小説イバライガー第1~2話/筆者コメンタリー

2018年2月8日

 以下のコメンタリーは、元々の「冊子版」および「電子版」のときに、脚注のように記載されていたものに加筆したもの。
 作者は作品で全てを語るべきで、余計な言い訳はしなくていいとは思うのだけど、今どきはDVDやブルーレイでもメイキングやコメンタリーなどの特典が付いていることが多いから、本作でもやることにしたの。一応、テレビシリーズを想定して書いているシリーズだしね(笑)。

 なお、以下コメンタリーには別途コラムで大幅加筆して掲載しているものも多いので「以前の記事とカブってるじゃん!」とツッコまないでね。
 ま「そこまで詳しく聞いてないけど、一応はコメンタリーも見たい」という人向けだと思ってください(笑)。

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主人公たち

本作を描くうえで、絶対に避けて通れないステージショーとの決定的な違いが「人間のレギュラーキャラクター」の存在だ。
ステージショーでは、基本的に生身の役者は出て来ない。イモライガーとMCのお姉さんくらい。だけど、本当にイバライガーが存在する世界を描こうとすると、そういうわけにはいかない。
世界の危機を、未来からやってきたヒューマロイドたちに任せきりにして、現代の人々は何もしないで救われるなんて、あまりに情けない。そんな現代人では、何としても救いたいという気持ちも切実に感じられなくて、お話も盛り上がらない。未来を切り開くのは、現代を生きる我々自身の力であるべきなんだ。
だから本作には、主役級を含めて「ステージショーには出てこない様々な人物」が登場するのだ。
なお、彼らの名前は、あまり深く考えずに付けたので、ツッコまないでほしい。

イバライガーのデザイン

イバライガーは、なぜあの姿なのだろう? 
元々がそういうデザインだから、と言われたらミもフタもないのだが、現実にああしたヒューマロイドがいるのだと考えるとなると、あの姿にも理由がないとオカシイ。いや、そもそも何でヒューマロイド=人型なのか。他の武器などではダメなのか。
特撮ヒーロー物でそんなコト考え出したらキリがないと言われそうだが、へ理屈でもいいから理屈をつけるのがSF設定というものだ。
そういうわけで、イバライガーの外観があの姿であることにも、多少のへ理屈をつけることにした。第1話冒頭で語っている「スケブに描いてあったから」じゃないよ。その理由は、本作の中盤(たぶん22話以降)で明らかになる予定だ。

感情エネルギー

最初に「どうすっぺ?」となったのが、イバライガーたちの力の源である感情エネルギーの設定。
実は筆者は、とある研究機関で素粒子物理学などをテーマにした科学漫画を連載していて、ホンのちょっとだけ聞きかじった知識がある。ホンのちょっとだけどね。
それで、素粒子的に感情エネルギーを考えることにした。これまたソレっぽいへ理屈をヒネリ出したっていう程度で、本気で素粒子物理学的な設定をしているわけじゃないから、そこはイロイロとご容赦を。

1話-1/つくば市郊外の巨大な加速器研究所

第1話に登場する「つくば市郊外にある巨大な加速器研究所」は、もちろんアレだ。本編中では名前は出していないけど、分かる人には一発でわかる。アレしかないけど、はっきりとは言わない。言えない。なんせボク、かなりお世話になってるから。
ただ、この手の新エネルギーというか仮想粒子を捉えるとなれば、巨大な粒子加速器が必要だろうし、都合のいいことに茨城には、そういう場所が2つ(つくばと東海村)もある。だから、その1つ、勝手知ったる……いやいや、とにかく山の中にあるデッカい加速器がエライことになるってことにさせていただいたのだ。
つくばのほうを選んだのは、東海村だとすぐ隣りに原発があるから、大爆発・大惨事となると別な問題が出てきちゃって、ややこしくなりすぎるから。
なお、一応、本書を書く前に実在する研究機関の博士に「そういうのを書きます、ごめんなさい」と話はしている。みんな笑ってくれたので、勝手に許可は取ったと思い込むことにしている。
あ、この研究所は、最終回近くにも重要な舞台になる予定です。そのときも派手にぶっ壊します。ごめんなさい。

