依頼者との交流編04(メール商談ライブ)

2018年7月24日

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お客様からのメール/その4

うるの様

お世話になります。
先ほどのお電話、失礼しました。
お話ししたメールを転送しますので、ご検討いただければ幸いです。
よろしくお願いします。

(以下、書名)

 

うるの送信メール/その5

うるのです。

■お見積りについて
経理の方からご指摘があったようですが、確かに先のメールでのボクの計算が間違っていました。

当社WEBサイトで公表している割引適用は○○ページ(総額○○万円)以上からのもので、今回は適用されないはずでした。自分で設定したのに割引適用範囲を勘違いしていました。すみません。

私たちはWEBページで価格表を明示しているのですが、現実としては「いくらの予算で何ページ描いてくれ」というように、こちらの価格設定とは無関係にオーダーされることが多いのです。
そうした場合、提示された予算がこちらの価格表と合致しなくても、請け負うのに無理がない範囲と判断できるのであれば「こちらの価格設定の根拠をご説明し、ご理解いただいた上」でお引き受けしています。
(元々高い値段を吹っかけているのではないのだ、ということをキチンとわかっていただくことで、信頼が生まれるからです)

ただし、こうした仕事は単なる作業ではなく「創作」ですから、作者として、どうしてもあと1ページ欲しい、そのほうがずっとイイモノにできるといった場合もあるわけです。そこで、そうした場合には追加料金の対象とならなくても、依頼者と相談してページを追加させていただく場合もあります。

これは本来のページ内でも依頼者の条件を満たすものは作れるけれど、増ページしたほうがもっとよくなるといったことであり、作者としては、よりよいモノが見えればそれを目指したいわけです。もちろん、そのほうが依頼者にとってもよい結果につながるわけですから。
ただ予算枠が決まっていて、それ以上は無理なのだから、いくらイイモノを作るためであっても、ない費用は出て来ないのが当然です。
だから、そこでボクは判断しなくてはならないわけです。リスクがあっても作者として上を目指すべきか、業務条件を守ってあきらめるべきか。
そして大抵は上を目指してしまうのですよ。
たとえその分のギャラが頂けなくても、やはり上を目指したくなるのが「作者」というものですから。

ただの「業者」であれば料金外のことはしないでしょうが、我々は書類上では業者であっても、実際には作者ですから。
「制作」は杓子定規な数字に合わせることもできますが「創作」はそれだけでは済まない部分があるのです。このこだわりを捨ててしまっては、我々はただの業者になってしまい、作品に魂を与えることができなくなりますから、踏み込むべきときには踏み込める覚悟は必要だと思っています。
(KEKで長期連載できているのは、正にそういう作者の想いを受け止めてくださるからで、そうであるからこそ、それに応えてもっと上を目指し続けられるのです。追加費用を計上していただける場合はありがたく頂戴しますが、無理していただくよりも次の機会をまたいただけるといったことのほうが嬉しいので「ボクのこだわり」に対して追加費用をいただくことは滅多にないです)

世の中には残業代が出ないサービス残業などという言葉がありますが、自分自身の野心のために自ら望んで自主残業することだってあるはずで、人の何倍もがんばりたいと思うことまで過ちとする必要はないと思っています。それを他の人にまで押し付けるのはよくないですけど。

■WEB作成費について

もう1つ「前回はWEB作成費がなかったのに今回はあるのは何故なのか?」というご指摘もあったと伺っています。

前回「WEB作成費がなかった」からといって、WEBを作っていないわけではありません。
前回のシリーズでは、最初から描くべきページ数が決まっていて、しかしその量を描いてしまえば、WEBを作る費用が出なくなると確定していました。
そこでボクは奇策を提案させていただきました。

マンガを描いていく工程では、何度か進捗をご覧いただいて、校正を行っていただく必要があります。ですが、その度に出向いていれば、それもまたコストとなります。
このため、オンラインで校正チェックをしていただく。
そしてその「校正用」に使っていたWEBページをそのまま納品版とさせていただくのであれば、WEBページを作ったのではなく、業務遂行上必然的に用意されるモノ(漫画制作作業の一部)という解釈ができて、WEB制作費を計上しなくてもWEBを用意できる、と。
そういう変化球だったわけです。

これは私たちが長年にわたって数多くのWEBサイトを手掛けてきて、そうした「当社独自のフォーマット」をたくさん保有しているからこそ、できたことです。

でも・・・。
前回がそうだからと言って、それを常に前提とするのは問題です。
前回はやむを得ずそうした形としましたが、あくまでも苦肉の策であって、そういう対応があって当然というものではないはずです。ですので、予算的に、例えわずかでもWEB制作費が計上可能であるならば、それも正式に見積りに加えていただきたいと思い、あのような試算をしてみたわけです。

