広告は伝える仕事。その第一はクライアントに自分をわかってもらうこと

2018年1月5日

 漫画家も広告業も、伝える仕事だと思うんだ。

 何かを伝えるコトのプロ。
 興味を持ってもらえるようにアピールするプロ。

 ……のハズなんだけど、多くの人って「自分を伝える」ことは苦手なんだよなぁ。

 いや、ボクもそうなんだけどね。
 だからこそ、自分をどうやって伝えるかを気にしなきゃいかんと思うんだ。

 伝えたい相手に伝わるように伝えなきゃ、と思うのよ。

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過去しかアピールしないのはモッタイナイよ

 たまにネットでご同業の人たちのサイトやブログを眺めていると、これまでに描いた自分の作品並べて作例紹介して、あとは簡単なプロフィールだけっていう例をけっこう見かける。

 まぁ確かに、過去の作例は大事だ。
 論より証拠。描けるぞ、こんだけの仕事もしてるぞって主張できるのは大きい。
 ボクもそれを重視して「これまでの実績」は、できるだけ更新するようにしている(最近はサボりがちだけど)。

 でも、作例実績さえ載せておけばいいってモンじゃない。

 先の「作品って、どうやって売ればいいの?」で書いたように、実際に売るモノは作例じゃないからね。

 過去の実績は、あくまでも自分の力を示すための材料。
 デモンストレーションの1つであって、それ自体は売り物じゃないんだ。

 なのに、自分のコトはあんまり書いてない人が多いんだよ。
 メインの商品のコトを書かない。
 プロフィール紹介が大雑把すぎたり、下手すりゃ、ほとんど何も書いてなかったりする。

 う~ん、もったいない。

 だって、ジューサーを売っているのに、ジューサーで作ったジュースの写真ばっかり掲載して、ジューサーそのものについては解説してないようなモンでしょ。
 それじゃジュースを買いたくなる人はいても、ジューサーは売れないと思うんだ。

 しかもジュースは過去に作って飲んじゃったモノ。
 これから作るジュースは材料からして違うわけで、前のモノを美味しく作れたからって、今回も美味しいとは限らない。
 美味しく作れた実績が多いほうが信頼できるのは確かだけど、過去はあくまでも過去。
 参考に過ぎないんだ。

 本当に売るべきものは、過去じゃなくて未来。

 売り物は創作力そのものなんだ。
 作品じゃなくて「作品を生み出す自分」を買ってもらわなきゃ。

お客は、いつだって不安だらけ

 ボクは、自分のサイトにこれでもかというほどの「自分自身の情報」を掲載している。
 作例もたくさんサイトに掲載しているけれど、それ以上に多くのボリュームを自分自身の紹介に使っている。

 仕事の引き受け方、進め方、終わり方、出来上がった作品の扱い方といったコトはもちろん、自分は何者なのか、どういうコトが得意で何が苦手なのか、これまでどんなコトをしてきたのか。とにかくいっぱい書いてある。

 そこまでするの? とか思っちゃいけない。
 そもそも漫画家って、そんなに信用される職業でもないんだから。

 ほら、何か事件が起きると「犯人はゲームオタクだった」とか「部屋にガンプラがある」とか新聞に書かれるでしょ。
 明らかな偏見なんだけど、漫画やイラストに興味ない人の中には、そういう考えの人も少なくないんだよ。
 漫画家なんてのは世間知らずで、我儘で、排他的で、変人で、胡散臭く思われちゃうんだ。
 だから新聞も書くんだ。

 ボクらは、その眷族。

 そして一般企業は「漫画やイラストに興味ない人」なんだ。
 偏見を持ってるほどではないけれど、漫画擁護派ってほどでもない。
 利用しようと思う程度には認めてくれているという程度なのよ。

 彼らの多くは、創作者などという人種と関わった経験が乏しい。
 当然、警戒する。

 仕事放り出して逃げちゃうかも。
 こっちの言い分を聞いてくれないかも。
 納期守ってくれないかも。
 修正や変更に対応してくれないかも。

 不安要素はいっぱいある。
 でもその答えは、作例と簡単すぎるプロフィールでは得られない。

 そういう状態で「詳しくはメールで問い合わせてね」なんて言っても、そんなコトするわけがないのよ。

 見ず知らずの人に接触するというのは、それだけで大きなストレスなんだ。
 まして自分とは接点の少ないタイプなら、なおさら。
 ほとんどこの人に決めたっていうくらいになってからじゃないと、問い合わせなんかしないモンなんだよ。

 特に広告漫画なんてのは、非常にレアな試みだからね。
 あっちこっちで頻繁に見かけるけど、それは社会全体で見れば頻繁っていうだけのこと。
 特定の企業単位で考えたら、何年に1回あるかどうかのスペシャルな取り組みなんだ。

