カソクキッズ29話:科学のグランドチャレンジ

2018年9月2日

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事実上の1stシーズン最終話

 このエピソードは、事実上の1stシーズン最終話だ。
 ようやく……ようやく、ここまで来た。

 このネームは、第1話を描いたときから……いや、カソクキッズを描き始める前から頭の中にあったもの。
 描き始めたときには素粒子の素の字も知らないレベルだったので、途中のエピソードがどうなるかは全然読めてなかった。大雑把にね、こんなネタをやろうとアイデアラッシュ的なものはあったんだけど、それらも何をどう扱えばいいのかチンプンカンプンって感じだったから、本当に1話先すら見えない感じでやっていたんだ。

 でも……。

 1話先は見えてなくても、最終回は見えていた。
 というか、こう描きたいと心に決めていたシーンがあったんだ。

 KEKの入り口近く。守衛さんがいるゲートのすぐ左側にある国際交流センター。
 ここだけはね、一般公開などでなくても部外者が入れる建物なんだ。中には「KEKコミュニケーションプラザ」という展示コーナーが常設されていて、KEKの研究内容を知ることができる。

 で、その交流センターの通路の床に、文字が書かれているんだ。

 それが、この29話のサブタイトルになっている「科学のグランドチャンレンジ」という言葉だ。

 

 宇宙とは何か? 物質とは何か? 生命とは何か?

 光は波である。光は粒である。光は波であり粒である。

 世界は火、空気、水、土で構成されている。

 もし人類がただ1つの知識だけを後世に伝えるとしたら、
 すべてのものはアトムからできていると言いたい。

 謎がとける、これが科学の花です。

 物質の本質、宇宙の起源、生命の本質、精神が物質から生じる仕組み、
 という4つの疑問を人類は追求し続けている。

 すべては神々に満ちている。

 
 床に、そういうメッセージが書いてあるんだ。
 それを、初めてKEKに行った頃に見たんだよね。

 そのとき、ボクには、そこを歩いていくキッズたちの姿が見えた。
 当時はまだキッズの連載企画すらなかった頃なんだけど、それでもボクには見えた。
 漫画を描くかどうかも決まってないのに、いきなり最終回のシーンが浮かんじゃったんだ。

 ここを、この言葉を踏みしめて歩いていくキッズたちのシーンをエンディングにしよう。
 ボクはそう決めた。

 そのラストシーンに向かって描いていけば、きっと迷わない。ボクにはそう思えたの。
 まだ生まれてもいないキッズたちが、道を示してくれてるように思えたんだ。

 そう思って、切実に漫画にしたいと思い始め、その数ヶ月後に企画が立ち上がり、さらに半年後くらいから実際の連載が始まった。

 そして3年。

 紆余曲折しながら辿り着いたラストシーンを、最初に思っていた通りに描けた。
 カット割もほとんど最初のイメージ通り。
 ラストの数ページに「制作:カソクキッズ保護者会」「シリーズ構成/原作/ディレクション/各種デザイン:うるの拓也」といったスタッフロールのテロップが入るのも、当初のイメージ通り。これ、いつかやってみたかったんだよね~~(笑)。

 

 

 

 

 

 

 素粒子にも物理にも疎くて、1話先すら見えないままで描いていたのに、迷ったことは一度もなかった。
 3年の間に色んなことがあったけど、それでもゴールはいつもハッキリと見えていたんだ。

 そこに、行けた。
 ものすごく感慨深かった。

 ……いや、行けた、じゃないな。

 監修してくれたKEKの博士たちとキッズたちが、ボクの手を引いて連れてきてくれたんだ。
 おかげで、素晴らしい体験ができた。誰も味わえないような日々だった。
 本当に感謝している。

 そして……。
 ここで終わりだと思ってたんだけど……。

 いざ、辿り着いてみると、欲が出てくるんだよね(笑)。

 多少は素粒子の世界もわかってきたところだし、素粒子以外のKEKの研究についても描きたい。
 ていうか、わかってきて、ようやく「何がわからないかがわかってきた」という感じで、やっとスタートラインって気分だったんだ。

 もっと描きたい。描ける限り、描いていたい。

 まぁ、この29話を描き上げたときには、ここまでの感慨でいっぱいだったんだけど、仕上げた翌日くらいには……いや、この29話を描き始める前に、まだ終わりたくないなぁって思い始めてたんだ。

