小説版イバライガー/第28話:禁断のイバライガーX(後半)
Bパート
エキスポ・ダイナモが輝いた。
シン!? ワカナ!?
私を……私の名を、呼んでくれるのか。君たちを閉じ込めた私を。TDFを招き入れてしまった私を。それでも信じてくれるのか。
「おぉおおおおおおおおおっ!!」
全身に力がみなぎる。爆発しそうなほどに、パワーが上がっていく。
気合いだけで十数体のジャークゴーストが吹き飛んだ。
同じような反応を感じる。みんなもシンたちのエモーションを受け取ったらしい。
この力があれば、間違いなく食い止められる。
ジャークゴーストだけならば。
だが、そうはいかないようだ。本命が来る。
「イバライガー! この反応は……!!」
ミニライガーたちが集まってきた。全員、奴らの気配を感じたようだ。
「お前たちは、基地に戻れ。シンとワカナ、それに博士やRを頼む。いざとなったら、彼らを連れて脱出しろ」
「そんな……! 四天王なんだよ? それも3体同時なんだよ!?」
「いくらパワーが上がってても、一人で戦うなんて無茶だよ!!」
「それに、今の初代は時空の力だって使えないんでしょ! そんな身体で……!!」
「心配するな。一人じゃない。ガールたちもいる。PIASもな。そして私たちはイバライガーだ。何があっても人々を守る!」
見上げた。空に、黒い霧が広がり始めていた。アザムクイドか。
霧の中に、瘴気の塊がいる。ダマクラカスン。
そして南側から近づいている冷気が、ルメージョ。
「ガール、ミニガール! あの霧はお前たちに任せる! 風で奴を防いでくれ!! 私はダマクラカスンを止める!!」
通信が入った。アケノからだ。
『状況はこちらでも察知している。ルメージョは任せろ。今のPIASなら、倒せないまでも止めるくらいはできるはずだ』
「頼む。他の者は、ゴーストの掃討を続けろ。基地に近づけなければいい。行くぞ!!」
とうとう出てきた。もう、パワーを出し惜しみしている場合じゃない。
「やるわ、ミニちゃん! あなたは私のバックアップを!!」
「わかった! でも無理しないでね!?」
ごめん。無理しないと、これは止められない。
最大出力で放っても、いつまで持ちこたえられるか。
「時空旋風……エターナル・ウインド……フレアァアアアアアアアッ!!」
放った。風で、敷地全体を覆う。流れをコントロールして、霧を遠ざける。
黒雲のような霧の中に、雷鳴のような煌きが走っている。ポジティブとネガティブが対消滅する光だ。
さすがに霧を丸ごと消すのは無理だ。少しでも長く、少しでも多く、アレを止め続けるしかない。
左のほうで、対消滅が激しい。冷気の渦が流れ込んできている。
ルメージョ。
でも、いつもほどじゃない。私の風に対抗しているのではなく、別な戦いの余波がぶつかっているだけ。
PIASとルメージョが戦っているんだ。以前のPIASでは全く歯が立たなかったようだけど、今は拮抗しているようだ。
すごい。本当にR並みかもしれない。このまま、凌ぎきれれば。
でも、初代は……。
ダマクラカスンは危険すぎる。しかも以前のままじゃない。
風が、伝えてくる。あの霧はアザムクイドの一部に過ぎない。そうじゃなかったら私の力では抑えきれない。かろうじて食い止めていられるのは、アレが本体じゃないからだ。
本体は、たぶん、ダマクラカスンの中。
寄生……というより、身体を共有している状態らしい。四天王二人分のパワーが集中しているはずだ。
逆に初代は、回復したとはいえ以前と同じ力は使えない。
本当に止められるの? ハイパーの力を呼び出せれば勝機はあると思うけど、そう都合よく使える力じゃないはずだ。
霧が揺らいだ。一部が濃くなり、こちらに押し寄せてきた。
「ええぇえい!!」
ミニちゃん。もう1つの風が、押し返してくれた。
いけない。他を気にしている余力はない。みんなを信じるしかない。
信じて、この霧を止め続けるんだ!
