広告漫画家物語19:カソクキッズ/その2

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踏み込んだからには遠慮しない!

 カソクキッズ(に限らず、ウチの作品のほとんど)は、科学監修してくれているKEKの人たちを除くと、ボク自身を含む3人で描いている。

 WEBコーディングの部分をカミサンがやってくれているから、完成・納品までの全工程で考えると4人なんだけど、漫画自体は3人。
 スタッフ2人がキャラクター(作画担当と着色担当)を描き、ソレ以外の全部をボクがやる。

 ネームだけは作画担当と共同の時も多いかな。

 脚本を渡してネーム化してもらって、ソレを受け取ってボクがもう一度、レイアウトし直しながら実際のネームにまとめていくの。
 ものすごく情報量の多い漫画なので、キャラの位置、フキダシの位置なども、ほとんどドット単位で調整していかないとダメなのよ。

 で、それだけやっても、付けられている予算から計算するとギャラは1人分にしかならない。
「他の仕事」で補って、ようやく2人分。
 どうやってもボク自身はノーギャラになっちゃう。
 普通の連載作家がアシ代と経費で原稿料がなくなっちゃうのと一緒だよな。

 でも、そうだからこそ作品自体の権利のほとんどがボクに帰属する形で了承を得られた。
 KEKあっての作品ではあるから、作者の好き勝手にしていいわけじゃないけど、出版などの権利はボクにある。

 なら、いつか出版して、そのときに取り返せばいいんだ。
 これまた普通の漫画と同じだ。

 つまりカソクキッズは相手が出版社じゃないというだけで、普通のオリジナル作品なんだ。
 実際、どんな題材を取り上げるか、どう描くかなどの全部をボクに任せてもらっているし、劇中に挿入される科学解説のコラムでさえ、ボクが自分で書いているんだから。

 これは間違いなくボク自身の作品だ。

 ボクはそう考えることにした。そのためにも、いい作品にしなきゃ。
 開き直ったからには遠慮はしない。
 躊躇もしない。

 そういうわけで、この3話目では漫画のキャラとして小林博士ご本人に登場していただくことにした。

 描いて、仕上げた原稿を持って、博士の講演会場に乗り込んで、ご本人に見てもらった。

 もうドキドキである。

 相手はノーベル物理学賞を受賞した世界的権威。
 こっちはアホで無名なギャグ漫画家。
 小林博士のコトもイジってる。
 無茶なコトもバカなこともさせている。

 ふざけるなと怒られたらどうしよう。

 でも、小林博士は快く了承してくれた。

 カソクキッズに登場する唯一の実在の人物。
 いや、この場合もご本人のお名前を使わせてもらってるだけで、実在の小林博士とは全然違うんだけどね。

後にカソクキッズ1stシーズンの1〜3章が再編集されて学研から発売されたときには、小林誠博士がオビに推薦文を書いてくださった。お礼を兼ねて研究室にお邪魔した際には、本にサインもしてもらった。その本は永遠に我が家の宝だ。自分がノーベル賞学者に推薦してもらうなんて、ほんの数年前までは一瞬も想像してなかったよ。人生って本当に先がわからないもんだよなぁ(笑)。

 

大ピンチ!続けたいけど続けられない……

 こうしてボクたちは、採算もナニも考えずに、自分たちの描きたい漫画を描き続けていくことになった。

 でも……。

「他の仕事で稼いで穴埋め」とか思ってたけど、そんなに世の中甘くなくて、連載の半ばを過ぎた辺りで、とうとう継続が無理になった。

 何とかするつもりで他の仕事も頑張っていたんだけど、大口と言っていい取引先が2件も立て続けに倒産しちゃって、数百万ものギャラが「事実上回収不能」になっちゃったんだ。

