小説版イバライガー/第27話:アルタード・ステイツ(前半)

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OP(アバンオープニング)

 車を走らせていた。
 いや実際に運転しているのは部下だから、単に乗っているだけだ。
 免許は、もちろんある。運転技術でも、プロドライバーにも負けない自信はある。
 だが、容姿のせいで子供としか見られない。自分で運転していると、通報されたり職質されたりと煩わしいのだ。

 外は雨。しかも夜。田舎道。
 条件的には自分で運転しても問題はなさそうだが、今は今後のことをじっくりと考えていたかった。

 今日、内辞を受けた。
 これからは、TDF隊長として化け物を相手にすることになる。
 ジャーク。そしてイバライガー。人ならざる者同士の戦いに介入しなくてはならない。
 奴らはともに、人知を超えた力を持っている。現状の戦力では対抗できない。
 事実、これまでTDFが十分な成果を上げたことはない。

 それでも、放置はできない。
 イバライガーはこちらの味方だが、やはり人外の者だ。この時代の者ですらない。
 それに数が少なすぎる。いかに超人的な力を持つとはいえ、数体だけでは十分な対処はできまい。
 奴らを超えるのは難しいだろうが、少なくとも対等に渡り合える力を得る必要がある。

 そのために開発されたのが「PIAS=パーソナル・イバライガー・アーマード・スーツ」だ。
 数回の実戦投入の結果、現段階では期待された性能を発揮できないと判断され、開発および運用計画は一時凍結となっているが、アレ以外にジャークに対抗する方法がないのも事実だ。

 着任したら、まずPIASの開発研究を再開させるのが急務だろう。未完成だとしても、MCB弾だけの装備よりはマシだ。隊員の防護服にもなる。
 いずれにしても、イバライガーに頼りすぎている現状ではダメだ。

 なぜなら、イバライガーでは未来を救えなかったことが確定しているから。

 取り返しのつかない未来。救えない世界。
 そうだからこそ、イバライガーはこの時代に現れたはずだ。イバライガーが人類の味方だとしても、その力だけではジャークは倒せない。
 潜伏中のジャークが本格的な行動を開始するまでに、我々の戦力をどれだけ強化できるかが鍵だ。

「そうだ。お前の考えは基本的に正しい」

 突然、声が頭に響いた。
 反射的に顔を上げ、ホルスターに手を伸ばす。ヘッドライトに人影が浮かび上がった。運転手が急ハンドルを切る。間に合わない。
 だが、車は止まった。衝撃も、ほとんどない。それでも、運転手は気を失っていた。

 車を降りた。雨が吹き付けてくる。視界はゼロに近い。闇が濃厚すぎて、遠くに見える街の灯りがなければ平衡感覚を失いそうになる。
 その中に、闇より黒い者がいる。
 これまでに感じたことのない、圧倒的な気配だった。何も見えないのに輪郭がわかるほどだ。
 握っていた銃は、車内に放り投げた。こんなもので、どうにかなる相手じゃない。

 闇の声が、聞こえた。
「運転手は気にするな。俺のエモーションを浴びて気を失っているだけだ」
 言われるまでもなく、気付いている。
 だが、最初にそのことを伝えてくるとは。想像していたより、ずっとまともな話ができる『男』らしい。

「……まさか、アンタが直接接触してくるとは思わなかったよ。イバライガーブラック……」

 アケノはわずかに微笑みながら、強烈な気を放つ闇へと踏み込んでいった。

 

Aパート

 基地から十分離れたところでいったん路地に入り、車体表面のコーティングを変化させた。
 全体に塗布したNPLによって、普通のワゴン車だった外見にイバライガーの姿が浮かび上がり、一目で専用車両とわかる痛車状態になる。
 ナンバープレートも変わり、窓もスモークになって車内は見えなくなる。ジャーク出現時には緊急車両として行動する許可を得ているが、その状態で出動すると、一般人に基地を悟られてしまうため、こうした工夫が必要なのだ。

 サイレンを鳴らして路地から幹線道路に出ると同時に、ワカナは一気に加速した。
 後席でモニタリングしていたシンが転がる。
「おい、無茶すんなって!」
「そっちこそボケっとしてないでよ! あっちこっち回らなきゃなんないんだからチンタラしてらんないでしょ!」

