小説版イバライガー/第5話:受け継がれる魂(後半)

2018年1月5日

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Bパート

 グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 ダマクラカスンが咆哮した。
 空間そのものが悪意を持って押し寄せてくる。

「皆殺しだ! ニンゲン共ォオオオオ!!」

 傷つき、逆上し、手当たり次第に周囲を破壊していく。

 ワカナとシンは身構えた。

 こいつだけは、今、倒さなくてはならない。
 この凶暴な怪物を野放しにはできない。
 イバライガーは失われ、TDFにも立ち上がる力は残っていない。
 戦えるのは、自分たちだけなのだ。

 イバライガーに救われた命。イバライガーが託した想い。
 それを、お前なんかに壊させるものか。

 MCBグローブを握りしめる。輝いた。力が、戻ってきた。
 いや、溢れている。人々の祈りが、拳に宿っている。
 今ならやれる。ヤツは傷ついている。

「いくぞ、ワカナ!!」
「うん! 遅れないでよ、シン!!」

 ダマクラカスンに突っ込む。潰れた左目の死角へ回り込む。
 そこからMCB弾を最大パワーで叩き込んだ。
 数十人分のエモーション・ポジティブ。ジャーク・ゴーストなら一瞬で蒸発する。

 だが。

「ナメるなぁああああああああ!!」
 黒い波動が吹き出した。

「エモーション・フィールドォオオオオオ!!」
 ワカナがグローブのパワーを解き放つ。ポジティブの力で、闇の波動に抵抗する。

「ダ、ダメ! 抑えきれないっ!?」
 シンも拳を合わせる。それでもダマクラカスンの圧力に対抗するのが精一杯だった。動けない。

「ザコとはいえ、ポジティブの力を遣う者……。生かしてはおかん!!」

「それはこっちのセリフだ、バカヤロウ! テメェは必ず倒す! 今ここで!!」
「そうよ! あんただけは絶対に許さないっ!!」

「バカめ! ロクに動くこともできずに何をほざく!?」

 黒い圧力が強くなる。押しきられる。
 このままではフィールドごと切り裂かれる。

 


「あきらめんなぁああああああああ!!」

 ふいにフィールドの出力が上がった。

 イモライガー。
 拳……というより片腕のプロテクターを外して、もう片方にくっつけて、大砲のように構えている。
 そこからエモーション・ポジティブが送り出されている。

 いや、そんなことしなくても機能同じだろ? とワカナは思ったが、今はツッコんでる場合じゃない。

「マーゴン!!」
「来てくれたのね、マーゴン!!」
「いや、今のボクはマーゴンじゃなくてイモライガー!! シン、ワカナ! イバライガーは死んでないっ! 絶対に戻ってくる! あきらめんな!!」

「ふん……まだザコが残っていたか……」
 ダマクラカスンは、マーゴンに向かって歩き出した。

「わ、こっち来た! こっち来たぁあああああ!!」

「くっ、マーゴン! もういい、逃げろ!!」
「だ、だ、だいじょ~ぶだって。こ、これも演出ってヤツだよ。こういうときには必ずイバライガーが来てくれるって!!」
「イバライガーだと? バカめ。あの機械人形は、もはや原子すら残っておらぬわ」
「う、うるさぁああああいっ!!」
 イモライガーが叫ぶ。

「例えどうなろうと、それでも帰ってくるのがヒーローなんだよっ! 呼べばきっと来てくれるっ! それが……それがヒーローってもんなんだぁあああ!!」
 イモとはいえライガーを名乗る者らしい気迫だった。

 だが、現実は無慈悲だ。

「黙れ!!」
 ダマクラカスンがイモライガーを蹴り飛ばした。
 吹き飛んだ身体が、瓦礫の中に叩き込まれる。

「どうだ、助けなど、どこにもおらん。お前たちは死ぬ。そして世界はジャークのものとなる!!」

 泥と瓦礫にまみれたイモライガーが起き上がった。頬が濡れている。

「本当に……本当にいないのか……イバライガァアア……? ボクの声が……みんなの声が、もう聞えないのかよぉお……?」

 応えが還ってくるはずがなかった。それは知っていた。
 いくら強がっても、いない者はいないんだ。

 


「……いるさ」

 シンがつぶやいた。

「……うん、マーゴンの言う通り、イバライガーは死なないよ」

 ワカナが応えた。

「ほぉ、まだどこかにガラクタが残っているのか? 構わんぞ、見せてみろ。何度でも引き裂いてくれる!!」

 二人が顔をあげた。
 立ち上がった。

「無理よ、ダマクラカスン。イバライガーは倒せない」
「そうだ。イバライガーは無限に存在する……」

 歩き出した。

「バカな! なぜ立てる? なぜ動ける!? このジャーク波動の中で!?」

「……あんたには聞えないの? この声が」

 遠巻きに人々が集まっていた。
 必死に走るイモライガーについてきたのだ。

 目には不安と恐怖の色がある。
 それに立ち向かう意思もある。
 その想いが、シンとワカナの背中を押す。

「わからないか? この想いこそがイバライガーそのものなんだよ!!」

 イバライガァアアアアアアアアアッ!!