—以下、まとめ的なこと—-

ただし、割引率の計算間違いをしていたりするように前回メールのものはあくまでも試算・・・というよりも大雑把に実現の可能性を考えてみたということであって、アレ自体が正式なお見積りというわけではありません。
不具合や計算間違いがあったとしても、若干の内容調整程度で実現できそうだという根拠として試算例をメールに付記したということに過ぎないですから。

例えば前回メールでの見積りには、WEBページのインデックス画面に表示すべきであろう「扉絵」は計上されていません。
これも劇中のカットを再利用するといった方法で何とか処理できるのですが、本来であれば専用に用意すべきでしょう。
今後、こうした部分も含めて協議していき、お互いに合意できる着地点を見出していくのが、最も建設的な方法だと思うのです。前回メールの見積りは「この状態から検討を進めていっても十分現実的」であることを示すだけのものと解釈していただきたいわけです。

このため、WEB制作費の件に関しても、事情がどうあれ、前回までの請求にはその項目は計上されていないのだから、今回についても認めるわけにはいかない、というのであれば、そのように見積りを検討し直します。
ただし、「こうした仕事ではWEB制作費はタダが当然」と思われてしまうと、ボクだけでなく、今後の業界全体にとってよくないことなので、少なくとも現場レベルでは事情も含めてご理解いただいておきたいと思ったわけです。今後、ボクではない誰かにイラストや漫画を発注することだってあるはずですし。

そもそも、あのWEB制作費自体、非常に安く、原価のみのレベルで試算したものです。通常のWEB制作の仕事で、ああした額面で請け負うことは原則的にありません。
ボクたちは、KEKや○○○○研究所、その他教育機関や公共機関など「社会のためのモノ」の場合には、社会の一員として「協力」しようと考えているので、特別な対応をさせていただいています。
ただし、そうした「対応」は、私たち自身が自主的に行うものであって、誰かに要求されて行うものではありません。
政府の「クールジャパン構想」などでは、アニメや漫画制作者の無償協力を呼びかけていますが、無償なら仕事でも何でもないので、そうしたことには応じられません。言われたからではなく自らそうしたいからやるのであって、またそうだからこそ、無償だろうが有償だろうが常に本気で取り組めるのです。これは自分の理念や志の問題なのです。

こちらの勝手なイメージではありますが、恐らく最終的には漫画は全部で15ページ(WEB上では22ページ半となるがちょっとした工夫で23ページとしてWEB化できるため、全3話は8ページ2回、7ページ1回という形でまとめることができる)と考えています。
この15ページに扉絵1枚を○万円相当と考えて計上すると「漫画単価○万円×15枚=○○万円」と「扉絵○万円」で合計○○万円。消費税8%を加えても○○万円以内となります。(WEBは前回同様の作成方法で、予算ギリギリに圧縮)
この辺りが、たぶん合理的な落とし所になるだろうと想定しております。

ただし、実際に描く内容についてはこれからレクチャーを受けるのですから、その結果によって若干の変動はありえます。
予算や契約条件がどうだからといっても、お金のことばかり気を取られてお役に立てないものを仕上げてしまうなどいうことは、決してあってはならないことですから。
(ただボクも30年近く、この仕事をやっているので、見込みが外れることはそうそうないとも思っていますが)

(以下、書名)

 

「うるの送信メール/その5」補足解説

 前回に送った見積りに致命的な間違いがあり、そこにツッコんだお電話をいただいた。
 いやぁ、うっかりしてたなぁ。

 というわけで考え直して再度の提案をしたのが、先のメール。

 


 メール本文中にもあるように、作者として描きたいモノは描きたい。
 広報用の作品でも、これはボクの作品なのだ。
 予算がいくらだろうが、自分が納得できないモノは描きたくない。

 なので予算的には8ページでも9ページ描かせて、というようなコトはある。

 その増えた分を、値引きする気はない。
 でも、余計な予算をもらうつもりもない。

 ボクが勝手に1ページ描き足しているだけなの。
 自分への投資であって、お客に対してじゃないから「代金は要求しないけど値引きでもない」なのだ。

 いや、お金がいらないわけじゃない。ノドから手が出るほど欲しい。

 けれど、ゴネたところで予算が増えないことも知ってるの。
 予算内で収めるためには8ページで仕上げるしかない。

 それでも後1枚が欲しい。それで全然違うモノになる。満足できる仕事になる。
 そういうことって時々あるのよ。

 冊子化するときの面付とかね、どうしようもないときにはどうしようもないのだけど、この件の場合はそういう問題はクリアできるんだ。

 そうなるとイイモノにしておきたいのよ。
 今後のためにもね、少しでもイイモノにしておかないと。
 それまでに描いた作品を見せて次の仕事を取っていくんだから、その品質を高めていくのは営業的にも大事なことなのよ。