 ジャーク反応をキャッチしたのは、10分ほど前だ。いつものことだが、このところ急激に増えている。
 どれも小規模だが、戦闘員だけでなくゴーストも放たれている。以前のカンナグールのような強力なゴーストではないが、警察の装備では倒せない。TDFは対処できるが、各地で同時多発的に出現するため、手が回らない。

 今回も、3箇所だ。1箇所はTDFが対応しているため、他の2箇所に、それぞれRとミニR、ガールとミニガールが向かっている。
 そのバックアップのために、シンとワカナも、現場に急いでいるのだ。

「……やっぱり、おかしいよな……」
 シンがモゾモゾと、助手席に移ってきた。
「……今日も、いつも通りのパターン?」
「ああ。何のつもりか、わからねぇ。こんな散発的なテロを起こしたところで、撃退されるだけなのはジャークも承知しているはずだ。なのに……」
「今回で6回目……あれ? 7回目だっけ?」
「8回だ。出現したゴーストは26匹。パトロールするよりも早く出てきやがる。モグラ叩きみたいにな……」

 違和感は、ワカナも感じていた。シンの言う通り、こんなことを繰り返しても無駄だ。
 そもそも、ゴーストを単体で何度も出す意味がわからない。戦力は集中させて一気に使うほうがいいはずだ。
 わざわざ分散させるのは何故なのだ。こちらを消耗させるつもりなのか。
 だが、事件は全て近郊だ。この程度の出動は、イバライガーたちにとってはトレーニングにもならない。

 何か、ある。それは間違いない。
 でも意味を考えるよりも、今は被害を防ぐことが第一だ。
 そういうふうに思考停止させるのが狙いなのかも、と思いつつ、ワカナはハンドルを切った。
 煙が見える。現場は、目の前だ。

 


 立ち止まった。
 ミニライガーRは、すでに数ブロック先にいる。
 ジャーク反応がある場所までは、あと1分もかからない。数体のゴーストがいるようだが、反応からすると倒すのは難しくないはずだ。
 それでも、イバライガーRは止まり、膝をついた。

 まただ。

 光のような、闇のような、奇妙なビジョン。
 それが何度もフラッシュバックする。その度に身体が疼き、硬直する。

 身体の奥……いや、もっと奥だ。
 身体ではなく、意識の奥。自分の中にある別な時空。
 そこに潜んでいる何かが、身体を食い破って飛び出してくるような感じがする。
 その感覚が、日々強くなっている。

 こうした不調を感じ始めたのは、初代イバライガーの話を聞いてからだ。
 未来の自分。「もう一人のシン」だったときの自分。

 その記憶は封じられているはずだが、それが少しずつ戻ってきている。
 ノイズだらけのモニターに一瞬映る映像のように、未来の断片が浮かぶ。
 そして、それを見る度に、身体の奥がざわつくのだ。

 蠢くものは、光と闇を繰り返しながら、ゆっくりと表層に上がってこようとしている。
 もうすぐ、意識の手が届く。それが何か、見えるようになるだろう。
 だが、見るまでもない。予想はついている。
 それが出てきたときにどうするかも、決めている。

 ミニRからの信号を感知した。呼んでいる。
 わかっているさ。すぐに行く。

 立ち上がって、周囲を見回した。普通の景色……平和な世界だ。
 様々な問題は抱えているが、それでも多くの人々が暮らしている。明日を夢見ている者もいれば、苦境から立ち上がろうとする者もいる。
 もう二度と見れなくなるかもしれない世界を、メモリーに焼き付けた。

 覚悟は、出来ている。
 この世界を、失わせはしない。例え、自分が消えようとだ。私は最後まで、イバライガーであり続けてみせる。
 蠢くものと、それが引き起こすフラッシュバックに耐えながら、イバライガーRは大地を蹴った。

 