 それはKEKの人たちも同じ気持ちだったらしく、この後のカーテンコール的なオマケエピードを描く際に、新シリーズを匂わせる本当のラストシーンを入れさせてもらえた。
 そして、この1年後に「カソクキッズ:セカンドシーズン」が始まるんだ。

 

大人になったキッズたち

 この最終回は、これまでのエピソードからX年後(たぶん10年チョイくらい)ということになっていて、大人(青年)になったキッズたちが登場する。
 誰がどんなことをしているのかは作中で明記していないけど、じんは理論物理学者を目指していて、めがは物質構造系の研究者、たまは加速器の開発とかね、そっち方面。
 ぽにだけは素粒子の世界から離れて中学校の先生になっているけど、彼らはずっと友達のままだ。

 X年後ってことだから、正確な年齢は決めていない。
 最初はね、大学院くらい(23~24歳程度)と考えてたの。研究生というかポスドクというか、そんな段階かな~って。
 でもKEKにはそういうポジションはないと言われ、それで「博士論文書きかけ」というレベルになった。日本では博士号が取れるのは普通は27歳からだから、キッズたちは27~28歳くらいになってるんだろうなぁ。

 立場的には、じんはフジモト&タカハシ博士の弟子。この話での、じんの登場シーンなんか、かつてのフジモト博士そのまんまだし。
 たまもソッチ系の弟子だね。じんがフジモトの後継者なら、たまがタカハシ的になってる感じかな。
 めがは、この後のセカンドシーズンから登場するモチダ博士の弟子って感じだろう。

 なお、このエピソードには出てこないけど、フジモト博士やタカハシ博士も現役のはずだ。
 ずっとKEKにいるかどうかはわからないけど、今も研究者を続けていて、厄介な弟子たちにずぅ~~っと振り回されているはずなのだ。

 じんはね、理論屋になったはずなんだけど、イマイチ普通じゃないだろうと思ってる。
 基本の性格はそのまんまだからね。何か思いつくと、とりあえず行ってみる。周囲に無茶だバカだと言われながらも行ってみて「行き止まりだった!次こっち!!」「だからもうちょっと考えてから動けよ!!」みたいな感じでやってるはず。周囲の仲間たちは「あ~~、またかよ……」と呆れながら、それでも支えてやるという感じだろう。

 たまは、意外に運動もこなすタイプになってるとイメージしている。加速器のメンテナンスとかって体力勝負らしいからねぇ。KEKB加速器って一周3キロあるんだけど、その加速トンネルに研究者さん自身が手作業でコイルを巻きつけたとか聞いたことがある。Belle測定器のあたりなんかも寝袋持ち込みでやってる研究者がいたりするらしいし、ま、そういうことにもビクともしないお姉さんになってるんだろう。

 めがも、基本はそのまんまだ。このエピソードでは白衣を着て出てくるのだけど、白衣姿の研究者の登場は、これがカソクキッズ初だ。
 多くの漫画では博士といえば白衣で出てくるけど、物理学者とか工学博士とかは白衣は着ない。基本的には普通の格好。あ、背広もあんまり見ない印象だなぁ。割とラフな格好で、むしろ工事現場みたいな作業着とかね、そっちのはず。
 でも、同じKEKでもフォトンファクトリーなどで化学物質や細胞などを扱っている研究者は、白衣を着ることもある。
 なので、素粒子や加速器ばかりではないKEKの姿を見せたくて、めがは化学系に進んでもらったのだ。

 そして唯一、一般社会に帰還できたぽに。きっとね、楽しい先生になってると思うんだ。
 ほんわかしてて夢見がちな子だったけど、それでも彼女はしっかりしてるのだ。実は、メンバー中で一番大人だったんじゃないかと思ってる。
 学校の先生ってかなりの激務だから大変だろうけど、彼女なら堂々とやっていくだろうと思っている。教師にありがちなブラック残業に立ち向かったり、部活顧問拒否したりして、はみ出し者になっても気にしないんじゃないかな。いざとなったら自分で塾とかやってもいいし……とか思ってるんじゃないかな。キッズたちはね、宇宙の謎に挑みながら、そういう強さも身につけていったと思ってるんだ。

 どの子も、本当に愛おしいボクの子供達だ。
 何歳になっても、ず~っと愛しい。

 これからも「らしく」生きて欲しいなぁ。

 

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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