カソクキッズ21話:10次元の世界と超ひも理論

 この21話では「超ひも理論」に挑んでしまった。

 いや、研究者でもなんでもない一介の漫画家が、超ひも理論を解説するなんて、我ながら無茶なことをしたもんだ。
 もっとも、ソレを言い出したら全部が無茶なんだけど(笑)。

 なので、これまた毎度のことなんだけど、ちゃんと解説するなんてことは、最初からあきらめている。

 専門家集団「カソクキッズ保護者会」に監修してもらってはいるけど、ストーリーも作画も、丸ごと全部ボクに任されているので、ボクが理解できたことしか描けないもんね。ボクが付け焼き刃で理解できることなんて、ホンのちょっとでしかないんだ。

 何もわからんままに、その場その場で気になったこと、断片的に知ったことを、そのまんま描いていく。そうすることで、科学に触れることに慣れてもらう。学ぶとか教えるとかじゃなく、慣れるだけでいいのだ。チャカして遊んでいるうちに、自然と科学的・合理的な思考が身につき、もっと興味を持った人は、本物の専門書や解説書を読むようになり、一般公開や各種科学イベント、サイエンスカフェなどで研究者とも触れ合うようになったりする。

 科学と親しむための最初の一歩。
 そういうキッカケを生み出せれば、カソクキッズは大成功なのだ。
 ボクはそのために描いていたんだから。

 そんなわけで、わからんなりに描いた超ひも理論エピソードは、やはり、よくわからん内容なんだけど、ボクは楽しかったよ。
 全ての素粒子は実は1つとか、次元の正体とか、興味深いネタがいっぱいだったしね。

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素粒子は粒じゃなくてヒモ?

 素粒子は、とてつもなく小さな粒で、ようするに点のようなもの……ということになっている。
 カソクキッズでも素粒子を描くときは小さな球体みたいに描いてきたし、他の解説書などでもそうなっていることが多い。

 でも「ひも理論」では、粒じゃなくてヒモだと。
 点じゃなくて、線だと。
 点=0次元じゃなくて、線=1次元だと。

 なんでそう考えるようになったのかはボクにはよくわかんないので、専門家に聞くとか、ちゃんとした解説書を読むとかしてね。
 とにかく、ただの点ではなく、長さ(広がり)を持ったモノとして考えたほうが数学的にしっくりくる、ってことらしい。

 湯川秀樹博士は、丸(点)で考えたんだけど、それだと相対性理論と合わなくなっちゃうことがわかってきた。
 それで、その後の南部陽一郎博士は、ヒモ(線)として考えてみて、そのほうが計算が合うと気づいた。

 でも、当時の理解レベルでは、丸(点)のままで考えたほうが都合がよかった。
 実験的にも、ヒモ(線)でないと解釈できないほどの高エネルギー領域に人類は届いてなかったから、まだ丸(点)で十分だったんだ。
 ひも理論自体にも、色々と課題があって不完全だったしね。

 

 ……そういうわけで、一度は人気なくなったひも理論なんだけど、1980年代に入ると超対称性の考え方を組み込んだ「超ひも理論」として復活することなる。

 あ、それがどういうものかはボクには説明できないよ。ひも理論だってわかってないんだから、超ひも理論はもっとわからん。
 一応、一般初心者向けの解説書くらいは読んでるけど、ちゃんと学んだことは一度もないし、今後も学ぶつもりはないんだもん。専門的なことは専門の人に任せるよ。科学は好きだけど、ボクの専門は漫画とか広報とかであって科学じゃないから。

 それに、超ひも理論で語ってることって「そう考えればツジツマが合う」という類いのことが多くて、だけどソレが正しいかどうかを実験的に検証できてるわけじゃないんだよね。つ~か、現在の技術では検証実験自体が不可能なレベルのことが多いらしいんだ。
 多くの研究者が「うむ、それなら納得できる」と考えてるだけで、完全に立証できるのは、まだまだずっと先のことらしい。

 それに、CERNやKEK、今後建造されるはずのILCなどの実験で、超ひも理論の超の部分=超対称性を示す超対称性粒子が発見される可能性は十分にあるから、そうなると超ひも理論の信憑性がさらに高まっていくことになる。

 立証できなきゃ、そう思ってるだけということになっちゃうけど、だからって間違ってるとは言えない。
 どう考えたってアイツが犯人としか思えなくても、証拠がなければ逮捕できない。今は、そんな状態らしいんだよね。

 

全ての素粒子は、本当は1つ?

