小説版イバライガー/第19話:超時空からの使者(後半)

2018年5月12日

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Bパート

 誰かに呼ばれた、と感じて、思わず急ブレーキを踏んだ。
 漫画雑誌や、ガチャガチャのフィギュアや、食べかけのポテトチップなどがフロントに押し寄せてきて、クルマの中はメチャクチャだ。
 テキトーにかぶっていたヘルメットが脱げて跳ね返り、鼻にぶつかった。すげぇ、痛い。

 停まった瞬間、ミニライガーたちは、飛び出してしまった。
 一体、なんなんだ? イモライガー=マーゴンは、鼻をこすりながら振り返った。

 ミニたちを連れて、援軍に出発したところだった。
 走り出して10秒も経っていないので、まだ基地の敷地内……というよりも、建物の目の前だ。

 駆け戻ったミニライガーたちを追って、屋内に飛び込んだ。
 転びそうになりながら、博士たちがいる研究室に向かう。

 さっきの気配は。
 今も感じている気配は。

 まさか。まさか!

 開けっ放しになっているドアにつかまって、止まった。

 マーゴンが想像していた通りの光景が、そこにあった。

 初代イバライガーが、起き上がろうとしている。
 全身につながっていたケーブルが、引きちぎられていく。
 博士たちは唖然として見つめている。

 立ち上がった。
 だが、よろめいている。ミニライガーたちが慌てて駆け寄って、支えた。

「イ、イバライガー!? 起きたの? 大丈夫なのか!?」

「シンが……ワカナが……危な……い……彼らは……わかって……いない……。このままでは……エモーションに……食われる……」

 エモーションに食われる? シンたちが? 何言ってんの?

 ミニたちに支えられながら、イバライガーは部屋の外へと出て行く。

「ゴゼンヤマ博士、何がど~なってんの!?」
「わからない。突然、目覚めた。まだ動ける身体ではないはずなのに……」

 シンやワカナが危ないと言っていた。それを感じ取ったから目覚めた?
 そういえば、こちらの世界に戻ってきた直後も、シンに反応していたっけ。

 それにしても、エモーションがシンたちを食べちゃうって、どういう意味なんだ?

 以前、何となく感じていたことがある。
 初代イバライガーが、時空の狭間に消える前のことだ。

 シンたちが、エモーション・ポジティブを使う訓練を始めようとしたとき、初代は何か変だった。
 エモーションに関わって欲しくない。マーゴンには、そんなふうに感じたのだ。

 その後も、その感じは続いた。
 イバライガーは、二人がエモーションを使いすぎることを恐れているような気がした。

 今回も、そうなのかもしれない。
 実際、シンもワカナも、限界以上に力を振り絞ってるに違いない。
 無茶でも、無理でも、少しでも可能性があればやるのが、あの二人だ。
 特にシンは、普段は冷静っぽいくせに、いざとなるとブチキレることがある。

 イバライガーは、それを止めたいのか。止めないと、何が起こるっていうんだ?

 マーゴンは博士たちとともに、イバライガーを追いかけた。

「行か……なくては……シンとワカナを……救わ……なくては……!!」

 イバライガーは、つぶやき続けている。
 言いながら、膝をつきそうになっているのを見て、思わず怒鳴った。

「バカ言うなって! そんな身体で戦いに行けるわけないだろ!?」
「ちが……う……地下……だ……あのプールへ……私を……」

 プール? ボクが内装してやった銭湯のことか?
 なるほど、あそこで身体を治して、それから戦うってことか。

「いや、無理だ。初代イバライガーの自己修復機能は、まだ回復していない。今の状態ではNPLを取り込めない……」
 マーゴンの心を読んだように、ゴゼンヤマ博士がツッコんだ。じゃあ、なんなんだよ!?

「……ミニライガーR……」
 エドサキ博士が、つぶやいた。

 え? イバライガーはミニRを動かすつもりなのか?
 でも、イバライガーRが何度トライしてもダメだったんだぞ。
 今のフラフラの初代イバライガーじゃ、どうにもならないんじゃないの?

 それでもイバライガーは、地下へと降りていく。
「急……げ……。シンが……あの力に……触れる……前に……」

 あの力ってエモーション?
 どんな秘密があるっていうんだ?
 イバライガーは何を恐れているんだ?

