延々とつづく「修正」とのつきあい(メール商談ライブ) ~01:序文~

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漫画だけに専念できる怖さ

 ボクは出版社とのお付き合いは少ない。
 漫画の仕事と言えば、雑誌に連載して、それを後に単行本にして……というのが鉄板だけど、そういう経験がほとんどない。

 デビュー後の数年間はフツーの漫画家だったから、そのときには連載もしているのだけど、残念ながら単行本にまとめられるほどのボリュームになる前に連載誌自体が消滅して打切りになっちゃったから、そのときの連載作品は本になってないんだ。
 今なら、初期作品集とかにまとめて世に出すことも可能だと思うけど、そんなコト恐ろしくて、恐ろしくて……(今にして思うと、よくまぁ、あんなレベルで読切とか連載とかやれたモンだ)。

 ただ、雑誌連載などの仕事はしていなくても、出版社との取引がないわけじゃない。

 広告・広報漫画の仕事としては、出版社だって他の一般企業と同じ。
 依頼があって、それが引き受けちゃマズイもの(違法なネタとか公序良俗に反するモノとか)でなく、ギャラも真っ当であれば、いつも通りに引き受ける。

 いつもと違うのは、依頼者も編集のプロだってことだ。

 何度も書いているけど、広告・広報漫画の仕事では、大抵は「漫画をつくる」は「漫画冊子(あるいはWEB)をつくる」のと同義だ。
 漫画だけ描けばいいわけじゃなく、編集も、取材や撮影も、デザインも、レイアウトも、版下ワーク(DTP)も、印刷の手配すらも全部やる。
 そのどれか1つが出来ないだけで全部が請け負えなくなるのが普通なんだ。

 だから、本当は漫画だけやっていたかったけど、漫画をやるためには全部出来るようになるしかなかった。
 そして漫画以外もやってみたら面白かったので、ずっと二足のわらじを履き続けてきたの。

 でも、出版社相手のときは、漫画だけに専念できる。

 実際にはセリフなどの入力まではやるしかないことが多いんだけど、まぁ、どんなセリフをどんなフォントでどう入れるか、というのも作品の一部と考えることもできるから、漫画だけというのと変わらないとボクは思っている。

 とはいえ。

 そのほうがラク、というものでもない。

 広告・広報の漫画を手掛けている以上、単に漫画を描きさえすればいいとは思っていない。
 広報に寄与すること。
 それが出来て初めて、依頼者の期待に応えられたことになる。

 そのためには、漫画以外の部分がどうなっているかは、とても気になる。
 そこはボクの担当領域ではないけれど、漫画を活かすような編集や構成になっていなかったら、どんな漫画を描いても結果は出ないからだ。

 漫画を活かすか殺すかに影響する部分を、自分では管理できないというのは、けっこう怖いんだよ。

 なんせ、そういう部分に問題があったせいでウケなかったとしても、そのことを証明するのは難しい。
 しかもボクの手が届かない部分を担当しているのは、先方の内部のスタッフ。つまり身内。
 そういう状況でボクが何を言おうが、部外者の言葉が重く受け止められる可能性は低い。ウケなかった原因がドコにあろうが、ウケなかった以上は漫画がダメだったと判断される。

 だからこそ、他がどうであろうが漫画が漫画だけで評価されるように、必死にならざるを得ない。
 いや、いつだってそうなんだけど、特に。

 それに、自分で全体を管理できないということは、何か困った状況になっても、自力では解決できないということでもある。
 編集者やデザイナーの部分で仕事が止まってしまっても、ボクはそれを動かせない。黙って待つしかない。
 そのせいで、今月受け取れるはずだった代金が、数ヶ月遅れるなんてコトもあり得る。
 怖いでしょ。

 特に大きい出版社や代理店が怖いな。

 事業規模が小さければ、大抵は資金力も弱い。
 つまりボクと同じで、いつまでも代金が回収できないようでは困るんだ。
 だから、できるだけ早くやっつけようとしてくれる。

 でも大手だとね~。

 キャンセル、中止とかになるとモメるけど、継続さえしていれば、納期が先送りになっても大手はあまり困らないんだよね。
 何億とかの大きな仕事でズルズルされると困るだろうけど、数十万、数百万程度なら、それほどうるさくないことも多いんだ。
 納期がズレても、社員は給料もらえるしね。

 まぁ今は大手出版社だって楽ではないから、それほど甘くはないのだけど、それでも中小零細に比べると大らかだ。
 そしてボクらは、その大らかさが怖い。
 大手のアオリ食らって泣くのは、ボクらのような弱小プロダクションだからねぇ。

 でも、そういうことを怖がってばかりはいられない。
 そういうことが起こらない可能性だって少なくないし、中小零細プロだってズルズル案件にしちゃうことはあるし。

 ボクらはビビってないで、舞い込んできた仕事をドンドンこなしていくしかない。
 何か問題が起こったときは、そのときに対処するしかない。
 対処できる力をつけておくしかないんだ。

 

お客は仲間だと思う

 本件は、そういう大手マスコミからの仕事。

 漫画系の出版社ではないけど、その会社およびグループから出ている雑誌等は、日本人なら誰でも知ってるクラスだ。
 その中の、広告や広報関連のモノを担当する部門がクライアントの案件。

 専門誌を一冊作る。
 その中に漫画で解説するコーナーがある。
 そこが、ボクの担当ページ。

 相手は大会社。しかもお客様。
 コッチは一介の個人。

 それでも、ボクらは対等だ。
 お客様として尊重し敬意も払うけれど、上下関係があるわけじゃない。

 お客様は神様なんかじゃない。
 仲間だ。一緒に1つの仕事に取り組む仲間。

 ボクは漫画の部分しか担当しないけれど、そこだけ上手くいけば他はどうでもいいわけじゃない。
 先方も、自分が編集する部分だけやれば、漫画は丸投げで知らん顔でいいわけでもない。

 1つの本としてイイモノにするために、それぞれの部分で力を合わせるんだ。

 実際には自分の担当範囲以外には一切関わらないにしても、ボクはそういう意識で取り組むことにしている。
 そうでないと独りよがりになりがちだからね。
 漫画は他の編集ページとは違うから、浮きやすいのよ。
 それだけ他の影響を受けにくいとも言えるんだけど、それが孤立になっちゃうとマズイ。

 だからチーム意識を持つの。
 先方がそう思っていなくても。

 この案件では、仕事の最終段階近くにちょっとモメたときに、そういう気持ちを直接ぶつけた。
 そうしたことでホンのちょっと歩み寄って、以降は気持ち良く仕事できたし、その先の案件も任せてもらえた。

 全体としては、よくある仕事に過ぎないと思うけど、その「よくある」の中身を詳細に見てもらうことで、色々気付くこともあるだろう。
 ボクが気付いてないことに気付く人もいるかもしれないよね。

 

(「延々とつづく修正とのつきあい編/02」へ→)

 


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