 他の仕事で補うというやり方だと、当然ながら収支は歪む。
 他の仕事への依存が膨らんでしまう。

 そういう状態で、他の仕事自体が足りなくなってしまった。

 娘の学資のために貯めていたお金まで使い込んだ。
 それでも足りない。

 KEKに頼るわけにもいかない。
 年間数百億もの予算を回してもらっている研究機関ではあるけど、それは研究のためなんだ。
 広報費はいつもギリギリ。

 それをわかった上で、ボクが勝手に踏み込んでやってきたこと。
 結果として予算以上の成果を上げているとは思うけど、それでも勝手にやってることには違いない。
 こうした組織で勝手を認めてもらえただけでも特例中の特例だろう。
 それなのに、上手くいかなくなったからケツを拭いてくれなどと言えるわけがない。

 ボク自身は、自分で決めて踏み込んだのだからいい。
 でもスタッフにまで同じことを求めるのは間違っている。
 働いた分を支払うのは当たり前。

 けど、払えない。足りない。

 2年間、頑張ってきた。だから連載は続けたい。

 でも、打つ手がなかった。

 2010年3月。17話目、第3章最後のエピソードを描いた。

 この後、5章まである予定だけど、それは無理だろうと思った。

 だから、ここで最終回にできるように描いた。

 どうせ全ての謎を解き明かしてスッキリ最終回というわけにはいかないんだもんな。
 専門の研究者にもわからない謎が無限に続いているんだから。
 物語は必ず「オレたちの戦いはこれからだ!」で終わることになるんだ。

 だったら、ここで終わっても大丈夫だろ。
 いや大丈夫じゃないけど、仕方ないだろ。
 どうしようもないんだから。

 そして、完成・納品と共に、一時休載を申し出た。
 本当は休載どころか再開できるメドがない状態だけど、とりあえずは休載。

 事情も説明した。
 了承してもらえたけど、これで終わったと思った。

 そしてスタッフ二人と話し合った。
 今までずっと二人にギャラを払ってきたけど、今後当分の間は払えそうにない。
 払えないのに仕事させるわけにはいかない。だから終わりにするしかない。
 終わりたくないけど、袋小路だったんだ。

 

またしても……集まる元気玉!!

 それでも本当には、あきらめきれなかった。

 ボクにとってもそうだけど、スタッフ二人にとってもカソクキッズは特別な作品だったんだ。

 二人は最初からカップルで、地方から上京してきて、同棲しながらウチに転がり込んで、広告漫画を学び始めた。
 そういう右も左もわからない二人に、ボクはぶっつけ本番でカソクキッズを担当させた。

 彼らはカソクキッズを描くことで成長してきた。
 他の広告漫画の作画もやってもらっていたけれど、カソクキッズが一番手ごたえを感じている作品であり、気持ちを込めている作品でもあったはずだ。
 彼らにとっても仕事というだけじゃなくて「自分たちの作品」だったハズだ。

 ノーギャラでも続けたい。

 そんなことは、よくわかっている。ボクだってそうだったんだから。

 でも、ボクがそれを求めるコトはできない。
 いくらチームで描いていても、ボクが踏み込んだのはボクの決断だ。
 同じ覚悟を要求してはいけないと思う。
 自分の価値観や覚悟を周囲にも押し付ける。
 それをブラック企業と呼ぶのだと思う。

 けれど、彼らは自ら踏み込んできた。

 バイトをする。バイトして一人分は自分で補う。

 バイトする以上、今まで通りには通えなくなるけど、仕事が終わったら駆けつける。
 家でもやれる。だから一人分だけ、今までの半分だけ何とかして。

 そういう提案をしてくれたんだ。

 何とかなるかどうか、微妙だった。
 大口のダブル倒産という大ダメージで傷ついちゃっている以上、本当なら不採算部門を閉じて回復に努めなきゃいけない時なんだ。
 現状が不採算でも将来のために取り組むべき仕事というのはあるけど、瀕死の重傷のときは回復優先にシフトすべきなんだ。

