修正や変更には、どこまで対応すればいい?

 全部終わって納品できなきゃ、代金はもらえない。

 だけど、いつまでも修正が続いて、全然終わらない。

 広告の仕事では、そういうことがありがちだ。

 自分のドジでそうなるのなら仕方ないんだけど、ちゃんとやってるのに先方の勝手でそういう目に合わされるのは嫌だ。

 だから、そうさせないための工夫をしておく必要があるんだ。

修正がやたらと多いんだけど……?

 多くの場合、それは修正じゃない。

 気が変わったというのだ。

 何かが間違っていたのなら修正だろうけど、それ以外は変更。
 予定になかったことを後から言い出しているのだ。
 後出しジャンケンと同じなんだ。

 そんなのに応じていたらキリがないよ。
 予約してないモノが用意されてないのはアタリマエのことなんだから、コッチの知ったことじゃないよ。

 ただ、そうは言っても直さなきゃならないことはある。
 そのままでは使えないのであれば、修正だろうが変更だろうがやるしかない。

 でも、修正と変更の違いをちゃんとお客に伝えておけば、そうしたトラブルを大幅に減らすことはできる。

 お客ってね、修正と変更をごっちゃにしてるんだよ。
 違いがわかってないの。

 だから後から色々言い出す。
 シナリオとかネームの段階ではピンと来ないってのもあるから、ペン入れされて、具体的になってきて、変更が厄介な段階になってからアレコレ言い出すんだ。

 そういうことはペナルティだよと、最初に伝えておかなきゃいけないの。
 伝えるだけじゃなくて、納得させておかなきゃいけない。

 そうしておけば、仮に変更が出たとしても、お客は自分のほうに責任があることがわかる。
 だから無理や無茶を言いづらくなる。

 あえて言うからには、自分のほうも多少は折れなきゃマズイとわかる。
 スケジュールを延ばすか、追加料金を払うか。

 いずれにしても、漫画家が一方的に泣かされることは少なくなるんだ。

 なお、予定になかった変更はともかく、自分で間違えちゃった修正に関しては、キツかろうが何だろうが直すしかないよ。
 ボクの場合は、例え納品後だろうが、何年も経ってからだろうが、ボクのミスなら必ず無償対応させてもらっている。

 そういうサポート保証の部分も、受注するときにお客に伝えているんだ。
 そうやって安心してもらい、一方でこっちの言い分も飲んでもらう。

 そうしていると良質なお客が増えて、だんだんと仕事しやすくもなっていくんだ。

何度でも内容チェックできる時代の怖さ

 今は何でもデータだ。
 デザイン物でも漫画でも、作ったモノはオンラインにアップしたりメールに添付したりして、データとしてお客に送って確認してもらっている。

 これは非常に便利なのだけど、昭和時代を思い返してみると、便利なのも良し悪しだなぁと思うことがある。

 ボクがまだ駆け出しで、広告と広告漫画を学ぶために広告会社に勤務していた頃に、先輩から何度も注意されたことがある。

「デザインカンプだろうが校正刷りだろうが、とにかく客先に預けてくるな。その場で確認してもらって、サインかハンコをもらって、ゲンブツは必ず引き上げてこい」

 いつも、そう言われたんだ。

 お客は専門家じゃないから、デザイン物の仕上がりに自信が持てない。
 最初に見たときはベストだ、サイコーだと言っていても、何度も見ていると飽きてきたりもする。
 つまり気が変わりやすく、迷いやすいんだ。

 客先にデザイン物を預けておくと、相手は何度でもチェックできる。
 それは無用な修正や変更を誘発しているようなものなのだ。

 大抵は単なる気の迷いなのだけど、そういうコトに振り回されていたら仕事にならない。
 コストだって割に合わなくなりやすい。

 だから、決して置いてくるな。
 そう言われていたのよ。

 なのに、今ではオンライン。

 カンプや校正どころかゲンブツそのものを預けちゃっているのと同じ。
 すぐに迷って、気が変わって、余計なことを考えがちな人に迷う機会をわざわざ与えているようなモンだ。

 う~ん、厄介。

 でも、いまさら昭和には戻れない。

 だからこそ、ボクはお客に「修正」と「変更」の違いをしっかりと説明する。

 ミスの修正は死んでも何とかするけど、予定になかった変更はやめて、と。
 どうしても変更せざるを得ないときは何とかするしかないけど、やってもらって当然という顔はするなと。

 そういうことを言っておいても変更は出るのだけど、出たときの態度が違うのよ。

 ゴリ押し、上から目線で身勝手なことを言われるのはカチンと来るからね。
 気持ち良く、とまでは言わないけど「仕方ねぇなぁ、やってやるか」と思える程度でないとイライラしちゃって、それが態度や作品にも出ちゃって、色々ダメになってしまうこともあるので、必ず釘を刺しておくことにしてるんだ。

 そうしておけば、度が過ぎる変更のときには、追加料金出させることだってできるしね。

 広告業は客商売だけど、いつだって客の言うことに従わなきゃならないってモンじゃないと思うよ。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

うるの拓也の電子書籍シリーズ各巻好評発売中!(詳しくはプロモサイトで!!)