小説イバライガー第5~6話/筆者コメンタリー

2018年2月10日

 小説イバライガーの5~6話に関する筆者コメンタリー。
 5話でイバライガーRとイバガール、6話でイバライガーブラックが登場し、ようやく主役が出揃う。
 現在のステージショーでは誰が主役とか決めてない感じ(アクター手配の事情で特定の主役を必ず出せる体制になってないというのもあるし)になってるんだけど、小説版では当初のまま、R、ガール、ブラックを中心に描写している。焦点を絞らないとドラマがボヤけちゃうし。
 ただ、初代イバライガーにも思い入れが強いので、彼も準主役というか主役同等なくらいには描いてあげたいと思ってる。もっとも、ここから16話までは出番がないし、その後も20話くらいまでは動けないままなんだけど。

第5話コメンタリー

未来は過去

この物語では、未来は過去になっている。別の未来での出来事が、こっちの現在につながってる。読者の皆さんにとってもややこしいだろうけど、作者にとってもややこしい。その未来編は20話前後で描く予定になっているので、早くそこまでたどり着きたい。

レシーバー

本編に登場するレシーバーは『グーグル・グラス』みたいなモンで、ネット接続も、現場での撮影などのデータ収集も出来る優れ物なイメージで書いている。もちろんネットにはどこからでも常時接続だ。けど、お尋ね者の主人公たちがマトモなプロバイダと契約してるとも思えないので、きっと非合法なやり方でアクセスしてるんだろうなぁ(苦笑)。

未知の現象

第1話の本編中でもちょこっと描写してるけど、未知の粒子、世紀の大発見!みたいなときも、実際はヘンテコなグラフみたいなモンでしかなくて、ホンのちょっとの、一般人にはどうでもいいとしか思えない部分に研究者は「うぉおお」ってなるんですよ。
博士が興奮気味に喋っていても、こっちには何だかわからない。生きている三葉虫を見つけたとしても、せいぜい「素手で触らないほうがいいです」とツッコむくらいのもんでね(笑)。

ダマクラカスン復活

以前に「初代復活ショー(2010年初演)」をご覧になった方はピンと来ると思うけど、このダマクラカスン復活までが「初代復活ショー」のイントロなんだよね。
あのときダマを救ったのは、未だ姿を見せない「ヤツ」だった。それをベースにしてるから、ここでも、もちろん……。
なお「初代復活ショー」では、まだマーゴンが子供だった時代、ということになっていたんだけど、それだと子供が大人になるまでの間、どうなっていたのかという疑問が出てくる。
初代もRもいない期間が長かったなら、世界はジャークにやられちゃってるだろうし、すぐにRが来たなら十数年も戦い続けていたことになり、これもまた「その間ナニしてた?」ということになってしまう。
なので、子供時代っていう部分は変更させていただいているのです。

時空の狭間

イバライガーは時間の輪から外れてしまったようなもの。未来も過去もない。広さも狭さもない。時間が止まっているんじゃなくて、時間そのものがない。空間そのものもない。
時空というのは宇宙のことで、時間や空間も、宇宙の属性なんです。約138億年前に宇宙が誕生するまでは、時間も空間もなかったんです。
それはどういう状態? と訊かれても困る。空間がない、時間がないという状況は、どんなに想像を巡らせても想像することは不可能だもの。それがある前提でしか我々はものを考えられないのだから。どんな想像をしても想像すること自体が間違ってる。だから、そのへんには触れません。そういうモンだと思ってください。

