描く前に全てが決まる(メール商談ライブ) ~01:序文

 このシリーズで6本目となるメール商談ライブ。
 今回は「広告漫画のプロデュース」をどんな感じでやってるかを、実際に披露したい。

 この「メール商談ライブ」のシリーズでは、実際にお客とやり取りしたときのメールログをそのまま(発注者名、案件の詳細、請負額など守秘義務およびお客様情報に抵触する部分は伏せてます)公開しています。当然ながら対面で話したことなどは伏魔れないので、経緯がわかりにくい部分には補足解説を付記し、また「なぜ、そういうメールを送ったのか」などについても補足を加えています。
 公開した例では、最初の接触から納品完了までのほとんどを見ることができるので、こうした仕事(フリーランスの漫画家、イラストレーター、デザイナーなど)に関わる人、また、そうしたクリエイターに仕事を発注する人たちの参考になるかと思います。
 あ、あくまでも参考であって、この通りにしてねとか言いたいわけじゃないですよ。あくまでも「こういうときにボクはこうしたので、似たような状況のときにどうするかはそれぞれに考えてね」という意味で公開してるだけですからね(笑)。

 

 

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フツーだってスペシャル

 以下で紹介する例は、納期までの時間が足りない、起用した作画担当が新人(ボクは普通の漫画家と反対で、キャラの作画だけは自分で担当していない)といった通常モードとはちょっと違う部分はあるものの、特に特別な事例というわけじゃない。
 見せ場っぽい展開はあまりないし、仕事も(どちらかといえば)スムーズに進んだほうだ。

 だけど、それでも十分スペシャルではある。

 仕事って、1つ1つが全部スペシャルなんだよね。
 キャリアを積めば積むほど引き出しが増えて、様々なことに対応しやすくはなるのだけど、前と同じっていうのは1つもない。

 常に応用。常にアドリブ。

 そして1つか2つは「未だかつてなかったコト」が混じるもんなんだ。
 どんだけやっても、必ず未知のナニカが待ち受けている。

 ボクは漫画家だけど、半分は「広告プロデューサー」だ。

 マネジメントとプロデュースという部分がしっかりしていないと、いくら腕がよくても仕事は上手くいかない。
 そしてプロデュース側の立場で言えば、漫画を描くというのはフィニッシュワークのような感覚なんだよね。

 描き始めるまでが大変なの。
 描き始める段階までをしっかり進めることさえ出来れば、その先は、やるべきことをちゃんとやりさえすればOKって感じなんだ。
 描くことより、やるべきことをやればいい段階まで持っていくのが大変なのよ。

 お客のハートをどれだけ掴めるか。
 こちらに身を任せる気持ちにさせられるかどうか。
 そういう気持ちが切れないように、フィニッシュまで維持できるか。

 そこが甘いと、トンデモないトラブルに発展することもあるんだ。
 だから神経を使うし、労力もかかる。

 プロデューサーの立場で言えば、そっちが広告漫画の8割。
 そういう面倒くさいアレコレを山ほどやって、ようやく漫画が描ける。

 

広告漫画のプロデュース

 セルフ・プロデュースでやってると、プロデュースが上手く行った段階で一定の達成感を得てしまって、まだ描いていないのに終わったような気分になることがある。本番はこれからなのに、気持ちの中では終わっちゃってるの。

 でも、そうなると作品に身が入らなくてイカンので、気持ちを「漫画家」に切り替えなきゃならない。
 プロデューサーモードを抑えて、漫画家モードをメインにするんだ。
 自分の中で2つのOSが同時起動しているようなモンなの。

 いっそ描くときにはプロデューサーモードをOFFにしちゃったほうが集中できていいんだけど、そういうわけにいかないのがキツイところ。

 描いている間も、お客の管理とコントロールをゼロにはできないから。
 油断するとナニが起こるかわからない。

 それに漫画家的にはソレでOKでも広告的にはマズイってコトも少なくないので、抑えてはいても常にプロデューサーモードが監視している状態を維持したほうがいいんだよね。

 とはいえ、気が散ると漫画描けないから、何かがあったらすぐに切り替えられる状態でプロデューサーOSを待機モードにしておいて……という感じかな~。昔のMacでOS-Xでクラシックモードを立ち上げておくような(笑)。

 とにかく、このときに限らず、ボクはいつもそんな感じで広告漫画の仕事をしているんだ。

 今回のケースでは、広告漫画をプロデュースしていくこと、お客をこちら側に引き付け続けるためのアレコレをご覧いただけると思う。

 この仕事で請け負った漫画は、広告というよりも印象を伝える広報作品。
 特定の人物に魅力を感じてもらうための「○○さん物語」って感じのモノ。

 本編は16ページで、表2、表3、表4が記事ページ。
 そこに表1を加えて全部で20ページの冊子。
 広報用の漫画冊子企画としては平均的なボリュームの案件で、例によって漫画の内容は完全一任で、ボクが思うように描かせてもらった。

 なお「広報漫画を請け負う」というのは「漫画冊子制作の全部を請け負う」というのと同じ意味(本当はそうではないけど、そうなる例が圧倒的に多いし、そこから全部を担当できないと受注しづらい)なので、このときも漫画だけでなく、冊子のデザイン、レイアウト、編集、DTPなど、印刷以外の全部がボクの業務範囲。
 記事ページだけは原稿をもらったけれど、記事本文の執筆以外の全部をウチで担当している。

 漫画家は漫画だけ、イラストレーターはイラストだけでやっている人も多いだろうから、そういう方にとっては、ラストの編集関係の部分も興味深いんじゃないかな。

 というわけで、次の記事からが受注直後から完成・納品までのメールやり取りだ。

 最初の顔合わせが終わって、次回から取材開始、という段階からだよ。

 

※誤解する人がいるといけないから念のために付記しておくけど、漫画の原稿料だけで編集やデザインまでやらされてるわけじゃないからね。ちゃんとソッチの代金もいただいている。というか、ソレももらえてこそ全体として採算が合うと言ってもいいかもしれない。広告漫画ってよく見かけると思うけど広告全体でみれば漫画案件なんてレアなんで、漫画だけに頼ってたら身がもたないのよ。ワンストップで全部やれるから食えてる。少なくともボクはそうなのよ。

 

(「描く前に全てが決まる編/02」へ→)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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