 だから依頼者のためじゃなく、自分自身と自分の作品のために、ボクは踏み込んじゃうことがある。
 メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットのほうが大きいと思ったら踏み込みたいの。

 けど、ソレを値引きと思われては困るんだ。
 そういうコトをして当然と思われちゃうのは絶対にマズイ。

 だから、メールではそのへんをしつこく書いている。

 踏み込みたいときには踏み込ませてくれ。
 でもソレはボク個人の意思であって、要求されてやらされるわけじゃないよ、と。

 


 さらにWEBの制作費についても言及している。

 以前のときにはね、出向く手間を省くためにオンラインで校正チェックしてもらっていて、そうしたオンライン校正のために使っている「ウチ独自のWEBフォーマット」を使った。

 校正用のフォーマットを、そのまま公開用として使わせるという裏技なんだ。
 それなら、WEBには制作費かけなくて済むからね。

 でも、すでにあるモノを渡すだけだって、本当は代金をいただくべき。
 前回は目をつぶってあげたけれど、毎回じゃ困る。

 だから今回は、同じ方法を使っていても最低限の代金はいただくことにしたの。
 制作者に正当な料金を払うというのを、ちゃんと理解してくれないと長くは付きあえなくなるでしょ。

 


 限られた予算で最大限の成果を出すために、ボクは色々な工夫をする。

 でもそれはボク自身の企業努力であって、依頼者に要求されるようなことじゃない。
 そのことを、しっかり分かってくれる相手じゃないと、ボクも頑張れないし。

 今回の担当さんは、そういう気持ちをわかってくれそうな相手だったんだ。

 だから直球を投げたの。
 そして受け止めてくれたの。

 なお、この仕事は最終的に「何も値引きはしないカタチ」でフィニッシュしている。

 ちょっとだけ制作方法に工夫(フォトショップのレイヤーON/OFFだけでWEB版と冊子版で変化するように最初から作っておくなど)をして、ボク自身も余計なページを描き足さずに済んだ。

トビラページの絵だけは、納品後に描き足した。これは要求はされていなかったので、以前の絵を使い回す前提でやっていたのだけど、ウチの作画スタッフから「絵柄が古いままになってるのが嫌だから、こっちで描くから差し替えて欲しい」と要望があったので、その気持ちを汲んで、依頼者にも「そういうわけだから使ってやってくれ」と頼んで、後で差し替えてもらったの。

 

補足:残業などについてのボクの考え方

 先のメール本文中に「自分自身の野心のために自ら望んで自主残業することだってあるはずで、人の何倍もがんばりたいと思うことまで過ちとする必要はないと思っています」という文章がある。

 これはちょっと補足しておきたい。

 ボクはボクのためには頑張れるし頑張りたいけど、会社のためには頑張れない。

 会社がボクの一生を保証してくれるとでも言うのなら考えるけど、そんなコトはあり得ない。
 未来は誰にも読めないから、どれだけ頑張ろうと切り捨てられるかも知れないし、会社がツブれてしまうかも知れない。

 だから会社の命令で残業することになるとしても、それに応じることが今の自分に必要だと判断したから残業するのであって「会社の命令だから嫌だけどやる」ではない。
 ボクは気が短いんだ。頭ごなしに言われたら、例え損をしてでも逆らう。

 ただし、自分のために頑張るにしても、会社の設備機材を使い、電気も使っているのだから、自分だけのためじゃ筋が通らない。
 自分のためにやることだけど、結果的に会社のためにもなることでないと、勝手な残業はできないと思っている。

 ボクは今までに6~7回、就職したことがあるんだけど、こういう考え方が通らない会社に所属したことはない。
 最初に自分はそういう奴だと必ず話して、それでいいと言われたときにだけ就職した。
 それでも最終的にはハミ出しちゃって、会社員を続けることは出来なかったんだけど(苦笑)。

 いずれにしても、頑張りたい気持ち、好きな気持ちを会社の利益に利用するのは卑怯だと思っている。
 また(例え残業代を払ったとしても)本人にとってキツすぎる過剰な残業を求めるのは理不尽だと思う。

