フリークリエイターの個人情報の取扱いについて考えてみる

2018年1月9日

 いや、個人情報を慎重に取り扱おうとか、そういう話じゃない。
 そういう話も大事なんだけど、ここで取り上げるのは「自分の個人情報をどれだけ公開するか」という話なんだ。

 え? そんなもん明かさないに決まってるって?

 うん、まぁ、そりゃあねぇ、そういうモンはできるだけ明かさないほうがいいよねえ。
 先輩のクリエイターたちだって、そんなの晒してない人ばっかりだもんねぇ。
 特にネットみたいな場所でおおっぴらにするのはどうかと思うよねぇ。

 でもね、個人情報を伏せたままで不特定多数から仕事を獲るって、すごく難しいのよ。
 商売するからには、ある程度は公開せざるを得ないとも思うのよ。

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ビジネスの世界では住所や電話番号を晒すのは当たり前

 個人情報なんか微塵も明かしたくない、と思うかもしれない。
 あのヒトだって、このヒトだって明かしてないじゃないか、と思うかもしれない。

 でもさ、クリエイターの世界だけじゃなくて、普通の商売をしている会社やお店のWEBサイトを見て欲しいんだ。

 例えば個人商店や個人事務所を経営されている方。あるいはネット通販をやってる方。
 いや、普通の企業サイトでもいい。

 ほとんどのビジネスサイトには「会社概要」などが記載されているはずだ。
 通販系なら「通販法に基づく表記」っていう文章も公開されているはずだ。

 そこには経営者や責任者の本名、住所、電話番号などが書かれている。
 特に通販の場合は、それらを公開せずに通販すると法律違反になってしまうので、必ず記載しなくてはならない。

 これらは、個人情報そのものだ。

 普通にビジネスしているほとんどの人たちは、個人情報を晒しまくっているのだ。
 個人情報をネットに晒すなんてあり得ない、そんなリスキーすぎることするなんてバカじゃないのと思うかもしれないけど、ビジネスの世界では個人情報を晒すのは当たり前のことなのだ。

 だから、ボクもそうしている。

 自分のサイトに、企業サイトと同等の「会社概要」を明記して、自分がドコの誰なのかを公開している。
 それを明記しなきゃ誰も信用してくれないからね。

 だって、聞いたこともない会社で、所在地も、お客様サービスセンターの電話番号も書いてない商品なんか、普通は危なくて買わないでしょ。
 今どきは農家だって「生産者」として、名前や写真や農場名を公開してるんだから。

 それなりに世間に知られている作家さんなら、ペンネームだけでも済むと思うんだけど、無名の場合はそういうわけにはいかないと思うのよ。

 それにファンや出版社の間では著名な人だって、関心のない人から見れば無名だからねぇ。
 ペンネームだけでもやっていけるのは「それで済む相手」に限定してやっているからで、それ以外の不特定多数人たちを相手にしようと思ったら、やっぱり住所や連絡方法を予め表示していないとダメだと思うのよ。

会社概要が書いてないようなサイトじゃ信用されない

 なのに、デザイナーや漫画家などの個人業の皆さんは、そのへんを伏せている例が圧倒的に多いでしょ。
 そのくせ「お仕事募集中です」なんて書いてあったりする。

 もちろん、メールなどで問い合わせすれば、ちゃんと答えるのだろうけど、う~ん、ドコの馬の骨かもわからない相手に問い合わせしてくれる人って、そんなに多いかなぁ?
 ちゃんと所在地や電話番号を掲載している「マトモに見える会社」が他にもいっぱいあるっていうのに、わざわざ得体のしれない人を選ぶかなぁ?

 つ~か、コッチが個人情報伏せているのなら、相手にだって個人名を明かすことを要求できないよね。
 ということは「名無しだけど、そっちの名前や住所教えて」って聞いてくるのもアリってことにならない?

