ってきた二人に肩を叩かれた。微笑んでいる。声が出ない。
 本当に……本当にあなたたちなのか。

「苦労をかけたな、イバライガー」
「辛いことを頼んじゃってごめんね。でも本当にありがとう」

 未来のシンとワカナ。
 もう二度と会えないと思っていた二人が、今、目の前にいる。
 現実じゃないことはわかっている。
 それでもいい。会えた。

「俺たちはRとガールに全てを託した。この時代のシンとワカナとも話し合った。もう十分だ。今後会うことはないだろう。お前とも会えなくなる。だから、ほんのちょっと、お前にも力を預けておく」
「私たちの心のかけらよ。これを使えばシンたちに負担をかけずにハイパーを召喚できる。ハイパーでいられるのは1分程度、使える力もほんの一部だけだと思うけど、それでも、その1分だけはRやガールに匹敵する力を引き出せるはずよ」

「本当は、お前たちを戦わせたくないんだけどな。でも、生き抜いてもらいたいんだ。生きてよかったと思える時代を作って欲しいんだ。世界のためでも俺たちのためでもなく、お前自身のために」
「さよなら、イバライガー。ずっと私たちを支えてくれてありがとう。会えなくても見守ってるわ。いつでも、あなたを見ている。それを忘れないで」

 白い世界が、消えた。

 思考にノイズが走っている。
 元の風景が戻ってきたはずなのに、歪んでよく見えない。
 泣いているのか、私は。

 手を見つめた。Rの感触。
 いや、あれはシンとワカナ……父と母の手だった。

 わかっています、シン。ワカナ。
 私は、あなたたちの想いが生み出した子供です。それが私の誇りです。
 守ってみせます。この世界を。必ず。

 視界が、戻ってきた。

 背後からRに近づこうとしているランペイジに向かって跳んだ。
 まだハイパーの力は使っていない。だが、今の私を止められると思うな。

 ブレイブキックで一気に貫く。強化装甲が砕け、破片となってランペイジたちにめり込んだ。気を込めた破片は敵の体内で爆砕し、ショットガンのように内側から飛び出す。破片でもNPLなのだ。エモーションで操作できる。ズタズタになって崩れ落ちるランペイジを、ショットアローの連射で撃ち砕いていった。再生など、させん。細胞1つだろうと見逃しはしない。

「やりますね、初代。さすがだ」
「お前たちのおかげだ。パワーアップの影響はミニRにも及んでいるようだな。明らかに能力値が上がっている」

 ミニRは、イバガールをフォローして駆け回っていた。さっきまでは何度突っ込んでも跳ね返されるだけだったが、今はクロノスケィルでダメージを受けたランペイジとなら互角にやり合えているようだ。

「ちくしょう、ズルいぞ。お前らだけ強くなってよぉ!!」
 ミニブラックがやってきて、ボヤいた。

「お前もすぐに強くなれるさ」
「え、それって……マジかよ!? 復活できんのか、アイツも!?」
「ああ。そのために……」

『初代! R! 聞こえるか!?』
 通信が入った。シン。

『基地にミニガールの迎えを寄越してくれ。それと……残っているイバライガーXを2体……いや全部こっちに回してくれ。2体はワカナのところに、もう1体は……』

「ま、待ってくれ、シン。君では複数のXを操るのは無理だ。それにXを使うのは危ないと言っただろう!?」

『大丈夫。シンにはXを使わせないから。むしろシンやワカナをカバーするのにXがいるんだよね~~』
 アケノの声が割って入った。

『私を信じてくれ、初代。シンとワカナはそこに行かなきゃならない。けど、絶対に死なせない。そのためにXを貸してくれ』
「……わかった。3体残っているが、2体はすでにXの状態を維持するのが難しい状況だ。それでもいいか?」
『構わない。最悪でも1体が使えれば大丈夫だ。頼むよ』