 だからボクがどれだけ頑張っても、スタッフに同じ頑張りは求めない。

 頑張らなきゃ届かないモノはあると思うし、ボクは届きたいから頑張るけれど、届かなくてもいいと思うのだって自由なんだ。
 いや、ボクとは違う方法で届く人だっているだろうし、そもそも全然別な場所を目指している可能性だってある。

 同じ場所で働いていたって、個々人のゴールは違うはず。
 当初は「共に同じゴールを目指そう」と盛り上がってたとしても、そんなのは旅の途中で変わっていくものだ。

 頑張りたい奴は頑張ればいいし、そうでない人はそうでない道を進めばいい。

 そもそも、漫画とかデザインとかっていうのは、自分でもっとやりたいと思ってこそ伸びるものだ。
 自主練習は自主的にやることに意義があるんだ。
 やれと言ってしまったら、その時点で自主練じゃなくなって、効果も望めなくなる。

 だからボクは、ボク以外に頑張りを求めない。
 例え頑張ってくれたとしても、それに応えられるとは限らないし。

 けど、独りぼっちでやればいいとも思わないから、頑張らない人とでもやっていける形を作ろうとしてきたの。
 頑張らなきゃやれない仕事もあるけど、そのときは自分が頑張ればいい。
 自分の頑張りで乗り切れることをやればいい。

 そう考えた上で「自分のために頑張りたい人」と出会えたら、それはそれでいいと思っていて、今のスタッフはそういう子たちだから、長く続いてるのよね。

 これからも、ボクのためになんか頑張っちゃダメだよ。
 どんなときも、自分のために頑張ってね。
 そして、その頑張りをわかってくれる人を大事にしてね。

 

さらに蛇足の追記:休日出勤しないのは甘すぎる?

 以前に、とある同業者さんから、こんな声を聞いた。

「ウチで使ってるフリーのデザイナーに金曜日の夜に仕事を頼んだのよ。月曜までに仕上げて欲しいって。そしたら土日は休みなので無理だって言われちゃってさぁ。はぁ?って思っちゃったよ。土日は仕事したくないとか、フリーランスなのに何考えてんだろ? 甘すぎるよねぇ」

 ボクは、ふ~んという感じで聞いていて、特にコメントはしなかった。
 先方はボクも同じ考えだろうと思っただろう。

 実際、ボクは土日でも平気で仕事している。特別な用事があるときを除いて、仕事があるなら、いつでもやる。正月でさえ休まない。
 だから同意に違いないと思って、ボクにボヤいたんだろう。

 でも、ボクは全然そうは思わない。

 土日はやらない。その人は、そういうルールでやってるというだけだ。何の問題もないじゃないか。
 それが気に食わないのなら、土日でも引き受ける人に頼めばいい。
 こんなのは、定休日のお店に行って、休むなんてけしからんと言ってるようなもんで、無茶苦茶なのはアンタのほうだよ。

 それにボクだって、もしも土日にやれと誰かに言われたら、全力で断るよ。

 ボクが土日にもやってるのは、ボク自身が勝手にそうしているというだけのことだ。人に言われて従ってるわけじゃない。
 平日は電話やメールの応対などで落ち着かないこともあるし、スタッフに指示したり、教えたり、手伝ったりもしなきゃならない。だから平日はそっちを優先して自分の作業パフォーマンスを落とし、その分を集中できる土日に回したほうがラクとかね、そういうことでやってるだけなの。

 なので、誰かに土日勤務を要求されてるわけじゃないんだ。

 まぁ時にはね、どうしても土日に対応せざるを得ない仕事もあるから、そういうときは仕方ないんだけど、そうした「自分でも止むを得ないと思えるとき」以外は、土日対応は引き受けていない。結果的に土日にやっちゃってるというだけで、それを当然と考えて依頼してきたら「くらぁ!ナメてんのか!!」と、はっきり言う(本当に言ったこともある)。

 フリーランスが大変なのは、確かだ。
 土日もやるくらいの気持ちでないと危ないのは事実だ。

 でも、それは本人の心構えの問題であって、周囲が要求していいことじゃない。
 自分が土日返上で頑張っていようが、他人に求めちゃいかんのだ。

 電話してきた同業者は、それがわかっていなかった。
 だからボクは、その人の仕事はあまり引き受けていない。既存の平日だけで十分な仕事は惰性で続けているけど、それ以上の関わりは増やさないようにした。
 ボクは土日も平気だけど、それでも、自分の価値観を他人に押し付けたがるような人と深く付き合っていいことはないと思うから。

 

(「依頼者との交流編05」へ→)

 


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