お客は時に味方、時に敵 ~依頼者との戦い編05:逆襲

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お客様からのメール/その7

うるのさま

大変遅くなりました。本当にすみません。
以下、よろしくお願いいたします。

今日、「マンガパンフレット打ち合わせ会」をしました。
数点、議題が出ました。

■「1」
社員向けのパンフは、基本的にうるのさんが作ってくださったものでいく。台詞等の修正依頼はのちほどワード添付でお送りする。

■「2」
社長向けのパンフは登場人物の変更と、内容の表現方法の変更をお願いする。現在の案は社長に向かって、若い女性社員が説明している形になっている。実際のところ、新しいことについて、社長は若い女性社員の話に耳を傾けるだろうか。

■「3」
「打ち合わせ会」で出た案(社長向けの物)

1)
新しいことを始める時に、社長が耳を傾けるであろう相手は「×××・×××」等の先生職。

2)
決算の準備のときには、社長と先生は打ち合わせをする。今日は決算前で、先生が来社されている。

3)
社長の疑問:「人数」も「給料」も増えていないのに、社会保険料は毎年上がっている。なぜだろう。今後の見通しはどうなるのだろう。上昇率はどこまで上がるのだろう。いつまで上がるのだろう。節税の方法は、お陰さまで、すでに先生からいろいろ教えて頂いたので実行済み。社会保険料には軽減策など、ないのだろうか。

4)
先生からこの「××××××」を活用した「×××××制度」の説明を聞く。

5)
社長の気づき:これって、早く始めないと損であること。できるだけ多くの社員が参加して、できるだけ多くの積み立てをしてくれることが会社のメリットを大きくすることである。それは、取りも直さず、社員・役員の年金を豊かにすることである。

6)
問い合わせの連絡を×××××に対して1.先生に頼む。2.自分でする。

7)
「4」の内容の中に「×××××制度」を導入する手順を含める。(事前申請、本申請、それぞれに必要な書類の取り揃え依頼を含む)
導入基本方針策定 → 運営管理機関の選定 → 制度詳細設計(DC規約作成、商品選択) → 労使合意 → 規程類作成・変更 → 厚労省への申請 → 従業員などへの制度説明(××選択・運用・投資教育を含む) →××拠出(社員・役員が選択した××を会社が管理機関に拠出)→ 毎月の××管理・運営業務期間導入基本方針策定を始めてから××拠出に至るまで、おおむね×か月かかる。最短でうまく行ったとして、3ヶ月で始められる。
(「7」の内容は上記のような手順ですが、こんなにめんどくさいことをだらだら書く必要はないです。ただ、相当面倒な作業をやり続けていくというニュアンスが感じられればいいと思います。)

8)
今までは「7」の業務をこなすことができるのは、おおむね大企業であった。しかし平成20年より、企業(前提条件は××××適用事業所である)が希望すれば、企業規模にかかわりなく加入できる制度(×××××総合企業型××)がスタートした。
一連の申請、管理業務を行える体制が、代表企業である×××××により確立した。
専門家がアドバイザーとなり、導入希望の会社(事業所)から業務委託を受け、導入後も社員・役員のサポートを含め継続的にサポートさせていただく体制が出来上がっている。
業務委託費用は、制度活用により軽減された××××××の一部で賄うことができる。新たな費用の発生ではない。

■「4」 今後のスケジュールについて

1)
うるのさんが5月中に納品を完了なさりたい旨、○○から聞いた。

2)
基本的に×××××の「パンフレット打ち合わせ会」は火曜日。

3)
5月8日(金)までに×××××内の依頼内容をFIXして11日(月)までにうるのさんに送信。

4)
5月19日(月)までに第1版製作分をうるのさんから受信して、内容を確認し、返信したい。

5)
5月26日(月)までに第2版製作分をうるのさんから受信して、内容を確認し、返信したい。

6)
5月29日(金)までに最終確認のやり取りをしたい。

7)
5月31日(日)には完成品を納品いただきたい。

■「5」 お支払方法のご指示を頂きたい。

「パンフ打ち合わせ会」の内容は上記のようなものでした。
こんな感じでいかがでしょうか。

今後ともよろしくお願申し上げます。

(以下、書名)

 

