小説版イバライガー/第28話:禁断のイバライガーX(後半)

2018年9月15日

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Bパート

 エキスポ・ダイナモが輝いた。

 シン!? ワカナ!?
 私を……私の名を、呼んでくれるのか。君たちを閉じ込めた私を。TDFを招き入れてしまった私を。それでも信じてくれるのか。

「おぉおおおおおおおおおっ!!」

 全身に力がみなぎる。爆発しそうなほどに、パワーが上がっていく。
 気合いだけで十数体のジャークゴーストが吹き飛んだ。

 同じような反応を感じる。みんなもシンたちのエモーションを受け取ったらしい。
 この力があれば、間違いなく食い止められる。
 ジャークゴーストだけならば。

 だが、そうはいかないようだ。本命が来る。
「イバライガー! この反応は……!!」
 ミニライガーたちが集まってきた。全員、奴らの気配を感じたようだ。

「お前たちは、基地に戻れ。シンとワカナ、それに博士やRを頼む。いざとなったら、彼らを連れて脱出しろ」
「そんな……! 四天王なんだよ? それも3体同時なんだよ!?」
「いくらパワーが上がってても、一人で戦うなんて無茶だよ!!」
「それに、今の初代は時空の力だって使えないんでしょ! そんな身体で……!!」
「心配するな。一人じゃない。ガールたちもいる。PIASもな。そして私たちはイバライガーだ。何があっても人々を守る!」

 見上げた。空に、黒い霧が広がり始めていた。アザムクイドか。
 霧の中に、瘴気の塊がいる。ダマクラカスン。
 そして南側から近づいている冷気が、ルメージョ。

「ガール、ミニガール! あの霧はお前たちに任せる! 風で奴を防いでくれ!! 私はダマクラカスンを止める!!」

 通信が入った。アケノからだ。
『状況はこちらでも察知している。ルメージョは任せろ。今のPIASなら、倒せないまでも止めるくらいはできるはずだ』
「頼む。他の者は、ゴーストの掃討を続けろ。基地に近づけなければいい。行くぞ!!」

 


 とうとう出てきた。もう、パワーを出し惜しみしている場合じゃない。

「やるわ、ミニちゃん! あなたは私のバックアップを!!」
「わかった! でも無理しないでね!?」

 ごめん。無理しないと、これは止められない。
 最大出力で放っても、いつまで持ちこたえられるか。

「時空旋風……エターナル・ウインド……フレアァアアアアアアアッ!!」

 放った。風で、敷地全体を覆う。流れをコントロールして、霧を遠ざける。
 黒雲のような霧の中に、雷鳴のような煌きが走っている。ポジティブとネガティブが対消滅する光だ。
 さすがに霧を丸ごと消すのは無理だ。少しでも長く、少しでも多く、アレを止め続けるしかない。

 左のほうで、対消滅が激しい。冷気の渦が流れ込んできている。
 ルメージョ。

 でも、いつもほどじゃない。私の風に対抗しているのではなく、別な戦いの余波がぶつかっているだけ。
 PIASとルメージョが戦っているんだ。以前のPIASでは全く歯が立たなかったようだけど、今は拮抗しているようだ。
 すごい。本当にR並みかもしれない。このまま、凌ぎきれれば。

 でも、初代は……。
 ダマクラカスンは危険すぎる。しかも以前のままじゃない。

 風が、伝えてくる。あの霧はアザムクイドの一部に過ぎない。そうじゃなかったら私の力では抑えきれない。かろうじて食い止めていられるのは、アレが本体じゃないからだ。
 本体は、たぶん、ダマクラカスンの中。
 寄生……というより、身体を共有している状態らしい。四天王二人分のパワーが集中しているはずだ。
 逆に初代は、回復したとはいえ以前と同じ力は使えない。
 本当に止められるの? ハイパーの力を呼び出せれば勝機はあると思うけど、そう都合よく使える力じゃないはずだ。

 霧が揺らいだ。一部が濃くなり、こちらに押し寄せてきた。

「ええぇえい!!」
 ミニちゃん。もう1つの風が、押し返してくれた。

 いけない。他を気にしている余力はない。みんなを信じるしかない。
 信じて、この霧を止め続けるんだ!

