カソクキッズ2ndシーズン2話:まんが宇宙むかしばなし

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宇宙最初の100億分の1秒

 このエピソードは、ものすごく無茶だ。
 なんせ、宇宙誕生から現在までの約138億年を一気に紹介しようって企画なんだから。

 (本編中では「約137億年」となってるけど、今ではその後の研究で「約138億年」のほうが正確だということになっているので、ここではそっちで書くね)

 でもとにかく、宇宙むかしばなしをやらなきゃならないので、そのつもりでネームを切ってみた。
 冒頭は、こうだ。

「……むかしむかし……ていうか、時間も存在しなくて「どこ」という概念すらないどこかで……」

 う~む、やっぱ冒頭1行目から相当に無茶だよなぁ、このむかしばなし(笑)。

 でも、仕方ないのよ。

 時間や空間も宇宙の属性なんだから、宇宙誕生以前には時間はないし、空間もないんだ。
 時間が止まってるとか無限に広い空間っていうなら想像できるんだけど(正しい想像ではないだろうけど)、時間がない、空間がないとなると、どんな想像も不可能だ。想像するための最低条件がないんだから、何もイメージできなくなっちゃうんだよね。

 そういう本当に何もない真空中に、無からいきなり宇宙が生まれる。
 それは大きさはなく(空間自体がないんだから)、エネルギーだけがある点だ。
 エネルギー量は、現在の宇宙の質量と同じ。エネルギー保存則があるからね。ただの点に全宇宙と同じエネルギーが集中していたはずなんだ。

 そして、その点が急激に、指数関数的に加速膨張する。
 しかも一瞬で。

 それがインフレーションと呼ばれる現象。
 インフレーション理論はまだ完全に証明されてはいないのだけど、一番有力な説なんだ。

 ボクは、この現象を「点だったものが面になるような感じ」としてイメージしている。
 最初の1点から全方向に平面が広がって、一瞬で今の宇宙の直径とほぼ同じくらいにまで膨張する。

 そして、その後が有名なビッグバンだ。
 これは平面全部が3次元方向に広がるようなイメージで理解している。

 魔法バトルでありそうな描写でしょ。
 点(キャラ)を中心に魔法陣が広がり、それが上に向かってボンッと爆発する感じ。アレだ。

 宇宙はビッグバンで始まったとよく言われるけど、今の宇宙論ではそうじゃないんだよね。
 それより先にインフレーションという「加速膨張期」があって、ビッグバンはその後の「減速膨張期(爆発だから爆発の中心から遠ざかるほど減速膨張になる)」なんだ。

 このビッグバンの頃の火の玉宇宙の温度は100GeV(ギガ電子ボルト)以上だったと考えられている。どのくらいかピンとこないけど、一般的な室温は40分の1eVだっていうから、とにかくトンデモない超高エネルギー状態だったということだよね。

 なお、今の宇宙は大体どこでも絶対温度3度(3K)で、これは0.0001eV。ざっとマイナス270度くらいだ。
 初期宇宙の凄まじい温度を今の宇宙の体積にまで広げて薄めると、平均がマイナス270度になっちゃうわけだ。

 で、そのビッグバンの超高エネルギーの中で、最も基本的な物質=素粒子が生まれる。
 クォークとかレプトンとかボソンとかいうアレだ。

 宇宙の元になった点が生まれ、それがインフレーションで広がって、さらにビッグバンで爆発し、素粒子が生まれる。

 もうここまでで十分にダイナミックなドラマが展開しているけど……実はこの時点では宇宙誕生から100億分の1秒しか経っていないのだ。

 これでも必死に端折りまくって進めてる(本当は初期の点の時期の「真空の相転移」とか「自発的対称性の破れ」とかも説明すべきだし、素粒子誕生の直後にはヒッグス場も生まれている)んだけど、全部語ってると138億ページあっても足りないかもしれないし……。

 

 とにかく、やっと冒頭の100億分の1秒目まで話を進めたのだ。
 これで残りは……

 ……そのまんま138億年かぁ……(笑)。

 

 この後、物質と反物質の話、ダークマターの話へと進んでいくのだけど、そこまで進めても宇宙年齢は1億分の1秒にしか進まないのだ。素粒子論的な宇宙むかしばなしだと、誕生から最初の1秒以下の部分が大半になっちゃうのだ……。

 

宇宙年齢100万分の1秒~100億年目まで

 宇宙誕生から100万分の1秒~1万分の1秒くらいになると、素粒子がくっついて陽子や中性子、パイ中間子などが生まれ始め、これ以降クォークなどの素粒子は陽子や中性子の中に閉じ込められ、剥き出しで存在することはなくなる。

 さらに1~100秒後くらいになると、宇宙の温度が1Mev~0.1MeV(メガ電子ボルト)くらいに下がってきて、陽子と中性子の数のバランスが変化する。重たくて不安定だった中性子が安定的な陽子に変わって、中性子1個に対して陽子7個くらいになる。

 そして宇宙年齢1000秒目くらいの頃に、重水素、三重水素(トリチウム)、ヘリウム、リチウム、ベリリウムなどの「最初の元素」が生まれるのだ。最近(2018年9月現在)話題のトリチウムも、この頃に誕生したのだ。

 なお、水素などは40万年くらい経ってから生まれる。
 いわゆる「宇宙の晴れ上がり」の頃だ。

 こうして作られた元素が集まって、最初の天体が生まれるのは宇宙年齢7億歳くらいの頃らしい。
 現在も宇宙にあるような様々な恒星が生まれるのは30億年目くらいから……と考えられているそうだ。

 このようにして生まれた恒星の中で、さらに様々な元素が作られ、その恒星が超新星となって爆発飛散するときにも元素が作られ、それらがまた集まって物質の世界は複雑になっていく。

 そういうことを何度も繰り返し、やがて我々の住む地球も誕生するのだ。
 宇宙誕生から90億年近く経ってから、ね。

 う~ん、それにしても……。

 こうして思い返してみても、最初の100億分の1秒に比べて、その後の100億年はあっという間だよなぁ……(苦笑)。

 

ボクらは星の子!!

 このエピソードのミーティングで一番感銘を受けたのは、監修の博士が言った「我々は星の子」という言葉。

 ボクらが普段見ている世界も、ボクら自身も、こうした宇宙の歴史の結果で生まれてきたんだ。
 宇宙が生まれ、素粒子が生まれ、それが元素(原子)になり、さらに分子になり、今、ボクになっている。

 全ての元素は地球生まれじゃない。
 ビッグバン、あるいは遥か彼方の宇宙のどこかの恒星の中などで作られた。
 もっと言えば、宇宙誕生の時点の超エネルギーの一部が変化して、今のあらゆるものになっているんだ。

 自分の身体を構成している全ては、星のかけらなんだ。
 ボクらという存在は、そういうものなんだ。

 これ、当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ、でもロマンチックだと思ったんだ。
 素敵だな、夢があるな、って。

 今日、ボクの一部だった物質も、いつかはどこかの星の一部になるのだろう。
 そもそも人間の身体を構成している物質は、1ヶ月くらいで全部入れ替わるとか言うしね。
 そういうことを繰り返して、宇宙の歴史は進んでいく。

 138億年の中の、ほんの一瞬、ボクだった物質たち。
 これからも、ボクには想像もつかない大冒険を続けていくんだろう。

 う~ん、やっぱロマンだよなぁ(笑)。

 


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でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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