お客様からのメール/その8

うるのさま

またまたごめんなさい。

■「4」のスケジュールの曜日が間違えていました。
正しくは

1)
うるのさんが5月中に納品を完了なさりたい旨、○○から聞いた。

2)
基本的に×××××の「パンフレット打ち合わせ会」は火曜日。

3)
5月8日(金)までに×××××内の依頼内容をFIXして12日(火)までにうるのさんに送信。

4)
5月19日(火)までに第1版製作分をうるのさんから受信して、内容を確認し、返信したい。

5)
5月26日(火)までに第2版製作分をうるのさんから受信して、内容を確認し、返信したい。

6)
5月29日(金)までに最終確認のやり取りをしたい。

7)
5月31日(日)には完成品を納品いただきたい。

です。すみませんでした。

(以下、書名)

 

「お客様からのメール/その7〜8」補足解説

 どわぁああああ!
 来たよ来たよ、すげぇのが。

 いや、ここまで書いてあるメールが来るってのは珍しい。
 もう要件を伝えるとかじゃなくて、社内会議の議事録をそのまんま送ってきたって感じだもんね。

 でも、こういうのってありがたい。

 いや、こんだけ課題があるってのは面倒だけど、これだけ詳しく送ってくれるというのは、ボクを社内会議に準じるレベルの相手と思ってくれているってコトだから。勝手に判断しないでボクに投げて、意見を求めている。それだけ頼りにしてくれているってコトなんだ。

 ただ、ここに書かれていることに、そのまま従えばいいってモンでもない。

 こちとらプロだ。プロであることを期待されているんだ。
 だからプロとして意見しなきゃならない。その意見を汲んでもらうために、ここまでアレコレ苦心して関係を作ってきたんだ。

 本当の戦いはこれからだ。

 

うるのメール/その7

うるのです。

ご要望を理解して、ご返信を書くのに1日、お待たせしてしまいました。

> 「1」 社員向けの物は、基本的にうるのさんが作って
> くださったものでいく。
> 台詞等の修正依頼はのちほどワード添付でお送りする。

了解です。
では、こっちは、どんどん作画を進めていくことにします。
セリフ修正程度なら、作画工程を進めても対応できますから。

> 「2」 社長向けの物は登場人物の変更と、内容の表現方法の
> 変更をお願いする。

> 新しいことを始める時に、社長が耳を傾けるであろう相手は、
> 「×××・×××」等の先生職。
> 決算の準備のときには、社長と先生は打ち合わせをする。
> 今日は決算前で、先生が来社されている。

では、そういうニュアンスでシナリオを修正してみます。
ただ、文章では「今日は決算前で、先生が来社されている」と一言で済む事でも、マンガとなると、その説明のコマにも一定の紙面を裂く事になります。
下手にナレーションで状況説明などを入れると、マンガの読み出しとしての「興を削ぐ」ことにもつながり、それは広報効果を引き下げる危険もありますし。

かといって、限られた紙面を状況説明に使い過ぎると、必要な情報を盛り込めないといった弊害が出る可能性もあります。
今回は4ページずつと、ページ数も少ないですし、それに対して情報密度は高いわけで、ここは工夫が必要なトコロでしょう。
うまくアレンジして、自然な会話の中で状況を理解させるように構成したいと思いますので、数日、宿題とさせてください。

※後述しますが、5月11日(月)の夜に改定案をお送りしたいと考えています。

> 「人数」も「給料」も増えていないのに、社会保険料は毎年
> 上がっている。
> なぜだろう。今後の見通しはどうなるのだろう。
(中略)
> 先生からこの「××××××」を活用した
> 「×××××制度」の説明を聞く。

これは、社長様が考えてくださった構成案ということですね。
基本的なプロットは、これでいいと思いますので、この案に基づいてシナリオを直し、再提出させていただきます。

> 「×××××制度」を導入する手順を含める。
> (事前申請、本申請、それぞれに必要な書類の取り揃え依頼を含む)

> 上記のような手順ですが、こんなにめんどくさいことをだらだら
> 書く必要はないです。ただ、相当面倒な作業をやり続けていくと
> いうニュアンスが感じられればいいと思います。

この手順をマンガの中に組み込んで4ページにおさめるのは、実際、無理だと思います。ですが、このマンガをパンフレット形式で印刷されるのであれば、表紙等を含めて、実際には8ページ以上あるはず。
(印刷物は4の倍数になるから、マンガ4ページ+表紙で5ページということは、最低でも8ページとなる)