イバライガーRとイバガールは記憶喪失

このRとガールはメモリーを一部封印されている。性格などの部分ではなく、記憶をブロックされているのだ。
メモリーは消えているわけじゃなくて、いわば中身はあるのに引き出しが開かない状態と解釈している。
ボクはRとガールとは、どういうヒューマロイドなのか、ずっと考えて、そういう結論に至った。
だいたいね「武器・兵器」として生まれたロボットなら、感情なんか持たせなくていいんだから。そんなの厄介なだけでしょ。
だけどステージで見るRやガールは感情豊かで、ある意味で人間以上に感情的。
そういうヒューマロイドであることには何か理由があるとニラんで、数十話先のエピソードのために記憶障害になってもらったのだ。
それに、覚えていてもらっては困るんですよ。
何もかも悟ったような分別のあるキャラは初代だけでいい。初代とRの外見はほとんど同じ(ただし中盤で初代が復活して以降はちょっとだけ外観を調整させてもらう予定になっている)だけど、性格的には大きく違っていて欲しい。
Rたちは「発展途上」であるはずだ。
ショーでの描写を元に、どうしてそういう性格なのかを考えていって「ある回答」を出させてもらい、こういう設定にした。
人格や性格はあるけど、記憶はない。思い出せない。
だから迷うし悩む。より人間的に描写できる。
それに未来を知ってると有利すぎて、お話が全然盛り上がらないし。
そういう理由で、この二人は記憶喪失になっちゃったの。
ごめんね。

第5話のラスト

ようやく、ここまで来た。ここからが本編と言ってもいい。いや厳密にはブラックが出てくる次回からが本番かもしれないけど、現在のイバライガーショーのベースになっている世界観は、やはりR(主人公)が登場してからの世界だからね。
5話使ってやっと、ステージショーの最低限のフォーマットまで来た、というところだなぁ。

 

イバライガーR ~絶望の歴史が生み出した、最後の希望~

ジャークによって荒廃した未来世界で、シン、ワカナらが中心となって進められた『イバライガー量産化計画』で造られた『最初のイバライガー』である。
本来、このボディが初代となるはずだったが、『ある事件』によって破損してしまい、初代は予備のボディとして開発されていた、もう一体にインストールされる。従って本当はRのほうが先にロールアウトしたボディなのだ。
元々が初代用のボディだったこともあって、初代とRは、外見も性能も、まったく同じである。元々は『R』の刻印もない。
だがイバライガーRは、二度と目覚めることなく終わる。
荒廃の進んだ未来世界では人間の数も激減しており、イバライガーたちを起動させるためのポジティブの感情エネルギーを集めること自体が至難であった。イバライガーRはおろか、初代でさえ起動できないほどに。
そして初代イバライガーがようやく起動できたとき、すでに人類社会は終焉を迎えていた。全ては遅すぎたのである。
先の『事件』さえなければ、ギリギリのところで間に合ったはずだったが、その計画は実らなかった。イバライガーRと、その後に完成したイバガールは、永遠に目覚めることなく終わるはずのヒューマロイドだった。
だが、全てが終わってしまっても初代はあきらめず、時空を超えて歴史をやり直すという道を見つける。そしてイバライガーたちは『時空戦士』として、新たな戦いに挑んでいくことになる。未来では目覚めることが出来なかったRたちを、新たな歴史=現代からの呼び声が呼び覚ます。
さらに、蘇ったR、ガール、そしてブラックには『事件』の影響によって、開発者たちも想定していなかった特性が生まれていた。未来と現在、2つの時空が交わって生まれたもの。予定通りでは決して届かなかった力。
絶望の歴史が生み出した希望。
それがイバライガーRなのである。

 

イバガール ~生きる力への祈りが込められた天使~

未来世界で『事件』後に、ワカナによって生み出された女性型イバライガー。
Rは初代のテストボディという計画が前提にあったが、イバガールは最初から起動できる可能性はほぼゼロとわかっていて、それでもあえて造られた。
彼女に込められたものは祈りだ。絶望的な状況での祈り。
それは希望とさえも呼べないほどの悲しい想いで、しかも起動すらできないガールは、それに応えることも、その祈りを訊くこともできない。
したがってガールが起動したのは、この現代に来てからである。
Rは、未来で一度だけ起動しているが、ガールは今までに一度も起動したことはない。
彼女の人生は、今始まったのだ。
それにも関わらず、ガールには『これまで』があったかのような人格がある。彼女自身が育んだものではないが、プログラムによって作られた疑似人格でもない。
これはRやブラックも同様だ。彼らは自分の体験ではない記憶を与えられて生まれた。
だがそれは、これから歩む彼ら自身の『人生』で、彼ら自身のものへと変わっていく。生きることで生まれてくるモノ。それが彼女たちの最大の力になっていく。
それこそが、彼女たちに託された祈りなのだ。