 それほどのモノを、知らない誰かに委ねる。

 広告の成否が、担当者の人事査定にまで影響しちゃうかもしれない。
 作品がツボを外していたり、誤解を与えるようなモノになっていたりしたら、バッシングされて炎上して、自社に大ダメージを与えちゃうかもしれない。
 そういう例をネットでしょっちゅう見るでしょ。
 アレも社会全体から見たらレアなんだけど、レアだからって気にしないわけがないでしょ。

 広告漫画は広告を目立たせるためにやるのだけど、目立つってことは諸刃の剣でもあるんだよ。
 ボクらもドキドキだけど、お客だって、おっかないのよ。

 だから、注文を取れるようにするには、お客の不安を解消してあげなきゃならないのよ。

本気のお客は本気でチェックしてくれるよ

 え? そんなにたくさん書いたって面倒がって読まないんじゃないのかって?

 うん、ボクもそう思う。
 いや、思ってた。

 けど、それでも書いたんだ。
 読んでくれなかったとしても、こっちが本気なコト……お客の不安や不信を払拭しようと一所懸命なコトだけはわかってくれるんじゃないかって思ったから。

 ボクが自分のサイトに掲載した文字量は、ちょっとした本より多いくらいで、それはシャレや冗談で書ける量じゃない。
 実際、文章書くだけで半年かけた。

 面倒がって全部を読んでくれないだろうことは想定内。
 読んでくれなくてもいい。
 本気度を少しでも伝えられればいい。

 そのためだけに、読んでもらえないはずの文章をいっぱい書いたんだ。

 ところが。

 ウチに依頼してくれる方の多くは、それを読んでくださっている。

 メールをいただいて会いに行ってみると「○○って書いてあったでしょ、アレで納得しましたよ」などと言われる。
 そんなトコまで読んでるの!?ってコッチが驚くような読み込みっぷりだったりする方もいる。

 細かいトコまで読んでない人も「これまでの実績」に書いてある文章は、読んでいらっしゃることが多いんだ。
 絵は見てないけど、文章は読んでる。

 先に書いたようにお客だって不安だからなんだよね。
 クライアントは、広告にも漫画にも詳しくないからね。

 広告しなきゃならないけれど、普段の営業・経営ならともかく、広告や広報については素人。
 何をどう発信すればいいか、どういう方法でやればいいか、いや、そもそもどんな方法があって、それぞれはどう違うのか。
 そういうことの全部に自信がない上に、誰に相談すればいいかもわからない。選んだ相手に本当に実力があるのかどうかの判断も出来ない。

 とにかく心配なんだ。

 だから読んでくれる。
 不安を解消するために、我が社の広告を任せていいかどうかを知りたくて読んでくれるんだ。

 なのでボクはできるだけ詳しく書くの。

 多くの場合、実績紹介って作品の絵だけだったり、いついつ、どこそこの仕事をやったという経歴だけだったりするんだけど、ボクは「仕事そのもの」を掲載している。

 どういう経緯で仕事を引き受けて、何を重視して、どのように対応し、どんな結果に至ったか。
 そういう説明を案件ごとに付記している。

 作品展じゃなくて仕事展。

 そうしておけば、お客は「ほう、A社ではそうだったのか。ならウチでも同じように考えてもらえるかも」と、ピンと来るでしょ。
 少なくとも、ただ言われたままにやっているんじゃなくて、ボクがボクなりの提案をしながらやっていることだけはわかるはず。

 だから、言われた通りにやって欲しい人はボクを避けると思う。
 あ、コイツ、面倒くさいヤツだって(笑)。

 でも、それも狙ってやってることなのよ。

 自分の意見を書くことは、自分に合う客に絞り込むことでもあるんだ。
 理解し合えない人、根本のトコで合わない人の仕事は、引き受けてもお互い不幸になるだけだからね。

 もちろん、共感してくれる人、合う人だけを相手にしてやっていけるようになるのは大変。
 ボクもまだ「だけ」には達していない。

 でも、長く仕事を続けていると「合う人」に出会うことはある。
 合わなかった人が「合う人」に変わることもある。

 そういう人を大事にして縁を保ち続けていけば、だんだんと「合う人」が多くなり、やがては「合う人」だけで十分やっていけるようになると思っているんだ。
 実際、ホンの少しずつ、そうなっているし。
 背が伸びるようなペースだから普段は気付かないけど、振り返るとそうなんだ。

 ……そういうわけで、やっぱり売り物は作品じゃなくて自分だと思う。

 仕事では、腕よりも縁のほうが強いんだ。
 縁を積み重ねたモノが「キャリア」なんだよ。

 そしてそれは、誰にも奪えない。
 自分自身だからね。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。