 それでも、そういうことを言ってくれるスタッフがありがたかった。

 こんないいスタッフがいるのなら、何とかならないか。
 ボクだってやめたくない。描き切った、やりきったと思えるまで続けたい。

 そう思っていたら、KEK側からも助け船を出してくれた。
 カソクキッズのギャラを、ちょっとだけ見直してくれたんだ。

 普通なら、途中で契約条件が変わったりしない(というよりも出来ない)のだけど、この頃には様々な広報物やイベントで、カソクキッズは広く使われるようになり始めていて、ファンも増えてきて、KEK側でも手ごたえを感じてくれていたんだよね。
 そういうのもあって、上層部に予算の見直しを了承してもらえたらしい。

 また、元気玉だ。
 みんなが支えようとしてくれる。

 実はそれでも足りなかったんだけど、これだけのパワーをもらったら、後はボクの気力の問題だと思った。
 きっとやれる。乗り切れる。そう信じる。

 こうして3ヶ月の休載を経て、カソクキッズ第4章が再開されたんだ。

 

資金難、震災を乗り越えてたどり着いた最終回

 再開された第4章はSFだ。

 最初の頃から、そういうコトをやりたいと思っていた。
 でもコレは本物の研究機関のコンテンツだし、無茶なコトはできないだろうなぁと諦めていた。

 だから4章も、今までと同じような内容で描いていくつもりでいたんだけど、今回のコトでさらに腹を据えられたので、やってみたいと思ってたコトを全部出すことにしたんだ。

 NGになっちゃったら仕方ない。
 でも、ネーム出してみたらOKもらえるかもしれないんだから、やっちゃえ、と。

 そしたら、ほとんど何のツッコミもなくOKがもらえて「科学的に正しくない設定の科学的に正しい漫画」を描けてしまった。
 う~ん、何でもやってみるもんだなぁ。

 そうして、さらに1年、連載は続いた。

 当初の予定では20話。
 総ページ数でも80ページに過ぎないはずだった。

 だけど終わってみれば30話。
 総ページ数は400ページに達していた。

 途中には東日本大震災もあった。

 その後の報道で、あまり被災地扱いされなかったけれど、茨城も大きな被害を受け、あちこちが崩れ、電気や水が止まった。
 KEKも被害を受け、インターネット・サーバーも止まり、カソクキッズのWEBデータは消失し、約2週間、連絡すらつかなかった。
 東海村にあるKEKの関連機関「J-PARC」では、液状化で大きな陥没が起きたり、一部の加速器施設が水没したりもした。

 その間、ボクらは漫画を描き続けた。
 描いても公開できないかもしれない。
 それどころか、当分復旧できず、このまま終わってしまうのかもしれない。

 それでも描く。
 何があっても、今だけは描かずにいられない。

 震災なんかに負けたくない。こういうときこそ描かなきゃ。
 いざとなったら自分でサーバー立ち上げてでも公開してやる。
 いつも通りに公開する。日常を守る。
 ボクらは何も変わらないと示してみせる。

 特に、このときに描いていたエピソードは、科学研究の意義を題材にしたお話だった。

 先代から次代へ。受け継がれるもの。
 そうして集まった知識が「人類のコア」として、全ての人が共有できる知財になっていく。
 科学に国境はない。例え子供でも、全ての人がコアの一部なんだ。
 そういうたくさんの想いの上に今があり、それは未来に託されていく。

 いつかのために、誰かのために。
 それがボクが見出した科学研究の意義だ。

 たまたま偶然だけど、そんなお話を描いているときに震災が起きたんだ。
 ね、今こそコレを語らないでどうする!?って思っちゃうでしょ。

 なお、そうした気持ちが強かったのには、スタッフ二人が被災地出身だったこともある。

 一人は宮城県白石出身。
 もう一人は宮城県石巻。

 どちらも大きな被害を受けている。
 特に石巻は津波に襲われて大変なコトになっていて、故郷の家族や友人の安否もわからない状況だった。

 その不安に耐えて、ボクらは描いた。
 きっと無事だ。ニュースで流れる被災者リストにも名前なんか出て来ない。
 なら無事なはずだ。
 だったら描いて、いつも通りに公開して、こちらが無事なことを伝えるんだ。