「ええぇい!!」
 連続蹴りを叩き込んだ。一撃ごとにゴーストの身体が光の粒子となって削られていく。

「まだまだぁああ!!」
 イバガールは、さらに回転を上げる。まるでコマみたい、とミニガールは思った。
 とにかく、今回も自分の出番はなさそうだ。周囲の人に被害が及ばないようにガードするつもりだったけど、それも警察の人で十分みたい。

「どぉりゃあああああああああああっ!!」
 超高速の連続回転蹴りが、ヒットする度に光が散らばり、それはガールが巻き起こす風に乗って、空へ消えていく。
 何度も見たけど、けっこう綺麗。これがジャークのせいじゃなければもっといいのになぁ。

 ガールの動きが止まったとき、ジャークゴーストは完全に消滅していた。すでに反応もない。
「やったね、お姉ちゃん!」
「うん、こんな奴ら何度出てきてもラクショーよ。それより……」
「……Rお兄ちゃんのこと?」

 声は、出していない。人前では話しちゃいけないことになってるので、意識だけでの通信だ。時間も一瞬。思考データのやり取りだけなら、実際の会話の数百分の1で済むのだ。ただ、ミニガールは普通に話すほうが、ずっと好きだ。声にしなくても困らないけど、なんかつまんない。

「R、最近何か変なのよね。時々、Rからの信号にノイズみたいなものを感じるの。思考が乱れてるっていうか……」

 それは、ミニガールも気づいていた。
 本人にも、周囲にも、言ったことはない。いや、言えなかった。

 あのとき。
 パパが……ブラックが立ち止まったとき。

「R……。お前は、あのとき……あの閃光の中で見たものを……覚えているか?」
「いや……わからない。ただ……話を聞いたことで、記憶を隠していたモヤが薄らぎ始めているような感じは、ある……」
「そうか。なら……『そのとき』が来たら、また会おう。それまでは……ミニガール、お前に任せる」

 ブラックは、そう言って消えた。
 私に何を任せるつもりなのか、はっきり言わなかったけど、感じた。

 Rに何かが起こる。それを止めるのが私の役目。
 私に癒しの力を与えたのも、たぶんそのため。

 そして、その何かは、もう始まってる。とても嫌なことが起ころうとしているのがわかる。

 私は、何をしなきゃいけないの?
 それが、どんなにしたくないことでも、やらなくちゃいけないの?

 そう思った時、頭を撫でられた感覚がした。

 イバガールは、まだ離れている。彼女の周囲には警察の人たちが集まり始めていて、レシーバーでシンたちと話しているようだ。
 それでも、頭を撫でられたと感じた。声も聞こえた。

「大丈夫、ミニちゃん。私がいる。みんなもいる。それにRは強い。心配しなくていいわよ。嫌なことなんか、起こらないし起こさせないから」

 イバガールを見つめた。背中しか見えない。
 でも、気持ちが伝わって来る。
 イバライガー同士は距離に関係なく通信できる。いつでも、つながっている。
 ましてガールと私のように互いのバックアップの場合は、なおさら結びつきは強い。

 けど、プライベートな意識までは共有していない。
 その気になれば深層意識にまでアクセスすることも可能だけど、今のはそうじゃない。

 ガールも、同じ気持ちなんだ。

 頭を撫でられた感覚も、ガールの声も、本当は私の中にメモリーされているイバガールのイメージなのかもしれない。
 でも、気持ちが伝わっているのは間違いないし、それなら内側も外側も私にとっては同じことだ。

 背後で、群衆が割れた。
 警官の誘導で、シンとワカナのワゴンが近づいてくる。
 イバガールが、こちらに向かって歩き出した。また、気持ちが伝わって来る。

 わかってる、お姉ちゃん。Rお兄ちゃんのことも信じてる。
 私たちはイバライガーだもんね。嫌なことなんか絶対にさせないよね。

 


「R! いつものゴーストです! 一気に行きますよ!!」
 降下しながら、ミニライガーRは身構えた。イバライガーRからの返事はない。それでも、同じように構えているのはわかる。

 また、何かの不調なのか。
 このところ、Rとの通信が途切れることが度々あった。
 途切れるのは一瞬だから大きな問題にはなっていないが、それでもミニRは、Rがとんでもなく遠い場所にいるような錯覚を感じることがある。