「久しぶりだな、機械人形。俺が引き裂いた傷はそのままか。そのザマで何ができる?」
「傷はすでに私の一部だ。それに……この傷が与えてくれたものもある!!」
ダマクラカスンの爪が伸びた。マントを翻す。織り込まれたNPLに、意思を伝える。マントは一瞬で変形し、盾となった。
火花のような煌きを発して、爪が砕かれる。
「ほぉ。面白い小道具だな。お前の意思で自在に変形するというわけか。だが、俺も以前とは違う。この身体には、もう一人の四天王が宿っている」
ダマクラカスンの声が、途中から別な声と重なって聞こえた。
「やはり、そこにいたか、アザムクイド」
「気づいていたか。あのときは世話になったな、イバライガー。お前とイバライガーRのおかげで、我はこの世界に来る事ができた。その礼をしたい。手向かうな。そうすれば一瞬で破壊してやる。痛みも苦痛も悩みも、全てを消してやるぞ」
「ありがたいな。だが……私はまだ消えるわけにはいかんっ!!」
地を蹴った。追ってくる。やはり争いを好む。
奴らの目的はRのはずだ。こちらを無視して基地を襲ったほうが確実なはずだが、ジャークは戦おうとする。そういう性質を持っている。
そのことが、わずかな可能性を生むはずだ。
「ふ、我らと戦うことで時間稼ぎするつもりか。だが、いつまで抗うことができる? ガラクタの貴様一人では、我らは止められん!!」
圧縮された瘴気が、ダマクラカスンの全身から放たれた。まるで黒いビームだ。マントだけでは防げない。クロノ・スラスターも動かない。全身をエモーションで包んで、どれだけ軽減できるか。
この感じ。初代が、ダメージを受けた。
まだ致命傷じゃない。でも危ない。このままでは。
ワカナは、必死に祈った。
信じる。信じる。信じる。彼らは負けない。どんなピンチでも、絶対に乗り切る。
でも。
四天王級を倒すには、時空突破が必要だ。Rが使ったクロノ・ブレイクなら、例え四天王でも倒せるはずだ。
ブラックのオーバーブーストも、四天王を凌駕するパワーを引き出せる。
けど、Rは動けない。ガールにはまだ無理だし、ブラックもいない。初代のクロノ・スラスターは破損したままだ。
どうする。どうすれば。
シンを見た。何かを考えている。何かに集中している。
そうだ。落ち着かなきゃいけない。こういうときこそ、落ち着いて考えなきゃ。
部屋の中は静まり返っている。外の音も、聞こえてこない。聞こえるのは水の音だけだ。
水の音?
プールを見た。何もない。何もないのに、波立っている。NPLが動いている。どういうこと?
シンは、動かない。いや、意識がない? 何かに集中して、心が、ここにいない?
まさか!?
プールから、水柱が立ち上がった。その中に光が集まっている。
まるでイバライガーのコアのような輝きが形成されていく。
その周囲にNPLが集まり、何かを形作っていく。
これは……シンの……力!?
意思の力。戦い抜く力。それがエモーションと反応して、イバライガーは生まれた。
そして今また、シンはイバライガーを生み出そうとしている!?
氷の嵐。だが、この程度なら十分にかわせる。
「いや、ブレイドを展開しろ。叩き返す」
指示とともにエモーションが送られてくる。アクションのイメージも伝わってくる。その通りに動いた。
氷嵐を切り裂く。氷の刃をブレイドで撃ち返す。
「やるねぇ、イバライガーモドキ。以前とは段違いだ。ここまでパワーアップするとは思わなかったよ」
撃ち返した刃は、ルメージョの眼前で止まった。さすがに直撃させるのは無理か。
だが、やれる。前とは違う。
両足のホルスターから、銃を抜いた。連射する。ケーブル付きの誘導弾だ。ケーブルを通じて、俺と隊長のエモーションが伝わっていく。ルメージョは杖で防御しているが、弾をかわされてもケーブルは残る。着弾点から伸びたケーブルがクモの巣のように張り巡らされていく。
この結界の中に封じてやる。これまでの借りを、まとめて返させてもらうぞ。
ルメージョが、止まった。
周囲は、どちらも結界の中だ。もう、逃げられない。
「とどめに、行きます……!!」
ソウマは、拳を握った。エネルギーが集まり、白熱化していく。
その澄ました顔に、こいつを叩き込んでやる。
『ダメだ。動くな。結界の中に留めておくだけでいい。近づくな』
隊長の声が、頭に響いた。
なぜです? 四天王を仕留めるチャンスです。行かせてください。
『わからんか。奴はまだ余裕を見せている。気がまるで縮んでいない。むしろ大きくなっている。人間の姿だからと侮るな。あれは化け物だ』
ハッとした。ルメージョは、静かに佇んでいるが、確かに気は揺らいでいない。
まだ、何かあるのか。いや、まだ本気を出していないのか。
「……そうかい。もう一人が手強そうだねぇ。戦闘力よりも厄介なものを持っている。相当場数を踏んでいるってわけかい?」
ルメージョは俺を、PIASを見てない。
その後方、隊長を見ている。
『ルメージョ。力ではお前のほうが上だ。いかに新型のPIASで私とソウマのエモーションを集めても、お前には及ぶまい。だが、戦いの年季では私が有利なようだ。お前が使っている身体は、ただの民間人。しかも完全に意識を消去できていない。故に、お前の動きにはブレがある。コンマ数秒のズレ。それが私たちの勝機だ』
「さすがだねぇ。人間にも、これほどの力があったか。けど……勝機はないよ。その弾丸を撃ち込まれようと、ケーブルを絡ませようと、あるいはブレイドで切り裂こうとも、私は殺せない。死ぬのは、この女だけ。お前たちの貧弱なエモーションではジャークを、ましてや四天王を滅ぼすなど、できはしないのさ!!」
嵐が、一気に噴き出した。ケーブルが断ち切られていく。
ソウマは一瞬躊躇したが、隊長のエモーションには揺らぎがなかった。
『ウイング展開』
今、ここで? 何のために?
