小説版イバライガー/第23話:未来の想い出:1(後半)

2018年7月6日

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Bパート

「……そ、そんなことが……!?」
 カオリが、息を呑んだ。

「マ、マジかよぉお……」
 ミニブラックも、唖然としている。

「じゃ、じゃあ……イバライガーって元々は変身ヒーローだったのか? しかもバイオ系の!?」
 マーゴンがツッコんだ。ツッコまずにいられなかったのだろう。

「やっぱりね……」
 エドサキ博士が、つぶやいた。

「……イバライガーのオーバーテクノロジーが、どこから来たのかが謎だったのよね。どう考えてもシンやワカナが生きているうちに、これほどのテクノロジーに一気に発展するとは思えなかったから。でも、シンがエモーション・ポジティブによって変異していたのなら……」
「そのシン君の身体から得たデータで、イバライガーが開発された、というわけか……」
 ゴゼンヤマ博士が、ため息をついた。

「そうです。私は初代と呼ばれているが、本当の初代は私ではない。シン、君なんだ」

 シンは、黙ったままだった。

 思っていたとおりだ。俺がイバライガーの生みの親というのは、そういうことだったのか。
 エモーション・ネガティブが人間をジャークに変異させるのなら、ポジティブにも同じ力があるはず。
 そのポジティブに侵食されたとき、俺は、俺がイメージする姿に変異した。

 いつか、造りたいと思い描いていた姿。
 イバライガーに。

「シン。君は戦い続けた。ワカナを守るために。この世界を救うために。だが、それは君の身体を蝕んでいった……」

 そうかもしれない。

 エモーションを使いすぎると、身体に大きな疲労が残る。
 それに、PIASを使った時。
 あの時、全身を砕かれるような激痛を感じた。意識が遠のき、自分が失われていくような恐怖を感じた。

 イバライガーになるというのは、恐らくそういうことなのだ。
 あのときは初代とイバライガーRが止めてくれたが、あの状態を続けていれば、俺は人間ではなくなっていたかもしれない。

 シンは、イバライガーとして戦った「もう一人の自分」を想像した。

 激痛に耐えながら、幾度となく変身を繰り返したのだろう。
 ワカナは、それを見ていたのか。
 辛い思いをさせちまったな。俺より、痛かっただろうな。コイツのことだ、ずっと我慢していたんだろうな。
 すまない。だが、それでも……。

「……それでも戦うしかなかった……」

 シンの思考を代弁するように、ワカナがつぶやいた。手を握る。涙が、溢れている。
「知ってる。シンなら……それが別なシンでも……イバライガーになったシンでも……。きっと戦い続けたと思う。世界とか人類とかじゃなく、私たちのために。私が笑って暮らせる世界を取り戻すために、何度でも……何度でも戦ったと思う……」
「お、おい、ワカナ……」
 ワカナはうつむき、シンの手を握りしめたまま、背中で初代に語りかけた。

「……イバライガーになったのは、シンだけなの? 私も、あの場所にいたんだよ? それでも……シンだけなの?」
「ああ……シンだけだ。君は君のままだ。最後まで……」
「そう……なのね……。でも……」

 ワカナが、顔を上げた。
「でも、ガールは私なんでしょ? 私が、シンだけを戦わせて平気でいられたはずがないもの。一緒に戦ったんでしょ? だから私がイバガールになったんじゃないの?」
「そうだよ、私、聞いたよ。ワカナの声を。もう一人のワカナの声を。私の中には、その想いが宿ってる。ワカナとシン。ダブルヒーローだったんじゃないの?」
 ワカナに続いて、ガールがツッコんだ。

「違う」
 イバライガーブラックの声だ。

「初代の言ったとおりだ。ワカナ、お前は最後までワカナのままだ。エモーションが取り憑いたのはシンだけだ……」

 ワカナは、ハッとしてブラックを見つめた。いつもの口調と、違っていたからだ。

 ブラックは未来の記憶を持っている。
 何かを思い出したのか。どこか寂しそうな、悲しそうな声。

 Rはブラック。Rはシン。だからブラックも、シン。
 初代が知らないことを知っているのかもしれない。

「つまらんことを気にするな。初代が話したことは、お前たちのことではない。別の世界のことだ」
 ワカナが言葉にする前に、ブラックが答えた。いつもの口調に戻っている。
「でも……私たちともつながってることでしょ。だからこの世界にイバライガーがいる……ブラック、あなたも」
「当たり前だ。1本のペンにも製造者はいる。それが巡って、お前の元に届く。お前の言うつながりとは、その程度のものに過ぎん」
「け、けど……」
「もういい。さっさと先を話せ、初代。こいつらが余計なことを考えて右往左往する前にな」
「なによ! ちょっとくらい話させてよ! いっぺんに色んなこと聞かされて、みんなパニくってんだから!!」
「そうだよパパ」
「パパ言うな!!」

 ガールとミニガールのツッコミのおかげで、少し、緊張がほぐれた。
 もしかしたらブラックも、そのへんを気遣って口を挟んでくれたのかもしれない。
 何せ、元になった人格はシンなのだ。今は、自分の知っているシンとはまるで違うけれど、彼もシンの可能性の1つなのだ。

