描く前に全てが決まる(メール商談ライブ):02

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うるの送信メール/その1

うるのです。

本日は、お時間を頂き、ありがとうございました。
次回は8月16日の10:00ですね。
次回は録音用のレコーダー、カメラなども持っていきますので、プロフィールや理念なども、お聞かせいただければ、と思います。

あまり時間がないですが、ボクはどんなに不利でも厳しくても、負けるつもりでコトに当たるのは大嫌いです。
燃えていれば勝てる、などと精神論だけに走るのも嫌いなので、時間がない以上、そこでやれることをやるしかないわけですが、それでも「やるだけ」じゃなくて、結果を出すためにやるのが前提です。
(ビジネスに努力賞はないですからね)

ですので、ボクも思いつくかぎりの意見は申し上げますし、ときに相反する意見になるかもしれません。
しかし、決して我を通したいわけではありません。
こと、マンガや広報に関しては、28年、この世界で食べてきた者のアドバイスとして、気づいたことは言おうと思うだけです。
タイコモチになっても、○○様に寄与することはできませんから。
それに最終決定権は、常に○○様にありますから(笑)。

とにかく、できるだけのことはしますので、よい作品を作るために、ご理解とご協力をお願いいたします。

(以下、書名)

 

「うるの送信メール/その1」補足解説

 メール本文中にあるように、このときは時間が切迫していた。
 依頼があってから1ヶ月半ほどで完成まで持ち込まなきゃならない。

 通常ボクの場合は、最初の打ち合わせ以降、取材に1週間、シナリオとネームに2週間程度、その構成チェックや直しにも1~2週間

 これ、あくまでもネーム完成までの時間だよ。作画はこの後。
 それでもこれだけで1ヶ月近くかかってることになる。

 けど、仕方ないのよ。

 なんせ広告作品では、以前からアイデアを温めてあったとか、そういうことは基本的にあり得ない。まっさらで、描くつもりもなかった題材にいきなり出会って、新作描き下ろしの短編を描かなきゃならない。

 となると、やはりしっかり考える時間は欲しいんだ。

 もらった原作を絵にすればいいっていうような仕事はやってないから。
 オペレーションではなくクリエイションなんだから。

 自分で取材し、自分で考えて、自分で描く。
 ボクはいつもそうしている。

 そうやって自分なりにまとめたネームを依頼者に見せて、意見を聞く。

 トンチンカンなモノを出すと直しが多くなったり、下手すりゃボツになって、さらに長い時間がかかってしまうから、ネーム提出は真剣勝負そのもの。
 一撃必殺で決めてしまわないと、厄介なことになる。

 だから絶対に勝てる、イケルと思えないものは出せないと思っている。
 モノゴトに絶対はないんだけど、そういう気持ちでやらないとダメなんだ。

 依頼者が不満や不安を感じるようなネームを出してしまうと、その不安感から過剰に口出ししてくるようになって、それが結果的に漫画をダメにする。
 そういうことがないようにするには、一撃で「イイネ!」と思わせる必要があるんだよ。
 だから短くとも2週間くらいは、しっかり考える時間が欲しいんだ。

 そうやって、できるだけ内容を確定(少なくとも作画のやり直しはしないで済む程度に固める)させてから作画に入る。

 作画は1日1ページくらいのペースで請け負っている。
 16ページだと16日って感じだね。

 実際にはもっと早く描けるけれど、その仕事だけやってるわけじゃないので、1日1枚程度に見込んでおかないと危ないんだ。
 細かい仕事も含めると、同時進行している色んな仕事が8つくらいになることはしょっちゅうだし、残業や長時間労働を前提にする気もないしね。

 1日8時間勤務。週休2日。
 祝日や夏季・年末年始休暇も当然。

 その状態でやっていける漫画スタジオ。
 そうでないとダメだって思ってるわけ。

 なので、その仕事だけに集中すれば1日3枚はイケル程度の作画で、1日1枚と見込んでおくことにしているの。

ウチの場合にはコミケ休暇もある。ボクは同人やってないけど、やってるスタッフもいるので、コミケ参加日は休んでいいことにしている。1日くらい休まれても、そうやってモチベーション上げてあげたほうがいいと思ってるの(笑)。

