延々とつづく「修正」とのつきあい(メール商談ライブ) ~03:対面~

(←「延々とつづく修正とのつきあい編/02」へ)

お客様からのメール/その3

うるの 様
たいへんお世話になっております。○○(某大手マスコミ)の☆☆です。

それではお忙しいところ誠に恐縮ですが、○月○日(金)15:00にご来社いただけますでしょうか。

場所は、
×××××(住所&電話番号)です↓

(場所を示すグーグルマップ等のリンク)

4Fに受付があるので、○○の☆☆を呼び出してください。お迎えに上がります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(以下、書名)

 

お客様からのメール/その4

うるの 様
たいへんお世話になっております。○○(某大手マスコミ)の☆☆です。

お打合せですが、先にお願いしました○月○日(金)15:00にご来社いただけるとのことで、よろしいでしょうか。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、お返事いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(以下、書名)

 

うるの送信メール/その3

うるのです。

すみませんっ!
以下の件、返信したとばかり思っていました!!
大変失礼いたしました!

○月○日(金)15:00、了解しておりますので、どうぞご安心を。
(以下、書名)

 

お客様からのメール/その5

うるの 様
たいへんお世話になっております。○○(某大手マスコミ)の☆☆です。

ご連絡いただき、ありがとうございました。
それでは、○月○日(金)15:00にお待ちしています。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(以下、書名)

 

「お客様からのメール/その5」補足解説

 そういうわけで、会いに行った。

他の記事で以前に書いたけど、こういう大手企業に訪ねていくときは、約束の時間よりもちょい早めに行動したほうがいいよ。
デカい会社は社屋や敷地もデカい。約束時間の5分前くらいに入り口に到着しても、受付で訪問者名や訪問先を記入したり、入館パスを受け取ったり、そこから目当てのフロアに行くためのエレベータを探したり、目標フロアに達しても行き先の部屋がわからなかったり、部屋を見つけても受付の電話で担当者の内線番号を探して掛けなきゃならなかったり、下手すりゃ内線への掛け方がわからなかったり……と、けっこうハードルがあったりするのよ。大きな研究所なんかだと、守衛室で受付してから、さらに車に乗って敷地内を移動しなきゃならないことも珍しくない。5分前行動なんかじゃ全然足りないのよ。
……とか言っといてボク自身は、5分前どころか5分後に着いてればいいほうっていうくらいにダメダメなんだけど。
それでトラブったことはないんだけど、だからって決してボクを見習っちゃいけないよ(苦笑)。

 2時間くらい話したかな。
 例によって仕事の話は半分以下。ほとんどは雑談。

 自分のこれまでのキャリアを披露するのは当然としても、実際には脱線だらけ。
 ボクが関わっている茨城のヒーロー『時空戦士イバライガー』の話を30分くらいしたりしちゃったりして。写真集まで持参して見せて(笑)。

 もちろん、仕事の話もちゃんとしたよ。
 案件の具体的な説明を受けて、それに対して自分の意見や考えを述べて、その反応を見て、また別な考えを語ったり。

 経験を積むと、自分の手札が増える。
 相手が出したカードに対応するナニカが必ずあるもんなんだ。

 だから次々と出てくる要望や意見に、ボクなりの対応方法で応じることができる。
 答えられない、返答に窮するといったことになりにくくなるの。

 だから相手は安心してくれる。
 十分な経験に支えられた自信があるようだ、と。

 本当はそうでもないんだけどね。

 そりゃ、のこのこ客先に乗り込んでいく以上、多少の自負や自信はあるけど、あくまでも経験上、大抵は何とかなると思ってるだけなの。

 どんなことでも突破口はある。
 ないはずがないから、何とかなる。
 今、それが見えてなくても、帰って預かった資料などをじっくり検討すれば必ず見つかるはず。
 だから怖くはない。
 今までだって、そうやって1つ1つを乗り越えてきた。
 今度だって同じことだ。