「……とにかく、未来のワカナだって、ワカナはワカナでしょ? 私たちが知ってるワカナなら、黙ってじっとしてたとは思えないよね?」
「そうそう、頭はいいハズなんだけど無茶で無謀で、かなりバカなこともやっちゃう子だからな~~」
「マーゴン! あんたねぇ!!」
「いや、マーゴンの言うとおりだったろうな……」
「博士!!」
「ワカナ、忘れたのか。以前、初代は「君がイバライガーにエキスポ・ダイナモを与えた」と言った。つまり君は戦っていたはずだ。イバライガーに変身するのではなく、別な方法で……それは恐らく……」

 ゴゼンヤマ博士とエドサキ博士が、初代イバライガーを見た。

「……そうです。あなた方、そしてワカナによって、シンの身体をベースに、そのコピーとも言えるヒューマロイド開発が始まった。あなた方はシンの代わりに戦ってくれる力を生み出そうとしたのだ。そして完成した最初のボディが……」

 


「私……ですね……」
 ずっと黙っていたイバライガーRが、応えた。

「ええええっ!?」
 全員が声を上げ、Rを見つめた。

「見えたんだ……ミニガールが生まれたときに……」
「え、私?」
 唐突に名前を出されたミニガールがきょとんとしている。Rはミニガールに向かってうなずいてから、言葉を続けた。

「あのとき……ぼんやりとだが、断片的な記憶が見えた……。私は戦っていた。まだ私は『R』じゃなかった。それがどういうことなのかはわからない。けれど、戦った記憶がある。つまり私は、未来の世界で起動していたはずなんだ。そして、その私がシンの心を受け継いでいるのなら、それは……」

 初代イバライガーとRが、向き合った。初代は、少し間を置いてから、うなずいた。

「……そうだ、R。お前こそが最初に起動したイバライガーだ。だからこそ、お前にはオリジナルである『シン』の魂が宿っている」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!!」
 ミニブラが声を上げた。

「シンがRで、RはRじゃなくて、初代は初代じゃなくて……って……お前らバグってんじゃね~のか!? 全然ワケがわかんね~じゃね~か!!」
 ミニブラは頭を抱えて喚き続けたが、今度は、他の者もツッコまない。全員が混乱していて、情報を整理するのに精一杯なのだ。

「いちいち騒ぐな。話が進まん」
 ブラックが、一喝した。
「だが……興味深い話ではある。俺が覚えているのは、もう少し後のことからだからな……」
「そうだろう。お前がなぜ生まれたのか、いつ生まれたのかを私は思い出した。あの日……あの絶望の中で、お前は目覚めた。誰も気づかないところで、お前は生まれていた……」

 絶望、という言葉に、全員が静まり返った。

 そうなのだ。この物語は絶望に向かっていく。初代イバライガーが語る物語に、希望はない。
 未来が、もう1つの歴史が希望を手にしたのなら、イバライガーたちはここにいない。
 全ての希望が断たれたからこそ、別の可能性に賭けたのだから。

 だが、それでも知らなければならない。
 どう受け止めるかは、後でそれぞれに考えればいい。
 今は、全てを知るべきなのだ。

「教えてくれ、初代。未来の俺たちが、どう生きて、どう終わったのかを。今の俺たちにつながる物語を」

 

ED(エンディング)

 雨の中を、人々が逃げ惑っている。
 ビルが崩れる。その粉塵の中から、飛び出してくる異形の怪物たち。
 逃げる人々の流れに逆らって、走る二人。

「ワカナ、みんなを頼む!!」
「でも……シンッ!?」
「いいから行くんだ!!」

 数体のジャーク・ゴーストが目の前に迫っている。身体が熱くなる。
 上着を、脱ぎ捨てた。ワカナたちが造ってくれたエキスポ・ダイナモが剥き出しになる。

「変身っ! イバライガァアアアアアアッ!!」

 ベルトが輝くと同時に、地を蹴った。全身が硬質化していく。いつもの激痛。だが、その痛みこそが力の証だ。

「ブレイブ……キィイイイックッ!!」

 ゴーストを蹴散らす。振り返る。四天王級……カンナグールが現れた。
 立ちはだかる。この先には、一歩も進ませない。

「そこまでだジャーク! お前たちの好きにはさせないっ!!」
 シン=イバライガーは、全力で突っ込んでいった。

 

次回予告

■第24話:未来の想い出:2
ジャークから人々を守るため、イバライガーに変身して戦い続けたシンは身体を蝕まれ、ベッドから起き上がることもできないほどに悪化していた。そんなシンを救うために始まったヒューマロイド開発計画。だが、数体のプロトタイプが完成したものの、未だにイバライガーは動かない。
そして、ついにジャークの最終攻撃が開始される。最後の希望であるシンたちを生き延びさせるため、自ら犠牲となる博士たち。それでも止められないジャーク軍団。シンはついに最後の決断を……
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

 

(次回へつづく→)

 


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