 マーゴンは、どんどん不安が大きくなっていくのを感じた。

 ここ最近のヘンな出来事。黒い霧。幽霊騒ぎ。
 全部、つながってる気がする。

 いや、最近のことだけじゃない。
 もっとずっと前から、イバライガーとジャークが、この世界に現れたときからのことが、全部つながってしまう気がする。
 何が起こるのか。何が起きていたのか。

 地下への暗い階段を下りていくイバライガーの背中を見つめながら、マーゴンは、自分たちの運命が奈落に吸い込まれていくような気がした。

 


 赤い雨が降り注ぐ中に、シンは真っ直ぐに突っ込んでいった。
 当たれば、身体が溶ける。だが、当たらない。ワカナが必ず防いでくれる。最短距離で突っ込むだけだ。

 後方で銃声。幾条もの光の糸がシンを追い抜いていった。
 ワカナが操るエモーション・ストリングスが、雨を切り裂いていく。

 あと5メートル。届く。間に合う。

 そのとき、赤黒い塊の背後から、蜘蛛の触肢のようなものが生えた。
 PIAS背部に折りたたまれている緊急離脱用ウイングのフレームが変化したものらしい。
 何本もの爪が、伸びてくる。
 加速し、MCBグローブで打ち返し、かいくぐった。爪は、シンの髪の毛をかすめて、後方に突き立った。
 後ろにはワカナがいたはずだ。思わず振り返ろうとしたとき、上から声が聞こえた。

「止まるな! そのままっ!!」

 ワカナは、張り巡らせたストリングスを使って、空中を駆けていた。
 漫画で覚えた技ってこれか。立体機動装置かよ!?

 全て、躱した。
 新たな爪が生えてきたが、遅い。

「てめぇ、ソウマッ!! いい加減にしろぉおおおおっ!!」

 掌底を叩き込んだ。
 ワカナのストリングスも、塊を覆っている。

「そこにいるのか、ソウマ!? 応えろ! てめぇ、このままジャークになるつもりかよ!? ふざけんじゃねぇぞ! 出てきやがれぇええ!!」

 返事はない。それでも、怒鳴り続けた。
 残ったエモーションの全てを、くれてやる。いや、それ以上でも構わない。
 絶対に、この化け物を止めてやる。ソウマを引きずり出してやる。

 今のソウマは、あの日のオレだ。

 ジャークが、そしてイバライガーがこの世界に現れた時のオレたちと同じだ。
 オレは取り憑かれ、身体の自由を奪われ、それでも必死に抵抗していた。

 ナツミは救えなかった。連れ去られてしまった。
 だからこそ、ワカナだけは守りたかった。死んでも守る。死んでも戦う。

 オレを化け物にするだと?
 やってみろ。例えどんな姿になったとしても、オレは……オレは……

 オレ? あのときのオレ?

 あのときオレは……何をした?

 変貌する力に抗えないと悟ったとき、オレは何をしようとしていた?

 そうか……オレは……オレが……

 


 イバライガーRの動きが、一瞬止まった。
 ダマクラカスンの蹴りが肩をかすめる。とっさに肘のサイド・スラスターを噴射させて躱したが、プロテクターの一部をえぐり取られた。
 危なかった。戦闘だけに集中すべきだが、できない。

 この感じはなんだ?
 シンなのか?

 だが、これは。この感覚は、覚えがある。
 ブラックと戦ったときだ。あの時、身体の中で何かが目覚めたように感じた。それと自分がシンクロした。
 あの感覚とそっくりだ。なぜだ。なぜ、それをシンから感じる?

 斬撃が来る。躱さずにブレードで受け止めた。衝撃で互いに弾け飛ぶ。その勢いのまま、ダマクラカスンが大きく跳躍した。
 気配が遠ざかる。

 撤退? いや違う。奴も異変を察知したのだ。
 シンたちの元へ行くつもりか。そうはさせない。

 クロノ・スラスターが吠える。イバライガーRは、地を蹴った。

 


「……始まったか……」
 イバライガーブラックがつぶやいた。

 ミニライガーブラックは、シンたちがいるはずのPIAS施設をじっと睨んでいた。
 確かに、おかしい。

 さっきまではシンだった。でも、今は違う。何かが違う。

「ブラック、これか? これを待ってたのか?」
「これは始まりにすぎん。本当の覚醒はまだ先だ……それでも、力の一端は見ることができるはずだ……」

 力? シンの力?
 アイツに何かあるのか?