 

第6話コメンタリー

時空鉄拳ブレイブ・インパクト・バーニング

基本的には初代と同じ技だが、エネルギーを熱量に変換して物理的な破壊力を向上させたRのオリジナル技となっている。
当然ながらエネルギー消費も初代より激しいため、いつも「バーニング」で使うとは限らない。

時空旋風エターナル・ウインド・フレア

ガール独自の必殺技。エモーション・エネルギーで高熱・高質量の空間を作り、目標を粉砕する。
敵に向かって放出するバーストモードと、エネルギーを身にまとって突撃するドレスモードの2タイプがあり、ショーで使っているのは、主にドレスのほうだと思われる。
なお、フレアドレスは他のイバライガーがまとうこともできるため、合体技としても使用される。
この設定も、ショーとの整合性を考慮してのもの。
普段のショーでは、生モノだから特殊効果などの演出ができなくて、どうしても格闘技のみになっちゃう。でも「エターナル・ウインド・フレア」という技名は、どうにも格闘技っぽくない。実際、技名を叫ぶときも「時空旋風!」って言ってるし。
そこで同じ技だけど使い方が色々あることにしたのだ。参考にしたのは『ドラゴンクエスト・ダイの大冒険』。
あの作中で必殺技「アバン・ストラッシュ」には2タイプあると描写されていたのを思い出して、イバガールに応用させてもらったのだ。

Rとガール用のミニライガー

初代には3体のミニライガーが付属していたんだから、本来ならガール、Rにも、それぞれ3体ずつ用意されていてしかるべき。だけど彼らにはミニライガーが付属していなかった。だから後々ミニRやミニガールを作らざるを得なくなる(ステージショーには以前から登場している)。
このへんも「何でそうなのか」に理由が必要で、それはRたちの記憶喪失とも密接に関係しています。

貴様ら人間こそがジャークなのだ

ついに登場したイバライガーブラックが、いきなり重たいことを言っちゃう。
しかもこれ、一番重たい問題なんだよね。人間のネガティブな感情からジャークが生まれるということは、どんなに頑張ったとしても、ジャークの因子を完全に消すことは出来ないと考えるしかない。善意だけの人間なんていない。どんな清廉な人だって、必ずネガティブな面を持っているはずだと思う。人間がいる限り、例え今のジャークを全て滅ぼしたところで、いつか必ず蘇ってしまう。
悪の感情エネルギーから生まれた怪物たちというものを考えたとき、この問題が大きくのし掛かった。負けないにしても、勝つこともできないのではないのか、と。
でもね、これヒーロー物語だから最後にはちゃんと勝ちます。
どういう勝利なのか、何が勝利なのか。その答えが、ボクがたどり着いた「生きる意味」につながっていくと思っている。
ヒューマロイドたちを描いていても、これは人間の物語であるべきなんだ。

ブラックのショットアロー

指を全部開いた状態で、左手を右肩に、右手を左肩に、クロスさせるようにして触れさせる。十本の指全てにエネルギーをチャージして一気に放つ。それがブラック流のショットアロー。Rや初代と同じ技でも、逃げ場のない、えげつない使い方をするんですよ。

量子的に重なり合った2つの可能性

中の見えない箱の中に猫を入れる。ある時間が経過すると、箱の中に強烈な放射線が流れ込む可能性がある。流れ込めば猫は死ぬが、そうなる確率は50%。
では、ある時間が経過したとき、中の猫はどうなってるのだろう。箱の中を確認せずに答えなければならない。生きている?それとも死んでいる?
これが量子論で有名な「シュレーディンガーの猫」という思考実験。考えただけだから、本当に猫を死なせたわけじゃない。
そして、その答えは「生きているが死んでもいる」だ。
誰かが箱を開けて確認するまでは、生きている可能性と死んでしまった可能性が重なり合っていて、どちらでもあり、どちらでもないのだ。箱を開けた瞬間に、どちらかに確定する。だが、その瞬間までは元気に生きていて、かつ、ぐったり死んでいる。量子的には、そういう状態と考えられるのである。
我々の世界を支える極小の素粒子の世界では、そういうことが実際に起こっている。マクロな世界とは異なる物理法則が働いている。ここでは、その量子の考え方を強引にマクロに当てはめて、イバライガーブラックを生み出した。神をも恐れぬ行為だけど、ブラックですからご勘弁を。