1話-2/ダークマターとかダークエネルギーとかヒッグス粒子とか

第1話でワカナやシンのモノローグで語っているダークマター、ダークエネルギー、ヒッグス粒子といったネタは、今の時点ではストーリーとはあんまり関係ない。研究所に出入りするようなキャラだから、たくさんの科学用語を散りばめて、それらしいシズル感ってやつを演出しただけなの。
だけど、後々はストーリーに関係してくるものもあるし、本編ではシズル感だけで説明不足でもあるので、ここでもうちょっとだけフォローしておくね。

ダークマター
ダークマター(暗黒物質)と呼ばれる「正体不明の物質」は、宇宙の全質量の20~25%くらいだと言われている。通常の、我々が知っている物質は、全部合わせても5%程度でしかないから、ダークマターのほうが圧倒的に多い。もちろん、我々の周囲にも存在しているはずなのだけど、感知できないのだ。
ダークマターの正体として有力なのはニュートラリーノと呼ばれる粒子で、これを発見しようとする実験が日本のKEKや欧州のCERNで進められている。
なお、ダークというのは暗黒の力とかじゃなくて、単に「なんだかわからない」からダークなのであり、これまで観測できなかったことから「光では見えない」という意味もあるようだ。当然だけど黒いわけでもない。つ~か光では見えないんだから、色でイメージすること自体間違っているんだろうけど。

ダークエネルギー
宇宙の7割近くを占めるのが「ダークエネルギー」と呼ばれる謎のエネルギー。アインシュタインの相対性理論で有名な「E=mc2」の数式などで知られているように、質量とエネルギーは同じものだから、ダークエネルギー、ダークマター、我々が知っている物質を合計したものが宇宙の全質量というわけだ。
宇宙は今も膨張を続けていて、しかも現在は第2のインフレーションと呼ばれるほどの加速膨張期になっている。この宇宙を膨張させている力がダークエネルギーだと考えられていて、日本語では「宇宙項」などとも呼ばれる。これまた理論上のもので確認されたことはない。

ヒッグス粒子
2012年7月に「発見」の報が世界を駆け巡ったヒッグス粒子は、物質に質量を与えていると考えられている素粒子。つまり、この世に質量があるのはヒッグス粒子のせいらしいのだ。
この宇宙は目に見えないヒッグス粒子(ヒッグス場)の海の中にあるようなもので、ヒッグスがなければ、我々の身体を構成している素粒子はそこに留まっていることはできず、光速で飛び散ってしまう、と言われている。
このヒッグスはイバライガー自体の能力設定にも組み込まれている。
ヒッグス場をもしもコントロールできるのなら、自在に質量を変えられるかもしれない。軽くなって素早く動く、重くなって破壊力を増す、色々考えられる。パンチが当たる一瞬だけ拳の質量を変化させて莫大な威力にするとかね。
現実には、ヒッグス粒子の存在を確認したというだけで、それが理論通りの性質を持っているのかどうかもわかっていない。それを検証するには、新たな加速器を作り、幾度も実験を繰り返していくしかないのだ。そのための次世代加速器「国際リニアコライダー」の建造計画はすでに進んでいて、世界中で共同して1つだけ作ることになっている。これは全長30キロを超える直線型加速器で、日本の宮城県北端から岩手県にかけての地域が候補地の1つになっている。

1話-3/ティクス博士

ティクス博士という名前は、筆者が関わるより前に……はじめてイバライガーがその姿を世に現した当時にストーリー設定を担当していた方が考えたキャラクターで、元々はイバライガーを作った博士、ということになっていた。
けど、その後イロイロあってイバライガーは「イバライガーR」や「イバライガーブラック」が登場する別物(Rはともかくブラックは初期プロット段階から「今とは全然別なキャラ」として構想されていた)に発展していき、当初のストーリー担当だった方もいなくなってしまった。ボクがストーリーや設定に関わるようになるのは、その後なんだ。
とはいえ、彼が初期のイバライガーを支えていたことは間違いなく、そのため敬意を払って、ここでティクス博士に登場していただくことにしたの。
本編でのティクス博士は、ステージショーでお馴染のジャーク四天王ダマクラカスンになってしまうのだけど「ええっ、あの凶暴で、どっちかというと頭脳派とは思えないダマクラカスンさんが、天才科学者の変異体?」とツッコまれそうだなぁ。
でも、ジャーク発生現場に一番近い場所にいた博士が最も大きなエネルギーを浴びているはずだし、そうなるとザコ怪人が取り憑いたとは思えないので、必然的にダマクラカスンということになっちゃったの。他の四天王は、今後別の形で登場するので、消去法でダマさんに決まったということでもあるんだけど。

