カソクキッズ2ndシーズン3話:物質とはなんだ?

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あれもこれもビーム

 SFアニメ、小説、漫画などには「質量弾」あるいは「実体弾」といった呼称が出てくることがある。また、グーで殴ることを「物理で殴る」などと言うこともある。
 どちらも、ビームなどの光学兵器や魔法などに対して、もっと直接的・物質的な方法を指す言い方として使われている。

 が……。

 ビームだって物質なんだよ!!
 ビーム兵器だって物質そのものをぶっつけてんだよ!!
 ちゃんと質量あるんだよ!!

 グーで殴るのも、魔法でダメージ与えるのも一緒!!
 どっちも電磁気力の作用なんだよ!!

……まぁ、最近は質量弾は運動エネルギー弾(英語では「Kinetic energy penetrator/略してKEP)と呼ぶことが多くなっていて、この言い方なら弾丸自体の質量と硬度、それに速度=運動エネルギーを上乗せしたものということだから、やや正確になってるとは思う。
 ビームなどの光学兵器は、質量や運動エネルギーよりもビームが持つ熱量のほうがメインだし、爆弾だって内部の炸薬などがメインであって、質量でダメージを与えているわけじゃないからね。

 いずれにしても、ビームだって物質なのは間違いない。

 例えばガンダムのビームライフルなどは「メガ粒子砲」などと言われている。メガ粒子というのが何の粒子なのかは知らない。劇中に出てくる架空粒子・ミノフスキー粒子のことかもしれないけど、何にしても粒子というのは物質そのものだ。

 スタートレックの「陽子ビーム」は陽子って言ってんだから、これはもう物質以外のナニモノでもないし、エヴァンゲリオンのヤシマ作戦で第5使徒を狙撃したポジトロンスナイパーライフルだって「ポジトロン=陽電子(電子の反粒子で反物質)」という物質を撃ち出していた。

 漫画や小説では、直接的な打撃や衝撃とビームなどを区別するために質量弾といった言い方を編み出したのだろうけど、本当はビームだって物質で、質量もあるのだ。

 物質の最小単位は、素粒子(今のところ)。
 素粒子は『禁断の惑星』の原子砲よりも、『スタートレック』の陽子ビームよりもずっと小さい。

 全ての物質(生物も)は、そういう素粒子が集まって出来ているのだ。

 

レゴブロックを集めて生命を生み出す!?

 さて、その万物の素である素粒子や元素などについて考えていると、不思議な気分になってくる。

 例えばさ、ボクの身体には炭素がいっぱい含まれているわけだけど、ボクの身体になってる炭素も、鉛筆の芯になっている炭素も、ダイヤモンドになってる炭素も、全部同じなんだよね。生命にる炭素やダイヤモンドになる炭素があるわけじゃなく、炭素は炭素なんだ。同じレゴ・ブロックのパーツを使って恐竜を作ったり機関車を作ったりできるのと同じ。

 あらゆる元素は電子と原子核で出来ていて、原子核は陽子と中性子で出来ている。
 陽子と中性子は、どちらも素粒子のクォークの「アップ」と「ダウン」で出来ている。
 どんな物質でも、最小単位へと分解していくと、最後は必ずアップ、ダウン、電子の3つの素粒子になる。

 ……ということはさ……同じようなパーツばかりのレゴ・ブロックだって、ものすごく沢山組み合わせていったら、いつか生命になることもあるのか?

 だってさ、生命でもなんでもない3種類の素粒子が集まって、あらゆる物質(元素)ができちゃうんだぜ?
 その元素の中の34種類が集まって人間になってんだぜ?
 (2018年現在、発見された元素は117種類。未発見の元素がいくつあるのかは不明。一説によると173種類まで存在すると言われている)

はたらく細胞』によると、人体には約37兆個もの細胞があるという。素粒子や元素はそれより何桁も小さなパーツだから、兆(ちょう/10の12乗)なんかじゃ全然足りない。京(けい/10の16乗)や垓(がい/10の20乗)でもまだまだ。
秭(じょ/10の24乗)、穣(じょう/10の28乗)、溝(こう/10の32乗)、澗(こう/10の36乗)、正(こう/10の40乗)、載(さい/10の44乗)くらい必要なのか。
 あるいはもっと……極(ごく/10の48乗)、恒河沙(ごうがしゃ/10の52乗)、阿僧祇(あそうぎ/10の56乗)? それとも、その上の那由他(なゆた/10の60乗)、不可思議(ふかしぎ/10の64乗)? まさか最大単位の無量大数(むりょうたいすう/10の68乗)?

 まぁ、そのへんはボクにはわかんないんだけど、とにかく素になる物質がトンデモない数集まったら生命になっちゃう可能性ってあるんじゃないの?

 もっとも素がレゴブロックサイズだと、生命になる頃には宇宙に収まらなくなっちゃう(グレンラガンか?)かもしれないけどさ……。

 

生命って……生きるって、なんなんだ?