 こういうスケジュールは、お客にも最初に念押ししておくんだ。
 ウチはそういうペースだよ、それでいいよね、と。

 で、その後に最終校正の段階があり、さらに冊子としての編集やデザイン、記事ページの制作、DTPなどがあるから、そこにも1~2週間。
 ここだって予想外の修正とか、記事ページがうまくキマらないとか、色んなことが起こり得るので、1~2週間はかなり順調に進んだ状態だね。

 つまり20ページ冊子なら、スムーズに進んでも2~3ヶ月くらいを見込むようにしているんだ。

 それなのに、このときは本当に1ヶ月チョイしかなかった。
 しかもちょっと事情があってね、締切を延ばせない案件だった。

「その日」までに仕上げられなければ、作っても意味がない。使えなくなる。
 そういう案件だったのよ。
 いや、もっと早く言ってくれればいいのに。

 引き受けるべきか、ボクは迷った。

 で、もしも引き受けるなら、自分はどう描くか、どんなテーマで何を伝えようか、などを考えてみた。

「具体的な商品やサービスを広告する」なら何を伝えるかは決まってるんだけど「イメージや印象を伝える広報」だと、広報することだけしか決まってなくて、何をどう取り上げるかから考えなきゃいけないことも多いんだ。

 この案件もそうだったから、本当に何もかも考えなきゃいけない。

 でも不思議なモンでねぇ、何日考えてもアイデアがまとまらないこともあるのに、条件がキビシイときって、パッと出てきたりするのよ。
 追いつめられて覚醒したって感じで。

 このときも、そうだったんだ。
 こう描けば上手く行きそうだと思えるストーリーが浮かんだんだ。

 もちろん依頼者にソレを話したわけじゃない(というか、思い浮かんだ時点では会ってもいなくて引き受けるかどうかも決めていない)から、ボクが何をどう思っていようと、その通りにやれるわけじゃない。

 でも、そのアイデアが通るのならイケる。

 そう思って、後日会いに行き、漫画のストーリーではなく、ボクの考え方、価値観などを話し、相手の反応を探った。
 そして共感してくれそうだという手ごたえを感じたので、引き受けることにしたんだ。

 そういう最初の対面直後に送ったメールが、先の1通目なわけ。

 

お客様からのメール/その1

うるの先生

昨日はありがとうございました。
ぜひ様々にフィードバックを頂きながら、人々の共感を呼ぶような漫画になればと思っています。
もちろん、勝つために必要なことを全力でやっていきましょう。
負けることなど一分も考えずに。

ご参考までに先日出した私のメルマガなどをのちほど転送しておきます。

(以下、書名)

 

「お客様からのメール/その1」補足解説

 このお客様は、最初から最後までボクを「うるの先生」と呼んでくれた。

 ボクは自分から先生ヅラすることはなく、うるのサンと呼ばれることのほうが多いのだけど、時々「先生」と呼ぶ人がいる。
 漫画家だからね。

 で、そういうときはイチイチ訂正はしない。
 どう呼ばれてもやることは一緒だし、先生として扱われているほうが都合がいいことも少なくないし(笑)。

 

お客様からのメール/その2

うるの先生

○○です。
直前になってしまいましたが、いくつか添付いたしますので
もしお時間ありましたらお目通し願えれば幸いです。

(以下、書名)

 

うるの送信メール/その2

うるのです。

今日はお時間をいただき、ありがとうございました。
さて、まだシナリオワークには入ってないのですが、とりあえず、2010年に×××の○○○○○○のためにボクが描いたマンガ(今回と似たような案件)を以下URLで見れるようにしておきました。
ボクがどういうふうにマンガをまとめるのか、そもそもボクに任せていいのか、そのへんが見えないと心配でしょうから、過去の同様の事例をご覧いただいたほうがいいでしょうし。

■×××××氏マンガ(URL)

画面の左下をクリックすると、ページをめくれます。
普通WEBでは右下が「進む」なんですが、このマンガは縦書きで左方向に進んでいくので、あえて左下に「進む」を置いています)

この案件も、例の「▽▽▽マンガ(他社が作った同種の広報漫画)」を見て、同様のモノを作りたいと声をかけられたもので、今回と同じです。内容は16ページ。A5サイズ。
表紙の上部が白く空いているのは、ここに直接タックシールで宛名を貼って郵送できるようにするためです。

