イバライガーとの出会い:その2(再掲載/2008.09執筆)
このコラムは、ボクの公式サイト(www.urutaku.com)上で以前に公開していた「イバライガー観察日記」という連載コラムに掲載していたものを抜粋・一部改定して再掲載したものです。
寿司屋で、初めての接触
そういうわけで福祉機器メーカーさんに頼んで、イバライガーの代表者と会うセッティングをしてもらった。
主旨も伝えてもらった。
イバライガーを主人公にした地域向けのコミックを描きたい、と。
もっとも、この時点ではボクはたった1枚の写真を見ただけで、イバライガーの実物も、その背景も何も分かっていない。
そもそもボクだってボランティアでマンガを描くのだから、彼等にキャラクター使用料を払ったりはできないし、何らかの利益を還元してあげられるかどうかも分からない。
一応、ヒーローの認知度アップには貢献できると思うけど、それをどれくらい評価してくれるか。
相手から見たら、虫のいい話でしかないもんなぁ。
ボク自身も、有名人でも売れっ子でもないし。
とにかく会ってみて、このアイディアに理解を示してくれるか、探ってみるしかない。
実際に会ったのは2008年9月中旬だ。
近郊の寿司屋で会食した。
現われたのは2人。センセイ氏とBOSS氏(現在の茨城元気計画代表でイバライガーの考案者)。
思っていたよりも、ずっと年齢は上だ。
センセイ氏はボク(当時43歳)よりも10歳近くも年上で、代表者のBOSS氏も、ボクよりは若いが若者というほどではない。
意外だった。こういうことをやるのは、もっと若い人たちだと思っていたから。
企画の話なんか、あまりせずに談笑した。
オッサンだらけだからエロな話題もね(笑)。
でも、そんな話ばっかしてたわけじゃないよ。
いくつも吃驚したことがあった。
まずセンセイ氏にビックリ。
50歳以上だっていうのに、ガチのアニメ特撮オタ。
会話でも、要所要所でアニメの名セリフが出てくる。こりゃ間違いなくホンマモンだ。
ボクだって負けていられないから、アニメトークをガンガン飛ばしたかったんだけど、同席してくれた福祉機器メーカーの人たちは、そういう人ではないので、ちょっと遠慮してしまった。
アニオタが本気でトークし出したら、一般人は付いてこれるわけがないもんな。
次にBOSS氏にもビックリ。
久々にガチのアニメ好きの大人に会ったせいで、ついセンセイ氏とばっかり喋っちゃったんだけど、イバライガーを生み出したのは彼のほうらしい。
有名なサーファー(アマリーグの全日本シード選手) でもあるという。
なるほど、がっちりと鍛えた身体をしていて、アニオタのイメージとはかけ離れている。
こういう人が本気でヒーローしてるってのは、なんかちょっとウレシイ。
この男が、あのデザインを考えたのか。すげぇな!
マンガ化についても、気持ち良く了承してくれた。お金の話なんかなし。
おおっ、やっぱりヒーローだ。かっこいい大人たちだなぁ。共感できる人と会うと元気になれるし、会ってよかった。
ちなみにボクは基本的に下戸。ほとんど飲まなくて、こうした会合のときも大抵はウーロンを飲んでる。
でもこのときはちょっぴり飲んで、生まれて初めて運転代行を呼んだ(あんなに高いとは思わなかった、家まで5〜6キロくらいなのに6,000円も払った。もう二度とクルマの外出先では飲まないぞ!)。
翌日、いきなりウチの事務所に、2人が訪れた。
イバライガーのこれまでのステージショーなどを撮影したDVDと、撮影した写真のデータ集を持ってきてくれたのだ。
イバライガーの雰囲気を知っておいてくれ、ということで、このときもアツい会話になった。
こりゃ乗り気らしい。
さっそく一部の写真を加工して、マンガのテストショットを作りメールした。
向こうが乗り気になってくれたなら、負けていられないもんな。
鉄は熱いうちに打て、だ。
明日とか、そのうちじゃなくて、資料を預かったその日に、できるだけいい球を返さなきゃ。
と、すぐに返信が返ってきた。センセイ氏からだ。
> イラスト拝見しました。
> さすがです! うるの先生
> 漫画が楽しみです。
よかった、やれそうだ(笑)。
はじめてのお仕事
翌週、今度はBOSS氏から連絡があった。
妙に期待されちゃったから、漫画の催促かなぁ。
まだイバライガーのシナリオ案は出来ていないんだけど……。
と思ったら、画像の加工をお願いできないか、という相談だった。
イバライガーのマシンはトライクだ。
見た目はバイクだけど、実は三輪のクルマ。
なるほど、クルマならヘルメットの着用義務はないから、ヒーローが公道を運転できるわけか。
そのトライクに乗った写真を使ってポスターにしたいんだそうだ。
おお、いい話じゃないか。
ただ、そのトライクは黒いカラーリングなのだった。
一方イバライガーは赤がイメージカラー。
借り物だから勝手に塗ってしまうわけにはいかないんだけど、ポスターは真っ赤なトライクにしたいとのこと。
ボディには、イバライガーと同じ白い矢印のラインをあしらって。
よっしゃ、やったろうじゃね~か。
やるからには背景も差し換えよう。
バックにある余計な看板とか電線とか、邪魔だもんな。
早速、ウチのスタッフにトライクのキリヌキを頼んだ。自分でやってもいいんだけど、ボクがスタッフの仕事を引き受けるほうが効率いいからね。本来の仕事は……そっちのけ。
そしてキレイに切り抜いた画像にカラーフィルタを乗せていく。自然な赤にするために、色々な加工を何段階も加えていく。
簡単に見えて、この手の作業は、けっこう大変だ。本来なら、それなりのギャラをもらわないと合わない。
でも、そんなモン、忘れる事にした。
関わると決めたからにはトコトン関わるべきだ。中途半端な気持ちで一所懸命やってる奴にちょっかい出しちゃいけない。
大丈夫、マンガにせよ、ヒーローにせよ、人気が出ればお金なんか勝手に生まれてくる。そうなると思うからやってんだから、細かいとこでグダグダ言うことはない。
そう、ボクはすでにマンガだけじゃなくて、イバライガーという存在そのものに関わっていこうと思い始めていたのだ。
そうして出来上がった画像をメールしたら、すぐに返信があった。
またセンセイ氏からだ。
> 写真ありがとうございました。
> 代表のBOSSは早速プリントアウトして子供のようにはしゃいでました。
> いろいろ、参考意見 助かります。
> このところ、ショーの依頼などが増えてきて対応が追いつかず
> てんてこ舞いしているしだいです。
> 「しょっ少佐!助けてください!
> げっ減速できませんッシャア少佐ァ!助けてください!!」
> そのうち、時間が出来たらアニカラでも行きたいですね!
う~ん、そのネタで来たか、センセイさん。
そのへんがツボなのね、と思ったら大間違い。
この年の暮れ、彼のツボはもっとず~~~~~~っと深いことをボクは知る。
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※このブログで公開している『小説版イバライガー』シリーズは電子書籍でも販売しています。スマホでもタブレットでも、ブログ版よりずっと読みやすいですので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです(笑)。