カソクキッズ18話:キッズたち、宇宙の彼方へ!!

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科学的に正しくない設定の科学的に正しいギャグ漫画

 このファーストシーズン18話からの4章(全6話)は、かなり思い切ったことをやった。

 地球から遠く離れた宇宙のどこかに、舞台を移しちゃったのだ。

 いや、ずっと前からそうしたいと思っていた。
 主人公たちをもっと冒険させたい、話を聞いているだけじゃなくて体験させたいと。

 だけどカソクキッズは、世界的に名高いKEKの作品なのだ。
 非科学的なことを描くわけにはいかない。
 それで、ずっと我慢してきたの。

 けれど。

 この前の17話でボクは、あわや連載続行不能になるところだった。
 もうダメだと諦めかけて、それで17話で終わりかのようなラストシーンを描いてしまった。

 そこから立ち直った。
 大勢の人たちの理解と協力と熱意のおかげで。

 せっかく立ち直ったのだ。
 やりたいことを躊躇している場合か。
 このチャンスは、二度とないかもしれないのだ。
 遠慮や我慢してるときじゃない。
 もっと面白くできる、力を出せるというならやるべきだ。

 そう思って、無茶な設定をKEKに提案してみた。
 そしてOKをもらえた。

科学的に正しくない設定の科学的に正しいギャグ漫画」をやらせてもらえることになったのだ。

 

スペースコロニーと超光速航法

 この4章の舞台は、スペースコロニーKEK
 宇宙のどこかの恒星系。そのラグランジュ・ポイントに浮かぶドーナツ型のコロニー。

 ドーナツ型にしたのは、ジェラルド・オニールが提唱したシリンダー型にすると、あまりにもガンダムすぎてしまうから(笑)。
 なのでスタンフォード大学で考案されたと言われるドーナツ型(トーラス型)コロニーのほうを採用した。
 設定的にも実験用コロニーであって、居住用ほど大きくなくていいはずだし。

 KEKのコロニーだから、ドーナツの円周はそのまま円形加速器になっている設定なんだけど、この4章では結局加速器関連の話は扱えなかったので、考えたことの半分くらいはお蔵入りになってる。

 ドーナツは回転していて、その遠心力で1Gを生み出している。
 中心にはハブがあり、そこは無重力。ドーナツの外周とはスポークで繋がれている。

 冒頭で、主人公たちのシャトルが到着するシーンがあるけど、外周の一部にドッキングしてるんだよね。
 スタンフォード大が考えたコロニーでは、中心のハブ部分にスペースポートがあることになってるんだけど、絵的に描きにくいのと説明が面倒になっちゃうので、外周にしたの。コロニーの回転に沿って、追いかけるような形で接近し、レーザーなどで位置確認しながらドッキングするイメージで描いた。

 このシャトルはあくまでもコロニーに行くための連絡艇で、地球から飛んできたわけじゃない。
 恒星間飛行などは、もっと大きな、小さな町くらいはあるクルーズ宇宙船で移動しているはずだ。戦艦じゃないけど、マクロスみたいなもんだね。
 現代でも大型客船などは、本当に小さな町くらいあるんだもん。
 以前に、ハワイでクルーズしている豪華客船の紹介漫画を描いたことがあるんだけど、その船は「船橋ららぽーと」とほぼ同じ大きさだった。だから、何ヶ月もかけて恒星間飛行する大型宇宙船は、そのくらいはあるだろうとイメージしてるの。

 なお、いつの時代かは、全然わからない。
 大体いつ頃とかも考えていない。

 何十光年、何百光年も離れた宇宙まで人類が行けるようになるのがいつ頃かなんて、全く想像もつかないから。
 つ~か、光速を超えて移動できるようになること自体、今のところは不可能としか思えないことだから。

 いや、ちょっとはね、ワープについても調べたんだ。
 こうすればワープできるっていう、ちゃんと科学的な論文(仮説に過ぎないけど一応は科学的なやつ)も見つけた。

 でも、宇宙の全質量の何百倍だかに匹敵するエネルギーを、ものすごく小さな一点に集めてワープ泡を作れれば……とか書かれていて、こりゃあ無理なぁだと。

 だから本編中でも、ワープは無理だと。
 宇宙の彼方まで来ちゃってるのに、無理なものは無理だと言い張ることにした。
 堂々と非科学的(あくまでも現代の科学では)なんだと宣言した上で、科学的にやっていくという矛盾した道を選ぶことにしたのだ。

 

素粒子物理学者にタキオンはNG!

 興味深かったのは「タキオン」だな。

 『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲などで広く知られている仮想粒子タキオン。
 あらゆる物質は光速を超えることはできないけれど「最初から光速以上なら超えたことにはならない」という屁理屈みたいな理屈で考えられたタキオンは、今も未発見の仮想粒子だ。

 でも、非科学的なわけではない。ドイツの物理学者アルノルト・ゾンマーフェルトが最初に提唱し、その後、アメリカのジェラルド・ファインバーグなどによって「タキオン」と名付けられ、理論的にもまとめられている。
 発見されていないけれど、実在しても不思議じゃない……というか、たぶん実在する前提の粒子ではあるのだ。

 だけど。

 素粒子物理学者にとって「タキオンはNG」なんだって。
 タキオンが出てきちゃうような論文は、認められないんだって。

 宇宙のアレコレを考えていくと、ちょくちょくタキオンが出てきちゃうらしいんだけど、それはツブしていかなきゃいけないんだって。
 光速以上の世界があったとしても、こっちは光速以下の世界の存在だから、そんなもんは不可知になっちゃうんだって。

 うわ~~、そうだったのか!!

 色んなSFで「超光速といえばタキオン!」って感じで使われているし、それなりに科学的だと聞いていたからアリなんだろうと思ってたんだけど、ガチの研究者的にはダメだったんだな~~。

 とにかく、そんなわけで超光速での恒星間移動なんてのは、今のところは不可能と思うしかない。
 ワープも無理。タイムマシンも無理。

 ワープ航法ってのは、時間と空間を跳躍することだから、タイムマシンと同じことなんだ。
 光速以上で空間を移動できるのなら、時間だって飛び越えられるはずなのよ。

 でも、例えば過去への時間移動ができちゃうと、過去に干渉できるということになる。

 それができると因果律が狂ってしまう。「コップを倒したから、水がこぼれる」じゃなくて「水がこぼれたから、コップを倒す」というように、原因と結果が逆転してしまうことになるのだ。

 それはどう考えてもオカシイわけで、だからこそタイムマシンは無理だと考えられている。

 けれど、今は無理としか言えないからって、未来永劫に無理かどうかは誰もわからない。
 タイムマシンは不可能だと断言したホーキング博士でさえも「でも、本当に無理かどうかの賭けはしないよ」と言ってる。

 科学は進歩する。
 現在の科学では不可能としか言えないことも、未来では全く違うこともある。

 描いた時点でも、数年が過ぎた今でも、この「カソクキッズ:ファーストシーズン4章」は科学的に正しくないのだけど、いつか正しくなるかもしれない。かなり低い可能性だとしても、ゼロじゃない。

 そんなわけで、科学的根拠を示せない設定で、科学的に正しいことを描いていくという無茶をやることになったのだ。

 ややこしいけど、やりたかったことだもんね(笑)。

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。

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