依頼者との交流編10(メール商談ライブ)
お客様からのメール/その13
うるの様
ご提案、ありがとうございます。
いろいろとご多忙の中、作業していただき、ありがとうございます。
これから内容を検討します。
○○さん(監修者)のほうは、急ぎの書類作成があるので、検討に時間がかかるかもしれません。
取り急ぎ、お礼まで。
(以下、書名)
お客様からのメール/その14
うるの先生
○○マンガ、楽しく拝見致しました。
一般人に向けたうるの先生のお話のまとめ方、とても参考になります(今ちょうど来週月曜日にシンポジウムで○○と▽▽の話をすることになっており、スライド作成中です)。
いくつかご修正を依頼したい点がありますが、上記スライドも参考資料になるかと思いますので、後日お送りしたいと思います。以下につきましてご検討をどうぞ宜しくお願い致します。
第1話
・p2 ミトコンドリアの数の概念について
ミトコンドリアの数として述べられているのはmtDNAの数のことで、各細胞に数千コピー数のmtDNAが含まれている、というのが正しいです。ミトコンドリアDNAはコピー数として数えられますが、ミトコンドリア自体は形態が変化することもあり、数として数えられないと言えます。
・p6、p8 ミトコンドリアDNAの持つ遺伝子
1割程度の”DNA”は”遺伝子”とするのが正しいと思います。
この流れでDNAと言うと、個々のデオキシリボ核酸(一塩基対)を指し、遺伝子というとひとかたまりの遺伝情報を含むDNAを指すことになります。ミトコンドリアを支配している”遺伝子数”は約1500と言われていますので、1割の遺伝子、9割の遺伝子という言い方がいいかなと思いました。
第2話
・p4 精子mtDNAの数は卵子のそれよりずっと少ないという量も関係しているかもしれない。精子のmtDNA数は百コピー未満、卵子は数十万コピーと言われていますので、比率にして0.1%未満。これを検出できていないだけの可能性もあり。
・p5
授精後の受精卵には疲弊したミトコンドリアを分解するしくみがあります(オートファジー、ミトファジー)が、これは精子ミトコンドリアだけをターゲットにしたのではなく、卵子にもともとあるミトコンドリアもターゲットとなります。
・p6
クローン家畜では、体細胞のミトコンドリアDNAが混ざり、子孫にも伝わっている例が多数示されています。その伝達の仕方は個体によって違っており、混じった集団がばらばらに分配された結果と思われます。
(後日スライドをお送りします)
(以下、書名)
「お客様からのメール/その14」補足解説
来た来た来た~~~~っ!
具体的なツッコミ!!
これを引き出すのがネームの大事な仕事の1つでもあるんだ。
根本のストーリーの部分でNGだらけだと困っちゃうんだけど、個々の解説レベルでは、こういうツッコミが来るほうがありがたい。
ボク研究者じゃないから、いくら勉強しても勘違いしてることのほうが多いもんね。
それにね、こういう個々の部分を指摘されるってコトは、大筋ではオッケーということなんだ。
そこさえ感じられれば、自信を持って先に進める。
ちなみに、こういう専門的な分野を扱う作品で、ガチの研究者に自分のネームを見せるのって、ちょっと恥ずかしい。
漫画だって1つの論文みたいなモンだからね。本職のプロに向かって、ド素人が(カンニングOKだとしても)自分なりの意見をするってのはイタタ……だったりするのよ。
でも、それをビビってたら仕事にならない。
こっちは素人なんだ、間違ってて当然、バカでけっこう!
そう開き直らないと広報のお仕事はできないのよ。
なお、全体のストーリーには問題なくても、こういうツッコミのせいで変わってしまうことは多々ある。この例の場合は第2話ネームについてツッコまれていた「精子mtDNAの数」ってトコがイタタ……だった。
そこのニュアンスが変わると、全体を見直さなきゃって部分だったんだよね。
でも、こういう意見をもらったコトで、ボクのレベルも上がり、より深く理解できるようになったから、それを踏まえて改訂案を考えるだけだ。
そもそも、本職の研究者とガップリで、こんなネタを教えてもらえるなんてワクワクするでしょ。そんな体験、滅多にできないんだから、それだけでもね、やりがいあるのよ。
(ちなみにKEKでは素粒子物理学や物質構造、この研究所ではバイオ系と様々なコトを教えてもらえたので、その知識は丸ごと、ボクが深く関わっている地元ヒーロー『時空戦士イバライガー』の設定にフィードバックさせていただいている。間接的にそれぞれの分野のプロ研究者の監修を受けているようなモンで、すっげぇありがたい。こんだけの知識動員してやってるご当地ヒーローなんて他にあるか!?)