 ゴーストは、4匹。いつもより多いが、どいつも大したことはない。
 普通の人間の手には余るが、シンやワカナなら倒せる程度だ。自分たちなら、苦戦はあり得ない。
「ブレイブインパクト……ファイヤーッ!!」
 着地と同時に、ゴーストの一体を貫いた。
 光となって蒸発していく。Rも、もう一体を倒していた。
 大丈夫だ。いつも通り。問題はな……。

 Rが、動かない。着地した体勢のまま、硬直している。いや、倒れていく。
 やはり、Rに何かが起こっている。ただ事じゃない何かが。

 倒れたRに駆け寄ろうとしたとき、凄まじいノイズが伝わってきた。
 なんだこれは。Rの意識なのか。そんなはずはない。これじゃまるでジャークだ。いや、ジャークとRが激しくぶつかり合っているかのようだ。
 混濁した意識が混じり合い、急激に膨れ上がって、吹き出している。
 意識だけなのに、視界さえ歪むほどだ。

「ぐぅうううっ……!! あ、R……こ、これは……!?」

 残りのゴーストたちが近づいてきた。
 まずい。今の状態では、人間以下だ。破壊されることはなさそうだが、抵抗もできない。

 球形の奴が、Rに向かって転がっていく。肉をむき出しにしたアルマジロのような、不気味な奴だ。回転するごとに体液のようなものが飛び散り、それを浴びたアスファルトが沸騰している。普段のRなら難なくかわすはずだが、今はダメだ。私が……止めなくては……!

 だが、こちらにも、もう一体が向かってきていた。
 こっちはカマキリのような奴だ。いやムカデか。たくさんの触脚と巨大なハサミ。
 あれを食らうわけにはいかない。でも、今はRを守るほうが先だ。

 ミニRは、アルマジロに向かって突っ込んだ。ブレイブキックで横から蹴り飛ばす。
 一瞬、動きが止まった。そこにカマキリのハサミが振り下ろされる。ガードは間に合わない。だが、一発くらいなら。重要器官にさえ当たらなければ、多少破壊されても動くことはできるはずだ。

 ペタリ。

 ミニRの身体に、ハサミを失った腕が押し付けられた。
 ハサミは右肩をかすめて地面に落ちている。

『エモーション・ブレイド展開』
「了解」

 声と同時に、影が飛んだ。
 カマキリムカデの全身が切り刻まれていく。
 ハサミと触脚を失って動けなくなったゴーストに、止めの弾丸が撃ち込まれる。

「危なかったな、ミニライガーR」
「PIAS!?」

 Rたちからデータは受け取っていたが、直接見るのは初めてだ。
 だがこれは、聞いていたデータとは違う。

『Rを連れて下がっててくれる? あの肉団子を片付けるまで、ね』
 PIASが喋った。いや、声はPIASから聞こえるが、喋っているのは、このスーツの装着者じゃない。
 振り返った。
 木漏れ日の中に、ソフトクリームを持った女……いや、女の子が立っていた。

 確か、アケノ。
 TDFの隊長になった女性だ。見た目は少女だが、実際の年齢はシンたちより上らしい。

 アルマジロ……肉団子が、向かってくる。ミニRは、Rを抱えて飛んだ。
 団子は急激にコースを変えてPIASに向かっている。

「ブレイブ・インパクトを使います」
『いや、PIAS-EXの性能を確認するためにも、ここは受け止めよう』
「了解」

 ブレイブ・インパクトだって?
 受け止めるだって?

 知っているPIASのデータでは、ブレイブ・インパクトを放てるほどの性能はなかったはずだ。あの勢いを正面から受け止めることもできないはずだ。
 だが、PIASは動かないまま、肉団子の直撃を受け止めた。それも、片手で。

 止めている。指が肉に食い込んでいる。
 そのまま頭上まで持ち上げた。
 その途端、肉団子が開いた。内側は牙だらけだ。あのままでは噛み砕かれる。いや、丸呑みにされる。

 ミニRがそう思った瞬間、PIASのエモーションが急激に膨れ上がった。内部からじゃない。

 アケノ? PIASとシンクロしている?
 パイロットとアケノ、二人のエモーションを共鳴させてパワーを上げているのか?
 この力……自分より強い。まさか、イバライガーRに匹敵する?

