小説版イバライガー/第16話:時空突破(後半)

2018年3月26日

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Bパート

 ガール、ミニブラック、ミニライガーたちを物陰に匿うと、シンとワカナは全力で走った。
 ダマクカラスンの言う通り、ブラックも限界のはずだ。凄まじい気力でそれを悟らせまいとしているのだろうが、長くは持つまい。
 最後の希望は『彼』だけだ。

「シィイイイン!! ワカナァアアアア!!」
 イモライガーだ。誰かをかついでいる。それが誰かは、わかっていた。

「あ……あああ……」
 ワカナが、崩れ落ちそうになったイモライガーから背中の『彼』を抱きとめた。

 初代イバライガー。

 「あの日」からいつもそばにいて、自分たちを見守ってくれた。二人とも兄のように慕っていた。
 失ったときには、涙の全てを流し尽くしたと思った。

 その彼が、戻ってきた。

 けれど、その姿は痛々しい。

 フェイスバイザーが引き裂かれている。片腕を失っている。右胸に大きな穴が空いていて、クロノ・スラスターの片方も吹き飛んでいる。
 最後に見た姿そのままだ。あのときから、彼の時間は止まっていたのだ。

「生きているのか!?」
「わ、わからないんだ。動かないんだよ!」
「ねぇ! 私よ! ワカナよ!! 起きて! 返事をして!!」

 いくら呼びかけても、反応はない。
 それでも、死ぬはずがないと、シンは信じていた。

 あのとき、オレ自身が言ったことだ。
 イバライガーは死なない。オレたちがいる限り、絶対に死なない。死なせない。
 オレが、オレたちが……。

 ハッとしてシンは立ち上がった。周囲を見回す。
 どこかに、まだいるはずだ。

「マーゴン、ワカナ。彼のそばにいてやってくれ。二人で彼に呼びかけ続けろ。感情エネルギーを注ぎ続けろ。オレは……」
「どうするつもり? 私たちの力じゃ四天王には通じないのよ?」
「わかってる。けど、1つだけ試してみたいことがあるんだ」

 


 周辺市民の退避は、うまくいったらしい。
 破壊は凄まじいが、人的被害は最小限に抑えられたはずだ。

 それでも、負けだった。
 PIASを使っても、あの女……ジャーク四天王には歯が立たなかった。

 ソウマは、指令車に呆然と寄りかかって、瓦礫と化した一帯を眺めていた。
 時折、激しい破壊音が聞こえてくる。球体は消えたが、まだ戦いは続いているらしい。
 禍々しい気配は、むしろ濃密になっているほどだ。危険は去らない。
 それでも、オレたちには、何もできない。

「ソウマ!!」
 シンだった。生きていたか。

「ダマクラカスンが復活した。イバライガーたちは、エネルギーを失って戦えない。このままじゃヤバイんだ!!」
「……だから何だ? オレたちに何ができる? お前らの足を引っ張る程度のことしかできまい。この戦いは、人間の力じゃ届かない……」
「だからって、このまま終わってたまるか! アレを貸せ。オレが行く」
「……ダメだ。NPLはともかく、ここではインナースーツを吹き付けられない。お前にアレは動かせない」
「うるせぇ! とにかく貸せ! 力ずくでも動かしてやる!!」

 シンは強引に司令車のカーゴに乗り込んだ。カプセルをこじ開け、半身を乗り出してスイッチを操作している。
 そんなことをしてもどうにもならない。足掻きたいなら足掻け。だが無駄だ。お前の言った通り、そいつは不完全なシロモノだ。何も出来ないんだ。

 駆動音が聞こえて、思わず振り返った。
 シンの全身に各部パーツが装着されていく。バカな。インナーがないのに、何故だ。
 バイザーが光った。動く。ウイングを展開している。ここから飛ぶつもりか。

「うぉおおおおおおおっ!!」
 シンが叫んだ。

 そのとき、ソウマは、信じがたいものを見た。

 ベルトが……エキスポ・ダイナモが、わずかに光っていたのだ。

 


 拳。受け止められた。蹴りが来る。身体の反応が鈍い。避けられない。
 衝撃が来た。虚空から一気に叩き落とされた。瓦礫に突っ込む。崩れ落ちてくる鉄骨が右腕に当たり、オカしな方向にねじ曲げた。
 立ち上がる。身体が重い。だが、それも、ただの状況だ。