 通信が途切れた。アケノの口調から、何をするつもりかは予想できた。
 悪くない。信号を送り、全てのXを撤退させた。どのみちXを使うのは、もう限界だったのだ。
 飛び去るXと入れ替わりに、イバガールが舞い降りてきた。

「ねぇ、今ミニガールって言ってたよね? ミニちゃん目覚めたの? 私、感じなかったよ?」
「いや、それが……目覚めたというか、まだというか……」

 Rは、少し困ったような口調だ。そういうことか。ガールはまだピンと来ていないようだ。
 普段のような会話をしながらも、戦闘力は1ミリも下がっていない。
 Rが参戦して以来、近づいてくるランペイジは明らかに減り始めていた。再生した奴らを含めても、残りは300体弱というところか。
 まだ、かなりいるが、押しているのはこっちだ。

 初代イバライガーは壊れた装甲を引き剥がし、周囲にばらまいた。
 ランペイジが近づけば瞬時に弾けるNPLのクレイモアだ。

 ここからしばらくは持久戦だろう。決着をつけるのは、全ての力が集まったとき。

 それまで、持ちこたえてみせる。

 


 アケノがバイクで現れた。ワカナが使ってたヤツだ。

「え、それで行くのか? 指揮車とかワカナたちが使ってる装甲車とかじゃなく?」
「心配ないって。すでに混戦になってる戦場に出るんだから、鈍重なクルマよりこっちのほうがずっとマシだよ。どうせ装甲車だってランペイジの攻撃は防げないんだし。それに『荷物』は迎えが取りに来てくれるんでしょ?」
「わ、わかった。じゃあ俺もバイクを……」
「ダメ。あんたはタンデムだよ。以前、ワカナに追いつけなかったんでしょ。その腕じゃ死んじゃうよ」

 どんな運転するつもりなんだ? ワカナだって相当荒っぽいぞ。アレ以上なのか? そのタンデムシートに乗るの?
 こりゃヤベェ。ジャークよりもヤバいかもしれない。

 ビビりながらアケノの後ろに跨ったとき、爆音が聞こえた。三輪のトライクが、まっしぐらに向かってくる。
 通信で話した通り、X1体をミニライガーたちに預けて合体させたようだ。

「妹ぉおおおっ!! お兄様が迎えに来たぞぉおおおおお!!」

 ミニブラックが、シートの上に立ち上がって叫んでいる。
 運転はミニライガー任せか。まぁ、ミニブラの体格にクロノダイヴァーはデカすぎる。破損のひどいXを流用したはずだから、ちょっとだけ質量不足かもしれないが、それでも見た目は大排気量のハーレーダビッドソンそっくりなのだ。

 正面ロータリー直前で飛び降りたミニブラは「妹ぉおお!」と叫びながら館内に駆け込んで行ってしまった。
 そっちにはいないぞ、と言う暇もない。
 ドタバタと騒がしい音が響き、エドサキ博士の悲鳴が聞こえ、ようやく戻ってきた。

「おいシン! ミニガールをどこへやったぁあああっ!?」
「いや、だから……」

「相変わらず、うるさい奴だ」
 建物の陰から、ミニガールが現れた。

「おおっ、妹! 目が覚めたのかよ!?」
 ミニブラが駆け寄って抱きしめようとしたが、素早く躱された。

「くっつくな、気色悪い!」
「そ、その声……その口調……おい、まさか、お前……!?」

「ああ。今ミニガールの身体を動かしているのはブラックだ。本当のブラックはまだRの中にいるんだけどな。目覚めたRを通じて、ブラックの意識の一部とミニガールが守っていたデータが接触したことで『ブラックならこう考えるだろう』というプログラムが動いているんだ。それがミニガールを内側から操ってる」

