コンペとかオリエンとかプレゼンってナニ?
漫画の仕事でも「コンペ」に参加して「オリエン」を受けて「プレゼン」するってことはある。
つまり「制作者の競合」に参加して「仕事内容や依頼条件の説明」を受けて「自分こそが最適だとアピール」するわけ。
まぁ、ぶっちゃけて言えば、同業者とバトルして、一番良かった人に実際に発注されるってコト。
元々広告業界の人じゃないと馴染みがないだろうけど、広告の仕事では、こういうことがけっこうある。
特に公共機関では、数十万くらいの発注額面の段階でもコンペ形式の場合が多い。
特定の業者と癒着したりしてませんよ~、公正に業者選定してますよ~とハッキリさせるためだよね(もちろんソレだけじゃないけど)。
コンペに応募してチャンスを掴む!
ボクは今までに何度もコンペに参加している。
漫画以外の広告物やWEBサイトのコンペまで含めると数えきれなくなるけど、漫画関係だけに絞ると10回くらいかな。
勝率は8割くらいだから、ほとんど勝てたってコト。
まぁ、勝てそうな時しか参加してないってコトなんだけど(苦笑)。
なお、ここで紹介してるのは「企画競合のコンペ」。
請負金額の安さを競い合うモノ(競争入札)には参加したことがない。
広告物でも競争入札方式の募集をする例はあるんだけど、そういうのはバカバカしいって思っちゃう。
コンテンツ作るのに、アイデアの良し悪しじゃなくて値段で決めるなんて。
誰が請け負っても同じになるモノなら価格競争もアリだろうけど、創作物ではありえないと思うなぁ。
だからコンテンツの仕事で価格競争を求めてくるときは無視しちゃうんだ。
このヒトたちは、質はどうでもいいんだろうな~って思うから。
そういうヒトを相手にしても、正当に評価してもらえないもん。
でも、企画内容で戦うコンペなら、受けて立つことも多いよ。
広告の仕事で、それなりにまとまった規模の仕事を請け負うとなれば、コンペは避けられないもんね。
最初からボクに期待してくれて持ち込まれた話(つまりボクに発注する前提になってる案件)であっても、その判断が本当に正しいか、あるいは、実は裏でボクと担当者が癒着してたりしないかなど、公正かつ真っ当な発注になってることを証明するために、コンペとして公表して他の人にもチャンスを与えざるを得ないってことも少なくないのよ。
で、そのコンペで、もしも負けちゃったら、ボクより優れた人が見つかってしまったら、仕事は持って行かれてしまう。担当者とどんなに仲よくても、それだけでは本当に大きい仕事は獲れないんだ。
コンペに参加し、ライバルを圧倒して勝つ。
大きな仕事は、そうやってもぎ取るしかない。
そこで、コンペがどういう感じで進んでいくのか、ちょっと紹介する。
まず、どこかの会社や団体がコンペ(コンペティション)を開催する旨を発表し、参加者を募る。
発表の方式はまちまちで、自社のWEBページのニュースリリースに書くだけだったりする場合も少なくない。
もちろんソレだけじゃ誰も気付いてくれなくて応募がゼロってコトになりかねないので、多くの場合は、これぞという業者に直接「参加してみないか」と呼びかけてくる。
つまりコンペのお声が掛かるってだけで、そこそこ知られた業者ってコトだよね。
ただし「なんだ、それじゃ関係ないや」とあきらめることもない。
参加資格を満たしてさえいれば誰でも参加できるハズだから「コンペ・漫画」などのキーワードで検索して見つければ、応募できる可能性はある。
コンペは公正に請負業者を選定するためなんだから、聞いたことない奴だからお断りということはないはずだ。そんなことしたら公表して募集すること自体を否定しちゃうもんね。
それに広告漫画は広告だから、お声が掛かる業者もほとんどは広告制作会社になっちゃう。
広告制作会社は漫画家ではないから、自分たちだけで広告漫画は作れないことが多い。
だから、あちこちの広告制作会社に挨拶しておけば、そういうコンペがあったときには、お呼びがかかることもあるのよ。
漫画家に直接というのは、あまり聞いたことがないなぁ。
直接を避けてるんじゃなくて、漫画家のほうがそういう声が掛かるような営業をしてないからだけど。
ボクに声が掛かるのは、ボクは広告業者でもあり「そういう漫画家」でもあるからだ。
さて、この最初の呼びかけの段階では、ものすごく大雑把なコトしかわからないのが普通。
依頼者名、漫画の仕事だということ……くらいかな。
直接連絡をもらったときには、もう少し見えることもあるけど、具体的なコトまではわからないな。
具体的なことは、次のオリエン(オリエンテーション)で明かされるんだ。
オリエンで詳しい情報をゲット!