梱包したり封入したりするのではなく、本そのものをむき出しで郵送するほうがコストも削減できるし、なにより開封もせずにゴミ箱行き、なんてことがない。そして気軽に読めるマンガ冊子だと分かってもらえば、読んでもらえる可能性が高い。
そういうことを考えて、こういう作りにしてあるわけです。
(ウチで顧客に定期的に送っている営業資料は、A4表裏のメール便ですが、これも直接ゲンブツにシール貼で郵送しています。郵便受けから、直接そのものを目にするわけだから開封率100%。この方式はとてもうまくいっていて、ビジネスチャンスの拡大につながっています。そこでマンガでも同じ方法を考えたわけです)

この「×××××氏マンガ」の例では、現実に引っ張られて語りきれなかった部分もあったと感じていたので、今回は、よほど都合のいいモデルがいないかぎりは、実在にこだわりすぎないほうがいいと思っています。
そもそも、マンガ上でのリアルと本当のリアルは違いますから。マンガでリアルに感じる描写は、現実ならリアルじゃないことだったりするものです。
この×××××氏の例でも、ドキュメントではあっても「事実に基づく」ということであって、基本はボクが構築したフィクションです。
愛犬を抱きながら思いを馳せる、なんてシーンはボクが勝手に考えたことですし。マンガのドキュメントとは、そういうものなんです。
人々の代弁者となる主人公を1人創作して、その人物が○○様と出会い、自分の思いを託していく。そういうふうにまとめたいですね。
そうじゃないと、上から目線になりがちですから。

ページ数も、タッチや基本的なテイストも、この前例と同じような感じで考えています。時間的な問題から考えても、このくらいの感じでまとめないと、必要な時期に間に合わないと考えられますから。

「▽▽▽マンガ」は、32ページくらいだったかもしれませんが、ボクは32枚はちょっと多い気がします。
こうした広報マンガは、読者が自らお金を出して求めた品ではないので、どうしても読みたかったわけではありません。そういうモノに時間をかけてくれるとは、ボクには思えない。16枚くらいで手早く読めて、この人いいこと言うじゃないかという印象を持ってもらうことに徹したほうが、戦術的にも正しいと思うんです(WEBページでも、ダラダラ長いオープニングフラッシュなんかあると面倒に思う人のほうが多い。手間とお金をかけて反感買うのではバカみたいですから)。

なお、コラム的に情報を差し込む手もある、と話しましたが、別途しっかりしたパンフレットなどを用意されるはずなので、マンガでは「想いを伝える」ことに徹して、具体的なプランや構想は、別途資料に委ねたほうがいいかもしれません。

文字が多いと、それを面倒がる人もいるし、それではせっかくマンガという手法を選んだのに、そのメリットを殺すことになりかねません。
考えてみれば、科学マンガで解説文を組み込んでいるのは、一般向けの平易な解説自体が世の中に少ないから、ああするしかないのであって、今回の場合は一般にも分かるように書いた資料を用意するのは当然のことですしね。

とにかく、やってみます。
他にも具体的な事例資料などありましたら、ぜひご用意いただければ、と思います。(ボクもオンラインなどで調べてみますけど)

(以下、書名)

 

「うるの送信メール/その2」補足解説

 実は、このときのメールはもっと長く、もっと具体的なコトが書かれていたのだけど、そこは割愛させていただいた。
 そこを書いちゃうと、いくら何でも案件の具体的内容がバレバレすぎるんで(笑)。

 ただ、この時点でどういうまとめ方をするかなど、かなり具体的に伝えて、その反応を見た上で、実際のネームに進んだんだよね。

 引き受ける前の段階で「あらすじ」は固めてあるのだけど、それをいきなり伝えないで、ボクの考えを徐々に伝えていって、どこで壁にぶつかるかどうかなどを量ってみたんだ。

 時間はないのだけど、そういうことをしておかないと土壇場でひっくり返ったりしかねないもん。

 一番時間がかかるのは作画だし、そこまで来てから変更なんてコトになったら、それこそ間に合わない。

 だから、例えどんなに急いでいても必要なステップは削れない。

 描くより前の段階を疎かにするのは、とても危険なんだ。

 

(「描く前に全てが決まる編/03」へ→)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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