それでも命令に従った。動きのイメージが送られてくる。そうか。
「うぉおおおおおおっ!!」
拡張したウイングをもぎ取り、つないでシールドにする。隊長の言う通りだ。氷嵐にはズレがある。間断なく噴き出しているようで、一瞬だけ途切れる瞬間がある。その一瞬を捉えろ。
『今だ! ウイングを……』
わかってる。畳んでいた羽根を開く。そのまま投げる。巨大なブーメランが、氷嵐の隙を突いて飛んだ。
だが、杖で防がれた。間一髪に見えるが、ルメージョは嗤っている。ちっ、奥の手を防がれたか。
その表情が変わった。隊長のエモーションからも、何か違う感じがある。
ルメージョは険しい顔で、あらぬ方向を見ていた。
「シン……とうとう、やったね……。禁断の扉を開けちまったね。そうかい、お前もこちらに来るか。ならば、これまでだ。共に消えるか、どちらかが裏返るか。ここからは、人間の言う運命ってやつに委ねるだけだねぇ……」
声が聞こえた時には、ルメージョの姿は消えていた。
「不完全な身体にしては、よくやった。だが、やはり決め手に欠けるようだな」
確かに、傷だらけだった。黒いビームに貫かれ、身体のあちこちが欠損している。
まともに動けるのは、あと数刻か。
だが、それでも倒れるわけにはいかない。
「まだやるか。いや、そうだろうな。お前らは細胞1つでも我らと戦おうとする哀れな存在だ。来い。それを終わりにしてやる」
どうする? 同じ攻撃を繰り返しても、無駄だ。
せめてクロノ・スラスターが動けば。時空突破が使えれば。
「イバライガー!!」
声。ミニライガーたちか。なぜ、戻ってきた? お前たちはシンやワカナを……。
なんだ?
この気配はなんだ?
いや、知っている。この感じは、知っている。
ずっと前に感じた。あのときと同じ。
まさか!?
基地の一角が、爆発したように砕け散った。
地下から、光が溢れる。シン。まさか君は……!!
「そこまでだぁああああ! ジャァアアアアアクッ!!お前たちの好きにはさせなぁあああいっ!!」
叫びと共に、ダマクラカスンに光が突っ込んでいった。ギリギリでかわしたダマクラカスンの肩がえぐり取られた。
光が、初代の前に降り立ち、構えた。
「イバライガァアアアアッ……エェエエエックスッ!!」
シン……なのか?
その姿は……Xだと? NPLを操作して作り出したのか!? そこまで力が覚醒していたのか!?
「行くぞ、ダマクラカスンッ!!」
「わははは! いいぞ、人間っ!! それでこそエモーションの使徒!! 見せてみろ、その力をぉおお!!」
Xが跳んだ。一直線に突っ込んでいく。
ダメだ、シン!! その力は使っちゃダメだ!!