 まぁ、レゴで生命を作るのは、とりあえず忘れよう。
 自分でもわけがわかんないし。

 けど、炭素が炭素にすぎないことは間違いないし、水素は水素で、酸素も酸素だ。個々の水素ごとに性質が違うわけじゃない。

 そして炭素と水素が結びつくと炭化水素になる。
 石油の主成分だ。

 その石油は、大昔の生き物が変化したものだと言われている。今では生物由来説以外にも、無機物由来説、あるいは細菌が生み出している説などもあるようだけど、とにかく、かつての生物が今は石油となっていると考えられている。だから化石燃料などとも言うのだ。

 石油は燃料だけでなく、プラスチックの材料などにもなっている。
 ボクらの日常にはプラスチック製品が山ほどあるけど、それらは我々のご先祖様だったモノなのだ。

 ……ちょっと、話が逸れてるな……。

 いずれにしても、生物と無生物の境界は曖昧だ。

 動けば生物というもんでもない。
 動かないから無生物というもんでもない。

 同じ材料で作られてるのに、一方は生物で一方はタダの物質。

 何が違うんだろう?
 どこから違うんだろう?

 物質の構造への理解は、どんどん発展している。
 今では分子工学など、ナノテクノロジーの時代になっている。
 何がどう組み合わさって生命になっているのかが、次々と解き明かされている。

 物質の深淵は、遥かに深い。
 人類が知っている深さは、まだくるぶしにも届いていないのかもしれない。

 それでも、いつかは頭のてっぺんまで潜れる深さになるかもしれない。
 つまり、物質を組み合わせて生命そのものを組み上げられるようになるのかもしれない。

 そのとき、生命の概念はどう変わるんだろう?
 ボクと全く同じモノを組み上げられるのだとしたら、ボクという存在にはどんな意味があると言うんだろう?

 この第3話を描いたときから、ボクはずっと、こうした疑問にモヤモヤすることになった。

 宇宙の謎に加えて、生命や物質の謎も扱うことになった『カソクキッズ:セカンドシーズン』では、物質とは何か、生命とは何かを考えなきゃならなくなり、それは自分とは何か、何が自分を自分たらしめているのかを考えることになっていった。

 生命が物質の組み合わせの1つに過ぎず、その組み合わせ方を完全に理解し、実践できるようになったら、個々の生命の状態を解析して再現することだってできるのではないのか?
 いや、もっと出来のいいボクだって、作れるに違いない。

 今はSFでも、いつかはそうなるのだとしたら。

 そうだとしたら、ボクという個体にどんな意味がある?
 生きることになんの意味があるんだ?
 生きるってなんなんだ?

 このときから、ボクはず〜〜っと、そのことを考え続けるようになったんだ。

 

天使は霊か、物質か

 このエピソードで一番興味深かったのは「物質の定義」だ。

 物質と生命の境界がアヤフヤというのは先に書いたけど、そもそも物質の定義すら、統一されてなかったんだ。

 劇中ではモチダ博士は、物質=バリオン説。
 陽子とか中性子とか、クォーク3個で出来ている粒子がバリオンなんだけど、物質構造がメインのモチダ博士の立場では、本当はもっと大きな原子や分子あたりが物質という感覚らしい。かなり一般人に近い感覚だよね。

 でも素粒子論のフジモト博士は、物質=素粒子説。
 クォークはもちろん、光子やグルーオンなどの質量を持たないボース粒子(ボソン)をも物質として解釈している。

 けど、同じ素粒子論のタカハシ博士になると、ボソンを物質に含めることには納得できなくなる。

 これ漫画の中だけじゃなくて、実際にカソクキッズを監修している博士たちが、そうだったのよ。打ち合わせ中に、ボクの目の前で物質の定義論争が始まって、それをそのまんま、漫画に描いたんだ。
 対立のオチは「そもそも物質なんていう不確かな言い方はしない」で一致しちゃうんだけど、それも実際のまんま(笑)。

 

 それと、この物質論争のときに出てきたのが「針の上に天使は何人とまれるか」という話題。

 天使が物質的な存在(天使フェルミオン説)なら、同じ場所に複数が存在することはできない。
 一方、天使が霊的な存在(天使ボソン説)なら、同じ場所に重なって存在できる。

 中世の神学者たちがそういう論争をしていたそうで、かなり昔から物質の定義については意見が割れていたらしい。
 そして今では「ケースバイケースでどっちもアリ」って認識になってるっぽい。

 物質が何かは、未だにはっきりしないままなのだ(苦笑)。

 

※余談だけど、そもそも天使がどういうものかについても、ボクよくわかってないんだよね。だって聖書に出てくる天使って、顔がいっぱいある怪物だったり馬に乗った戦士だったりして、羽根がなかったりもするし、いわゆる天使のイメージとはかけ離れてるでしょ。このエピソードで描いた天使も、どっちかというとキューピッドな印象だよね。なんつ〜か、聖書の天使はフェルミオンで、一般的に知られている天使はボソンっぽいよな〜〜。

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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