応募締切が過ぎてコンペ参加者が確定したら、全員が「オリエンテーション(オリエン)」に呼ばれる。
たまに呼ばないで、諸条件の通知だけってコトもあるけどね。
多くの場合、コンペ告知の段階でオリエンの日程も明記されていて、応募して参加が確定した人はその日に集まってね、ということになる。
オリエンでは、参加者たちに「仕事内容」「額面」「請負条件」などが提示される。
オリエン会場とされている会議室などに集まって、資料が配付され、依頼者の説明を受けるんだ。
何のために、どういう漫画を作るのか。
それは何ページくらいと想定されているのか。
納期はいつか。
漫画以外にやらなくてはならないことはあるか。
著作権や版権の扱いはどうなるのか。
ギャランティはいくらなのか。
そういうコトをライバルたちと一緒に聞くわけ。
そして考える。
コイツらに自分は勝てるのか。
そもそも今回の仕事は、戦ってまで請け負う価値はあるのか。
提示された条件に無理な部分はないか。
よくわからないコトがあれば、質問もできる。
誰がどんな質問をするかも、ライバルたちは見ている。
「聞きづらいコトをよく聞いてくれた!」とか思うこともあるよね。
(ボクは図々しいので、思われることのほうが多い)
集まった参加者たちの自己紹介は、あったりなかったり。
オリエンは大抵30分ほどなので、そういう時間はないことが多いかな。
でも、お互いにわかっちゃうコトが多いけど(笑)。
それに顔を合わせたら相手が誰でも名刺交換ってのがビジネスマナーだったりするから、多くの場合は、オリエンが終わった後で軽い挨拶くらいはするし。
ソコで出会ったことが後々の縁につながることもあるから。
練り上げた企画でプレゼンにチャレンジ!
さて、オリエンで仕事の内容や条件がわかり、それを請け負いたいと思ったら、次の「プレゼンテーション(プレゼン)」に挑むことになる。
参加者それぞれが自分の企画を売り込む。
それがプレゼン。
オリエンのときと同じように、プレゼン会場に集まり、呼ばれた業者から順番に室内に入って、自分の企画内容を発表するわけ。
持ち時間は、短いときは5分くらい。長いときで30分って感じかな。
まぁ、間を取って10~15分くらいが多いんじゃないかなぁ。
(ボクは持ち時間を大幅にオーバーして1時間、といったことも何度かあった。自分が最後だったから、相手が興味を示し続けてくれる限り喋っちゃったの。呼ばれる順番が最後じゃないとそういう裏技は使えないから、こういうのは運次第なんだけど。それに相手が時間オーバーを許さないような厳格なタイプだったら、かえってマイナス点になっちゃうしね)
室内には審査員の人たちが並んで座っていて、その正面に座って、あるいは立って、発表する。
就職の面接みたいなモンだけど、慣れてないと緊張するだろうなぁ。
ボクも最初はそうだった。最近は開き直ってるけど。
ココまで来ちゃったら、まな板のコイだもんね。
ココで最大の力が出せるように、どれだけ準備したか、考え抜いたかで決まるんだ。
手ぶらで来たわけじゃない。
考えつく限りの武器を仕込んできている。
それが企画書。
オリエンを受けてからプレゼンの日までには数週間くらいあるのが普通なので、その間に企画を考え、企画書にまとめる。
ほとんどのプレゼンでは、企画書の提出も義務づけられているしね。
企画書の作り方については別項で説明するので今は割愛するけど、用紙の大きさとかページ数とかが決まってることはあんまり経験ないかな。