飛んだ。交錯する。腕が、吹き飛ばされた。
「うぉおおおお!!」
気を込める。NPLで再生する。どれだけ破壊されようと、このボディなら一瞬で再生できる。
俺の身体と意識が保つ限りは。
「なるほど。本体は別な場所にいるわけか。その液体に取り憑いて操る。我らのような技だな。だが、まだ不慣れなようだ」
腹に直撃を受けた。貫かれている。痛みが伝わる。思うほどには動けない。
それでも今は、俺がイバライガーになるしかない。この身体がどうなろうが、仲間たちを、この世界をジャークに壊させはしない!!
「ブ……ブレイブゥウウウウッ! インパクトォオオオッ!!」
シンの身体が、痙攣している。ワカナは必死に押さえた。
シン! シンッ!!
守る。シンを守る。想いを伝える。今度こそ一緒に戦う。絶対に一人にさせない。
イバライガーXの腰が光った。貫かれた腹部が輝き、再生していく。
いや、別なものが生まれている。
あれはエキスポ・ダイナモ!?
このエモーションはワカナか? 彼女の想いが、イバライガーXにエキスポ・ダイナモを与えた?
くっ、ワカナまで!? まずい。全てが裏目になってしまった。シンクロを止めないと。
このままでは……二人は人間に戻れなくなる!!
「イバライガー!!」
ミニライガーたちが、集まってきた。
「シンたちを助けられるよ!!」
「うん、今なら……あのイバライガーXがいるなら……!!」
「ボクらが練習してたアレがやれるかも!!」
「アレ?」
ミニライガーたちが、密かに何かの練習をしていたことは知っている。だが、それはまだ完成していなかったはずだ。
いや、完成できない技だったと言うべきか。
「ボクたちだけでは、あの技は無理なんだ。でも……」
「イバライガーXってNPLが固まっただけなんでしょ? それなら……」
「そのNPLとこっちでシンクロしちゃえば……」
シンクロ。NPL。そうか。まだ手はある……!!
「わかった、ミニライガー!! やってみよう! シンを……イバライガーXを……乗っ取るぞ!!」
風が、吹いてきた。イバガール。
「話は聞いたわ! 私たちが隙を作るから、初代はXを!!」
ガールとミニガールの風が、全力で叩きつけられた。Xが吹き飛ばされ、ダマクラカスンとの間に空隙が生まれる。
そこにミニRとミニブラックが突っ込んだ。
「どけぇえええええ! てめぇらぁあああ!!」
「Xには……近づけさせませぇえええんっ!!」
風が、Xを包んで運んでくる。それでもXは、ダマクラカスンと戦おうとしてもがいている。
初代は、跳んだ。Xを抱きかかえる。
シン、ワカナ。聞こえるか。もういい。もう、いいんだ。シンクロを切ってくれ。
初代……?
ごめんね……でも……でも今は……
わかってる。私が悪かった。
君たちは、止まらない。それを一番よく知っていたはずなのに、無理に止めようとした私のミスだ。
だが、もういい。この先は私たちに任せてくれ。
でも……あいつらは……
君の姿を見て、ミニライガーたちが思いついた。時空の力を使う方法は、まだある。
それを試してみる。このボディを……イバライガーXを私に託してくれ!!
「や、やはり手強い……大丈夫ですか、ミニブラック!?」
「けっ、こ、この程度でオレ様がやられるかよぉ。ビビったんなら下がってていいんだぜ、ミニR!!」
「ボロボロのくせに態度は相変わらずですね……けど……私もまだいけます!!」
ようやく、立ち上がった。
全員で力を合わせたのに、まだダマクラカスンはピンピンしている。これが本気の四天王か。
けど、負けられない。勝てなくても、負けるわけにはいかない。
「そこまでだ。ミニブラ、ミニR。後は任せろ」
二人の前に、二人のイバライガーが立ちはだかった。
初代イバライガー。それにイバライガーX。
Xの動きは、初代とまったく同じだ。シンクロしているのか。今、Xを動かしているのは初代なのか。
「やっと来やがったか。ミニライガーたちのアレをやるつもりだろ?」
「……アレってなんです?」
「お前には教えね~よ!」
「いいから、二人とも下がっているんだ。巻き込まれるぞ」
前に踏み出した。Xも、同じ動きで従っている。
シンクロは、上手くいっているようだ。
「遠隔操作で動くガラクタか。そんなもので、どうにかなるものでもあるまい?」
「その通りだ。私が二人になったところで、むしろパワーが分散するだけだろう。だが……」
ミニライガーたちが、飛び出した。同じタイミングで突っ込む。Xは、動かない。シンクロを解除した。ダマクラカスンにぶつかる。パワーでは勝てない。爪がライブ・プロテクターに食い込んでくる。以前と同じだ。それでも数秒止められれば十分だ。