「さっきの威勢はどこへ行った? 最強のイバライガーだと? 笑わせるな、ガラクタめ!」
 爪。かろうじて避けられた。いや、避けきれてはいない。胸を少し抉られている。

 それでもイバライガーブラックは立った。『奴』が目覚めるまでには、もう少し時間がいる。
 それまでコイツを食い止めればいいのだ。

 だが、予想より手ごわい。ダマクラカスンのデータは持っている。この世界に来た直後にRとガールが戦っている。
 あのときの奴は傷ついていたが、それでも、そのときの戦闘データから、完全時の能力値は算出されていた。

 しかし、このダマクラカスンは以前より強化されていた。
 あの黒い繭の中で、力を蓄えていたのだろう。それも想定していたが、予測値よりもわずかに高い。
 そのわずかな違いが致命的だった。

 だが、それでも、差し違える気なら止められる。初代がそうしたように。

 いざとなれば、躊躇しない。
 だが、まだだ。まだ、その段階ではない。

「お前の相手は、もう飽きた。そろそろとどめを刺させてもらうぞ」

 ダマクラカスンの目が光った。これまでで最大の攻撃が来る。
 ここが限界か。

「待てぇえええええええ!!」

 この声は……シン?
 なぜ戻ってきた?
 お前が死ぬことは許されない。自分の運命をわかっていない。
 お前とワカナは、生き延びなければならないのだ。

 全てを思い出すまで。
 本当の力が蘇るときまで。

「さっきのニンゲンか。バカめ、死にに来るとは……」
 ダマクラカスンは悠然と振り返ったが、そのときには吹き飛ばされていた。

「そこまでだ、ジャーク!! お前たちの好きにはさせないぞっ!!」

「ぐぅうっ! なんだ? ニンゲンごときが、なぜこれほどの力を……!?」

 PIAS。あの劣化版スーツか。
 着ているのはシンなのか。

 エキスポ・ダイナモが発動している。まさか力が……蘇ったのか?
 違う。伝わってくるエモーションは、いつもと変わらない。

 まずい。これでは『あのとき』の再現だ。

「シン、やめろ! そのスーツを脱げ。その力はまだ使うな!!」

 


 イバライガーブラックが叫んでいる。
 焦っている? あのブラックが?

 何なんだ。このスーツは、それほどヤバイものなのか。
 だが、今はやるしかない。オレが、イバライガーになるしかないんだ。

 全身を痛みが覆っているかのようだ。ソウマのようなインナースーツがないせいなのか。
 だが動ける。オレの想いを、魂を使え。それが出来ればPIASは巨大な力を発揮できるはずだ。奴を止める。倒す。
 これ以上、オレの仲間たちを傷つけさせるものか。

 だが、意識が混濁していく。力を求めれば求めるほど、自分が自分でなくなっていく。
 それでも……守る……みんなを……世界を……!!

「がぁあああああああっ!!」

 PIAS=シンが叫んだ。エキスポ・ダイナモは暴走したように輝いている。

「オレたちが……! オレが……!! イバライガーだぁあああ!!」

 


 シンの叫びが聞こえた瞬間、初代イバライガーのエキスポ・ダイナモが輝き出した。
 身体は動いていない。それでも、ベルトから溢れる蒼く美しい光に、ワカナは魅入られていた。

「な、何が起こったんだ!?」
 心配そうに覗き込むイモライガーに、ワカナは静かに答えた。
「……わからない……でも……生きてるわ、初代は……」

 ワカナは初代を抱き続けていた。温かい光が語りかけてきたように思った。

 行くのね。みんなのところへ。
 私の想いも連れていって。

 そう念じたとき、初代のバックルから一筋の光が迸った。

 


「呼んでいる……」
 意識を失っていたイバライガーRが起動した。

「呼んでいるわ……」
 イバガールも、立ち上がった。

「目覚めたか……」
 イバライガーブラックが、不敵に笑った。

 3人に、初代からデータが送られていた。
「こ、これは……」
「時空……突破……!?」

 


