広告漫画の相場って、ページいくらくらいなの?

 よく「依頼者がギャラを提示してくれない」といった声を聞くんだけど、ボクはギャラはこっちが提示すべきモノで、依頼者が決めるモノじゃないと思っている。
 だから「提示してもらう」なんて考えたこともない。

 だいたい、なんで自分の値段を赤の他人に決められなきゃならんのだ?

 そもそも、自分で自分の値段が決められなかったら、どうやって見積書作るの?

 見積書出さないでも受注できるのは、先方が勝手に値段を決めている場合だけで、普通はコッチが見積りを提示するんだよ。
 それができなかったら、どんな小さな仕事だって受注できないんだ。

 この世界で長くやっていくのなら「いくらでやって」と言われてるだけじゃダメなんだ。

 自分の力と、稼がなきゃならない額と、実際に売れると見込める金額。

 それらをしっかり見極めて、自分の値段を自分で決めて、それを守っていこうとしないと、あっという間に値崩れして、やっていけなくなっちゃうんだ。

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自分の値段をいくらにすべきか

 う~ん、広告漫画のギャラの相場って、いくらなんだろ?
 ボクにもわかんないんだ。

 っていうか、他の人がいくらでやってるのかは、あまり気にしたことがない。
 ボクは自分で自分の値段を決めて、それでずっとやってきたから……。

 いや、最初に決めるときには、一応他の人がいくらでやってるのかを調べてみたりもしたんだよね。
 『アドメニュー』なんていう、広告料金の事例集を買ってみたりして。

 コレ、有名な本で、毎年○○年度版が出ていて、色々な広告会社の請負金額がズラっと出てるの。
 それを見て見積りなどの参考にするんだよね。
 広告漫画も広告サービスの一種なので、漫画の料金じゃなくて、広告のほうの料金を比較対象にしたほうがいいと思って、ボクはそっちを主な検討資料にしたんだ。

 けど……『アドメニュー』に出てる事例って、すごく美味しすぎるんだよねぇ。
 いや、格安事例ばっかり掲載されちゃうと業界のみんなが困っちゃうから、それでいいんだけどね。

 でも実際問題として「○○な広告を作って○○○万円」とかね、そんな額面払ってくれる客なんか見たことね~よ、って事例ばっかりなのよ。

 もちろん、中には「これはむしろ安いなぁ」って感じる案件もある。
 それに、大手の代理店などが信じられないようなオイシイ額面でやっていたりする例も知っているから、掲載事例が嘘だとは思わないんだけど……でも、ほとんどは「理想はそうだけど現実的じゃないよな」に思えたんだ。

 自分たちが普段やり取りしてる額面、接しているお客たちとは離れすぎてるなって。

 ようするに、ボクみたいな零細個人業で受注できる案件じゃないんだよ。
 大手の電通とか博報堂が請け負うような事例を眺めても、あまり参考にならないんだ。

 それで、他所のことは何もかも忘れて、自分はいくら欲しいか(これ以下ではやりがいを感じないという金額)、経費はいくら見込んでおくべきか、といったコトを考えて、それと実際のお客(主に中小企業)が払えそうな額面を照らし合わせて、バランスのいい料金を算出していくようにした。
 一応、広告業も長いから、平均的な中小企業がどのくらいの広告費を持っているかなどは知っていたしね。

 ちなみに、中小とはいえ企業は企業なんだから、それなりに予算はあるだろう、なんて考えるのはアマすぎるよ。
 今ドキは中小企業の社長さんより、高校生のお小遣いのほうが多いなんてことは珍しくない。いや本当に。

 そういう人たちが資金をかき集めて依頼してくるんだから、彼らが依頼できる額面に抑えなきゃ、どんなにイイモノでも売れないんだよね。

仕事を取るよりも客を取りたい

 ボクは最初から直営業でやっていくことを意識していた。

 代理店とかを通さずに、一般企業から直接オーダーを受ける。
 自分で営業して、自分で作る。

 もちろん代理店経由の仕事も引き受けるけど、直接仕事を受注できるようにしていかないと、売れても売れなくても不安定なのよ。

 広告漫画はね、作家に客がつきにくい。
 著名作家が著名であることで受注しているようなケース以外では、作者の評価ってあんまり上がらないの。
 なんせ、そこそこに描けていれば誰でもいいようなモンだから。

 お客がつくのは漫画自体ではなくて、それを内包する企画のほうなんだ。

 で、その部分を代理店に依存してると、そこの動きに振り回されちゃうの。
 つまり自分でお客を抑えてないと、間に入っている代理店に無茶や無理を言われても逆らいづらいんだ。

 どんなに仕事があっても、実は仕事を押さえてるのは代理店で自分じゃない。
 だから、どれだけ頑張っても評価は口先だけ。
 ギャラアップとかは期待できないことが多いんだ。