 


「久しぶりだな、機械人形。俺が引き裂いた傷はそのままか。そのザマで何ができる?」
「傷はすでに私の一部だ。それに……この傷が与えてくれたものもある!!」

 ダマクラカスンの爪が伸びた。マントを翻す。織り込まれたNPLに、意思を伝える。マントは一瞬で変形し、盾となった。
 火花のような煌きを発して、爪が砕かれる。

「ほぉ。面白い小道具だな。お前の意思で自在に変形するというわけか。だが、俺も以前とは違う。この身体には、もう一人の四天王が宿っている」
 ダマクラカスンの声が、途中から別な声と重なって聞こえた。
「やはり、そこにいたか、アザムクイド」

「気づいていたか。あのときは世話になったな、イバライガー。お前とイバライガーRのおかげで、我はこの世界に来る事ができた。その礼をしたい。手向かうな。そうすれば一瞬で破壊してやる。痛みも苦痛も悩みも、全てを消してやるぞ」
「ありがたいな。だが……私はまだ消えるわけにはいかんっ!!」

 地を蹴った。追ってくる。やはり争いを好む。
 奴らの目的はRのはずだ。こちらを無視して基地を襲ったほうが確実なはずだが、ジャークは戦おうとする。そういう性質を持っている。
 そのことが、わずかな可能性を生むはずだ。

「ふ、我らと戦うことで時間稼ぎするつもりか。だが、いつまで抗うことができる? ガラクタの貴様一人では、我らは止められん!!」
 圧縮された瘴気が、ダマクラカスンの全身から放たれた。まるで黒いビームだ。マントだけでは防げない。クロノ・スラスターも動かない。全身をエモーションで包んで、どれだけ軽減できるか。

 


 この感じ。初代が、ダメージを受けた。
 まだ致命傷じゃない。でも危ない。このままでは。

 ワカナは、必死に祈った。
 信じる。信じる。信じる。彼らは負けない。どんなピンチでも、絶対に乗り切る。

 でも。

 四天王級を倒すには、時空突破が必要だ。Rが使ったクロノ・ブレイクなら、例え四天王でも倒せるはずだ。
 ブラックのオーバーブーストも、四天王を凌駕するパワーを引き出せる。
 けど、Rは動けない。ガールにはまだ無理だし、ブラックもいない。初代のクロノ・スラスターは破損したままだ。

 どうする。どうすれば。
 シンを見た。何かを考えている。何かに集中している。
 そうだ。落ち着かなきゃいけない。こういうときこそ、落ち着いて考えなきゃ。

 部屋の中は静まり返っている。外の音も、聞こえてこない。聞こえるのは水の音だけだ。

 水の音?

 プールを見た。何もない。何もないのに、波立っている。NPLが動いている。どういうこと?
 シンは、動かない。いや、意識がない? 何かに集中して、心が、ここにいない?

 まさか!?

 プールから、水柱が立ち上がった。その中に光が集まっている。
 まるでイバライガーのコアのような輝きが形成されていく。
 その周囲にNPLが集まり、何かを形作っていく。

 これは……シンの……力!?

 意思の力。戦い抜く力。それがエモーションと反応して、イバライガーは生まれた。
 そして今また、シンはイバライガーを生み出そうとしている!?

 


 氷の嵐。だが、この程度なら十分にかわせる。

「いや、ブレイドを展開しろ。叩き返す」
 指示とともにエモーションが送られてくる。アクションのイメージも伝わってくる。その通りに動いた。
 氷嵐を切り裂く。氷の刃をブレイドで撃ち返す。

「やるねぇ、イバライガーモドキ。以前とは段違いだ。ここまでパワーアップするとは思わなかったよ」
 撃ち返した刃は、ルメージョの眼前で止まった。さすがに直撃させるのは無理か。
 だが、やれる。前とは違う。

 両足のホルスターから、銃を抜いた。連射する。ケーブル付きの誘導弾だ。ケーブルを通じて、俺と隊長のエモーションが伝わっていく。ルメージョは杖で防御しているが、弾をかわされてもケーブルは残る。着弾点から伸びたケーブルがクモの巣のように張り巡らされていく。
 この結界の中に封じてやる。これまでの借りを、まとめて返させてもらうぞ。