 その場合、名前明かす?
 それこそ一番個人情報を伏せておきたい相手かもしれないよ。
 でも、お互いに「お前が明かしたら明かす」って言い合っていたらキリがないよね。

 ボクは以前にも、同業で個人業で開業しようと考えている人に相談されて、こうした話をしたことがあるのだけど、そのときも「でも、やっぱり無理ですよ。うるのさんは自宅とは別に事務所を借りてるからやれるんですよ」と言われてしまった。

 まぁ、確かにその通りだ。
 ボクも自宅の住所や電話番号は、できれば公開したくない。
 自分だけならともかく、家族に迷惑かけたりしたくないしね。

 でも、そう思うのならボクと同じように仕事場を借りればいいじゃん。
 そりゃ、余計に家賃かかるけれど、個人だろうが法人だろうが、事業をやるなら何らかのリスクがあるのはアタリマエのことだ。

 お金をかけたくないから自宅開業にして自宅住所を明かすか、お金をかけてでも仕事場を借りるか、どっちのリスクを取るかってだけのことだと思うんだよなぁ。

 ボクの場合は自宅の住所を明かしたくないっていうより、自宅では手狭すぎて仕事しづらいのと、仕事とプライベートを物理的に分けないとメリハリがなくなっちゃうから事務所用のアパート借りてるんだけど、わざわざコストかけて事務所を借りているということ自体も、営業上のアピールなんだよね。

 ボクは個人業だけど、個人だから会社よりテキトーでも客が来てくれるわけじゃないので、一般的な会社が会社情報を公開するときに「普通はこうなってるよね」という状態に少しでも近づけておかなきゃと思うのよ。

 だから本当は携帯電話だけでもやれるのに、普通に電話を引いたりもしている。
 そうやってガチです、本気ですっていうアピールしているわけ。

 そういうことを面倒がったり、個人業なんだから仕方ないって甘えたりしていて、不特定多数の人から仕事を獲れるとは思えないのよ。

 それに、個人経営などで自宅と会社やお店が一緒っていうの、それほど珍しくないよ。
 ボクの取引先にも自宅兼お店(もしくは事務所)っていう人は少なくないし、ボクだって最初から事務所を借りていたわけじゃない。
 開業当初は自宅でやってたんだから。

 そういう自宅営業の人たちだって「会社概要」や「通販法に基づく表記」を公開しているんだよ。
 ネットだけじゃなく、チラシでも、ポスターでも、パンフでも、雑誌広告でも、あらゆる場所で個人情報を出しまくっているんだ。

 個人情報を公開するのがリスキーなことは、誰だって知っている。
 迂闊に公開したくない気持ちはわかる。

 でもなぁ、ボクらにお仕事を注文する人たちは、リスク覚悟で公開してるんだよ。
 ガチで商売してますよ、本気ですよとわかってもらうには、そうするしかないから公開してるんだ。

 だから、そのへんを公開してないってコトは、本気で商売してないと疑われても仕方ないと思うんだよね。

 実際ボクも、知らない会社から問い合わせや依頼があったりすると、まず、その企業のサイトをチェックする。
 情報をどれだけ公開しているかを調べるんだ。

 例えばサービス案内が雑だったりすると「こんな雑な内容しか書けない、あるいは書かないで平気なのだとしたら厄介な相手かもしれないな」と判断する。
 通常がデフコン5なら、この段階でデフコン4発令だ。
 頭の中で警戒警報が鳴り始める。

 さらに会社概要が雑すぎたりしたらデフコン3
 というか、仮に他の部分がしっかりしていても会社概要がいい加減なら、それだけでデフコン3だな。

 他がしっかりしてるのに会社概要が雑ということは、故意に隠しているのかもしれないでしょ。
 全体的に雑なのよりタチが悪いかもしれないでしょ。

 そして会社概要が記載されてないようならデフコン2
 最大値のデフコン1は相手がクロだと確定した状態だから、事実上デフコン2が一番ヤバい状態だよね。
 よほど信用できる第三者の紹介でもなければ、基本的には断るな。

