カソクキッズ28話:ペンギンが崩壊すると宇宙が誕生する!?

スポンサーリンク

宇宙の作り方

 ぽに、たま、めが……と順に「まとめ」を発表してきたラストシリーズも、いよいよ最後のじんの番。

 テーマは「宇宙の作り方」

 これ、カソクキッズの連載当初から言い続けてきた言葉で、確かに締めくくりには欠かせないんだけど……。
 ……『フェッセンデンの宇宙』じゃあるまいし、そう簡単に宇宙が作れるわけがないからなぁ……。

 とはいえ、作り方が全然わからないわけじゃない。
 劇中でフジモト博士が言ってるように、作り方自体は、かなりわかってきているのだ。

 カソクキッズの0話(イントロダクション)で、初登場時のフジモト博士は、こう言っている。

 「宇宙をつくるとは、4次元ハウスドルフ空間に可能なローレンツ群の表現を見出し、
 それらを量子化した素粒子を現出させることである」

 ……今でも、なんのこっちゃか、さっぱりわからん。
 ウィキペディアで「ハウスドルフ空間」を調べてみてもチンプンカンプンだったし、やっぱボク文系なんだよな~~(苦笑)。

 でも、とにかく宇宙がどういうふうに生まれたかがわかれば、作り方もわかる。
 わかったからといって本当に作れるわけじゃないけど、この世界がどのような仕組みになっているかを知ることはできる。

 ボクらが見ている世界は「ボクらのスケールで見える世界」でしかなく、それは宇宙の真の姿の一部に過ぎないのだ。

 もっとマクロな、あるいはミクロなスケールでみたら、全く別の姿が浮かび上がってくるかもしれない。
 それを知れば、今までの常識をひっくり返すような何かに届いたりするかもしれない。
 それは、ボクらの暮らし、思想、政治、宗教、哲学などの全てを変えちゃうかもしれない。

 ……と「かもしれない」だらけだけど、可能性の話だから仕方ないのよ。
 そもそも研究者は「かもしれない」のために研究してるわけじゃないと思うし。

 とにかく知りたい。
 知ってどうなるかじゃなく、知りたいから知りたい。
 そういうのが研究者なんだと思うの。
 知ったことで何かができるようになったりするのは結果論なんだよね。

 そういうわけで、KEKでは今も「宇宙の作り方」を探り続けている。

 この世で一番小さい素粒子。
 万物の素である素粒子。

 その素粒子がどれだけあって、どうやって生まれ、どのような性質を持っているのかを1つ1つ解き明かしていくことで、この世界全ての成り立ちを知ろうとしているのだ。

 まぁボクは漫画を描いてるだけだから、研究者が知ったことを教えてもらって「へ~~」とか「ふ~~ん」とか言ってるだけなんだけど(笑)。

 

ペンギン崩壊(1:研究者クイズ大会

 このエピソードには「ペンギン崩壊」という図が出てくる。
 こんな図だ。

 いや別に、実際のペンギンが崩壊するわけじゃないよ。
 ていうか本当はペンギンはなんの関係もない。

 研究者が酒場で賭けダーツをやっていて「負けた人は次に書く論文にペンギンという言葉を入れること」というルールだったんだ。
 それで負けた人が、たまたまそのときに書いていた論文に出てくる図に、無理やりペンギンって名付けちゃっただけなの。
 実際、図を見てみても全然ペンギンに似てないと思うもん。
 研究者って、ときどき強引だよなぁ(笑)。

 そういや、KEK一般公開の催しでクイズ大会があったときも、こういう強引な例をいっぱい見たんだ。
 ボクも一度だけゲストパネラーとして出演したことがあるクイズ大会で、ボク以外の回答者は皆さん本物の物理学者。

 で、その日本の頭脳たちに「物理学以外のこと」を答えてもらうのだ。
 今年のAKB総選挙で1番だったのは誰か、とか。

 問題によっては手元のボードに絵を描くこともある。
 これが、懐かしの『お笑いマンガ道場』みたいなことになるのだ。
 あくまでも余興だからウケを取ってもポイントになるため、どの研究者も往生際悪く、強引な回答をしまくるのだ。

 忘れられないのが「火山の地図記号を描け」と「リュウグウノツカイを描け」という問題。
 ある研究者は、ロウソクのようなものを描いて、これが火山の記号だと言い張った。
 もちろん、不正解。

 その後、リュウグウノツカイの問題になると、浦島太郎的なイラストを描いていたのだけど、他の回答者の正解を見て、さっきのロウソクを持ち出し、ボードを横にして「これ!これがリュウグウノツカイ!」と言い張った。
 もちろん本気でそんなワガママを言ったわけじゃなく会場も大爆笑だったのだけど、ボクは笑いながらも「この、簡単にはあきらめない往生際の悪さが研究者には必要な資質なのかもしれないな~」と思ったよ。

 

ペンギン崩壊(2:3秒ルールは科学的に正しい!?

 おっと、閑話休題。ペンギン崩壊に戻ろう。

 このペンギン崩壊の図は、B中間子がK中間子とπ中間子に崩壊していく過程を示したもので、図の左側にはボトムクォーク、右側にはストレンジクォークが出現している。

 でもヘンなのだ。

 崩壊はしても、エネルギー保存則があるから、全体のエネルギー量は同じのはずだ。
 元になったB中間子というのは、反ボトムクォークとアップクォーク、ダウンクォーク、それにストレンジクォークかチャームクォークの組み合わせで構成されている粒子だ。

 ボトムクォークの質量は約5.3GeVで、アップは0.002~0.003GeV、ダウンは0.004~0.006GeV。ストレンジは0.1GeVで、チャームは1.3GeV。
 これらの質量(エネルギー量)を全部合わせても6GeVに満たない。

 ところが、この図には……ペンギンに近いところにトップクォークが出現している。

 トップクォークの質量は約172GeV。ボトムクォークの43倍もあるのだ。

 そんなバカな。
 あるものが崩壊して元の量の43倍に増えちゃうってオカシイじゃないか。
 これでは、エネルギー保存則が破れちゃうじゃないか。

 ところが。

 どうも「ホンの一瞬ならエネルギー保存則を破ってもアリ」らしいのだ。

 素粒子の世界は、とってもミクロな量子の世界。
 そして、量子力学の不確定性ワールドなら、ちょっとだけならエネルギー保存則を破ってもいいらしいのだ。

 そんなのあるか! ズルい!
 と言いたいけど、これは実験的にも確かめられていて、ボトムクォークがアップやダウンクォークに崩壊する途中に、一瞬だけトップクォークになったりする現象が確認されているらしい。

 う~ん、まさか「食べ物を落としても3秒以内に拾えば大丈夫」と似たような屁理屈が、科学的に正しかったとは……!!

 でも、このペンギン崩壊は、宇宙を誕生させた原因の1つと言われる「自発的対称性の破れ」などにも関係していると考えられている。
 ペンギンのせいで、一瞬だけ元々のエネルギー量を大幅に上回ることができて、そのせいで宇宙が誕生したのかもしれないのだ。

 恐るべし、イワトビペンギン!!

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

うるの拓也の電子書籍シリーズ各巻好評発売中!(詳しくはプロモサイトで!!)