うるの送信メール/その14
うるのです。
ご連絡ありがとうございます。
またご多忙な中で、お読みいただき、問題点をご指摘くださったことにも感謝いたします。
ご指摘いただいた箇所は、すべて見直し、すでに改定案もまとめました。
まだアップロードはしていませんが、ご指摘の主旨に基づいてセリフや絵、解説文の改定、一部に脚注の追加などを行っています。
(まだお見せしてないので恐縮ですが、ボクとしては、今回のご指摘分はうまく処理できたかなと思っています)
作成されているスライドを資料としてお送りくださるとのことですので、それを拝見して、使い方を検討した上で、今回ご指摘のカ所を含む改訂版をアップしようと思っています。
以上、とりいそぎ。
(以下、書名)
うるの送信メール/その15
うるのです。
もう1つのメールで書きましたが、○○様からいくつかご指摘いただいた箇所については、すでに対応しましたので、ご安心を。
(こういうコトは、そのときスグにやったほうがいいので、メールを読んですぐに内容の改定作業しちゃったのです)
ご提出が遅くなったにも関わらず、快く対応してくださったことに感謝いたします。
どうぞ今後とも、よろしくお願いいたします。
(以下、書名)
「うるの送信メール/その15」補足解説
うわ~~~っはっはっは!
どんなモンだい!!
と偉そうに言えるほどじゃないのだけど、メールにも書いた通り、ちょっと厄介かな~と思った部分も含めて、ネームの直しはツッコミをもらった翌日には終わっていたのだ。
ツッコまれたことで気持ちが刺激されて「うぉおおお!」ってテンションが上がったおかげで、難しいと思った部分も「ん? アレがそうならコレはこうなるから……おおっ、それならコッチをこうしてアッチをこうすればイケルじゃん!」と、一気にまとまってしまったのだ。
まとまったのにゲンブツをアップロードしてないのは、構成の見直しが終わっただけで、アタリの絵を描き直してないから。
セリフが決まっていて、ボクの頭の中には絵も出来ているとはいえ、それだけじゃ一般の人には伝わらない。
それに、イケルと思っても、しばらく寝かせてみないと危ないもん。
どっかでツジツマが合わないとかね、そういうのがあり得るからねぇ。
でも、イケそうだと思えたのは間違いないので、この段階では、とにかくそのことだけ伝えておいたわけ。
そうしておけば相手も安心するからね。
お客様からのメール/その15
うるの様
早速の対応、ありがとうございます。
こちらこそ、迅速な対応にお礼いたします。
いろいとと面倒をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
(以下、書名)
お客様からのメール/その16
うるの先生
大変お世話になっております。
早速のご対応ありがとうございました。
遅くなって申し訳ありません。昨日使用したスライドPDFを送付致します。
ご検討どうぞ宜しくお願い致します。
(以下、書名)
「お客様からのメール/その16」補足解説
ホラ、実物のネーム見せてなくても安心してくれたでしょ。
こうなれば、しめたもの。
後はどんどん描く。ここまでの付き合いややり取りで、それなりに自信を得ているので、こういうときは描いちゃったほうが早い。
セリフや解説コラムにわずかな修正が出る可能性は十分にあるのだけど、そんなのは、いつ、どの段階でも同じことだ。
作画が終わろうが、納品まで終わろうが、直しが出るときは出る。
だから、絵そのものは直さないで済みそうだと判断できたら、ボクはさっさと先のステップに進めてしまう。
これが初めてのお客だったら、そういうわけにはいかないけど、ここまでに何十話も描いているからね。
うるの送信メール/その16
うるのです。
○○マンガが、ほぼ完成に近いところまで来ました。
以下URL(以前はネームだった)を更新してありますので、進捗をご確認ください。
■○○編マンガ(全3話)
(URL)
前回のネームでご指摘いただいた箇所は、ボクなりの修正を加えてあります。
なお、一部(2話6ページと3話4ページ)を除いて、お送りいただいた資料を元に解説の図版などを入れてありますが、コレはまだダミーのようなものです。
この形に近い状態で使うにしても、図を漫画用に描き直す、レイアウトもオリジナルに作り直すなどを行う必要がありますし、そもそも挿入した図版が適切かどうかなどの検討も必要でしょう。
(漫画自体に関しても、ボクの理解、解釈が誤っている可能性はありますから)
ですので、この辺りでもう一度、お打ち合わせのお時間をいただけませんでしょうか。提示する資料およびその扱い、漫画自体の最終校正や調整などを打ちあわせさせていただき、それを経て最後の仕上げに入りたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
(以下、書名)
「うるの送信メール/その16」補足解説
というわけで、このメールでは「ほぼ完成」にしたモノをいきなりぶつけた。
あとホンのひと手間加えるだけで完成、と言う状態なので、ようするに漫画としては描き終わっている段階だ。
ここまでは、大抵は割とスムーズなの。
そんで、ここからが長いの。
ほとんどの漫画家が終わったと思う段階や、まだ自分の出番じゃないと思う段階こそが長い。
そこを理解していないと広告や広報の漫画はやれないんだ。
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。