「なにぃいいいい!? 妹じゃなくてパパァ!?」
「その呼び方をするな!!」
 ミニガール=ブラックがミニブラを蹴り飛ばした。

「いってぇなぁ。つ~か娘の身体で何やってんだよ!? ロリコンか!!」
「仕方あるまい。今の俺にはボディがない。データも不完全だ。本当に復活するのは最前線に行ってからだ」
「わけわかんねぇけど……ま、いいか。そんじゃ乗れよ」

 ミニブラックが手招きすると、クロノダイヴァーが近づいてきた。
 ミニブラとミニガールがタンデムで乗り込む。

「シン、先に行くぞ」
「ああ、こっちもすぐに追いつく。本番は見逃さないさ」
「言っとくけど、戦いはすげぇヤベ~ぜ。お前ら、待たせた分だけきっちり働いてもらうからなっ!」

 クロノダイヴァーが、走り去った。周囲から歓声が上がっている。集まってきた人たちがイバライガーの名を叫んでいるのだ。カオリが炊き出しのためにTDFの隊員たちと一緒に駆け回っているのが見えた。高校生らしい女の子が手伝っている。

「さて、こっちも行くよ」
 アケノがギアを入れ、走り出したとき、今度はエドサキ博士が駆け出してきた。
 急ブレーキを掛けたバイクがジャックナイフ・ターンで止まる。シンは振り落とされないように必死にアケノにしがみついた。
 やっぱヤベェ。ヤベェよ、この女。

 エドサキ博士は、小さな機械を差し出した。
「これを持って行って。役に立つかどうかはわからないけど……ウイルスよ」
「ウイルス?」

「そう。ランペイジはベースがPIASでしょ。だから解析して作ってみたのよ。一夜漬けで作ったから効果は使ってみないとわからない。でもPIASに仕込んで発信させれば、シンクロ機能を通じて全てのランペイジに送り込めるはず。動きを止めるか、あるいは混乱させるかはできる可能性があるわ。効いたとしても、せいぜい数秒で駆除されてしまうだろうけどね」

「たった1度。数秒だけか。でも助かるよ。使わせてもらうね」
 アケノが受け取って、ポケットに入れた。
「ただし……使えばPIAS自身も止まってしまうはずだから、気をつけて」
「了解。そんじゃね~~」

 バイクが、走り出した。シンは緊張したが、思ったよりも安定した走りだ。
 なんだ、ちゃんと普通に乗れるんじゃないか。

 人々が手を振ってくれた。
 この人たちの声がなかったら、俺はRの心に入れなかったかもしれない。こんな危険な状況なのに、駆けつけてくれた。
 本当にありがとう。必ずランペイジを……ルイングロウスを倒して戻って来る。
 あんたたちの暮らしを取り戻してみせる。

 ゲートを出るまでシンは手を振り返し続けていたが、人々が見えなくなった途端、アケノはアクセルを開けた。慌ててしがみつく。交差点。赤信号。無視かよ!? いや確かに他にクルマ走ってないけど……うわぁああ、ギリギリのハングオンやめてぇえええ!!

 


「ええっと……これでいい?」

 ワカナはイモライガーとともに、PIASの準備を手伝っていた。ソウマは最低限の装備は身につけていたものの、本格的な戦闘ができるほどではなかったのだ。
 各部のパーツをラヴから降ろし、組み立て、取り付けていく必要がある。普段は専用車で自動でセットアップするが、今は緊急時なので手動でやるしかない。ソウマ一人でも装着できるらしいが、手伝ったほうが、ずっと早く済むのだ。

「PIASって、けっこう面倒くさいんだなぁ。ボクのイモライガースーツなんか1分以下で装着できるんだぞ」
「いや、だってソレ基本的にただのコスプレじゃん?」
「バカにすんな! これだってNPLを塗ってあるんだぞ。使えないけど」
「やっぱコスプレじゃん!!」

