カソクキッズ22話:全然暗黒じゃない暗黒物質と暗黒エネルギー

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何だかわからないからダークな暗黒物質

 この22話では、暗黒物質と呼ばれるダークマターと、これまた暗黒っぽいダークエネルギーをネタにした。

 最初に言っとくけど、ダークマターとダークエネルギーは、名前にダークって付いてる以外は全然別物だからね。
 どっちもダークだから一緒のエピソードで登場したけど、本当はまるっきり違うものなんだ。

 んで、まずはダークマター。

 カソクキッズ劇中では、暗黒の支配者「ダークマン(ちゃんと、あの『ダークマン』っぽく描いた)」が操る不気味なクマちゃん「ダーくまたん」として登場したけど、もちろん、そんなモノなわけがない。

熊本で震災があったときに描いた「がんばれ絵」に登場したダーくまたん。
カソクキッズ本編でも、この後も度々登場していて割と気に入ってるキャラなんだけど、めちゃ重たくて、光では見えなくて、しかしものすごい存在感、という設定なのでグッズ化は難しいだろうなぁ。やさぐれててカワイイんだけどなぁ(笑)。

 

 ダークマターとは「未確認の物質」のことだ。
 黒いわけでも、悪の存在でもない。単に「これまでの観測では発見できていない物質」というだけ。

 今までの観測結果や素粒子宇宙論などに照らし合わせて宇宙の質量を考えていくと、我々が「物質」として認識できているものは、宇宙全体のわずか5%程度でしかないらしい。

 宇宙には無限とも思えるほどの星があるけれど、それだってスミベタの中にちっこい点がポツポツとあるだけだ。
 圧倒的に黒が多い。宇宙怪獣軍団でも侵攻してこない限り、白が7分で黒が3分になんか、ならないのだ。

 だけど、物質がたった5%では計算が合わなすぎる。
 なので未発見の物質が20%くらいあるはずと考えられている。

 それがダークマター。
 宇宙のどこかに固まってあるわけじゃなくて、気付いてないだけでボクらの周囲にも、うじゃうじゃとあるはずのモノなのだ。

 その正体は、諸説あって未だにはっきりしない。
 だからダークなのだ。ダークマター自体がダークなんじゃなくて、正体がわかんないからダークなのだ。

 ただし、どんな性質のものかは、それなりに推理できている。

 これまでに見つかってないということは、光では観測できないはず。
 ずっと存在しているはずだから、すぐに崩壊しちゃうような不安定な物質ではないはず。
 さらに電気的に中性で、時空の歪みになるほどに重たいはず。

 そういう物質を発見できれば、それがダークマターである可能性が高い、というわけだ。

 そんなわけで、ダークマター候補は色々と考えられている。
 ブラックホール、中性子星、白色矮星、褐色矮星、微笑天体なども候補だし、ニュートラリーノ、アクシオンなどの素粒子も候補だ。
 ちなみに、天体系の候補はマッチョ、素粒子系の候補はウィンプと呼ばれているらしい。

 で、今のところ最も可能性が高いと思われているのが、超対称性粒子のニュートラリーノらしい(どうでもいいけど「らり〜の」っていう響き、かわいいよね)。

 もっとも、どれか1つが正体かもしれないし、いくつもの候補が全部ダークマターなのかもしれないので、わかんないものはわかんないんだけど。

 とにかく、まずは1つ、見つけてみる。
 ニュートラリーノを見つけて、それが宇宙の質量の20%分くらいあると考えられるのなら、ダークマター=ニュートラリーノの可能性が高いだろうし、もしも10%くらいでしかないとしか思えないのだったら、他にもダークマターがあることになる。

 今は、そういう段階なのだ。
 だから世界中で、ダークマターを見つけるための実験が繰り返されているのだ。

 

 なお、2013年に製作された『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』の映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』では、宇宙海賊艦アルカディア号のエンジンは「ダークマター機関」っていう設定になってたんだけど、動力源として利用できるんならダークマターの正体や性質は明らかになってるはずで、そうなら、すでにダークマターとは呼ばなくなってると思うんだよなぁ。謎だからダークなんだし。
 まぁ、ハーロックのイメージとは合うので文句はないんだけどさ(笑)。