 なんせ代理店にしてみれば、いざとなったらいつでも「同程度にそこそこ描ける誰か」に切り替えればいいんだから。

 そういうわけで飼い犬にされがちなのよ。
 そういうのが嫌なのよ。

 せっかく独立して自由業やってんのに、勤め人のときより不自由ってヘンだもん。
 制作者自身で個人営業はキツイんだけど、自由業が自由を失ったら何のためにやってんのか、わからないでしょ。

 自立するからには、本当に自立してやっていける道じゃないと。

 そのためには、仕事を取るというよりも「客を取る」でないとダメだと思ったんだ。

 仕事の発生源である客を直接自分で持つ。
 そうでないとアカンと。

 だから自分で売れる額面、責任を負える額面にすることにこだわったんだ。

 最初から自主独立でやれると思っていたわけじゃないし、事実、代理店頼りのほうが多かったりもする(やっぱり新規開拓とかの営業は苦手だからねぇ)んだけど、それでも「自分で営業するのであれば」を前提に、自分の値段を設定したんだ。

 そして、ある程度は「自分の客」も持てるようになった。

 今でも代理店経由の仕事のほうが多いけれど、当初に比べると比率はだいぶ違う。
「自分の客」だけでもギリギリなんとかなる。
 そういう状態に近付いてる。

 ま、それもバランスなんだけどね。

「自分の客」が多くなったほうが経営的に有利ではあるんだけど、その分だけ色々やらなきゃいけないことも増える。
 漫画とかデザインとかに打ち込んでいられる時間が削られていく。

 だから、半々くらいが理想かなって思ってるの。

 代理店の犬にならずに済む程度に自分の客を維持して、その上で代理店さんとも仲良くやっていく。
 そういうのが一番都合のいい状態だと思ってて、そういうバランスをいつも目指してるのよ。

日々の支えになる額面じゃないと継続的にやっていけない

 そういうわけでボクは、自分で自分の値段を定めて、その額面でOKしてくれる人たちを相手に、額面分の仕事をし続けているわけだけど、先方から「○○円でやってください」と依頼されることも珍しくはない。

 ボクが自分の値段をいくらと設定しようと、そんなのお構いなしに額面決めて打診してくるケースはけっこう多いんだ。
 特に雑誌社・マスコミ系には多い。

 もちろん、それが妥当と思えれば引き受ける。
 自分の決めた値段とは違っていても「まぁアリかな」と思えることもあるし、たまたま仕事が少なくて、本当はアリじゃないけど引き受けざるを得ないってコトもある。

 でもねぇ……先方が勝手に額面を決めてくる案件って、大抵はギャラが安すぎて折り合えないんだ。

 ページ6千円とか8千円とか、オイシイ場合でも1万円チョイ程度。
 う~ん。

 漫画業界的には、新人や無名の作家で1万円チョイの原稿料ってのはオイシイほうだと思うんだけど……でも広告業界的に見たら、格安にもホドがあるって額面なんだよなぁ。
 いくら仕事が欲しくても、そこまで安く請け負うくらいなら、自分で「期間限定大出血サービス」とか銘打って、これまでの取引先に売り込んだほうが、まだ稼げるよ。

 まぁ、漫画連載などの場合は、後日単行本化して取り返すってのも多少は期待できるんだけど、単行本がありえない仕事で一般的な漫画原稿料と同じような額面でやっていたら、あっという間に破綻しちゃうとしか思えない。

 思えないんだけど、雑誌社系って、そういう額面で依頼してくるんだよ。
 本に載せてやるだけでもありがたいだろと思ってるからなのか、問屋みたいに中抜きしてるからなのか、単に買い叩いているのかわからないんだけど。
 元々の予算が足りないってのもあるんだろうけど。

 でも、そんな事情はボクには関係ないからね。
 ソッチに予算がないからって、それをコッチに押し付けられてもねぇ。

 仮に単行本を出してもらえることが確定しているとしても、単行本化に必要な枚数に達するまでは出ないから、単行本になって印税が振り込まれる日までどうやって生き抜くかってコトになる。

 雑誌で1~2ページずつの連載やって、それが単行本になるまで、どんだけかかるのやら。
 しかも、それだけ耐えたとしてもベストセラーになるような部数が期待できるってモンでもないし。

 ボクが欲しいのはボーナスみたいな印税じゃなくて、日々を支えてくれるランニングコストのほうなの。

 ソッチをしっかり出してもらえないと困るの。
 たられば的な印税なんかアテにして事業はできないのよ。

 あ、もちろん、キチンとしているマスコミ系もあるからね。
 特に出版社(ただし漫画出版社ではない)などが解説用漫画を……といったケースだと、真っ当なギャラを提示してくれるか、こちらが示した見積りで合意してもらえるコトが多いんだ。
 いや、あくまでもボクの経験ではそうだったということに過ぎないんで、そうじゃないケースもあるとは思うけど、雑誌社系が常にアカンってわけじゃあないと思うよ……。