1話-4/ジャーク

ジャークとは何なのか、は、イバライガーワールドを考える上でも大事な部分。単に悪の組織で怪人たちがいるというだけじゃ、全然ピンとこないもん。世界征服を企むにしても、なんで征服したいのか、征服して何をする気なのか、悪って何がどう悪いのか、怪人はどういうテクノロジーで作ってるのか、組織構成はどうなっていて活動資金は何なのかなど、山ほど疑問が出てくるもんねぇ。
なので、それらを考えていくことが物語をつくるってことでもあるんだ。執筆開始した今も考えてる。
元々はエネルギー体で人に取り憑いて怪物化させる、というのは初期設定にもあったことなので、そこは踏襲している。自由に考えるにしてもステージショーの世界を否定するような設定にはしたくないから。
でも、ジャークとイバライガーって、同じ力の光と影なんだ。悪意と善意、それぞれの感情エネルギーの申し子。兄弟のようなモノなのだ。
おっと、いかんいかん。コメンタリーとはいえ、ここまでにしておこう。これ以上はネタバレになりすぎる。
ジャークとは何かというのは、本作全体に関わる重要な部分なのだ。

1話-5/ダマクラカスン(ジャーク四天王)

精神エネルギー検出実験で事故が起こったとき、流出したエモーション・ネガティヴ(ジャークエネルギー)は、その中心点に最も近い場所にいた者……実験チームのリーダー・ティクス博士に集中した。
ティクス博士の精神は消失し、その肉体は大量のジャークエネルギーを吸収し、他のジャーク憑依体よりも強力な四天王・ダマクラカスンとして再生される。
生来の博士の面影は全くなく、暴力・謀略を好む凶暴な性格となっており、怪人たちを率いてイバライガーと死闘を繰り広げることになる。
……というのが小説版での設定。
ステージショーでは、極悪で暴力的で冷酷な悪の大幹部として、毎回イバライガーたちを苦しめ、毎回やっつけられて「覚えてろよ〜〜」になっている。現在もステージに出演し続けている悪役としては最古参の1人(同じくらい古参なのはオカマの怪人ブッコワシタイナーと戦闘員くらい)で、イバライガーの宿敵的なキャラとして人気も高いんだ。
そういうキャラなので、この小説版でも最初に登場させた。
この後、4話で再登場し、しかし6話冒頭でやられて16話まで出てこなくなっちゃうんだけど、それでも出演期間がもっとも長いジャーク関係者が彼なのだ。
なお、ダマさんに限らず、ジャークの皆さんってネーミングがギャグっぽいんだけど、そういう名前なんだから仕方ないの。

2話-1/イバライガーの表面

イバライガーの表面は固くないだろうと思っている。多少の弾力のある素材だろうと。だって、そうじゃないとぶつかったり殴ったりしたときに、衝撃を吸収できないもんね。ただ、その硬度は自在に、それも瞬時に変化させられるのだろうとは考えている。それもピンポイントで。そうやって攻撃を受けるとき、するときの瞬間ごとに硬くしたり柔らかくしたりしながら戦っているのだろうと。見た目には変化がないように見えても、実はものすごく忙しく体内や体表をコントロールしているんだろうなぁと。
なお、イバライガーは飛べません。ただ、ほとんど飛んでいるくらいに、ものすごくジャンプできるので、ガンダムの空中戦みたいなモンだと思っている。