 ボクはそう思っていた。

 幸いにして公開予定日よりも早く家族の無事が確認できて、KEKとも連絡がついた。
 カソクキッズのWEBデータは、ボクが持っているバックアップを渡して復旧させた。

 そして予定通りに公開できたんだ。

 

 この3ヶ月後にカソクキッズ・ファーストシーズンは最終回を迎えた。

 全30話。
 もっとも最後の話は番外編のオマケみたいなモンだから、実質的な最終回は29話。

 KEKと出会ってから、足掛け4年。
 連載開始からでも約3年。

 その第1話を描いたときから、決まっていた最終回。
 頭の中に最初からあったラストシーン。

 その通りに描けた。
 紆余曲折しながらも、ようやく描き切れた。

 本当に感慨無量だったよ。

 

雌伏と準備を経てセカンドシーズンへ

 その後、1年間の休載を経て、セカンドシーズンが再開される。

 セカンドシーズンのことは、先の最終回の時点で匂わせていた。
 KEKのカソクキッズ保護者会でも、そういう声が出ていたからね。

 ただ、実際にやれるかどうかは不明で、やるにしても何をどうやるかも決まっていなかったから「可能性はあるけど本当のところは誰にもわからない」だったんだけどね。

 でも、その1年の間にボクらは、できる限りの準備をした。

 やるなら、途中で根を上げないだけの力をつけよう。
 予算が潤沢じゃないことはよくわかってるんだから、それをあえてやるからには、やり抜けるだけの力がいるんだ。
 情熱だけでは足りない。実際に体力をつけなきゃならない。

 そう思ってがむしゃらに仕事をして、さらに効率の良い描き方、体制づくり、資金づくりなどを進めていった。

 セカンドシーズンが再開されれば、前回と同程度もしくはそれ以上のボリュームと期間でやることになるはず。
 それを乗り切るだけの覚悟と力がいるんだ。

 なので、満を持して再開できたんだよ。

 このときの経験で、ボクらはさらに効率良く作品を作れるようになった。
 上手くなったというよりも、さらに採算とのバランスが取りやすい制作方法に近づけたという感じだね。

 質的にはむしろ向上していて、でも採算性は前よりちょっとだけいい。
 まさに企業努力ってヤツだよね(笑)。

 そんなセカンドシーズンのスタートは、2012年の9月末。

 その2ヶ月前に、欧州CERNの加速器で「ヒッグス粒子と思われる新粒子(後にヒッグス粒子と確定するが、この時点では確定していなかった)」が発見されて科学界隈が大いに賑わったから、8月に『カソクキッズ・ヒッグス特番』を描くことができて、そこでセカンドシーズン再開を予告することもできた。

 そして9月には、年に一度のKEK一般公開(オープンキャンパス)がある。
 連載を始めて以来、ボクは毎年顔を出していて、キッズの愛読者の方々と出会ったりして楽しい時間を過ごさせてもらっていた。

 その年の一般公開でも、小学生のお子さんに出会った。

 カソクキッズが大好きだと言ってくれた。
 でも連載が終わっちゃって寂しい、と。

 ボクは答えた。

 今日、お家に帰ったらカソクキッズのホームページを見てごらん。もう寂しくなくなるよ。

 そう言ったときの、その子の目は今でも忘れられない。
 これ以上ないっていうくらいにキラキラ輝いていた。

「本当!?スゴイ!お父さん、帰ったらすぐに見せて! スゴイよ!!」って大興奮してくれた。

 毎年、そういう誰かに出会える。
 最高のキラキラを見せてくれる。

 あまりお金にならなくても、それだけでボクは描いてよかった、続けてきてよかったと思う。

 ただの広報漫画じゃなく、ボク自身が描きたいように描いた作品。
 依頼者のためではなく、読者と自分自身のために描いた作品。
 そうした思いを依頼者たちも認めて、支えてくれた作品。

 それを読者が喜んで読んでくれたってことが、何よりも嬉しい。

 

楽しくて尊敬できる人々との仕事はサイコー!