 そう思ってるから、それが相手には自信に見えるんだよね。

 まぁボクも、自身ありますよって顔で喋るようにはしてるんだけど。
 そうじゃないと不安や不信が生まれちゃって、その不安感が仕事の足を引っ張るから。

 コイツに任せよう、身を委ねちゃおう。

 最初の段階でどれだけそういう気持ちに近づけられるか。
 ボクは商談をそういう勝負だと思ってるんだよね。

 だからボクは雑談をいっぱいする。
 ボク自身に興味を持たせるようにしたいから。

 だって作品はまだないから。
 過去の作例をどれだけ見せても、それは別な仕事のもの。
 今回が同じになるわけじゃない。

 相手には、今の時点で「買う」という決断をしてもらわないと仕事にかかれないのだけど、その買うべき作品は存在していないんだ。
 だから「作者=期待した作品を生み出す可能性のある人間」を買ってもらうしかないんだ。

 ここで大事なのは、買ってもらうのはあくまでも可能性だってこと。

 作者を信じて、作者も一所懸命それに応えようとしたとしても、期待通りにはならないことだってある。
 結果を出す気でやるけど、出せると保証はできないんだよ。

 そして、例え結果が期待以下であったとしても代金はもらうしかない。

 制作者を選ぶってのはギャンブルなんだ。
 そのギャンブルのリスクを、こっちに回されてはたまらないのよ。
 馬券が当たりならお金払うけど負けたらソッチで払ってよね、なんていう話には乗っかれない。

 アタリマエのことだと思うんだけど、これがわかってない人はけっこう多い。
 だから延々と気に入るまで直しをさせたり、ギャラを出し惜しんだり、ヒドイ時には払ってくれなかったりする奴が出る。

 アホなのか。
 テメーのギャンブルのツケはテメーで払え。馬に払わせるな。
 馬だって一所懸命走ったんだぞ。

 こういうふうに言えば、誰でもわかってくれるとは思うんだけど、わかりすぎると負けたときのリスクを怖がっちゃって逃げ腰になりすぎたりもする。

 それはそれで困る。
 最初から負けても怖くないギャラしか用意しないといったことになると、勝てる戦いにも勝てなくなる。

 だから雑談。

 ジョークで笑わせたり、ウンチクで感心させたりしながら、その中に「そういうこと」をちょっとずつ忍ばせる。
 ちょっとずつ「あ、コレってギャンブルなんだ」と気付かせていき、そのリスクも理解させ、でもソレを理解する頃にはボクへの期待のほうが上回っている……という心理に誘導したいわけ。

 一気にやると整理しきれずにリスクだけが印象に残ってしまう危険もあるから、時間が取れるようなら雑談に持ち込んで、ダラダラとやるの。
 相手は無駄話に付きあってるつもりで、コッチも無駄話してるんだけど、実は真剣勝負なのよ。

 なお、どんなに時間をかけたとしても、最初の商談だけで完全に納得させるなんてことは無理だ。上手くいって、とりあえず今日のところは納得、という程度だろう。

 だから今後も、仕事を続けながら同じことを繰り返し、形を変えて感じさせていかなきゃならない。
 直球でウルさく言うとクド過ぎて嫌われるから、ソレと感じさせずに、最初のときのことを思い出させるような感じが望ましいと思っている。

 それもまた厄介ではあり、いつもちゃんとコントロールできているわけでもないのだけど、そういうもんだと思って折衝するように心がけているんだ。

 とにかく、この対面で受注は確定した。
 後は実際に作品を作りながら、様々なことに対応していくことになる。

※補足
 ボクは、こういう感じで実際に会って相手の空気をうかがい、自分の色を流し込む部分を重視しているけど、誰もが話すのが得意なわけじゃないだろうから、そういう人は別な方法を考えてみてね。
 他の方法で同様な結果を生むにはどうすればいいか、というだけではなく、ボクが気にしているような部分にまでは気を使えないから全く別な考え方でいこうというのでもいいんだ。そこをやらないが故に生じるリスクがあるとしても、そのリスクの背負い方ってのを考えればいい。
 営業や打ちあわせ、企画、制作、納期、請負額。1つの仕事の様々な部分にリスクがある。ボクは制作段階になってから面倒なコトになるのが嫌だから、そうならないように営業段階で工夫をしてるけど、営業で対人折衝なんかするより制作で直しが何度も出るほうがマシって人だっていると思うんだよね。
 ようするに仕事の負荷(ストレス)を、どう割り振ったら自分に合うかの問題なんだ。ボクのやり方は「ボクとウチのスタッフたち」にとってバランスのいいやり方ってだけで、人によってまるで違ってくると思うんだよね。