 ボクなら、こんな感じで考える。

 特に重視するのが会社概要なんだ。
 これが記載されていなかったり、記載されていても雑すぎたりすると、相当警戒する。
 ヤフーなどに会社サイトを登録・掲載する際だって、会社概要がキチンと記載されてなかったら審査を通らないんだから(これは以前の話で、今のヤフーはそういう登録サービス自体を打ち切っている)。

 で……そういうふうに警戒するのはヤフーやボクだけじゃない。
 発注してくる人たちだって、同じように考える。

 本気で商売してるなら「会社概要」をキチンと書くはずだ、と。

 個人業の世界は違います、なんて言ってもムダ。
 そうなら個人業じゃない世界と付きあうというだけなんだ。
 見ず知らずのヤツに自社の仕事を任せるというだけでリスキーなのに、それ以上の心配なんかしたくないもん。

 いくら漫画広告に魅力を感じていても、そこまでのリスクを背負ってはやらないと思うよ。

個人業でも、お客に快適に利用してもらう工夫はすべき

 ネットに個人情報を出さない人だって、直接対面して交換する名刺には、本名や連絡先などを記載していることが多い。
 名刺は不特定多数が自由に閲覧できちゃうネットとは違うからね。

 でも名刺交換できるのは、直接会う段階まで進んだ場合だけ。

 で、その名刺交換できる段階まで行くってのが大変なのよ。
 正直、仕事を受注することよりも、会って挨拶できる状況に持ち込むほうがずっと大変な気がする。

 だいたい、ボクらみたいな営業が下手くそな人間にとっては、誰かと会える機会なんてのは、そうそうないのよ。
 そんなレア機会を当てにして継続的に事業を続けていくなんて無理なのよ。

 だから色々な方法で自分をPRして、そういう機会を作り出さなきゃならない。
 多くの人に自分を知ってもらい、会ってみたい、仕事を頼んでみたいと思ってもらわなきゃならない。

 そのためには、アノ手コノ手で「お客様の利便性」ってヤツを考えなきゃならないものなんだ。

 現実のお店だって、快適で気軽に利用してもらうために、色んな工夫や配慮をしてるでしょ。
 それと同じことをやらなきゃ、お客は来ないのよ。

 ボクらの仕事は一般客を相手にするのとは違うけれど、それでも、お客様に配慮するのは同じことなんだ。

 個人情報の話は、その1つ。
 他にも気をつけたほうがいいことは山ほどある。

 例えば、連絡先のメールアドレスを画像にしてたり「★を@に変えてください」って書いてあったりするヤツとかね。
 あれは商用サイトとしてはNGだろう。

 個人的なシュミのサイトならどうでもいいけど、商用なら客に手間をかけさせるなんてオカシイよ。
 迷惑メールが嫌なら、その対策をしっかりやれば済むことなんだから。

 マトモな会社のWEBサイトで、そんなコトやってるトコは滅多にないでしょ。
 ボクもそんなビジネスサイト作ったことない。
 仮に依頼があったとしても「そんなんじゃ商売になりませんよ」って注意すると思う。

 本気で仕事して、ちゃんと稼いで生きていこうと思うのなら、リスクから逃げ回ってばかりいてはダメなのよ。
 考えなしにリスキーなことやっちゃうのはもっとダメだけど、最低限、背負うしかないリスクってのもあるんだから、そこをよく考えるべきなんだ。

 個人業ってだけでも余計な心配されがちなんだから。

※追記

 ここに書いたことは、あくまでも「不特定多数の一般の人たちを相手にする場合」の話だよ。
 出版社とか代理店とか、特定の相手だけとの取引に限定するのなら、その相手にだけ教えれば済むことなので、ネットに個人情報出すなんて真似はしないほうがいいに決まってる。
 ただ、もしもボクのように様々な企業や団体からダイレクトにお仕事を引き受けたいと思っているのなら、信用してもらえる程度の情報公開はしておかないと見向きされないと思うんだ。

 

 


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