とすると、3ページ余ってるはずですよね?ならば、

1)表紙
2)×××××の案内
3)マンガ1ページ目
4)マンガ2ページ目
5)マンガ3ページ目
6)マンガ4ページ目
7)制度の導入手順
8)表4(注意書きなど含む)

といった構成にまとめられるでしょう。
そして「7)制度の導入手順」の部分に、4コマ程度のマンガを組み入れて、

> 面倒な作業をやり続けていくというニュアンス

を表現するのが適当だと思います。

> ・・・業務をこなすことができるのは、おおむね大企業であった。
> しかし平成20年より、企業(前提条件は××××適用事業所である)
> が希望すれば、企業規模にかかわりなく加入できる制度(×××××
> 総合企業型××)がスタートした。
>
> 一連の申請、管理業務を行える体制が、代表企業である
> ×××××により確立した。

こうした部分は、
「2)×××××の案内」で前提事項として紹介しておくほうがいいでしょう。

> 「4」 今後のスケジュールについて
> うるのさんが5月中に納品を完了なさりたい旨、○○から聞いた。

ま、コレはできれば・・・ですけど。
急いで品質を落としては何の意味もないですから、じっくりやるべきことはじっくりやって、それで5月中に出来上がればいいな、というだけのことです。

以下、ご連絡いただいた内容を元にスケジュールを組んでみました。

5月11日(月):「2・社長編」改定案提出
5月13日(水):「1・社員編」作画開始
5月15日(金):「1・社員編」作画完了→着色工程へ
5月20日(水):「1・社員編」完成
5月21日(木):「2・社長編」作画開始
5月25日(月):「2・社長編」作画完了→着色工程へ
5月29日(金):「2・社長編」完成→すべて納品へ

大雑把ですが、他社の仕事も同時進行で動いているので、これくらいのスケジュールになると思います。表紙用のイラストや、付属4コママンガなどは、この合間に詰め込んでしまおうという感じですね。
(具体的にどの日、ではなくて、そういう余力のある日に)

ただ、構成の見直しで手間取ったりすると、このスケジュールは崩れてしまうため、余裕のないものになってしまっているとは言えます。
後述する「編集工程」をどうするかといった問題もあるはずで、当社としては月内納品したいところだけれど、御社にとっては、それほどメリットのあることとも思えないわけで、無理して月内にこだわるのは正しくないとは思います。

> 「5」 お支払方法のご指示を頂きたい。

納品とともにご請求書をお送りしますので、できれば翌月末までに指定口座にお振込いただければ、ありがたいです。お支払いの関係上、翌々月末になるといった場合は、事前にご説明いただければ、それでも大丈夫です。

釈迦に説法そのものですけど、当社のような小規模事業主にとって、キャッシュフローはもっとも重要な事です。
入金予定は早い程ラクなわけで、それで月内に納品しておきたいな、と考えているわけですが、もしも納品の翌月末でお支払いが可能なのであれば、当方は翌々月末まで待ってもいいわけですから、当社にとっても今月納品と来月納品は同じ、ということになります。
ダラダラ長引かせるのはよくないことなので、できるだけ早期に完成~納品を考えますが、イイモノに仕上げるために必要な時間を削ってまで急ぐと、あとで後悔することにもなります。
こちらの正直な考えも含めて御説明させていただきましたが、いずれにせよ御社にとってベストなスケジュールを優先して検討してください。

■追記
なお、先にもちょっと触れましたけど、マンガのパンフだからとはいえ、マンガだけで全部が出来上がるわけではありません。表紙も含めて、ある程度の「編集工程」が必要になります。
「制度の導入手順」にしても、流れ図のようなものは必要でしょうし、一定の解説文、注意書きなども盛り込む事になるはずで、それらのレイアウト・デザインも絡んできます。
マンガそのものは漫画家だけで完成しますが、「マンガ冊子」は編集工程がないと出来上がらないわけです。
今回のオーダーでは、マンガ部分だけに絞り込んでいて、そうした部分はカウントしておりませんが、実際のカタチにするには、必須の工程ではあります。
広告代理店様などからのオーダーなら、そうした「編集部分」は代理店サイドで企画・構成するので、マンガだけを担当すればいいのですが、今回そのあたりがどうなっているのか気になるところです。

実は、最初から気になってはいたのですが、マンガの注文でしたから「へぇ?デザインや編集は自分たちでできるの?」などと聞くのも失礼かと思い、遠慮していたんです。実際、できあがったパンフ類もあるのだから、ご自身でやれるか、いずれかの制作会社のつてがあるのでしょうし。
ただ「制作会社のつてがある」場合は、普通、その制作会社を通じてオーダーが来るもので、直接のオーダーの場合は「編集をどうするのか決めていない」あるいは「その工程を見落としている」ことも多く、どこかのタイミングで確認するようにしています)