 

お客様からのメール/その6

うるの 様
たいへんお世話になっております。○○(某大手マスコミ)の☆☆です。
先ほどはお足元の悪い中ご来社いただき、誠にありがとうございました。

カソクキッズの画面からあふれ出るエネルギーそのままのうるの様にお会いできてとてもラッキーでした。
ノーベル賞科学者5人を向こうに回してパワー負けしないうるの様のエネルギーをぜひ今回の××××漫画にも注いでいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

1.シナリオをつくっていただくための参考資料ですが、以下のサイトをご覧ください。
(参考WEBページのURL複数記載)

2.マンガに盛り込む要素について
お渡ししたマンガシナリオのたたき台をテキストでお送りします。
また、途中ですが、マンガに続く「××××Q&A」(解説ページ)のテキストとラフイメージをご参考までにお送りします。お送りしたのは4ページものですが、実際には、見開き2ページ×3の合計6ページになると思います。

3.スケジュールについて
○月○日までに、マンガのシナリオとラフイメージ(図も含む)をお送りいただけますでしょうか。やり取り後、○月中に☆☆☆(冊子の監修者)に送りたいと思います。
その他ご必要な資料や不明点などございましたらお知らせください。

このたびのご協力に重ねて厚く御礼申し上げます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
(以下、書名)

 

「お客様からのメール/その6」補足解説

 先方からは「カソクキッズの画面からあふれ出るエネルギーそのまま」とか言ってもらえたけど、まぁそれはね、打ち合わせは戦場だからアツくならざるを得ないってことなんだよな。
 見た目は談笑してるけど、心の目で見れば弾丸が頬をかすめて飛んでいくような状況だからさ。

 くっ、今マジでカスったぞ。ヤベェ。

 そんな感じなんだから、そりゃアツくなるよ。
 身体はアツくなりながら頭はクールでなきゃ、みたいな状態だよね。

 他にも「ノーベル賞科学者5人を向こうに回してパワー負けしない」とか書いてくれているけど、これは先方の勘違い(笑)。

 確かにノーベル賞科学者を相手にさせていただいているけど、一人だけだよ。
 他の方々までノーベル賞科学者じゃない。つ~か、ノーベル賞学者が5人も参集するプロジェクトって、どんだけだよ!?

 あ、ちなみにノーベル賞を受賞してないからって、他の方がスゴくないってコトじゃないよ。みんなスゴい。
 少なくともボクから見れば、ノーベル賞もそうでない人も区別はつかない。
 全員が仰ぎ見る人たちなんだ。

 そういう人たちに幾人も集まってもらって、毎月一回の個人授業を8年間も受けてきたんだから、ボクは、ものすごくスペシャルな体験をしている。
 人類全体で考えたって、それほどの英才教育は滅多にないんじゃないかと思えるほど。

 なので、そのことは、また別な本にまとめさせてもらおうと思っている。

 漫画の『カソクキッズ』本編だけじゃなく、その裏側も本編に負けないほど面白かったんだから(ミーティング中はいつも「コレをニコ生でライブ中継したら、めちゃくちゃウケるだろうなぁ」って思ってたほど)。

※その「ミーティング中を含むカソクキッズの裏話」は、このブログ上で連載記事としてまとめています。よかったら「メニュー→カテゴリ→カソクキッズ」から選んで読んでみてね(笑)

 

(「延々とつづく修正とのつきあい編/04」へ→)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

うるの拓也の電子書籍シリーズ各巻好評発売中!(詳しくはプロモサイトで!!)