2話-2/タイムパラドックス問題

本来の歴史(イバライガーが来ない元々の歴史)では、主人公たちが、ここで救われるはずがなく、このままジャーク粒子に取り憑かれてしまうはず……なのだけど、そうはならないで、全く別の展開が起こることになる。
なにせ、ここで主人公が死んじゃったりジャークになってしまったりすると、未来でイバライガーが作られないことになり、当然助けにも来なくなるからだ。
ということはイバライガーがいなくても主人公たちは助かり、その後にイバライガーを開発することも出来て、それなら何も過去に戻って戦わなくてもいい、ということになってしまう。人類の歴史には悲劇も多いけれど、だからって過去に戻って「なかったこと」にしようと考えるとは思えない。「今」とは「過去」の積み重ねの上にあるんだから。過去を変えれば今も消滅する。つまり自殺行為だ。論理的じゃない。
こういう具合に、タイムトラベルものって原因と結果の因果関係が入れ替わってしまうので、ものすごく矛盾が生じやすいのよ。
なのでイバライガーの世界では、多元宇宙論=パラレルワールドを前提にさせてもらっている。
つまり別な宇宙。別な可能性。元の歴史が変わるのではなく、別な可能性を生み出すだけということだ。
イバライガーは「未来から来た時空戦士」という設定だから、タイムトラベルしないってわけにはいかないのだけど、それでも、未来から次々と新型の援軍が来るなんてことじゃ、緊張感がなくてつまらない。ヒーローは人類の希望を背負った唯一の存在であってほしい。
だから援軍は来ないはずなのだけど、それじゃ話が始まらない。
超えられないはずの壁を超えて来てくれてこそヒーローなのだ。起こらないはずの奇跡を起こすのがヒーローなのだ。
そしてその影には、自らの歴史は救えないのに、あえて過去にイバライガーを託した者たちの物語もある。
だから来る。来ないはずのヒーローたちが来る。ショーでお馴染のメンバーがね。
ただし、全員が未来から来るわけじゃない。
そうそう同じことを繰り返していては奇跡でも何でもないし、物語も盛り上がらないもんねぇ。
どのキャラがどんな登場をするのか、楽しみにしててね。

※このタイムパラドックス問題に関しては、単独のイバライガーコラムとしても扱っている(しかも2回も)ので、おヒマならそっちも読んでみてね。

未来からやってくる……とは??
タイムパラドックス問題について考えてみる

2話-3/特異点

この世の物理法則とは全く違う特殊な領域、という感じかな。
ブラックホールなども「事象の地平」の内側は特異点となっていると考えられているから、ものすごく小さなブラックホールみたいなモンだ。
実際、素粒子実験でマイクロ・ブラックホールが生まれる可能性はないわけじゃない。欧州の大型陽子加速器施設CERNが稼働した際には、ブラックホールが生まれて地球が消滅するのではと考えた人々が実験中止のデモを繰り広げたし、インドでは将来を悲観して自殺する人まで出たらしい。
ただ、そういう可能性がゼロではないにしても、確率的にはすさまじく低い。また、本当にマイクロ・ブラックホールが生成されたとしても、それは何の問題も起こさずに一瞬で消滅するはずだ。マイクロすぎて何も出来はしない。
それに、素粒子実験でブラックホールが作れるのだとしたら、それは日常的に地球の大気圏外で起こっていることのはずなのだ。大きな素粒子実験のために注ぎ込むエネルギーは莫大なものだけど、それでも太陽からの放射線に比べればマッチの火ほどにもならない。宇宙で、そうした現象を観測するのは大変すぎるから、加速器で極小規模で再現してみるというだけ。素粒子実験などとはスケールのケタが違う現象が、常に起こっている宇宙で、地球は46億年も消滅せずに存在している。
マイクロ・ブラックホールが出来ようが出来まいが、我々の日常には何の関係もないのだ。
ただ、そういうモノが生まれている可能性はあるので、それをイバライガーの世界に利用させていただくことにしたのだ。
あくまでも「へ理屈」そのものだから、特異点を使えばタイムトラベル出来るなどと本気で信じられても困るんだけど。
(そもそも日本の加速器のエネルギー量では、マイクロ・ブラックホールは生成できないと思うんだけどね)

 


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