  長かったのか、一瞬だったのか。
  何もわからない。

  だが、シンが叫んでいる。
  シンの元に、周囲のエモーション・ポジティブが呼び寄せられている。

  ダメだ。それはダメだ。
  『あの力』は使ってはいけない。

  兄弟たち。
  私の想いを、データを受け取れ。
  全てを、お前たちに託す。
  新たな力を掴むときが来たのだ。

  兄弟たち。
  使ってみせろ。時空の力を。

  シンを、止めろ。

 


 初代イバライガーから転送されてきたのは、時空突破時のデータだった。

 実際に時空転移を行えるわけではない。初代がこの世界に転移したときも、専用の粒子加速器を使っていた。
 Rやガールの転移も、恐らくは同じだろう。イバライガー自身の出力だけで時を超えるのは無理だ。

 だが、その能力は応用できる。初代がそうしたように。

 初代は失敗し、時空の狭間に取り残されることになった。
 それでも、時空の力を託された。
 そうまでしても、シンを救えということだ。

「……なるほど、時空転移を技に応用する、か。自爆技を、あえてやってみせろと言うわけだな。おもしろい」
「ほんのわずかでもタイミングを誤れば、初代の二の舞いになっちゃうかもしれないわけね。ギリギリの限界を見極めなきゃならない……。いいわ、私がやるっ!」
「ダメだ、ガール、ブラック。私が……やる。特異点の中を見てきたのは私だけだ。適任のはずだ」

 Rが立ち上がって、シンに歩み寄った。

「シン。もういいんだ。無理をさせて済まなかった。初代が、目覚めた。キミを待っている。行くんだ。キミの力は……想いは、私が預かるっ!!」

 ふいに、シンのエキスポ・ダイナモの光が消えた。
 意識を失って倒れるシンを、Rは抱きとめた。ガールに預ける。そして振り返った。

「目障りな機械人形どもめぇええええ! 許さんぞっ!!」

 ダマクラカスンの爪が一気に伸びた。Rは動かない。
 爪は胸にまっすぐ伸びてきたが、その直前でねじ曲がったように弾かれた。

「!?」

「Rを中心に……空間が……歪んでいるわ」
「……ふ、見せてもらうぞ、R」

「うぉおおおおお!!」
 Rが叫んだ。シンの周囲に集まりつつあったエモーションが、Rに集中する。

 光が、全身を包んでいく。周囲の空間そのものが圧縮されていく。
 普段は認識していないが、空間は凄まじい量のエネルギーを持っているのだ。それがイバライガーRに集まっていく。

 両手に全神経を集中して突き出す。捩じるように回す。
 特異点の中で感じたものを思い出せ。時空の力を掴み取れ。集めろ。

「はぁああああああっ!!」

 目に見えない巨大な何かを抱えるように、腕を広げた。
 巨大なプラズマが奔る。その全てを身にまとう。

「くらえ、ダマクラカスンッ! これが、これがっ……!!」

 時空をねじ曲げ、圧縮した空間の巨大な質量を叩き付ける。
 それがイバライガーRが編み出した必殺技だった。

「時空突破!! クロノ・ブレイクッ!!」

 

ED(エンディング)

 巨大な爆発が起こった。
 火柱が、ワカナとイモライガーの顔を照らしている。
 けれど、ワカナにはわかった。

 乗り切った。勝ったわけじゃない。
 でも、みんな無事だ。伝わってくる。

 初代を見つめた。
 エキスポ・ダイナモの光は収まり、今はわずかな光点が灯っているだけだ。

 でも、それが息づいている。

 還ってきた。

 ようやく、その実感が溢れてきて、涙が止まらなくなった。イモライガーも大声で泣き出している。
 泣きながら笑いあった。こんなに嬉しいのは久しぶりだ。

 いつまでも泣いていたいと、ワカナは思った。

 

次回予告

■第17話:ゴーストハウス
前回の大事件のおかげでTDFに認めてもらえたシンたち。初代も帰ってきたし、お尋ね者の汚名を返上できたし、新しい基地も用意してもらえた……んだけど、へんなのよね~~、ココ。何かいるような気配がするんだけど……
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

 

(次回へつづく→)

(第15〜16話/作者コメンタリーへ)

 


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