 確かにシンは、人間にしてはけっこうやる奴だ。
 でも、だらしないし、ワカナにしょっちゅう怒られてるし、ねぎの世話も下手くそだ。
 それでもブラックは、シンを気にしている。
 前回の戦いでも、シンがPIASを使ったときには感情を剥き出しにして怒鳴っていた。
 いつもクールなくせに。

 それに……時々、奇妙な感じがあった。
 シンがブラックとカブるときがあるのだ。普段はRくせぇのに、たまにブラックを感じることがある。
 なんなんだ、アイツは?

「くそっ、ここにいたんじゃワケがわかんねぇ! ブラック、行ってみようぜ!!」
「好きにしろ」
「なんだよ、行かねぇのかよ、薄情もんっ!!」

 もう待っていられねぇ。ジィ~っとしててもどうにもならねぇって、テレビでどっかのヒーローが言ってたじゃんか。
 とにかく、行く。行って、この目で見てやる。

 飛び出そうとして……コケた。

 なんだぁ、これ!?

 全く別の、けどシンのソレとよく似た気配が、後ろから押し寄せてきたのだ。
 しかも桁外れの。

 あそこは……シンたちの基地? 反応は地下だ。
 あのプールか? あそこで何が……!?

 困惑の中で、ブラックの声が聞こえた。

「……見せてもらうぞ。超時空の力を。エモーションの真の姿を……」

 


 シンが、あの力に届きかけている。

 ダメだ、その力は使ってはいけない。あの悲劇を、二度と繰り返してはならない。

 初代イバライガーは、NPLプールのふちにしゃがみこんだ。水中に丸い物体が沈んでいる。
 あれが、ミニライガーRのコアか。

 イバライガーRのデータを移植してあるという。
 この時代の技術で、どれだけ完全な移植ができたのか、不安はある。

 だが、あれが『R』なら、シンを救えるはずだ。

 ずっと動けなかったが、全て見えていた。聞こえていた。感じていた。

 自分が特異点の中に封じられている間に、この世界の歴史は、予測を超えて大きく変化している。
 シンも、ワカナも、思っていた以上に『アレ』に近づいている。
 このままでは、この世界を救えたとしても、彼らを救うことはできない。

 ダメだ。これ以上は近づけたくない。

 NPLに手を浸した。
 この損傷した身体では、NPLを制御できない。
 だが、私にはできなくても、私の中にいる者にはできる。

 いるのだろう、そこに。
 あの霧とともに、この世界に来た者。かつての世界で、一度だけ邂逅した者。
 今も私の中に、Rの中に、そしてシンの中に潜んでいる者。

 その一部を、解き放つ。

 


 初代イバライガーがプールに手を浸した途端、エキスポ・ダイナモが輝き始めた。
 水面が波打ち、渦を巻く。立ち上がり、柱となる。光が溢れる。

 そんなバカな。
 エドサキ博士は、目の前で起こっていることが信じられなかった。

 今の彼には、NPLを制御する力はないはずだ。何も起こるはずがない。
 それなのに。

 水の柱の中に、ミニRのコアが浮かび上がってきた。コアに光が集まっていく。
 光が、手を、足を、身体を作り上げていく。

 イバライガー自身の身体も、光を放ち始めた。眩しい。見えない。何が起こっている?
 凄まじい気配を感じた。圧倒的な存在感。これはエモーション?

 だが、こんな力……あり得ない。
 まるでインフレーションだ。宇宙でも生み出すかのようだ。

 声が、聞こえた。

「……目覚めろ……」
 イバライガー? 目覚めろとは、ミニRのこと?

 違う。違う。これはミニライガーどころじゃない。
 イバライガーでも、これほどじゃない。
 この地球のどんなものでも、これほどじゃない。

「目覚めろ……」
 また、声が聞こえた。

「エモーションの呪縛から……シンを解き放て……」
 呪縛? エモーションの呪縛? それは何? シンに何が起こっているの?