 作業中はほとんど無防備に近いが、不安はない。
 Rが加わってからは戦いは拮抗している感じで、1キロほど離れたここまではランペイジも来ない。

 それに、ねぎがそばにいる。
 今は変身を解いて元の姿に戻っているけど、いざとなれば強力な助っ人だ。

 他にも、助っ人なのかどうか微妙なものが佇んでいる。
 イバライガーXだ。
 2体いるが1体はボロボロで、もう戦えそうにない。どちらも全く動かないから、初代とのシンクロは切れているようだ。

 これ、どうするつもりなんだろう? シンに使わせるのかな?
 でも通信でアケノは違うって言ってたし。

 ぼんやりしている間に、PIASのセッティングが終わったようだった。
 最後の仕上げに、イモライガーがウヒヒと笑いながらスーツの隙間にNPLを流し込んでいる。話には聞いていたけどPIASの中って、こんなにビチョビチョなのか。こりゃあ着心地悪そうだな~~。

 ベルトの左側にあるパワーランプが灯った。中央のエキスポ・ダイナモは相変わらず暗いままだけど、一応は上手く行ったようだ。
 後はヘルメットをかぶるだけ、というところで、ねぎが吠えた。

 トライク……クロノダイヴァーが向かってくる。
 前のシートにミニブラ、後ろにはミニガールが乗っている。本当に目覚めたの?

「へっへ~、連れてきたぜ。でも、このミニガールがさぁ……」
「待たせたな、ワカナ」

 へ? その声……ブラック!?

「その話は後だ。ミニブラ、さっさと準備しろ」
「へいへい、いつまでもその姿でうるさく言われちゃ、かなわねぇからな。ミニライガー、オプションくっつけるぞ。いいか?」
「オッケー」
「カッコ悪いの作るなよ?」
「ミニブラってイモライガーと同じくらいセンスないもんな~~」
「なんだとぉ!!」

 ミニブラとイモライガーがハモった。
 いや、ボケとかやってる場合じゃ……とツッコミそうになったとき、ボロボロだったほうのXが崩れ始めた。
 光りながら姿を変えていく。これは……サイドカー?

「まぁ、こんなもんだろ?」
「ダメだ、ツインシートにしろ。お前にベタベタくっつかれるのはミニガールが嫌がる」
「てめぇなんかくっつくどころか取り憑いてんじゃね~か!!」

 それでもサイドカーはツインシートに変形し、自走してクロノダイヴァーと接続した。
 ミニブラックとミニガールがサイドカーに乗り込んでいる。

「ほらワカナ、お前もさっさと乗れよ。時間ねぇんだからよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 何がどうなってんのか説明してよ!」
「面倒な奴だ……が……説明役も着いたようだな」

 またエンジン音が聞こえてきた。聞き慣れた音だと思ったら、自分のバイクだ。アケノとシンが乗っている。
 ったく、勝手に乗り回して……え? ちょ、ちょっと、ちゃんと減速してよ。それじゃ通りすぎちゃうっていうか、こっちに突っ込んじゃ……と慌てたが、バイクは横滑り気味になってイモライガーの目前で止まった。うわぁあ、タイヤが、タイヤが減るぅうう。

「ほい、到着。ちゃんとミニブラたちに追いついたでしょ? ほら、さっさと乗り換えて。運転はワカナ、よろしくね」

 素早くバイクを降りたアケノが通り過ぎていった。ソウマに何か指示をして、残っているイバライガーXのところで何かしている。
 え? 私がクロノダイヴァーを運転するの? いや、それは構わないけど……っていうか、まずちゃんと説明しろってば!!

