延々とつづく「修正」とのつきあい(メール商談ライブ) ~02:接触~

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お客様からのメール/その1

うるのクリエイティブ 御中

はじめまして。○○(某大手マスコミ)の☆☆と申します。
現在、××関連の冊子を制作しており、×××××導入メリットや仕組みを解説するくだりをマンガにして掲載したいと考えています。
A4・4色/4p/○月中旬くらいの納品
・・でご協力いただけますでしょうか。
ご回答のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。
(以下、書名)

 

「お客様からのメール/その1」補足解説

 毎度のことだが、こんな感じでホームページの「お問い合わせフォーム」を通じて、仕事の問い合わせが舞い込む。

 メールに書かれている通り、フォームから届くモノは、ほとんどが新規だ。
 一度も接触したことがない人。描くべきモノも知らない題材。

 まさに、真っ白。
 いつも、そういう感じで始まるの。

 当然、不安はあるわけだけど、それはお互い様だから、気にしても仕方ない。

 いい人だといいなぁ。
 こっちの気持ちを受け止めてくれる人だといいなぁ。

 トラブルの可能性より、上手くいく展開を想像することが多いな。

 世の中にはズルい人やヒドい人もいるから油断はできないんだけど、でもさ、一人ひとり多少のデコボコはあるにしても、ほとんどは普通に付きあえる人なんだよね。
 親友になっちゃうほどじゃないにしても、仕事上で付きあう範囲なら問題なしっていう人のほうが圧倒的に多いんだ。

 だから、自分から壁を作ってはね返したりしなければ、何とかなっちゃうモンだ。
 まず自分を肯定して、そんな自分に声をかけてくれた相手も肯定する。
 ボクは、そうしている。

 おお、大手マスコミの編集部からオファーが来たぞ。
 オレも捨てたもんじゃね~な~。数ある同業者の中からオレを選ぶとは、アンタもなかなかじゃね~か。
 いっそダチになっちゃおうぜ。
 つ~か、オレはそのつもりだ。ソッチがそう思わなくても、オレはダチになるつもりでアンタと付きあうぜ。

 そういうふうに考えるようにして、できるだけ自分をポジティブにして、肩の力を抜く。
 緊張したってカッコよくはならないのは知ってるから、できるだけナマの自分のまま、接するように心がける。

 それでダメなら、どうせどこかでダメになるんだから。
 いつまでも仮面をつけていられるほど器用じゃないし、辛抱強くもないからね~。

 

うるの送信メール/その1

うるのクリエイティブ事務所代表の「うるの拓也」と申します。

この度は、マンガ制作についてのお問い合わせ、ありがとうございます。


日中、当社のお問い合わせフォームからお送りいただいたものも確認していたのですが、月末で慌ただしく、すぐに返信できませんでした。ご容赦ください。(締切前の漫画家は人間じゃなくなってるので・・・)

・・・そういうわけで、やっとお返事を書くことができます。
(もう人間に戻りました)

モノは4色もしくは2色で、4ページですね?
そのくらいのページ数なら、ご希望の4月上旬までに描けると思います。
ちょうど今は年度末で、マンガも立て込んでいるのですが、3月中にシナリオとコンテまでをしっかりまとめておければ、3月末日の締切ラッシュを乗り切ると共に、すぐに作画を行えば、4月第1週のうちには、納品できると思います。

作画スタッフとシナリオ・企画のスタッフは別ですから、進行が滞ることもないと思います。(すでに3月に描く分のシナリオワークは、ほとんど終わってますから)


なお、現在手掛けているのは、どれも公共関係のモノなので、どんな事情があろうと3月末(年度末)までに納品されていないとマズイので、納品がずれることはありません。ですから4月上旬であれば、問題なく対応できます。

なお、料金に関しましては、
カラーの場合は単価「×××××円(税別×××××円)」で、2色やモノクロは単価「×××××円(税別×××××円)」とさせていただいております。