ブラックの戦い方

肘を打ち込んで、そのままバーストして吹き飛ばす。マンガ『修羅の門』に出てくる陸奥圓明流の技「蛇破山」の裏技みたいなモンをイメージした。それも陸奥より不破っぽい感じで(分かる人にはわかるでしょ)。防御もそのまま攻撃につながっている。ブラックっていうキャラは、そういう戦い方をするんだよ。

オレは、未来の記憶を残している

元々は1人なのに、Rとブラックは正反対と言ってもいいくらい性格が違う。行動も違う。その理由の1つが「未来の記憶」なんだ。
ブラックも全てを覚えているわけではない。だけど、Rよりはずっと覚えている。だからこそ、その「悲劇」を繰り返さないために非情になる。
彼もまた、ヒーローなんですよ。痛みに耐えて、非情を貫かなければならない宿命のヒーローなのです。

 

イバライガーブラック ~限界を超えた意思が呼び覚ました、闇を断ち切る影~

イバライガーRと全く同質の、もう1つの可能性の顕現。
それがイバライガーブラックであり、本編でブラック自身が言っているように、どちらがオリジナルというわけではない。どちらもオリジナルなのだ。
つまり最初からRはブラックであり、ブラックもまたRであり得た。同じ人間が、ふとしたきっかけで別の人生や体験を送ることになるのと同じだ。
だがブラックには、Rたちには思い出せない『未来の記憶』の一部が残っている。それはブラックという人格が誕生した『事件』の記憶であり、誰にも気づかれないまま、しかしブラックはその時点で生まれていた。Rのボディの中に眠っていた。それが時空転移で目覚めたのである。
自らの記憶を最初から持つ、唯一のヒューマロイド。赤子自身が自分の意思で生まれ出たようなものだ。
だからこそブラックは強い。Rと全く同性能でありながら、実際の能力には決定的なまでの差がある。

ブラックの存在は、物語の中でも重要だ。
彼が存在しなければ、この物語を勝利で終わらせることは難しい。
ブラックが生まれたことは全くのイレギュラーであり、それが届かないはずの結果につながる。
計画にはないこと。想定することなどできない様々な出来事。人生はそういうものだ。だが、それと向き合って生き続けることで、結果としてたどり着く場所がある。それがどんな場所であっても、生き続けなければ到達できない場所には違いないのだ。ボクはイバライガーたちを通じて、そういう物語を描いている。
ブラックは、まさにその体現者かもしれない。

※元々の、ボクがイバライガーと知りあう前から、ブラックというキャラの設定はあった。ただし今とは違っていて、基本的に悪役。まさに『ハカイダー』だったんだよね。
ただ、そうした設定はブラック誕生以前のもので、実際にイバライガーブラックがステージショーに登場するようになってからは「孤高の戦士で、時にイバライガーたちや人類とも敵対するけれど、彼は彼なりに世界を救おうとしている」に変更されたんだ。まぁ、そういうことでないとレギュラーとしてステージショーに出しにくいし、ブラックさんは特に人気が高いキャラなので、封印するわけにもいかないしね。
でもショーはそれでいいとしても、キチンと設定しておくには色々考察しておかなきゃならない。元々は1つだったのが分離したんだから、Rと大きく考え方や行動が異なるというのはオカシイのだ。そこで、いくつか仕掛けを施した。それが「ブラック誕生の秘密」と「未来の記憶」だ。ブラックの壮絶な誕生は「未来編」で描く予定だから、お楽しみに(笑)。

 


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