 ダークマターが登場する映画で忘れられないものは、他にもある。
 とっさにタイトルを思い出せるほどじゃないんだけど、ボクが観たのはアメリカのテレビムービーだった。
 宇宙からダークマターが、墨汁みたいにダラ~~っと垂れてくるのよ。それで、それを博士が鼻から吸い込んじゃうのよ。すると手からカメハメ波みたいなのを出せるようになっちゃうのよ。書いてるボクも意味がわかんないんだけど本当にそういう映画だったのよ。KEKの博士に話したら大受けして、アマゾンで検索して中古DVDを見つけて上映会したらしいのよ。

 

宇宙を膨張させるダークエネルギー

 宇宙はビッグバン以来、ずっと膨張を続けている。
 ビッグバンそのものは減速膨張で、本当の膨張はビッグバン以前のインフレーションだと言われているけど、とにかく今も宇宙は膨張している。

 しかも今は、第二のインフレーション期と呼ばれるほどの加速膨張期なのだそうだ。
 光速以上の速さで、宇宙それ自体が広がり続けているのだ。
 (物質は光速を超えられないけど、宇宙は物質じゃないので光速以上でもOK)

 で、その膨張させているエネルギーが「ダークエネルギー」という謎の力だと考えられている。

 ダークエネルギーは、張力(重力:引っ張る力)に対する斥力(押し出す力)だと考えられていて、宇宙項などとも呼ばれる。
 しかも、全宇宙の質量の約70%にも及ぶらしい。宇宙は、ほとんどダークエネルギーってことだ。

 ダークマター同様、何だかわからんエネルギーだからダークなわけで、漫画やアニメに出てくる黒っぽいビームとかじゃない。
 そもそも素粒子とかエネルギーには色はないはずだしねぇ。色でイメージしたほうがわかりやすいから、量子色力学とかがあるけど、本当に色があるわけじゃない。量子色力学でさえ、色って言いながら一方でフレーバー(匂い)とか言ったりもするし。既存の何かに例えてるだけで、字面そのまんまじゃないんだよなぁ。

 とにかく、ダークエネルギーがどういうものかは、今のところ全然わからん。
 研究者には色々な予想があるのだろうけど、ボクは、宇宙を膨張させている力ということ以上は全くわかんないままだ。

 ただ、その宇宙が膨張し続けているということについては、印象的なことを覚えている。

 劇中でも触れているけど、宇宙がどんどん膨張していくというのは、惑星や恒星間の距離が遠ざかっていくということだ。
 風船が膨らむごとに、その表面に描いた点と点の距離は広がる。どこまでも広がっていけば、いつかは見えなくなる。

 見えない、存在に気付けない、ということは、観測者にとっては無くなってしまうのと同じだ。
 つまり宇宙の星々は、日々どんどん無くなっていってるのだ。

 このエピソードの打ち合わせ中、藤本博士がおっしゃった。

「この膨張がどこまで続くかははっきりしないけれど、いずれにしても宇宙の星々は、消えていく。何万年も何億年も経ったら、観測できる宇宙はずっと少なくなっているかもしれない。しかも、人類以外の知的生命体は未だに見つかっていない。今の宇宙を覚えていてあげられるのは我々だけかもしれないんだ。だから戦争なんかやってる場合じゃない。我々は、この宇宙を少しでもしっかりと覚えていてあげなきゃいけないんだ」

 ボクは、その言葉に感銘を受けた。
 さすがにそのまんま漫画に取り込むことはできなかったけど、藤本博士の熱い想いに、心を打たれた。

 ボクは、ボクを、そして愛する人々を生んでくれた「今の宇宙」を、ホンのちょっとでも覚えていてあげたい。
 科学的ではない感傷かもしれないけど、そういう想いのほうがボクには大きい。
 そして、それでいいとも思っているんだ。

 

※このブログで連載している『小説版イバライガー』では、ダークエネルギーの正体をネタにしようと思っている。もちろん「そんなわけね~だろ」な無茶な設定でだけど、無茶でも何でも、触れる、慣れることって大事なのよ。鼻から吸い込んでもいいのよ。とにかく接すること。それがなくちゃ何も始まらない。
イバライガーのほうはカソクキッズと違って科学啓蒙のために描いているわけじゃないけれど、それでも科学ネタ、SFネタに触れることを通じて、そういうことに興味を持ってもらい、科学的・論理的な考え方、科学リテラシーを身につける機会が生まれたらいいなとは思っている。疑似科学、インチキ療法、放射脳などに振り回されたり騙されたりしないためにも大事だし、普段の暮らしでも論理的な思考ができるってのは役立つことだからね。

 

※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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