シンクロを失ったXは、元のNPLに戻っていく。そのNPLがミニライガーを包み込んだ。
ナノパーツをミニライガーたちが制御し、変形していく。今だ。
初代イバライガーは、その中へと飛び込んだ。
「あ、あれは……!?」
「……何、アレ?」
「バイク!?」
「接続完了!! ブルー、グリーン、イエロー、みんな行けるか!?」
「大丈夫! 駆動系はボクが!!」
「エネルギー関係も何とかコントロールできるよっ!!」
「出力調整も……本当はニガテだけど……でもガンバるっ!!」
「よし、行くぞ! クロノ・ダイヴァー、起動!!」
3体のミニライガー。そしてXを形作っていたNPL。
それが融合し、初代イバライガーと接続した姿。
それは、トライクと呼ばれるバイク型の機動形態だった。
「なんだと!? 合体しただと!?」
エンジンが、唸りを上げた。前方の空間が歪み始める。ミニライガーたちの意思と力が、イバライガーに流れ込んでくる。
マフラー状のスラスターが光を放った。いける。
「貴様、まさか時空の力を……!?」
「そうだ。私自身のクロノ・スラスターでは、もはや時空に干渉することはできないが……ミニライガーたちと1つになった、このクロノ・ダイヴァーなら……!!」
初代の声とともに、歪みが一気に膨張し、ダマクラカスンを包み込んだ。
「うぉおおおおおおっ! き、貴様ぁあああああっ!!」
「消えろ、ジャーク! 時空突撃!クロノ……チャァアアアアアジッ!!」
ED(エンディング)
「ブレイク……アウト!!」
クロノ・ダイヴァーが開けた時空の特異点が消えた。ダマクラカスンも、消えている。
わずかに残っているゴーストもいるようだが、暴れ足りないミニブラックがどついて回ってるし、ウチの隊員も捜索している。もう心配はないだろう。
それよりも。
「さすがは初代と呼ばれるイバライガーだね。そのバイク……いや、トライクもカッコイイし、大したもんだよ」
走ってきたイバライガーに声をかけた。
「助けてもらったのは、こちらだ。PIASも思った以上だ。ルメージョをそちらで引き受けてくれなかったら、危なかった。感謝する」
「まぁ倒すのは無理だったけどね~。あっちも本気じゃなかったし。今回の襲撃、どうやらRをどうこうすることより『ちょっかいを出すこと』が目的だったみたいだし。その意味では、まんまと乗せられたって感じだよ。もっとも攻めてこられたら無視できないし、他に選択肢はないんだけどさ」
「気づいていたか。君の言う通りだ。ジャークは争いに惹かれる性質があるが、それでも作戦目的を見失うほどじゃない。なのに、こちらとの戦いに付き合った。戦うこと自体が目的だったと考えるしかない」
「Rは? シン君たちは?」
「眠ったままだ。シンとワカナも。Rはともかく、シンたちは一晩で回復するはずだ。とりあえず今回は、だが……」
「イバライガーX……か……。やり方は違うけど、未来のシン君の再現、というわけね? アレを使い続ければ、二人は……」
「それだけは、させない! 何としても!!」
初代が、語気を強めた。やはり、あの二人はスペシャルか。
……何にしても戦いはこれからだ。Rのことも解決していない。こんなものじゃない大ゴトが待ち受けているはずだ。
PIAS-EXはそれなりの威力を発揮できたが、まだまだ足りない。当分はイバライガーに頼るしかない。いつかはイバライガーもこちらの管理下に置かなければならないが、今は、その「いつか」に辿り着けるかどうかなのだ。
陽が、落ちてきた。影が伸びる。
初代イバライガーは、黙って夕日を見つめ続けている。元農業試験場だった敷地は広く、夕日がいつも以上に大きく感じられた。
隊員たちが集まり始めているのが見えたが、アケノは、もうしばらく夕日を眺めようと思った。
(つづく)
次回予告
■第29話:激突! R対初代!!
ジャークの攻撃は凌ぎ切ったものの、イバライガーRの中に潜む「力」は、日に日に抑えがたくなっていく。その正体は、増殖する破滅=ルイングロウス(Ruin growth)。このままでは身体を乗っ取られ怪物と化してしまう。そんなことはさせないっ!! 覚悟を決めたRと仲間たちは最後の手段「カタルシス・フュージョン」に挑む……!!
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!
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