 ルメージョが、止まった。
 周囲は、どちらも結界の中だ。もう、逃げられない。

「とどめに、行きます……!!」
 ソウマは、拳を握った。エネルギーが集まり、白熱化していく。
 その澄ました顔に、こいつを叩き込んでやる。

『ダメだ。動くな。結界の中に留めておくだけでいい。近づくな』

 隊長の声が、頭に響いた。
 なぜです? 四天王を仕留めるチャンスです。行かせてください。

『わからんか。奴はまだ余裕を見せている。気がまるで縮んでいない。むしろ大きくなっている。人間の姿だからと侮るな。あれは化け物だ』

 ハッとした。ルメージョは、静かに佇んでいるが、確かに気は揺らいでいない。
 まだ、何かあるのか。いや、まだ本気を出していないのか。

「……そうかい。もう一人が手強そうだねぇ。戦闘力よりも厄介なものを持っている。相当場数を踏んでいるってわけかい?」

 ルメージョは俺を、PIASを見てない。
 その後方、隊長を見ている。

『ルメージョ。力ではお前のほうが上だ。いかに新型のPIASで私とソウマのエモーションを集めても、お前には及ぶまい。だが、戦いの年季では私が有利なようだ。お前が使っている身体は、ただの民間人。しかも完全に意識を消去できていない。故に、お前の動きにはブレがある。コンマ数秒のズレ。それが私たちの勝機だ』

「さすがだねぇ。人間にも、これほどの力があったか。けど……勝機はないよ。その弾丸を撃ち込まれようと、ケーブルを絡ませようと、あるいはブレイドで切り裂こうとも、私は殺せない。死ぬのは、この女だけ。お前たちの貧弱なエモーションではジャークを、ましてや四天王を滅ぼすなど、できはしないのさ!!」

 嵐が、一気に噴き出した。ケーブルが断ち切られていく。
 ソウマは一瞬躊躇したが、隊長のエモーションには揺らぎがなかった。

『ウイング展開』
 今、ここで? 何のために?
 それでも命令に従った。動きのイメージが送られてくる。そうか。

「うぉおおおおおおっ!!」
 拡張したウイングをもぎ取り、つないでシールドにする。隊長の言う通りだ。氷嵐にはズレがある。間断なく噴き出しているようで、一瞬だけ途切れる瞬間がある。その一瞬を捉えろ。

『今だ! ウイングを……』
 わかってる。畳んでいた羽根を開く。そのまま投げる。巨大なブーメランが、氷嵐の隙を突いて飛んだ。
 だが、杖で防がれた。間一髪に見えるが、ルメージョは嗤っている。ちっ、奥の手を防がれたか。

 その表情が変わった。隊長のエモーションからも、何か違う感じがある。
 ルメージョは険しい顔で、あらぬ方向を見ていた。

「シン……とうとう、やったね……。禁断の扉を開けちまったね。そうかい、お前もこちらに来るか。ならば、これまでだ。共に消えるか、どちらかが裏返るか。ここからは、人間の言う運命ってやつに委ねるだけだねぇ……」

 声が聞こえた時には、ルメージョの姿は消えていた。

 


「不完全な身体にしては、よくやった。だが、やはり決め手に欠けるようだな」

 確かに、傷だらけだった。黒いビームに貫かれ、身体のあちこちが欠損している。
 まともに動けるのは、あと数刻か。
 だが、それでも倒れるわけにはいかない。

「まだやるか。いや、そうだろうな。お前らは細胞1つでも我らと戦おうとする哀れな存在だ。来い。それを終わりにしてやる」

 どうする? 同じ攻撃を繰り返しても、無駄だ。
 せめてクロノ・スラスターが動けば。時空突破が使えれば。

「イバライガー!!」
 声。ミニライガーたちか。なぜ、戻ってきた? お前たちはシンやワカナを……。

 なんだ?
 この気配はなんだ?

 いや、知っている。この感じは、知っている。
 ずっと前に感じた。あのときと同じ。
 まさか!?

 基地の一角が、爆発したように砕け散った。
 地下から、光が溢れる。シン。まさか君は……!!

「そこまでだぁああああ! ジャァアアアアアクッ!!お前たちの好きにはさせなぁあああいっ!!」

 叫びと共に、ダマクラカスンに光が突っ込んでいった。ギリギリでかわしたダマクラカスンの肩がえぐり取られた。
 光が、初代の前に降り立ち、構えた。

「イバライガァアアアアッ……エェエエエックスッ!!」

 シン……なのか?
 その姿は……Xだと? NPLを操作して作り出したのか!? そこまで力が覚醒していたのか!?

「行くぞ、ダマクラカスンッ!!」
「わははは! いいぞ、人間っ!! それでこそエモーションの使徒!! 見せてみろ、その力をぉおお!!」
 Xが跳んだ。一直線に突っ込んでいく。

 ダメだ、シン!! その力は使っちゃダメだ!!

 


 飛んだ。交錯する。腕が、吹き飛ばされた。
「うぉおおおお!!」
 気を込める。NPLで再生する。どれだけ破壊されようと、このボディなら一瞬で再生できる。
 俺の身体と意識が保つ限りは。

「なるほど。本体は別な場所にいるわけか。その液体に取り憑いて操る。我らのような技だな。だが、まだ不慣れなようだ」

 腹に直撃を受けた。貫かれている。痛みが伝わる。思うほどには動けない。
 それでも今は、俺がイバライガーになるしかない。この身体がどうなろうが、仲間たちを、この世界をジャークに壊させはしない!!