1枚だけペラっと出してもいいし、何十ページもあるモノを作ってもいい。
最近だとプロジェクタなどでパワーポイントの企画書を表示できる場合もある。
昔のバブル直後くらいの頃、広告会社勤務してた当時には、企画書の一部を大判に出力したり、要点だけにダイジェストしたプレゼンボードを別途持っていくことも多かった。
B3くらいのボードに貼って、フィルムをかけて、紙芝居みたいに見せる。
けっこうお金と手間かけてたよなぁ。
服装も、プレゼン用のド派手なスーツとか着てくる奴もいた。目立って印象に残らなきゃならないからね。ボクの場合は普段からカタギじゃない格好なので、そういうことは気にしたことがないんだけど(笑)。
今は昔ほどの派手なプレゼンは見かけなくなった(そういう規模の大型広告企画に関わるような仕事はしなくなったというのもある)けど、それでも、色々考えて、プレゼンデータ作って、それを企画書にまとめて……となれば、それなりの時間をかけるし、資料代など経費がかかる場合もある。
だから採用にならなくても「コンペフィ」といって、参加料がもらえるケースもあったんだけど……今は、まずないなぁ。
バブルな頃だって、よほどしっかりした会社でないとコンペフィは用意してなかったし。
アイデアがタダなわけがないんだから、本当は勝とうが負けようが、参加を認められた人が提案したなら、そのための経費くらいは支払うべきだと思うのだけど、実際のところ払われたことは滅多にないよ。今後も当てにはしない。
なのでコンペに出てプレゼンするってのは、バクチなんだよね。
なんせ自腹でやるわけだから。
必要な手間や経費を惜しんで、チャラい提案したら負けるかもしれないから、できるだけしっかりしたモノにしたい。
ライバルたちを上回るモノを出したい。
でも、凝れば凝るほどコストがかさむ。
勝てなかったらパァになっちゃう。
プレゼンに出るってのは、そういうリスクを考えて、それでもやるって覚悟してやるわけ。
ウチなんか個人事業主だからロクな経費もないわけで、だからこそプレゼンに参加するなら負けられないって思っている。
やるからには勝つしかない。
そのくらいに思えないとコンペなんか出られない。
勝率考えないでアチコチのコンペに参加してたら、たまに勝っても採算割れで破産しちゃうもん。
だから、いざ本番では燃える。
練り上げたアイデアで依頼者たちを自分色に染め尽くしてくれる!
他の提案なぞ記憶から消してやる!!
くらいの気持ちで臨むんだ。
まぁ、実際問題、殺し合いだから。
自分が受注するってコトは、他の人たちの仕事を奪うってコトだから。
本当に死活問題なんだ。
面と向かってやりあってないだけで、本気の戦いなの。
なお、プレゼンしたその場で業者を決めるということは、滅多にない。
プレゼンのトーク内容、質疑応答、提出した企画書などを後日検討して、採用する人を決めるのが普通。
だから、企画書そのものの出来はすごく重要。
どんなにアツく語っても、最終選考の場所に自分はいないからね。
プレゼンのときに企画書の内容はざっと説明するんだけど、覚えていてくれるのはボクの印象くらいなモノで、実際に内容を検討するのは手渡した企画書なんだよ。
そうやって検討した結果がわかるのは早いと翌日。大抵は数日後。
1ヶ月後くらいまで待たされたコトもあったな。
そして通知が合格であれば、ようやくその仕事を受注できるってわけ。
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。