「ま、待ってくれ……あ、足が……いや、身体が……」
 タンデムシートから、ヘロヘロになったシンが転がり落ちた。そんな無茶苦茶な走りだったの? 基地からここまでは、ほとんど直線のはず……あ、ルメージョが倒した街路樹か。それをかわしながら走ってきたのか。けど……情けないなぁ。Rは新しい力を身につけたっていうのに。

「ほら、しっかりしろ! この大事なときにヘタってらんないでしょ!!」
「お、お前だって、アケノのタンデムに乗ればわかる……」
「いいから。何をどうする気? 簡潔に答えて」

「もちろんRたちのところに行く。ミニブラとミニガールを連れて。バックアップシステムのミニブラ、ブラックのコアを保存しているミニガール、そしてブラックの意識を取り込んでいるR。その3人を接触させないとブラックは復活できない。今、イバライガーRを前線から呼び戻すわけにはいかないから、こっちから行くのさ」
「なら、ミニブラたちはそのままRのとこに行けばいいじゃん。何でサイドカーなの?」

『あの混戦の中で複数をガードするのは厳しいからね~~』

 すぐ後ろから、アケノの声がした。何かマイクを通したような声だ。
 振り返ろうとして、装甲車の助手席に座っているアケノの姿が目に入った。
 眠っている? イモライガーがつんつんしようと覗き込んでいる。
 へ?

「イモライガー、余計なことはするなよ? 隊長に手出しすると後が怖いぞ」
 ソウマの声。

 イバライガーXとPIASが歩いてくる。
 まさかアケノがXなの!? どうやって!?

『PIASのシンクロシステムを埋め込んだの。シンみたいにゼロからXを生成するのは無理だし、エモーションで操ることもできないけど、アタシもシンクロには慣れてるからね。生成済みのXなら数分くらいは使えると思うよ』

 アケノのXは、全身が赤一色にカラーチェンジしている。
 まるで赤いブラックだ。いや、変な言い方だけど。

『とにかく分散されると守りにくいから、全員まとめてクロノダイヴァーに乗って欲しいわけ。どうせ、行くつもりだったんでしょ? ブラックの復活とは別な理由で』

 ドキっとした。でも、うなずいた。

 確かに、そのつもりだった。
 シンが来たら、一緒に最前線に突っ込むつもりだった。

 無謀なことはわかってる。
 下手をすれば、イバライガーたちの足を引っ張ることになりかねないことも、わかってる。
 それでも、私たちは行かなきゃならない。

 私はガールの隣りに。
 シンはRの隣りに。

 イバガールもイバライガーRも新しい力に目覚めたけど、それだけじゃない。
 もっと先がある。

 あのとき、3人で手を重ねた。
 想いが伝わってきた。ガールにも、私にも。

 光を託されたのは、ガールだけじゃない。私も、光を受け取っている。
 そして私自身にも、光はある。

 ガールの光。私の光。託された光。
 同じ魂の3つの光。それが1つになったとき、本当の力が生まれるはずだ。

 ミニガール……ブラックを見た。

 そうなんでしょ、ブラック。あなたが求めていた『力』って、そのことなんでしょ。

 ミニガールは黙ったままだ。でも間違いない。

 シンが、肩を抱いてきた。想いが伝わってくる。やっぱり同じだ。
 そっか、そっちは4人で乾杯したのか。
 そうだよね、私たちは私たちだけじゃないんだよね。
 あの人たちも私たちと一緒に生きてるんだよね。

 無性にムギュっとされたくなった。

 私ね、子供を作れって言われちゃったんだよ。そんなことまで考えたことなかったのに。でも、いつかはそうなるのかなぁ。そうしたくなるのかなぁ。わかんないや。でも、生きるってそういうことだよね。生き続けなきゃ、どうなるかもわからないもんね。

 ……なによ、いつまで肩を掴んでんのよ?
 さっさとムギューしろって。ほらほら、さりげなくやればいいんだってば。しろよぉおお!!

