カソクキッズ1話:エネルギーの情報量

2017年12月27日

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エネルギーってナニ?

 イントロから続く第1話は「エネルギーについて」を扱う事になった。

 ま、いいんだけど、そもそもエネルギーって何なんだ?

 いや、だってさ、エネルギーはエネルギーでしょ?

 スタッフ同士で話し合ってみたんだけど、答えは出ないんだよ。
 給食の献立表に書いてあった「エネルギーになるもの」とかさ、そういうのが思い出されるだけで「エネルギーとは何か」はちっとも分からない。

 でも、それでいいんだ。

 ボクは自慢じゃないが、物理は赤点だ(ほんとに自慢じゃないな……)。
 だから、分からない子供たちの気持ちが分かるっ!

 そうだ、ボクは子供たちの代表として、KEKの専門家たちと会っているんだ。
 アホっぽくても、バカだと思われてもいい。とにかく聞いてみよう!

 というわけで、ミーティングの席で聞いてみた。

「エネルギーって、よ~するにナニ?」

 列席の先生たちは、しばらく考えていて、こう答えた。
 エネルギーとは「可能性」のことだ、と。

 そうか! 可能性なのか!

 ………………。

 うわぁああああああ!
 もっと分かんなくなっちゃったよぉ!

 なんなんだ、可能性って!?

 い、いや、落ち着け! 説明を聞くんだ!

 ……………………………………。

 ……や、やっぱりイマイチ分かんない……。

 ……………………………………。

 少し、分かった……。でも、まだピンと来ないなぁ。
 ボクがバカだからかなぁ?

 一人が語ると他の博士が補足し、さらに他の人がツッコんで、研究者たちのエネルギー議論が続く。

 単に教えるというのではなく、目の前でプロフェッショナル同士の議論が展開されているのだ。

 既知のことでも、その解釈、例え方などに関しては議論になっちゃう。
 研究者は、そう簡単に妥協しないのだ。
 カソクキッズの会議は、漫画の打ち合わせ、なんてもんじゃないのだ。

 そういうシーンを見ているうちに、ボクにもボンヤリと見えてくる。
 ボンヤリだから、わかったわけじゃない。

 それでも、ボクも素人なりにツッコんでみる。

 だって素人のボクが分からなきゃ意味がないんだから。

 それにしても、トンデモない連載だ。
 ボクがやってて……いいのかなぁ?

 

エネルギーってナニ?:その2

 そういう打ち合わせを経て、担当の山中博士から「エネルギーについて」をまとめた解説文が届いた。

 漫画のシナリオになるよう、会話形式でまとめられていて、ボケもツッコミもある。
 科学者ってボケもウマイんだ!?
 すげ~な、山中先生。

 さて、そんな山中先生が書いてくれたノリノリの解説文。
 ソレを読んで、やっとアタマが整理できた。

 そうか、可能性っていうのは「エネルギー保存則」のことか。

 物理が赤点でも、それは知ってる。

 エネルギーは決してなくならない。
 エネルギーは「物質」になったり「力」になったり「高さ」になったりする。
 けれど「あり様が変わる」だけのことで、増えも減りもしない。

 つまり、エネルギーは何にでも変わるってことで、それが「可能性」なんだ。

 なるほどなぁ……。

 でも……。

 ソレはソレとして、漫画になるように、これをまとめ直さなきゃならない。
 それは、すごくドキドキ。

 漫画にするっていうのは、自分のコトバに置き換える事でもあって、ソレはボクの解釈に置き換えるっていうこと。
 ボクの解釈が間違ってたら、全部間違ってしまうわけだ。

 そして、ボクは本当に分かったわけじゃないと思うんだよな。

 エネルギー=可能性という解釈については、わかったと思うんだけど、エネルギーそのものについて、しっかり理解できたとは言いがたい。

 でも、描くしかない。
 ボクが今回分かった事を、ボクなりに描くしかないんだ。

 だから開き直って描く。
 間違ってたら先生たちがツッコんでくれるだろうから、気はラクだし。

 そうやって描いた「エネルギーってナニ?」のエピソードをKEKで披露した。

 多少、セリフや解説文の直しは出たから花丸ではなかったけれど、赤点というほどヒドくもなかったみたい。

 ああ、よかった。

 

適当な情報量って難しい

 科学って、色々な事が相互に関係しあっている。

 不思議の国のアリスみたいに、アレを知るにはコレを知ってなきゃ、コレを語るにはソレを先に言わなきゃ……といった具合にね。

 エネルギーについて説明するために山中博士が作ってくれた解説に「仕事」に関する文章があった。
 ここで言う「仕事」とは科学のコトバとしての「仕事」。

 なるほど、エネルギーは「仕事」をするから、これは関連の深いモノだ。

 

でも……。

 子供たちに限らず、人間は一度に多くのことを受け止める事はできないと思うんだ。

 いくら関連があるからといっても、一度の情報量が多すぎると混乱してしまって、結局何も届かない、というコトになりかねない。

 ボクなんか、学生時代に授業でやったことなんか、ほとんど覚えてないもん。
 どんどん解説していくんじゃなくて、読者が受け止められるペースを読みながら、少しづつやらないと本末転倒なんだよな。

 このエピソードのテーマは「エネルギーは様々なモノや現象にカタチを変えるだけで無くなることはない(=エネルギー保存則)」ということ。

 コレをちゃんと伝えなきゃならない。

 たったソレだけ、と思う人もいそうだけど、一般的な漫画では、ヒロインのピンチに主人公が駆け付けたシーンから始まって、敵役とニラミ合い、対決ムードがどんどん高まったところで「続く」なんてのも珍しくないでしょ。

 この場合は「主人公登場!」というだけだぜ?
 それで18ページ必要だったりするんだ。

 カソクキッズの1話ごとのページ数は決まってないのだけど、それでも予算には限度があるし、こっちも限界を超え続けていたら死んでしまうので、好きなだけページを使えるわけじゃない。

 ネット上では10ページ前後だけど、それはパソコン画面で見やすいように1ページを3分の2に分割して表示しているからで、通常のページ数では7ページほど。
 ボケやギャグも十分に入れなきゃならない。

 エネルギー保存則を語るだけでも足りない気がするのに「仕事」の話まで入れるのは大変なコトなんだ。

 それじゃ、切り捨てていいのか?

 いや、正しい理解に役立たないようでは、それこそ失敗以外の何モノでもない。

 そうは言っても、無理に詰め込むのもダメ。

 これは漫画だ。教科書じゃない。
 知識を身につけるというより、科学への興味を引き出すことのほうが大事なはずだ。
 科学ってめんどくせ~と思わせないようにしなきゃ。
 興味さえあれば、他の解説書や教科書で十分学べるんだから。

 どんどん加えていくのは簡単だ。
 逆に、切り捨てていくのは、本当に大変。

 でも、あえて切るっていうことをやっていかないと、全てを失ってしまうと思うんだ。
 持ちきれないものを持たせたら、丸ごと捨てられちゃうもん。

 結局、「仕事」はコラムとして、漫画本編とは切り離して掲載した。
 関連はあるから、無視する事もできないしね。

 誰かの頭の隅っこに、ちょっとだけ引っ掛かってくれたらいいな。

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。