 シンとワカナを中心に、エモーション・ポジティブの渦が巻き起こった。

「イバライガーは消えないっ! それはオレが……オレたちが!! イバライガーだからだぁああああああっ!!」

 感情エネルギーが、スパークした。
 空が、輝く。
 人々の想いが、エモーションの輝きとなって虚空に集まっていく。

「黙れぇええええええ!!」
 ダマクラカスンが爪を振りかざした。

「どんなに勇気をふりしぼろうと、所詮人間はジャークには勝てん!!」

 狂気の斬撃。だが、ここは退けない。
 やってみろ。オレたちの想いは、そんなモノで引き裂けるものか。

「人類を舐めるな! オレたちがいる限り、イバライガーは必ず蘇る!!」
「そうよ! どんなことがあったって、きっと帰ってくるっ!!」

 


 叫ぶ二人の前に、巨大な光の柱が屹立した。
 蒼い輝きが、周囲に満ちる。
 光の中から現れた手が、ダマクラカスンの爪を受け止め、押し戻していく。

 歩み出てくる、深紅のボディ。

 ああ、やっぱり還ってきた。

 シンも、ワカナも、泣きそうになった。
 マーゴンはすでに泣いている。

 大地に降り立った紅の機神は、ゆっくりと歩み出した。
 声をかけようとして、しかし、その横顔にシンはがく然とした。

 『R』の刻印。
 イバライガーじゃない!?

「そうだ! ヤツは死んだはずだ! この紛い物がぁああ!!」

 爪の斬撃。しかし当たらない。
『イバライガーに似たモノ』は、わずかな動きだけで、全ての斬撃をかわしていた。
 すれ違う一瞬に、ボディに一撃を打ち込んだ。
 ダマクラカスンが吹き飛ばされる。

「お、おのれぇえっ……。貴様っ、何者だ!?」
「……私たちは……イバライガー……。ジャークを倒す者……」

 その声は、天空から聞えた。

 新たな光の柱。
 輝きに包まれて舞い降りてくる、オレンジ色のボディ。
 丸みを帯びた、しなやかな肢体。
 女性型のイバライガー。

 


 思い出せない。

 ここは、どこなのだ。
 自分は、誰なのだ。

 ずっと眠っていた。長い夢を見ていた。
 思い出せない。

 それでもわかる。

 目の前にいる男。シン。
 女。ワカナ。

 自分と運命を共にする者たち。
 記憶のほとんどがぼやけていても、それだけは、はっきり分かる。

 この人間たちを守る。そのための力が自分にはある。
 エモーション・ポジティブのエネルギーを通じて、想いが伝わってくる。

 自分と同じ姿をした者の意思。
 この世界の人々の祈り。

 流れ込んでくる。『初代』の想いが。
 呼びかけてくる。私たちの名を。

 R。
 それが『私』の名前か。

 ガール。
 それが『彼女』の名前か。

 そして使命。

 そうだ、私は……。私たちは……。

 

ED(エンディング)

 二人のイバライガーに、想いの力が流れ込んでいくのを感じた。
 シンは虚空を見上げた。
 もう、時空の歪みは消えている。

 共に進め、そういう声が聞えたような気がした。

「……そうか、お前が……彼らを呼んだのか……。オレたちに、希望を遺してくれたのか……」

『彼』が近付いてきた。
「そうだ、シン。私たちは受け取った。君たちと共に戦い続けた者の想いを」

『彼女』が、ワカナに語りかけた。
「……彼は、もういないのね。でも……」

 二人のイバライガーが、同時に振り返った。

 がぁああああああああああっ!!

 ダマクラカスンの咆哮が響いた。
 狂気の叫びに向かって、『彼』が歩み出る。
 その全身に、力がみなぎっている。

「下がっていてくれ、シン。大丈夫だ、奴がどれほどの怪物であろうと……」

 ワカナをかばうように『彼女』も前に出る。
 エキスポ・ダイナモが強く輝いている。
 二人の闘志に呼応するように、エネルギーが急激に増大していく。

「……安心して、ワカナ。私たちは受け継いだわ。最後まで……いえ、限界すら超えて戦い抜いた『初代』の想いを……
 その意志と力は、今も私たちの中で生きている!!
 だから私たちは……誰にも負けはしないっ!!」

 言い放つとともに『彼女』が跳躍し、『彼』が大地を蹴った。

「ジャーク! 私の名を覚えておきなさい! 私は……時空天使イバガール!!」
「時空戦士イバライガーR!! キサマらは私たちが倒すっ!!」

 

 時空戦士イバライガーR。
 時空天使イバガール。

 今、新たな時空戦士たちが降臨した。

 真のイバライガーサーガは、ここから始まる。

 

インターミッション

 イバライガーRとイバガールが出現した瞬間、もう1つの光の柱が生まれていた。
 その光の中から現れた黒き影は、周囲の闇に溶け込むように消えた……。

 

次回予告

■第6話 未来の二つの顔  /イバライガーブラック登場
初代イバライガーの意志と力を受け継いで出現したイバライガーRとイバガールは、ダマクラカスンを撃退し、人々を救ってくれた!!
でもシンたちを疑うTDFは、Rたちを連行しようとするんだよ。ヒド~イ!
そんな彼らの前に、存在するはずのない漆黒のヒューマロイドが立ちはだかる!
その名は……イバライガーブラック!!
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

(次回へつづく)

(第5~6話/作者コメンタリーへ)

 


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