当社では、マンガ部門とデザイン部門は別々の担当者になっていますから、上記工程と平行して編集工程を進めていくことが可能です。
もしも、編集部分が未確定であるなら、そうした部分も含めて対応させていただくこともできます。ご検討ください。

ウチは「基本的に個人事務所」なので、料金的にも無理のない範囲に調整はできると思います。
ウチは「依頼を受けて仕事する」という形式なので、こっちから売り込みするのは不得意(マンガは制作物ではなく「創作物」なので、業者の売り込みではなくお客様自身が自主的に選んだことでないと、上手くいかないことが多いため、こちらからの売込はしない)なのですが、今回のような場合だと、やってあげられることがあるなら言っておいたほうがいいと思いますので、一応、付記させていただきました。

なお、パンフ全体を担当する場合は、完全印刷データとしてCD-Rでの納品となります。印刷業者向けの「解説」、見本のプリントも付属しますので、そのまま印刷会社にCD-Rをお渡しいただければ、印刷できるはずです。
(そういう形での納品はしょっちゅう、やってますから)

また、印刷会社への発注自体も代行してほしいという場合も対応します。これは納品の別形態と考えているので、代行料金の請求等は一切発生しません。

ただし、印刷会社へのご発注やお支払いは、御社から直接行ってください。当社は、印刷会社に適切な形で印刷データを渡し、業務上の説明を行ったり、不備が起こった時に対応したりしますが、支払い代行等は行いません。
ウチみたいな小規模事業主は、印刷までを代行して、わずかばかりのマージンをもらうより、印刷会社への支払い責任を負わずに済む事のほうがメリットが大きいんです。お客様も余計なお金を払わずに済みますし。
(漫画家も職人の一種、自分の腕で作り出したお金以外には執着しないほうが商売はラクなんです)

(以下、書名)

 

「うるのメール/その7」補足解説

 先方の、質量の大きなメールに対して、こちらも大質量で返す……というわけではないのだけど、このメールは長くなった。
 フィニッシュのスケジュールが具体的になってきて、ここまでは触れずにいたアレコレにも、そろそろ気を遣ったほうがいいと思えたからだ。

 本文中に書いているけれど、漫画を描くだけで冊子は作れない。
 どうしても編集とかデザインとか版下制作(DTP)といった工程が必須になる。

 お客は「漫画を描いて」と言ってくるけど、それは漫画を描きさえすればOKということじゃないのだ。
 出来上がった漫画を世の中に見せるところまで考えて、ダンドリもして、ようやく「漫画を描いた」ことになる。
 このへんが漫画出版社で描くのと決定的に違う部分だよね。

 なお、メール文中で「印刷所への入稿はコチラでやるけど、発注や支払いはそちらでやって」といったコトを書いている。
 これは他のオーダーでもいつも同じ。

 今どきはネットで格安印刷なんてのが広く知れ渡っていて、印刷費にマージンなんかほとんど乗っけられない。
 つまり印刷・納品まで全部を請け負ったとしても、その印刷部分では儲けなんか出ないに等しいのだ。

 にも関わらず、ウチで印刷までを代行していたら、印刷所への支払いもウチでやらなきゃならない。
 入金してからの支払いなら問題ないけど、そうでない場合は、入金が遅れる可能性だってあるから、資金的に余裕がないとおっかないんだ。

 そんなリスクを背負ってまで請け負うほど儲からないのだから、印刷までは背負いたくないんだよね。
 なので「入稿はしてあげるけど印刷ごとの請負はしない」ってルールにしているの。

 印刷入稿に関してはね、お客にデータ納品する場合でも、印刷所に入稿する場合でも手間は一緒……いや、印刷所のほうがラクなくらいだから問題はない。

 一般企業を相手にする以上、印刷に関しても相手は素人だから、マトモなデータ入稿なんか出来ないんだよ。
 そういう人でも入稿できるように色々整えてあげなきゃならないわけで、それならお互いに分かってる同士の印刷所に直接データ送ったほうがラクなわけ(客にデータ納品する際には、別途「印刷所への指示書」を添付している)。

 

(「依頼者との戦い編06:乱戦」へ→)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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