 カソクキッズは広報作品として企画されたけれど、早い段階で広報というスケールを超えてしまった。
 保護者会の座長だった当時の広報室長は「21世紀の新しいカタチの科学の教科書をつくるプロジェクトだ」と言っていた。

 そういう高い志を持つ人たちに恵まれ、支えられ、それでいてボクに全てを任せてくれて自由に作品を描くことができたなんて、どれほど幸せなことか。

 監修の人たちは、本当に監修に徹してくれた。

 科学知識の部分をフォローしながらボクを導いてくれたけれど、決して作品そのものに手出ししようとはしなかった。
 頭ごなしにああしろ、こうしろと言うこともない。

 例え、科学情報の部分で間違っていたとしても、こう直せとは言わないんだ。

「この解釈はいかがなものか」と指摘する。
 そして「こういうふうに考えるんですよ」と教えてくれる。

 作品に対する直しじゃないの。ボク自身の間違いや勘違いを糺すだけ。
 その上で、どう直すべきかはボクに委ねられる。

 だから、博士の受け売りのままで描いた部分はない。
 ボク自身が理解できたこと、自分で解釈できたこと、それしか描いていない。

 こういう対応をしてくれたこと、それがスゴイんだ。

 相手は世界最高レベルの研究機関。
 例え漫画でも、オカしなコトは描けない。

 それなのに、その研究機関の専門分野のことを、何も知らない漫画家に委ねる。

 これ、普通は怖くてできないよ。
 ボクだって自分の漫画のペン入れを一度も漫画描いたことがないド素人にやらせるなんて無理だもん。

 どんなに猫の手でも借りたい状況でも、本当に猫に任せるのはオソロしすぎる。
 だけどソレを、カソクキッズ保護者会の博士たちはやった。

 ボクはそこを一番尊敬する。

 なんていう勇気なんだろう。
 なんていう辛抱強さなんだろう。

 自分でやったほうがラク。
 何度もそう思ったはずだ。

 それでも「専門家の視点」ではなく「素人の視点」を大事にしてくれて、決して手出しをせずに、バカなボクを見守り続けてくれた。

 なんせ解説の科学コラムまでボクが書いてたんだから。

 新聞などにカソクキッズが紹介されることが度々あったんだけど、ほとんどの記事では「研究者が書いた原作を元に漫画家が作画して……」と書かれていた。

 そういう記事を見る度に「いや、違うんだよ。原作なんかないの。何もかも物理万年赤点の一介の漫画家が書いてたんだよ」ってツッコミたくなったけど、まぁ、仕方ないよなぁ。そんなコトはあり得ないと思われて当然だもんなぁ。

 科学コラムであろうと、漫画の中に組み込まれるからには漫画の一部。

 そう考えて、決して取り上げず、ボクに教え続けてくれた。
 解説コラムを書けるほどになるまで、何度でも、いつまでも。

 あの人たちが監修者でなかったら、カソクキッズは成功しなかっただろうし、今とは全く別なモノになっていたハズだ。

 心の底から感謝したい。

 そして、何より楽しかった。

 科学の話もコーフンものだったけど、脱線トークも楽しい。

 ホワイトボードがわけのわからない数式で埋まっていく。
 ボクにはウルトラサインにしか見えない。ゴルゴダの星に集まれって書いてあるんでしょ?
 そんなボケに「うん、まぁそんなモノです」と軽く返してきたりする。

 ガンダムも、エヴァンゲリヲンも、ナデシコも、トップをねらえ!も、涼宮ハルヒも出てくる。
 攻殻機動隊も、ガオガイガーも、イデオンも、ムーミンも出てくる。仮面ライダーも、ウルトラマンも、容疑者Xの献身も、天使と悪魔も出てくる。寄生獣も、2001夜物語も、宇宙戦艦ヤマトも、竜の卵も出てくる。

 ツクバがアキバになっちゃう。それでも語っているのはガチの本物の研究者たちなのだ。
 様々な分野の研究者が大勢集まって、ボク一人のために、色んな意味で濃い特別授業をしてくれる。それも毎月、何時間も。

 こんな体験したヤツ、人類に何人いるんだ?