「目覚めろ……ハイパーイバライガー!!」

 その言葉とともに、気配が急速に膨張した。耐えきれない。意識が遠のく。

 大きな音が、聞こえた気がする。
 気配が、飛び去っていく。

 何かが生まれた。
 新しい力。予想もしなかった力。

 


「なに!?」

 流星のように、何かが突っ込んできた。
 迎撃は間に合わない。ルメージョは氷獣たちでガードした。
 それでも受け止めきれない。吹き飛ばされた。

 流星が急上昇していく。その軌道の先に、ダマクラカスンの気配があった。
 やはり弾き飛ばされた。2度。3度。
 流星は、慣性を無視したような動きで急反転している。まるでUFOだ。

 ダマクラカスンが、落下してくる。
 ダメージはさほどではないようだが、動きは阻止された。

 突然、現れた。遠くで急激なパワーを感じたと思ったら、もう目の前にいたという感じだ。

 流星が、急降下した。それを追うイバライガーRが見えた。
 2つの赤い流星が、フルブーストで突っ込んでくる。

 あの場所は。
 ルメージョは、氷嵐を叩きつけた。無駄だとはわかっている。それでも。

 シンやワカナの行動は予想通りだった。彼らによって侵食は若干遅れるだろう。だが、構わない。止められはしない。
 例え、イバライガーブラックでもだ。
 そのためにPIASを選んだ。PIASの持つ潜在力とジャーク四天王の力を合わせれば、あのオーバーブーストでさえ耐え切れるはずだ。

 そして身体を構築して活動できる状態になりさえすれば、その場であの二人を飲み込む。

 ソウマという男を囮にして、シンとワカナを取り込む。
 シンたちは、最強のジャークを生み出すための生贄となり、我らとともに生きる。それが狙いだった。

 だが、あの流星はダメだ。パワーが桁違いだ。信じられない。あり得ない。
 未完成の身体では抗いきれない。貫かれてしまう。

 行かせるものか。あと少しなのだ。
 ルメージョは、力を振り絞った。

 だが氷嵐は、直前で弾かれた。
 イバガールのウインド・フレアが、地上から竜巻のように吹き上がってくる。

 その中心を、二つの流星が貫いていく。
 おのれ。またしても邪魔をするのか。シンと自分を引き裂くというのか。ここまで来て。

 


 何かを思い出しそうになったとき、いきなり凄い衝撃を受けた。
 ジャークを感じた。ソウマを感じた。自分を感じた。その接続が断ち切られた。

 気づいたときには、イバライガーRに抱きとめられていた。
 ワカナもイバガールに抱かれている。

 何があった?
 あのPIASの塊は、どうなった? ソウマは?

 シンは、頭を振って立ち上がった。少しよろめく。
 外傷はないようだが、身体の芯に重たいものが残っているような疲労感がある。

「……危ないところでした。もう大丈夫です……」
 聞き慣れない声がして、振り返った。

 塊が、真っ二つに切り裂かれ、赤黒い湯気を上げている。

 その前に、ふた回りほど小さなイバライガーRが立っていた。
 腕にソウマを抱いている。

 ミニライガーR?
 まさか。どうしてここにいる? なぜ目覚めた?

 ミニRは静かに歩み寄ってきて、シンの前にソウマを降ろした。
 ワカナが駆け寄ってきて、覗き込む。

「心配はありません。意識を取り戻すまでには時間がかかると思いますが、無事です。ジャークの汚染も浄化してあります。それより……」
 ミニRは、途中で言葉を区切って立ち上がった。

「……もう少し、下がっていてください。イバライガーR、イバガール、三人をお願いします」
 Rがソウマを抱き上げ、ガールがシンとワカナのサポートに入った。

「おのれぇえええっ!!」

 瓦礫が吹き飛び、ダマクラカスンが現れた。
 怒りに我を忘れている。
「許さんぞ、小僧! ズタズタに引き裂いてくれるわ!!」

「やめときな、ダマクラカスン。今のソイツは普通じゃない。手を出すんじゃないよ」
 塊の背後から、ルメージョが現れた。
「何を言う!? こんなガラクタなぞ……!」

 ダマクラカスンが突っ込んできた。その動きが、数メートル手前で止まった。
 見えない壁に押し止められたように。

「な、なに!?」

 シンは、目をこすった。何か、見える。
 ミニRの背後に、別な姿が重なって見える。

「シ、シン、あれって……!?」
 幻覚じゃない。ワカナにも見えるらしい。

 イバライガーだ。見たこともないイバライガーだ。

 謎のイバライガーは、ダマクラカスンに向かって手をかざした。
「ハイパー……ブラスト!!」

 声とともに、ダマクラカスンが吹っ飛ばされる。ミニRも、謎のイバライガーも動いてはいない。
 なんだ? 気を発した? さほど力を込めたように見えないのに、あのダマクラカスンの突進を弾き返すほどのエネルギーだと?