「ブ……ブレイブゥウウウウッ! インパクトォオオオッ!!」

 


 シンの身体が、痙攣している。ワカナは必死に押さえた。
 シン! シンッ!!
 守る。シンを守る。想いを伝える。今度こそ一緒に戦う。絶対に一人にさせない。

 


 イバライガーXの腰が光った。貫かれた腹部が輝き、再生していく。
 いや、別なものが生まれている。

 あれはエキスポ・ダイナモ!?

 このエモーションはワカナか? 彼女の想いが、イバライガーXにエキスポ・ダイナモを与えた?
 くっ、ワカナまで!? まずい。全てが裏目になってしまった。シンクロを止めないと。
 このままでは……二人は人間に戻れなくなる!!

「イバライガー!!」
 ミニライガーたちが、集まってきた。

「シンたちを助けられるよ!!」
「うん、今なら……あのイバライガーXがいるなら……!!」
「ボクらが練習してたアレがやれるかも!!」
「アレ?」

 ミニライガーたちが、密かに何かの練習をしていたことは知っている。だが、それはまだ完成していなかったはずだ。
 いや、完成できない技だったと言うべきか。

「ボクたちだけでは、あの技は無理なんだ。でも……」
「イバライガーXってNPLが固まっただけなんでしょ? それなら……」
「そのNPLとこっちでシンクロしちゃえば……」

 シンクロ。NPL。そうか。まだ手はある……!!

「わかった、ミニライガー!! やってみよう! シンを……イバライガーXを……乗っ取るぞ!!」

 風が、吹いてきた。イバガール。
「話は聞いたわ! 私たちが隙を作るから、初代はXを!!」

 


 ガールとミニガールの風が、全力で叩きつけられた。Xが吹き飛ばされ、ダマクラカスンとの間に空隙が生まれる。
 そこにミニRとミニブラックが突っ込んだ。

「どけぇえええええ! てめぇらぁあああ!!」
「Xには……近づけさせませぇえええんっ!!」

 風が、Xを包んで運んでくる。それでもXは、ダマクラカスンと戦おうとしてもがいている。
 初代は、跳んだ。Xを抱きかかえる。

 シン、ワカナ。聞こえるか。もういい。もう、いいんだ。シンクロを切ってくれ。

 初代……?
 ごめんね……でも……でも今は……

 わかってる。私が悪かった。
 君たちは、止まらない。それを一番よく知っていたはずなのに、無理に止めようとした私のミスだ。
 だが、もういい。この先は私たちに任せてくれ。

 でも……あいつらは……

 君の姿を見て、ミニライガーたちが思いついた。時空の力を使う方法は、まだある。
 それを試してみる。このボディを……イバライガーXを私に託してくれ!!

 


「や、やはり手強い……大丈夫ですか、ミニブラック!?」
「けっ、こ、この程度でオレ様がやられるかよぉ。ビビったんなら下がってていいんだぜ、ミニR!!」
「ボロボロのくせに態度は相変わらずですね……けど……私もまだいけます!!」

 ようやく、立ち上がった。
 全員で力を合わせたのに、まだダマクラカスンはピンピンしている。これが本気の四天王か。

 けど、負けられない。勝てなくても、負けるわけにはいかない。

「そこまでだ。ミニブラ、ミニR。後は任せろ」
 二人の前に、二人のイバライガーが立ちはだかった。
 初代イバライガー。それにイバライガーX。
 Xの動きは、初代とまったく同じだ。シンクロしているのか。今、Xを動かしているのは初代なのか。

「やっと来やがったか。ミニライガーたちのアレをやるつもりだろ?」
「……アレってなんです?」
「お前には教えね~よ!」
「いいから、二人とも下がっているんだ。巻き込まれるぞ」

 


 前に踏み出した。Xも、同じ動きで従っている。
 シンクロは、上手くいっているようだ。

「遠隔操作で動くガラクタか。そんなもので、どうにかなるものでもあるまい?」
「その通りだ。私が二人になったところで、むしろパワーが分散するだけだろう。だが……」

 ミニライガーたちが、飛び出した。同じタイミングで突っ込む。Xは、動かない。シンクロを解除した。ダマクラカスンにぶつかる。パワーでは勝てない。爪がライブ・プロテクターに食い込んでくる。以前と同じだ。それでも数秒止められれば十分だ。

