調べて描くのは作家なら当たり前。知らない分野でも怖くない

2018年1月5日

 広告漫画は、漫画を使った大喜利だ。
 クライアントから出されるお題を受けて、そのお題をネタにした漫画を描く。

 一応、広告だからお題(商品だったりサービスだったり)を肯定的に扱わざるを得ないっていう条件はあるものの、基本的には大喜利と同じだと思ってる。

 一定年齢以上の方は、昔テレビでやっていた「お笑いまんが道場」っていう番組を思い出してもらいたい。
 アレだ。
 アレを4コマとか、1ページとか、10ページとかでやるのだ。

 だから広告漫画を請け負うっていうのは、意外に漫画の訓練になるんだよ。

 この題材をどんな漫画にまとめようか。
 どういうオチをつけようか。
 ボクは毎回ワクワクしながらやってるんだ。
 実はドキドキのほうが大きいかもしれないけど、それでも楽しんでやってるんだよ。

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サッカー漫画を描いている人は、サッカー選手じゃない

 漫画家は広告屋じゃない。
 だから広告漫画を手掛けることになったりすると「原作」を用意してもらいたがることが多いのだそうだ。

 でもソレって大間違いじゃないかなぁ。

 漫画家の方ならわかると思うけど、一度も漫画を描いたことのない人がマトモな原作なんか書けると思います?

 せめてライターなどの文筆業でもやってるなら可能性はあるかもしれない(それでも記事を書くのと漫画原作では、まるで違うと思う)けれど、相手は一般企業の社員であって、手紙だって滅多に書かないような人たちだよ?

 ボクは日本を代表する素粒子物理学者の方々に監修してもらって科学漫画を連載しているけれど、高学歴のエリートで論文を書き慣れている人たちだって、漫画の原作なんか無理。
 中にはアニメやSFが大好きという人もいるけど、それでも読み手・受け手であることと送り手になるのではトンデモなく違うから、漫画の原作は頼めない。

 ボクが自分でやるしかないのだ。

 ソリューシブツリガクのことなんか全然わからなくても、それでもやるしかない。
 わからないからやれないと思うなら、こっちの世界に来ちゃいけないと思う。

「でも、わからないなら無理じゃん」と言う人がいるけど、ボクはそうは思わない。
 実際やってんだから。

 そもそもサッカー漫画を描いている人は、サッカー選手じゃないでしょ。

 料理漫画だってそうだし、格闘漫画だってそう。
 恋愛漫画だって恋愛の達人が描いてるわけじゃない。
 エッチな漫画も、漫画に描かれてることを実際に体験してる可能性は、凄まじく低いはずだ。

 もちろん、元々そのジャンルが好きで描いている人が多いだろうけど、編集部に企画持ち込まれて「動物漫画描いて」といったケースだって、全然珍しくない。

 それでも漫画家ならば描けるはずだ。

 その作家なりの視点と切り口で、描く対象を取材し、勉強し、必要なら体験もしてみて、ときに、その道の専門家ですら唸るようなモノを描く。そういうもんでしょ。

 最近の漫画家には特定の連載をず~っと続ける(完結しても続編をやっていたり)ケースが目立つけど、昔の漫画家だと、少年漫画から少女漫画まで、題材もSFだろうがスポーツだろうが人情ものだろうが問わず、アレコレやっていたものだ。

 やれば、できちゃうものなんだと思う。

 だいたい、特定のジャンルしか描きたくない人だったら、広告の漫画は最初から無理だしね。

知らないことを、いつも通りに描く

 ボクの場合、仕事のオファーは、とにかく漫画を描いて欲しいということだけで来る。
 大抵は具体的なビジョンはなくて、そういうことはこっちで考えるんだ。

 盛り込むべき内容(読者に伝えたい広告内容)、ページ数、予算。

 そのへんを確認して、それから描く対象について、独自に勉強する。

 資料的なモノをもらうことが多いけれど、それだけに頼らず、自分でも調べることが大事。
 ま、仕事の規模や予算や納期によって、どれくらいまで深く調べるかは違うんだけど、それでも客が持ってきたモノだけに頼って描くことは滅多にない。

 そうして描く対象についてある程度理解できて、それを何のために、どういう人に伝えるべきかを整理して、それからストーリーやキャラを考えていく。

 子供向けの学習漫画なら子供たちを主人公に、大人向けの保険パンフレットなら一般的な夫婦を主役に、といった具合だ。
 基本的には、商品やサービスが主人公たちの助けになるお話を考えるって感じだね。

 ほら、ネットでは商品やサービスを擬人化したりして「だが、あの商品は四天王の中では最弱……」とかってネタやってるでしょ。
 ああいう妄想力を、そのまま仕事にしちゃうというだけのこと。
 こっちの世界も、ツボがわかるとけっこう楽しいんだよ。

 とにかく、知らないなら知るようにすればいいというだけ。
 専門家じゃないからやれないってことではないと思ってる。

 もちろん、先の素粒子物理学の科学連載などでは、付け焼き刃の勉強なんかじゃ全然足りないんだけど、間違ってたら指摘してくれるから、それはそれでいいと思ってやっている。
 アガったら何でもかんでも「役満!」って言っとけば、違ってたら指摘してくれるだろ、みたいな(いや違うか?)

 でも、素粒子漫画みたいな特殊で高度なモノは特例みたいなモンで、大抵の商品やサービスは、普通の人にもすぐに理解できるように考えられているハズだから、いちいち独自に勉強といっても、それほど大変じゃないことのほうが多いんだよね。

 いずれにしても、作家なら調べて描くことはお手のモノなはずだ。
 そしてソコから取り組まないと、しっかりした作品が生まれないことも知っているはずだ。

 だから、いつも通りにやればいいの。
 広告漫画ならではのポイントさえしっかり理解できていれば、後はいつも通りなのよ。

 少なくとも、ボクにとってはそうだな。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。