 肉眼では見えないが、ミニRにはPIASの全身から溢れるエモーションの流れが見えた。
 まるで、身体のあらゆる部分から全方位にビームが照射されているようだ。同じことは自分には無理だ。エネルギー消費が激しすぎる。
 それでもPIASのエネルギー流は続き、ゴーストの牙は、PIASに届く前に消滅していく。

 ミニライガーRは、イバライガーRを抱いたまま、その光景を見つめていた。
 信じられない。PIASの研究が続いていたことは知っている。でも、こんな短期間でこれほどにパワーアップするなんて。
 一体、何があったというんだ!?

 


 サイレンを切り、通常速度で現場に近づいた。
 Rたちが無事なことは、先に到着したイバガールとミニガールから報告されている。
 現場の周囲はTDFが封鎖していたが、そのまま通過することができた。

 ワゴンを止めて、降りる。
 ワカナが、ガールたちに駆け寄る。Rを抱いている。意識はないが、ダメージもないようだ。
 Rがワゴンに収容されるのを見届けてから、シンは歩を進めた。
 アケノ。そしてPIAS……いや、ソウマか。

「まず礼を言う。助かった」
「気にしなくていいって。こっちも実戦テストになったしね~」
「アンタとソウマ、二人でシンクロして操縦する新型PIAS、か。大したもんだな。これほどのパワーアップとは……」
「未来のシン君が遠隔操縦でイバライガーを起動させたって話を聞いてたからね。同じことをやってみたってわけ」

 シンはPIASを見つめた。
 アケノはソフトクリームを舐めながら気軽に話しているが、そう簡単なことじゃないはずだ。
 遠隔操縦はできるだろうが、ソウマやPIAS本体とのシンクロのほうは、アイデアだけで実現できることじゃない。

「気にしてるね~~。ま、君の思ってる通り、シンクロの技術はPIAS研究者たちが生み出したわけじゃないよ。技術供与があったおかげ」
「技術供与?」
「そ、イバライガーブラックちゃんから」
「な……!?」
「オーバーブーストっていうんだっけ? アレのコツを教わった、って感じかな~。まだまだブラックとミニブラックほどの力は出せないんだけど、その代わり持続性はあるの。通常モードのイバライガーたちと互角に張り合うくらいなら、十分やれるよ」

 どういうことだ? なぜブラックはそんなことを?
 PIASの危険性はわかっていたはずだ。もしもイバライガーの技術が軍事利用されてしまったら、ジャークよりも恐ろしいことになるかもしれない。
 ブラックは、そういう人間たちを拒絶していたのではないのか?

「……ブラックは『裏がある』って言ってたよ。それが何かは言わなかったけど、たぶん、今のイバライガーRの不調と関係してる。Rが使えなくなる分をアタシたちにカバーさせようって腹じゃないかな」

 Rの様子がおかしいと気づいたのは、この数週間のことだ。
 本人は隠していたが、あの「イバライガーショー」の直後あたりから、みんな薄々気づいていた。

 だが、新型PIASの開発は、もっと前のはずだ。いくら技術供与があっても、それを形にするには時間がかかる。

 つまり、ブラックはかなり前から……R自身が気付くよりも早く今の状況を予想して、アケノに接触していたということになる。
 あのブラックが、そういう動きをするほどにヤバい何かが起こっているということか。それは、なんだ?

「ま、とにかく後の話は基地に帰ってからにしようよ。これからはアタシたちも、あそこにいることになるしね~~」
「なんだって?」
 アケノは、すでに背を向けて歩き出していた。
 追いかけようとしたシンの前を、PIASが遮った。
「ソウマ……! てめぇ!?」
「落ち着け。とにかく付いて来い。すでに、他の部隊も向かっている」
「他の部隊だと? まさか、お前ら……!?」

「そうだ、事実上の接収だ。イバライガーたちも、お前らも、今後はTDFが直接管理することになる」

 

(後半へつづく)

 


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