「R、ガール! あれは……何だ!?」
「……わからない。ハイパーイバライガー……というらしい……」
「私たちにもわかんないのよ。わかっているのは、初代イバライガーが呼び出したらしいってことだけ。そして、とんでもない力を持っているということだけ」

 ハイパーイバライガーだと? 初代が呼んだ? 何なんだ?
 あれがミニライガーRを生み出し起動させたというのか。

 でも。

 どこかで見たような気がする。
 ずっと前に、出会っている気がする。

「私には、わかるわ」
 ルメージョがつぶやいた。

「……エモーション・ポジティブとネガティブは、同じ力の光と影。どちらかが現れれば、一方も現れる。当たり前のことを見逃していたわ。それにシン、あなたの本当の姿のこともね……」

 言ってルメージョは、湯気を上げ続ける塊を見つめた。翳っていて表情は見えない。

 オレの本当の姿だと? なんのことだ?

「シンとワカナ、二人とも同じように思っていたけど……違うってことよ。今にあなたたちにもわかるわ。知らないほうがいい、とは思うけれど……」

 言葉とともに、冷気が吹き上がった。
 再びハイパーイバライガーが手をかざし、見えない障壁で冷気を遮断する。

 氷嵐が収まったとき、ルメージョは消えていた。
 あの塊の残骸もない。

「今回は、ここまでにするわ。でもシン。その力は忘れなさい。二度と呼び出すべきじゃない。そう言ってるわよ、ナツミがね……」
「覚えておれ、イバライガーども! 必ず貴様らを、いや、この世界の全てを破壊してくれるぞぉ!!」

 気配が、途絶えた。
 サイレンや喧騒が聞こえて来る。

「あっ!!」
 ワカナが声を上げた。

 ハイパーイバライガーが、消えていく。光の粒子となって、虚空に溶け込んでいく。
 消え行くハイパーを見つめながら、シンは混乱していた。

 なんなんだ。ハイパーとはなんだ? エモーションとはなんだ?
 オレはなんだ?

 

ED(エンディング)

 マーゴンは、ようやく目を覚ました。
 エドサキ博士やゴゼンヤマ博士は、まだ気絶している。

 何か、すごいことが起こったのだけはわかっている。
 それが何かは全くわからない。つまり、何もわからない。

 地下に降りるときの不安な気持ちは、消えていない。
 それでも、少しだけ気分は楽になっている。プレッシャーのようなものが薄らいでいる。

 ヘルメットが、コツンと音を立てた。頭に、何かが落ちてきた。
 見上げる。空が見えた。

 天井に穴が開いている。上の階も貫いて、外までまっすぐの穴だ。
 そこから、光が差し込んでいる。

 そのスポットの中に、初代イバライガーが跪いていた。
 NPLに触れたときのままの姿だが、マーゴンにはイバライガーが祈っているように見えた。

 ミニライガーたちは、周囲でじっと見守っている。
 どこかで見た宗教画のようだ、とマーゴンは思った。

 もう一度、空を見上げた。

 外の光が、真っ暗な部屋に差し伸べられた手のようだ。

 その手は、シンたちにも届いたはずだ。
 マーゴンは、それを信じようとした。

 

次回予告

■第20話:メモリーズ
蘇った初代イバライガーは、今日までの出来事を振り返る。この世界に現れてからのこと。自分がいなかった間のこと。そして、これからのこと。少しずつ見えてきた様々な謎。次回は、その1つ1つを初代イバライガーとともに振り返ってみよう。この辺で総集編が入るのがイマドキのお約束だしね~~!
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

 

(次回へつづく→)

(第19〜20話/作者コメンタリーへ)

 


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