カソクキッズ8話:宇宙を支配する「4つの力」に挑め!
ちゃんと描けなかったけど後悔はしてないよ
この宇宙には「4つの力」があると考えられている。
重力、電磁気力、強い力、弱い力、の4つだ。
この宇宙にある力は、この4つに分類できるらしい。
最近は「第5の力」もあるんじゃないかとか言われているんだけど、まぁ、今のところは4つに分類されているの。
そんな「4つの力」を紹介したのが、カソクキッズ第8話「宇宙を動かす4つの力」だ。
まぁ、例によって描き始めた時点では4つの力……いや、力そのものについても全然わかってなかったんだけどね。
ていうか……今もピンと来てないかもしれない。
だってさぁ、重力と電磁気力はともかく、強い力、弱い力って……。
もうちょっとソレっぽい言い方できなかったんか!?
ま、とにかく、前回でようやく登場した「原子」や「素粒子」に続いて「4つの力」を扱うことになったのは、そこを語らないと素粒子のメカニズムがわかりにくいと思ったからだ。ボクじゃなくて監修の博士たちがね。
いや、ボクはね、例によって全然知らないから……。
わかってないから、素粒子と4つの力の関係を上手に構成できなかった。
今読み返すと「あ〜、これじゃ読者もピンと来ないよな〜」って反省することが山ほどある。
例えば8話前半では、主に電磁気力の説明、そんでちょっとだけ重力の話題を挟んで、強い力と弱い力の話題になるんだけど、そういう力があると言ってるだけで、前回に紹介した原子、原子核、素粒子とどう関係しているかがイマイチわかりにくいままなんだ。
これ、強い力が、どう強いのかが理解できてないままで描いちゃってるからだよな〜〜。
今のボクなら、絶対に原子核のことを描くと思う。
この4年後に描いたセカンドシーズン第1話の「元素」や「周期表」の話題も、ここで関連付けて紹介すると思う。
原子核は複数の陽子と中性子でできている。
陽子がいくつあるかで元素の違いが生まれる。だから陽子の数=元素番号になっている。
例えば水素は、陽子が1個しかないから周期表の1番で、陽子6個の炭素は6番だ。
でも、陽子はプラスの粒子。
プラスとプラスは反発し合う。磁石でプラス同士をくっつけるのは、とても大変でしょ。
そんなもんを原子核としてぎゅ〜っとくっつけ続けるほどの力。
だからこそ「強い力」なんだ。
原子とか素粒子といった超ミクロなスケールでしか働かない、そのくらいに短い距離にしか届かない力だけど、プラス同士を安定的にくっつけるほど超強力な力。
その力があるからこそ、物質は物質でいられる。強い力がなかったら原子核は作れず、当然原子も分子も細胞も作れない。
……とまぁ、こういうふうに説明したと思うのよ。
そうなら原子や素粒子のエピソードとつながるもんね。
この8話を描いた時点では、そういうことが全然わかってなかったんだよなぁ。
監修の博士たちが繰り出してくる知識を「うぉおお、そうなのか〜〜!」って聞いてるだけで、何がどう関係しているかまで筋立てて考えられなかったんだ。
ようするにネタで遊んでるだけ。
勉強にはなってないの。
でも。
ボクは、それでよかったんだとも思っている。
今読み返すと、前後のエピソードとのつながりが悪いし、まとまりもないと思う。
紹介しているだけで何が言いたいのかもわからない。っていうか、わかってないから言いたいこと(作者自身のテーマ)がないんだよな。
本当に遊んでるだけなんだ。
けど、そうだからこそ、同じように「わかってないけどネタで遊びたい人」が楽しめたのかも知れないの。
わかってる人が論理的に、きちっと順序立てて説明してたら、カソクキッズならではの弾け方ができず、もっと堅苦しい作品になってしまったかも知れないとも思うのよ。
何だかわからないまま、断片的に次々と語られる素粒子物理のトリビア。
それをわからないままに耳にして、目にして、ただ楽しんで、笑って、そういうことを繰り返しているうちに、いつの間にか「あれ? あの時のアレとコレは関係あるんじゃ?」と気づいていく。
ボク自身がそうだったように、読者も。
今ならもっとちゃんと描けると思うけど、ちゃんと描けてないからこその魅力、勢いといったものがあったのがカソクキッズだったのかも。
そういうふうにも感じるんだ。
いや、単なる言い訳かもしれないけどさ。
きっと監修してた博士たちは、苦笑しながら見守ってくれてたんだろうなぁ。