 どんな売れっ子漫画家だって、これほどの経験はしていないはずだ。
 これを楽しまないなんて許されん。
 どんだけサイコーなんだ。
 ギャラが足りないどころか、カネを払ってでもやりたいに決まってるじゃないか。

 

カソクキッズは終わらない

 そういう日々を、ボクは8年以上も続けることができた。

 もちろん、続けられたのは運だけじゃない。
 ボク自身にも、自負がある。

 ボクが広告漫画家でなかったら、カソクキッズは生まれなかったと思っている。

 編集者、広報企画者、デザイナー、漫画家が融合した変異体じゃなかったら描けなかった。
 企画を進めることさえ出来なかったはずだ。

 作品を世に出すところまでワンストップでプロデュースできて、出した先での動きまで予測して対策や対応を考える。
 そうでない限り、それぞれの専門家を集めなきゃ同じことはできない。

 そして、それだけの人員を集めれば大きなコストになってしまって、やはり実現不能な絵空事になってしまっただろう。
 最小単位で色々やれなければ、こんな企画は成り立たない。

 カソクキッズは広告漫画の枠を遥かに飛び越えた作品だけど、その土台には、やっぱり広告漫画があるんだ。

 ボクが経験してきたこと、身に付けてきたこと。

 その全部があってこそ、プロジェクトとして成立した。
 だから、カソクキッズはボクらの誇りでもある。

 そして、特別な体験をさせてもらったことに対する責任もあると思っている。

 仕事とはいえ、誰も体験できないようなコトを体験できた。
 それは大勢の代理として、体験させてもらったんだと思うんだ。

 ならば、自分が学んだこと、体験したことを伝えていかなきゃいけない。
 ボクが楽しんだだけで終わってしまってはならないと思う。

 セカンドシーズンのラストは、主人公たちが本物の研究者を目指して「キッズ」を卒業していくエピソードだ。
 これで本当に完結のように描いた。

 だけど、ボクはそこを終わりと考えていない。
 むしろ、ここから本当のカソクキッズが始まるのだと思っている。

 これまでに学んだこと、覚えたこと。
 それを生かして、もう一度描く。

 何も知らなくて先が見えず、何と何が関連するのかも判断できずに、いわば行き当たりばったりで描いていたモノを、しっかり整理し直して、新しくスタートさせたい。
 そのためにキッズたちに卒業してもらったんだ。

 ここまでは序章。
 本当の「21世紀の教科書」を生み出すための序章。

 そういうモノを作れるようになるために、8年の時間が必要だったんだと、ボクは思っている。

 だから本番はこれからなんだ。

 とはいえ、実際にサードシーズンを描かせてもらえるかどうかは、今(2018年4月現在)の時点では不明だ。
 今後もKEKが同様の取り組みを続けるとしても、ボクではない誰かに委ねられる可能性は小さくない。
 個々人の気持ちがどうであれ、組織としては同じ人にずっと任せるわけにはいかないってことも考えられるからね。

 でもボクは、それならそれでいいと思う。

 今まで、たっぷりと支えてもらったんだ。

 この先は自分で歩く。
 そういうこともできるはずだと思っている。
 発表の場は、いくらでもあるはずだし。

 これからも、何かのカタチでカソクキッズは続く。続けていこうと思っている。

 広告まんが道の先に、こんなやりがいのある世界が広がっていたことが嬉しい。

 

(「広告漫画家物語20」につづく→)

 


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でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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