お客のOKは信用するな(3)資料図版編

2018年1月15日

 この画像を使ってください→版権アウトだった。

 この文章を使ってください→他社のコピペだった。

 この図を描いてください→全然関係ないモノだった。

 このデータを……ええぇい、もぉいいっ!!

 何も持ってくんな! こっちで考えて何とかするから、何をしたいかだけ言え!

 ……というようなコトはしょっちゅうだ。

 そういうモンなんだ。
 そういう世界なんだ。

お客がくれた図版などは、そのまま漫画に使っちゃっていい?

 いいえ、必ず裏を取るべきだよ。

 一般の人は、著作権なんか全然意識してないから。
 そのまま使ったら大問題なんてコトだって、あり得るよ。

 もちろん、お客にコレを使えって渡されたものを使うだけなら、コッチに責任があるわけじゃないよ。
 問題が起きたってウチのせいじゃないよって言える。

 けど、寝覚めが悪いでしょ。
 せっかくの仕事にケチがついたら嫌だし、自分に注文してくれたお客が困ったコトになるのも嫌でしょ。

 嫌じゃない、むしろ修正費が取れてラッキーと思う方は、もういいです。
 このまま本を閉じてください。

 とにかく、お客の言うことを鵜のみにしちゃいかんのだ。
 こっちはプロなんだから、できるだけ色々気付いてあげて助言してあげないと。

 中には「著作権違反なのは知ってるけど、大丈夫、バレないって」と言ってくるコトもあるけど、そういうときも、できるだけ説得してあげるべきだ。
 それだけで、その人が悪人だとは思わないであげてほしいんだ。

 多くの場合は、ズルイ人っていうよりも、アマく見てるだけなんだよ。

 ホンのちょっとのスピード違反、横断歩道じゃないところを渡ってしまう、ちょっとしたポイ捨て、つい駆け込み乗車。
 いつもはやってなくても今回だけは勘弁して、とやってしまう。

 そういうコトってあるんだよ。
 人間ってそういうモンだよ。

 このくらいなら勘弁してもらえるよねって甘えちゃう。
 ボクも身に覚えがあるもん。

 版権違反で図版使っちゃうのも、その「このくらいなら」と思ってるんだよ。

 広告にして世の中にバラまいたら、このくらいじゃ済まないんだけど、それがわかってない。
 だからアマく見てるだけなんだ。

使っていいはずのモノさえ使えないことが

 なので、図版や写真などを渡されたら、そのまま使っていいモノかどうかを必ず確認すべきだ。

 滅多にないことだけど、ご本人や社屋や社内の風景写真なんてのだって、写真そのものの版権はカメラマンにあって無許可では使えない、なんてコトもあり得るからね(実際、ボクが連載しているKEKの加速器写真などは、撮影者に許可を得た上で名前もクレジットしないと使えないモノが多いので、できるだけ自分で撮影したモノを使っている)。

 先の「取材」は、そういうトラブルを回避するためでもあるんだよね。
 やっぱりね、自分で撮影してきたモノ、自分で描いたモノが一番安心だから。

 あ、それと中小企業さんの場合は、そのまま使えるハズのモノでも使えないってことがけっこうあるからね。

 例えば「原稿が名刺1枚しかない状態でホームページやパンフレットを作らなきゃならない」といった場合(本当にそういうケースが度々あるんだ)、会社のロゴマークなども、その名刺に印刷されてるチッコいヤツしかないんだよね。

 そんなモンを拡大したって、ボケボケのヒドイものにしかならないでしょ。
 当然、トレースし直して作ってやるしかない。

 小さくてツブれててカタチがはっきりしないモノを「たぶんココはこうなんだろう」って想像しながら、作らなきゃならない。
 そういうこともあるのよ(つ~か中小零細相手だとしょっちゅうある)。

 そういうのをいっぱいやってきたけど、ツブれすぎていて分からないからボクなりにやっちゃうしかないコトも多いので、ウチのお客さんのロゴには「当初のモノとはビミョーに違う」モノもあると思う(もちろん、ソレでもいいか確認してから引き受けてるんだけど。だって、そうするしかないんだから)。

 ロゴマークなんて会社の顔なんだから、キチンとしたデータや清刷(ロゴを高精度かつ様々なサイズで印画紙などに焼き付けたモノ)を保管していてアタリマエ、などと思うのは甘いのだ。

 けっこう大手の企業でも、そういうモノの扱いがゾンザイってケースは多いんだよ。
(他の記事でチラッと触れてるんだけど、テレビの長寿番組のロゴがなくて入稿1時間前にボクがトレースして作り直したこともあった)

 そういう例をたくさん見てきたので、ボクはお客がくれる資料の全てを疑ってかかるクセがついた。

 お客自身を疑うわけじゃないんだけど、大丈夫って言われたモノが大丈夫じゃなかったことが何度もあったからね。
 使命を果たすためには、信じ切っちゃいかんということを学んだんだ。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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