このためお見積りは

■カラー4ページ
×××××円×4ページ=××××××円(税別××××××円)

■2色4ページ
×××××円×4ページ=××××××円(税別××××××円)

となります。
シナリオ作成も含む料金ですから、これ以上代金がかかることはないと思います。
(逆にシナリオをご用意いただける場合も、マンガ化するに当たってはシナリオを吟味し、必要に応じてアレンジすることになりますので、提示額より安くなるわけでもないのですが・・・)

なお、シナリオは当方で作成しますが、どんな内容を盛り込むのか分かる資料などはご用意ください。

以上、簡単ですが、当方の現状と、お見積りを記載させていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。
(以下、書名)

 

「うるの送信メール/その1」補足解説

 初見の人相手だから、多少は丁寧に応じているけど、それでも「もう人間に戻りました」とか、遊んだ言い回しはしている。

 こういうことをメールに書いて「ボクって、そういうヤツだよ」とサインを出してるのよ。
 ここで「ビジネスメールなんだからキチっとしろ」と思っちゃうような相手だと、ボクのキャラとは合わなくて、合わない以上はどこかでぶつかってモメたりしがちだからね。

 仕事だからと割り切って付きあうなんてことは、できないのよ。

 だって「創作業」だから。

 創作は、自分っていう人間のとてもパーソナルな部分から生まれてくるんだ。
 だから自分を殺したら作品も死んじゃう。

 ということは、依頼者にもナマのボクを受け入れてもらうしかないのよ。
 ワガママじゃなくて「業務上必然的にナマのボクと合う人の仕事しかできない」のが「創作を請け負う」ってことだと思ってるの。

 

お客様からのメール/その2

うるの 様
たいへんお世話になっております。
○○(某大手マスコミ)の☆☆です。

ご連絡いただき、ありがとうございました。
それではぜひお願いできればと思います。

いま話に盛り込む内容をツメていますので、来週またご連絡させていただきます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

(もし、うるの様の方で、来週あたり東京方面にお打合せのご予定がありましたら
一度弊社にお立ち寄りいただければと思います。)
(以下、書名)

 

うるの送信メール/その2

うるのです。

ご連絡ありがとうございます。

お打ち合わせは、いつがよろしいですか?
来週なら、事務所でマンガを描く以外、特に決まった日程はないので、ご希望の日時に伺うことができるかと思います。

できれば午後だとありがたいです。
また、月曜日のみ、毎週全体ミーティングを行っているので、伺える時間が夕方近く(午後4時以降)になります。ちなみに漫画家だから夜には強い(笑)ので、夜の打ちあわせでも全然平気ではあります。
(以下、書名)

 

「うるの送信メール/その2」補足解説

 できれば午後がいいのは、早起きが苦手だから(笑)。
 あと、ラッシュアワーも。

 ウチは茨城だから、都内の客先に午前10時くらいに行くとなったら、8時台の電車に乗るしかない。
 通勤時間だから当然混んでいる。それはキツイ。
 若い頃はギュウギュウの電車に乗って通っていたんだけど、田舎に引っ込んで久しいので、もうラッシュアワーの混雑には耐えられそうにないのよ。

 初めて会う人を相手に仕事の打ち合わせするんだから、できるだけ気力・体力ともに充実している状態が望ましいのよ。
 そうじゃないと気持ちで負けちゃうから。

 そんなわけで、午前中は避けたいの。

 メール文中にある「月曜日の全体ミーティング」というのは、実は、ただ集まって議題もなく雑談をするだけのもの。
 仕事の話なんか、ほとんどしない。

 でも、そういうことが割りと大事だと思ってるの。

 よく知っている間柄でも、常に色々話して、お互いの考えを確認しあっていないと緩んでくるんだよね。
 だから週に一回(主要スタッフの1人は在宅でやってもらってるから)集まって、雑談する時間を持つことにしているんだ。