『はいはい、お二人さん。くっつくのは後でゆっくりやってね。まずは、やること済ませちゃお。アタシもずっとシンクロしてるのしんどいから』

 アケノの声で、我に戻った。思わずシンを突き飛ばした。

「わ、わ、わかってるって! ほらシン、さっさと乗ってよ!!」
「な、なんだよ、いきなり!?」
「うるさいっ! ちょっと荒っぽく飛ばすからね! 頼むわよミニちゃんたち!!」

「ワカナ、急にやる気になってる……」
「ちょっと顔が赤いよね?」
「ヨッキューフマンっていうやつ?」
「ま、オンナはフクザツだっていうからな~~」

「うるさぁあああああい!!」

 


 ソウマは呆れていた。
 とんでもない決戦に飛び込もうというのに、相変わらず緊張感のない連中だ。

 なのに、それを自分は好ましく感じている。
 そういう自分に呆れているのだ。

 イバライガーに関わる連中は、博士と呼ばれるインテリも含めて、どいつもこいつもバカだとしか思えない。

 そもそも、こいつらは民間人だ。こんなことを背負いこむ必要はない。ジャークが生まれたことは単なる事故。ワカナたちはエモーション実験に関わっていたとはいえ、責任者ではない。ただのアシスタントだ。別の歴史の自分たちがいたとしても、それも赤の他人と同じことだ。そんなものは、ほっとけばいい。
 ヒューマロイドたちも同じだ。奴らは人間とは違う。ここは奴らの時代でもない。どうなろうと構わないはずだ。ジャークに人間が滅ぼされたところで、困りもしないはずだ。

 なのに、こいつらは戦う道を選んだ。
 それも、命を賭けてだ。

 規律もなく、ふざけているようにしか見えない。
 それでも本気なのだ。俺たちでさえ尻込みするような危険にも飛び込んでいく。
 イバライガーたちもだ。

 初代イバライガーは、俺をかばって一度消滅している。
 イバライガーRは、自らを犠牲にしてルイングロウスを止めようとした。
 イバガールも、以前に瀕死の重傷を負っている。
 そしてブラックは、自身の身体を失ってまで戦い続けている。

 なんなのだ、こいつらは。

 今もシンとワカナは、激戦の中に突っ込もうとしている。いくらイバライガーたちを信じているとはいえ、正義のためとか平和のためといった理屈だけでやれることじゃない。そういうお題目を唱える連中は、大抵は土壇場で本性を晒す。理屈を超えたものを持っていないと、ギリギリのところで踏ん張れなくなるのだ。

 こいつらは、それを持っている。
 覚悟なのか、信念なのか、欲望なのか、あるいはその全部なのか。

 いずれにしてもイバライガーたちは、折れない。諦めもしない。どんな敵とでも、最後まで戦うはずだ。

 そして勝つ。死線を踏み越えても、必ず戻ってくる。
 それを俺は信じてしまっている。

 こいつらのようにギャグなどを口にする気はないが、この数日一緒に過ごしただけで、そう思うようになり始めている自覚がある。
 そして、その思いが俺自身に力を与えているようにも感じる。
 PIASはいつもと変わらないが、何かが違うのだ。

 勝つとか負けるとかではなく、ただこいつらを手助けしてやりたいと思っている。
 任務のためでも世界のためでもなく、ただ力になりたいと思っているのだ。呆れるしかない。

『ソウマ』
 隊長に、声をかけられた。何か小さな機械を差し出している。

『これを預けておく。エドサキ博士から預かったウイルス。確実とは言えないが、一度だけ、それも数秒程度に過ぎないが、ランペイジの動きを止められる可能性がある。ただし使えばPIASも動けなくなる。使うタイミングはお前に任せる。シンクロシステムを外した以上、私はPIASに干渉できない』

「いいんですか、自分が判断しても?」
『いいさ。今のお前なら、やれるはずだ。Xになった今の私には、それが見える』

 隊長の言うことはよくわからなかったが、受け取った。
 1度だけ、数秒だけ、か。
 いいだろう、使い所はわかっている。

 ワカナとシンを見つめた。

 止まるなよ。お前らの道は、俺たちが作ってやる。必ず辿り着かせてみせる。
 お前らのためではなく、俺がそうしたいからだ。

 

(後半へつづく)

 


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