 ひも理論では、素粒子を「一定の長さを持ったヒモ」として考える。
 長さって言っても10-35m(陽子の直径は10-15m)という短さらしいから、点と大して変わんない気がするレベルなんだけど。

 で、このヒモは振動している。
 点だとしても素粒子は振動してるはずなんで、そこも一緒なんだけど。

 でもヒモだったら、振動のしかたの違いで、様々なバリエーションが生まれる可能性がある。
 1本しか弦がない弦楽器でも、様々な音を出すことができるのと同じだ。

 だとすると、アップだとかダウンだとかストレンジとかチャームとか、様々な素粒子に見えているのも、実は全部同じものではないのか?

 同じものが振動の違いで別なものに見えているのでは?
 宇宙の初期には、全てが1つだったはず。
 それは、そういうことなのでは。

 こういう考え方が本当に正しいのかどうかは、ボクにはわからない。

 でも、聞いたときにはワクワクした。
 推理モノだったら、こうした閃きの瞬間って見せ場だもんね。

 このエピソードを描いたのは2010年だけど、その後、2012年に、ボクは『QCD:クォーク・カード・ディーラー』という量子色力学をテーマにしたカードゲームに関わった。

 あくまでもカードゲームだけでの展開だから漫画などに描く予定はなかったんだけど、一応はストーリーの骨子とか各種設定なども考えた。
「ジクファス学園」という物理エリートを養成する学校が舞台。その学園には量子色力学に基づいた謎の武術「クォンタ・アーツ」というのが伝わっている。制服はリバーシブルになっていて、表の状態で着ると物質、裏返しで着ると反物質、という具合に属性が変化する。
 まぁ今ここで詳しく説明しても脱線が過ぎるからここまでにするけど、とにかく、そういう学園を舞台にした『プロジェクトA子』みたいな設定なのね。
(制服が特殊能力というのは後の『キルラキル』とそっくりだけど、アイデアを世に出したのはこっちが先だからパクリじゃないぞ!)

 で、実際にストーリーのある作品としては描いていないのだけど、もしも描いたら、その最終回では、全ての素粒子が1つになって超ひも理論に基づく最終フォームが発動するってイメージで考えてたの。

 そういう展開ってテッパンでしょ。
 全ての力が実は1つっていう素粒子理論の考え方って、テッパンなヒーローアクションと相性いいのよ(笑)。

 

次元とは「要素」のこと?

 このエピソードで一番興味深かったのは「次元」の考え方だなぁ。

 ひも理論、超ひも理論で考えると、次元は10次元、もしくは11次元ないとオカシイらしい。
 リサ・ランドールさんの膜宇宙論などでは5次元で十分らしいんだけど、ひも理論的には10次元まで欲しいらしい。

 んで、この次元ってやつは、トンデモさんなんかが勘違いしやすい。
 次元が高いほうが高等だとか、そういうふうに思い込んでいたりするし、階層みたいになってるとイメージしていたりする。

 確かにそういうふうにイメージしたくなりがちではあるのだけど、次元ってそういうもんじゃないらしい。

 次元とは「特定の場所やモノを指し示すために、いくつの要素が必要か」のことらしいんだ。

 例えば、我々が生きている世界は3次元。
 緯度(点)、経度(線)、高度(高さ)の3つの要素がないと、特定の場所を示せない。
 さらに、何時何分にそこにいた、などと言うためには、時間という要素も必要になる。つまり4つの次元が必要なのだ。

 ということは、10次元の存在を特定するには、さらに6つの要素がないとダメってことになる。

 しかも、その要素が何かは考えても無駄
 4次元までしか感知できない世界の存在である我々には、その他の次元がどういう要素なのかを考えることができないのだ。何を考えても、確認のしようがないのだ。

 次元とはそういうコトらしい。
 我々の上にある高次の存在なんかじゃなくて「むずがゆさ」とか「生臭さ」とか、そういう要素かもしれない。いや、だから考えるだけ無駄なんだけど。

 とにかく、10次元まである。そうでないと計算が合わないから、ある。
 何があるかは問題じゃなくて、10次元まであるはずと考えるコトが大事ってことなんだよね。

 


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でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


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