 ……もっとも、そういうのはタテマエに過ぎないってトコもある。

 スタッフ二人は若い。
 ハタチそこそこで、右も左もわからない真っ白なままでウチに飛び込んできて、以来ずっと一緒にやっている。
 未経験すぎて戦力にならない時期には、ボクがこっそり残業して支えたりした。
 そして仕事を覚えてくると、キツイときに意外な力と根性を見せてくれて、ボクを助けてくれた。

 だからボクは、自分の子供みたいに感じているトコもあるんだ。
 ただのスタッフと割り切れないの。

 なので顔を見たいのよ。
 声を聞きたいのよ。

 元気だよな、ゴハンちゃんと食べてるよな、どんなアニメ観てるんだ、この映画も面白いから観てみろよ、とか。

 スタッフを家族のように感じるのは、あまりいいことではないのかもしれない。
 世の中には、できるだけ割り切った関係で居続けたいタイプの人もいるし、仕事では時に非情な決断をしなきゃならないことだって、あり得る。

 だけど、例えそうでもスタッフたちは可愛い。
 出来るだけ長く支え合って生きていきたい。

 ボクのほうが力があるうちはボクが支え、いつかボクが老いていき、彼らが追い越していったら、ボクが部下になればいいんだ。体力はないだろうけど、ボケてさえいなければ、それまでの「年輪」でサポートすることはできるだろうし。

 歳を取ったら歳相応の働き方をするつもりだけど、一人で世の中の荒海を乗り越えていけるなんて思ったことはない。
 自分の力にどれだけ自信を持っていても、自力だけでは足りないことってのは、いくらでも出てくるハズだ。

 フリーランスである以上、誰かを頼らなくてもやっていけるように努力するのは当然のことで、実際そうしているのだけど、それでも誰かを信じて一緒に戦えたほうがいいのは間違いないとも思ってるんだ。

 最初は足手まとい。いないほうがマシ。
 そう思っても、先を行く者がそこを耐えて支えてあげなきゃ後の者は育たない。

 そして後の者が、それを受け止めてくれて「いつか、この借りは必ず返す!」って思ってくれていれば、耐えるのもそれほど辛くはない。
 むしろ伸びていく若者を目を細めて見続けることができるという、プライスレスな体験をさせてもらえちゃう。

 今のスタッフたちは、そういう気持ちを受け止めてくれたと思う。
 ボクが勝手に思っていることで、それを押し付けはしないんだけど、それでもボクはそう感じているし、そうである以上、ボクにとってはそうなんだ。

 それに、そういう人って少ないのよ。

 今までも幾度かアシスタントや部下を持ったことはあって、ボクはいつも同じ気持ちでやってきたんだけど、ちゃんと気持ちが通じた、受け止めてくれてるって感じられたのは、今の二人が初めて。
 みんな、途中で辞めちゃうか、タカをくくってしまうんだよね。

 まだイントロすら伝えてないのに「全部覚えた」と思い込んで、飛び出していく。
 そして覚えたはずなのに同じにならず、それで嫌気が差して消えていく。

 覚えてないんだよ。
 見た目のことだけじゃないんだ。描ければいいってモンじゃないんだ。
 むしろ、描く以外の部分をじっくりと時間をかけて育てていかなきゃ、この仕事は続かないのよ。

 今の子(もう子っていう歳ではないけどボクの主観としてはそう)たちは、そのへんをちゃんと見てくれている。
 そういうスタッフと出会えたのは、まさに幸運だと思っている。

 もう10年近く一緒にやってるけど、彼らの腕や才能はまだまだ未知数だ。
 予想よりずっと才能がないのかもしれないし、大きすぎてボクには見えないほどのモノを持っているのかもしれない。

 でもボクにとっては、どっちでもいい。

 才能が足りないなら経験でカバーすればいい。それならボクが教えられる。
 ボクにはない才能があるなら、それで戦えばいい。それならボクが付いていく。

 仲間として信じられるという一番大事なモノさえ持っているなら、もうそれで十分なんだ。

 

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※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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