 シンクロを失ったXは、元のNPLに戻っていく。そのNPLがミニライガーを包み込んだ。
 ナノパーツをミニライガーたちが制御し、変形していく。今だ。

 初代イバライガーは、その中へと飛び込んだ。

「あ、あれは……!?」
「……何、アレ?」
「バイク!?」

 


「接続完了!! ブルー、グリーン、イエロー、みんな行けるか!?」
「大丈夫! 駆動系はボクが!!」
「エネルギー関係も何とかコントロールできるよっ!!」
「出力調整も……本当はニガテだけど……でもガンバるっ!!」

「よし、行くぞ! クロノ・ダイヴァー、起動!!」

 3体のミニライガー。そしてXを形作っていたNPL。
 それが融合し、初代イバライガーと接続した姿。
 それは、トライクと呼ばれるバイク型の機動形態だった。

「なんだと!? 合体しただと!?」

 エンジンが、唸りを上げた。前方の空間が歪み始める。ミニライガーたちの意思と力が、イバライガーに流れ込んでくる。
 マフラー状のスラスターが光を放った。いける。

「貴様、まさか時空の力を……!?」
「そうだ。私自身のクロノ・スラスターでは、もはや時空に干渉することはできないが……ミニライガーたちと1つになった、このクロノ・ダイヴァーなら……!!」

 初代の声とともに、歪みが一気に膨張し、ダマクラカスンを包み込んだ。
「うぉおおおおおおっ! き、貴様ぁあああああっ!!」

「消えろ、ジャーク! 時空突撃!クロノ……チャァアアアアアジッ!!」

 

ED(エンディング)

「ブレイク……アウト!!」

 クロノ・ダイヴァーが開けた時空の特異点が消えた。ダマクラカスンも、消えている。
 わずかに残っているゴーストもいるようだが、暴れ足りないミニブラックがどついて回ってるし、ウチの隊員も捜索している。もう心配はないだろう。

 それよりも。

「さすがは初代と呼ばれるイバライガーだね。そのバイク……いや、トライクもカッコイイし、大したもんだよ」
 走ってきたイバライガーに声をかけた。

「助けてもらったのは、こちらだ。PIASも思った以上だ。ルメージョをそちらで引き受けてくれなかったら、危なかった。感謝する」
「まぁ倒すのは無理だったけどね~。あっちも本気じゃなかったし。今回の襲撃、どうやらRをどうこうすることより『ちょっかいを出すこと』が目的だったみたいだし。その意味では、まんまと乗せられたって感じだよ。もっとも攻めてこられたら無視できないし、他に選択肢はないんだけどさ」
「気づいていたか。君の言う通りだ。ジャークは争いに惹かれる性質があるが、それでも作戦目的を見失うほどじゃない。なのに、こちらとの戦いに付き合った。戦うこと自体が目的だったと考えるしかない」

「Rは? シン君たちは?」
「眠ったままだ。シンとワカナも。Rはともかく、シンたちは一晩で回復するはずだ。とりあえず今回は、だが……」
「イバライガーX……か……。やり方は違うけど、未来のシン君の再現、というわけね? アレを使い続ければ、二人は……」
「それだけは、させない! 何としても!!」
 初代が、語気を強めた。やはり、あの二人はスペシャルか。

 ……何にしても戦いはこれからだ。Rのことも解決していない。こんなものじゃない大ゴトが待ち受けているはずだ。
 PIAS-EXはそれなりの威力を発揮できたが、まだまだ足りない。当分はイバライガーに頼るしかない。いつかはイバライガーもこちらの管理下に置かなければならないが、今は、その「いつか」に辿り着けるかどうかなのだ。

 陽が、落ちてきた。影が伸びる。
 初代イバライガーは、黙って夕日を見つめ続けている。元農業試験場だった敷地は広く、夕日がいつも以上に大きく感じられた。

 隊員たちが集まり始めているのが見えたが、アケノは、もうしばらく夕日を眺めようと思った。

(つづく)

 

次回予告

■第29話:激突! R対初代!!
ジャークの攻撃は凌ぎ切ったものの、イバライガーRの中に潜む「力」は、日に日に抑えがたくなっていく。その正体は、増殖する破滅=ルイングロウス(Ruin growth)。このままでは身体を乗っ取られ怪物と化してしまう。そんなことはさせないっ!! 覚悟を決めたRと仲間たちは最後の手段「カタルシス・フュージョン」に挑む……!!
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

(次回へつづく→)

(第27~28話/筆者コメンタリー)

 


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