料金と関係なく、やりたい仕事には踏み込むよ

 なお、どうしてもやりたい案件だったら、相手がドコだろうが、ギャラがいくらだろうが、あえて引き受けちゃうことも少なくない。

 ただ、そういうときでも値引きはしていない。
 そうした案件は仕事というよりも「やりたいから予算が足りない分を自分で踏み込んじゃったモノ」なので、値引きしたのとは違うんだ。

 まぁ、コレはボクの認識の問題なので、依頼者側から見れば値引きなのだけど、それでも「そういう考え方」だと伝えて、理解してもらうようにしている。
 仮に値引きだとしても、値引きしたら「差し引いた分だけ仕事じゃなくなっている」と思っているので、そのへんを理解してもらえないと、後でゴタゴタするからね。

 やりたくてやるんだから手抜きしたりはしないけど、それは自分の問題。
 仕事じゃなくなってる相手に、あ~しろこ~しろと言われる覚えはないの。

 だから、そのへんをキチッとわかってもらえなければ、ボクは自分の値段以下では絶対にやらないようにしている。

 あ、身勝手なモノを描くって意味じゃないからね。
 依頼者の希望はしっかり尊重するし、広告として役立つモノにするってのは言わずもがな。

 ただ、それらの条件を満たしていれば、その先の部分は自由にやらせてもらう。

 長期連載している『カソクキッズ』などは、正にそういう「漫画家の気持ち」を発注側がわかってくれているからこそ、長く続いたんだ。

 ボクが自主的に踏み込んでいるのであって、値引きしたわけじゃない。
 だからボク自身の値段は崩れていない。
 それを理解してくれる人たちだったからこそ、長期連載になったんだ。

 自分で決めた値段は自分自身の値段であって、その額面は(良くも悪くも)自分がどれだけの責任を背負う覚悟があるかを示しているものでもある。

 額面以上の責任を負う気はないし、額面以下の仕事もしない。
 そういう自分の意志を示すのが「自分の値段」なんだと思っている。

 だから、それを自分で崩してしまうと自分をアヤフヤにしてしまう。
 つまり責任をアヤフヤにしちゃうってコトなんだ。
 そんなコトじゃ信用してもらえないでしょ。

 元々がアヤしく見られがちな仕事なんだから、せめて、そういう部分だけは芯を通しておかないとね。

自分で決めた自分の値段を守り通す

 ちなみにボクが決めたウチの値段に対しては、高いという人もいれば、安いといってくれる方もいて、どっちとも言えない感じだ。

 ただ、値段っていうのは品質や取り組み方によっても違ってくる。
 軽自動車の値段でベンツは買えないのと一緒で、ウチはウチの値段で妥当だと思う品質のモノを提供しているつもり。

 しかもソレはボクの主観。
 ボクが「これより安かったら、この商売やってられない」と思う値段なわけで、だから高いと言われても下げられない。

 ボクにとっては、下げたら「やってられない」んだから。

 なので、高いと思わないでくれる方だけが「お客」なんだと割り切って、値段で合わない方はお断りするしかないと思っている。
 高いか安いかでモメても仕方ないもんね。ウチが高いのなら、安いトコで買ってくださいと言うしかないよ。

 そういうことも、長く仕事していく上では大事なんだ。
 自分と合う客に絞り込んでいくためにね。

 なので、ボクは世間の相場などは気にしないことにしているんだ。

 気にならないわけじゃないのだけど、自分が対象としている客層、自分が責任を負える範囲、自分の作品の品質バランスなどを考えると、自分には自分で決めた額面しかないので、気にしても仕方がないの。

 あ、でも『アドメニュー』はポイ……というわけじゃなくて、ウチの値段が妥当なモノだっていう根拠には利用させてもらっているよ。
 吹っかけてないぞ、良心的な数字だぞっていうのを示すための資料って感じ。

 だから値段を定めた以上、もっと払ってもらえそうでも自分の値段を守っているよ。
 相手によって値段が変わったりしたら、それこそ値段の根拠がグラついてしまって信用を失っちゃうもんね。
 バレなきゃいいだろ、じゃないんだ。っていうか、いつか必ずバレるから。
 イイ評判はコツコツとしか広まらないけど、悪いほうは、あっという間に広まるから。
 正直にやってるほうが安全だし、楽だよ。

 ただし、こっちから吹っかけないだけで、先方から「ページ単価10万で5枚描いて」とか言ってくれたら、ありがたく引き受けちゃうけどね(笑)。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。

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