今ボクが思ってるようなことは、博士たちは最初から気づいてたに違いないんだから。
それでも、その時点ではそれを言わず、ボクと読者を遊ばせてくれたんだと思うんだよね。
自由に遊ばせてみよう。
そうすれば、ちょっとずつ気づいていくだろう。
今は関連がわからなくても、ある時、今までに知ったことが歯車が噛み合うようにハッと気づくときが来るはず。
そうなる日まで、辛抱強く待つ。
そうやって、その人ごとの歯車がカチッと動き出すこと。
それが「本当の勉強」。
そういうことが見えていたんだろうと思うの。
カソクキッズは、本当にボクに自由に描かせてくれた作品で、ボク自身も自分で描いてるんだと思っていたけど、ボクは導かれていたんだよなぁ。
本当に感謝だ。
こんな素敵な先生って、そうそういないよ。マジで。
そんなわけで、ちゃんと描けなかったエピソードだとは思うけど、後悔はしてない。
反省はしてるけどね(笑)。
大統一理論への道
この第8話のラスト近くには「大統一理論」がチラッと出てくる。
4つの力は本当は1つの力で、それが別々の力に見えているではないか?
だとしたら全ての力を1つの力として解釈する理論があるのではないか?
……というのが大統一理論で、実際、電磁気力と弱い力は「ワインバーグ=サラム理論」というので統一されていて、そこに強い力も統一できれば大統一」になる。そしてさらに重力まで1つの理論で扱えるようになると「究極の理論」ってことらしい。
壮大すぎてイマイチわかんないんだけど、考えてみれば宇宙は「ちっちゃな点」として誕生したはずなんだよね。
その点が、インフレーションとビッグバンでぶわぁ〜〜〜っと広がったのが今の宇宙。
最初が点だったなら元々はあらゆるものが1つだったはずで、その本質は今だって同じなはず。つまり様々な素粒子も力も、本当は全部1つ。それが別なものに見えているだけかもしれないのだ。
宇宙誕生の謎を解き明かすということは、そういう原初の姿を知るということで、KEKの博士の言葉を借りると「自然が隠している真の姿を見ること」なんだって。
ボクらに見えているものは、ボクらのスケールではそう見えるということに過ぎなくて、もっとマクロな、あるいはミクロなスケールでは物理法則からして違うような、まるで別な世界に見えるらしいんだ。
そういうことを学ぶのが素粒子物理学で、すっごくロマンのある学問だなぁって思ったんだ。
それで主人公の「じん」が、素朴な思いつきからそういうことに気づく展開にした。
最初は博士が説明するだけだったんだけど、それを後から変更したの。
このへんでそろそろ、説明を聞くだけじゃなくて、自主的に課題を見つけて自分なりの疑問に挑んでいくようにしたかったというのもあってさ。
ま、色んなことを紹介しなきゃならない作品だから絞り込んだテーマにはできないんだけど、それでもね、やっぱ主役たちが受動的なだけでは物語は動かないから、何とかしようと足掻き始めたという感じかな。
そういうことを考えちゃうくらいには、作者自身も作品にハマり始めていたってことだね。
なお、このエピソードではほとんど触れなかった重力については、ずっと後の19~20話で扱っている。
重力は4つの力の中でも特殊で、本当に理解するには10次元くらいまでの次元論などまで関係してくるらしいんだ。
本当の重力は我々が感じている重力よりもずっと強くて、でもそれが弱く感じるのは力の大半が他の次元に漏れているからだとかいう理論もあるのよ。けど、そういうことを正しく理解するには、もっと本格的に勉強して超対称性だのヒモ理論だのまで学ばなきゃダメっぽくて……。
また、これまた劇中では「魔力」のように描写しただけで済ませちゃってる「弱い力」は、本当に魔法っぽい印象なんだよ。
だって粒子を他の粒子に変化させる力なんだもん。
この数年後に描いたセカンドシーズン第5~6話でも「スケールごとに働く力」を扱っていて、そのときも「弱い力」を魔法少女ネタで紹介しちゃってる。
ただ、弱いとはいえ、重力よりは強いらしいからややこしい。
本当に知識って、知れば知るほど謎が増えていくんだよなぁ(笑)。
※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)
※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。