小説版イバライガー/第2話:想いの力(後半)

2018年1月3日

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Bパート

 歩き続けているうちに、夜になった。

 目指している場所は、シンの研究室。

 先ほどの森からシンの研究室までは、メインストリートである東大通りに出て、市街地方向にまっすぐ進めば1~2時間でたどり着ける距離だが、イバライガーを人目に晒すわけにはいかず、あえて森の中を進んできたのだ。

 現在地点は、広大な筑波大学の構内。
 研究学園都市の外れまで一直線に延びる、全長十数キロの遊歩道だ。
 つくば市内には、こうした車が通らない遊歩道が網の目のようにあり、一部は大通りをまたぐ立体交差になっている。

 つくば市は広く、繁華街は点在しているので、ほとんどの住民は、ちょっとした外出でも車を使う。
 通勤は電車であっても、駅までは車という地域なのだ。
 都会の人間よりも歩かないのが地方在住者であり、だからこそ遊歩道は、人目を避けて移動するには好都合だった。

 とはいえ、人通りがないわけではない。
 学生が多く暮らしているアパートはあちこちにあるし、時折、自転車で通りかかる者もいる。
 その度に身を隠しながら、シンたちは先を急いでいた。

 今も、酔っぱらった学生が通り過ぎていく。
 その喧騒を見送り、木立の陰に身を隠していたシンは、周囲を注意深く見回してからふり返った。

 イバライガーは、ワカナに支えられて、やっと歩いているといった感じで、ベルトやバイザーの光も消えていた。
 目立たないという意味ではありがたいが、研究所を脱したときのような跳躍はとても出来そうにない。

 彼が蓄えていたエネルギーの大半は、彼を現代にタイムジャンプさせるために消費されてしまっていたのだ。
 研究所からの脱出は、最後のエネルギーを振り絞った決死の行動だったらしい。

「大丈夫……です……。この時代には、子供たちの笑顔や、愛しあう人々が大勢いる……。数日もあれば、エネルギーはチャージできるはず……です」

 また、謎の言葉だった。
 笑顔や愛情があるとエネルギーが充填できる、と言っているように聞こえる。
 未来のオレたちは、一体どんなヒューマロイドを作ったのか。

 とにかく今は、彼を研究室にかくまって、再びあのパワーを取り戻すまで待つしかなさそうだった。
 ジャークと戦えるのは、イバライガーだけなのだ。

 


 再び歩き出そうと正面をふり返ったとき、気配を感じた。

 正面からではない。

 シンは、背筋が凍るのを感じた。
 研究所に溢れていた、あの凶暴な瘴気のような気配だったからだ。
 変貌する人々。カギ爪、触手。
 おぞましい光景がフラッシュバックする。

 その瞬間、真上から、そのおぞましいモノが叩き付けられた。

「うぉおおおおっ!?」
 とっさに身をひねったが、シンが立っていた場所がえぐられ、何かヌルっとした粘液状のものが地面にこびりついている。

 その真上に本体が着地した。

 全身から伸びた触手が、遠くの街の明かりに照り返されている。
 まるで頭からタコをかぶったようなシルエット。
 暗くて細部は見えないが、はっきり見たい姿ではないことは確実だ。

「ジャーク!?」

 ワカナたちとシンの間に立ったジャーク・モンスターは、ゆっくりとワカナとイバライガーのほうを向いた。
 ワカナは、泣きそうな顔をしながら、しかしイバライガーをかばっている。

 グゲェエエエエエエエエエエエエエ!

 怪物が吠えた。
 まずい。イバライガーは動けない。

 シンは走った。
 コイツを向こうに行かせるわけにはいかない。
 が、飛びつこうとしたシンに、触手たちが伸びてきた。

 スローモーションのように見える。
 触手には牙のようなモノが無数に生えている。
 それがガチガチと動きながら、シンの顔に食らいつこうとしている。

 が、触手はシンには届かなかった。

 イバライガー。

 触手を押さえつけている。
 その一瞬をついて駆け抜けたシンは、ワカナの元にたどり着いた。
 ワカナが叫ぶ。ふり返る。
 触手たちは新たな標的に絡みつき、動きを奪っていた。
 イバライガーの全身が、触手に覆い尽くされていく。
 牙が食い込んでいく。
 力を失っているイバライガーは、抗うこともできずに崩れ落ちようとしていた。

 


 そんなバカな。
 こんなところでヤツは終わるのか。
 世界を救うはずの力は、何も出来ずに消えてしまうのか。
 未来のオレたちは、そんなモノしか生み出せなかったのか。

 二人は思わず叫んだ。

「イバライガー!!」
「立ち上がれぇええ!!」

 その声に、バックルが光を放った。
 触手に包まれた内側から蒼い輝きが迸り、食い込んでいた牙が光圧に押されたようにはじき飛ばされる。

 シンとワカナは驚いた。

 見覚えのある輝きだった。
 白い闇を切り裂いた光。

「あ、あの光は……まさか……エモーションの!?」

 イバライガーは、ジャークに向き合ったまま、応えた。

「そう……。私のエネルギーは、感情エネルギー……エモーションです。
 ワカナ、あなたが、その力をくれた。愛情、友情、勇気……。ジャークとは反対の、正義の想い=エモーション・ポジティブをエネルギーに変える。
 それが、あなたが与えてくれたエキスポ・ダイナモだ。
 そして、この身体はシン、君がくれたものだ。
 私は、あなたがたの子供なのだ……」

「正義を……力に変える……!」
「私たちの……子供……!?」

 イバライガーが正面を見据えた。
 無表情なはずのマスクに、強い意志が宿っている。

「見せよう。あなたたちが秘めている力を……。
 人間の想いの力を。
 呼んでくれ。私の名を……イバライガーの名を呼んでくれ!」

「……わかった!いくぞ、ワカナ!」
「うん!」

「オレたちの想い、受け取れ! イバライガァアアアアアアアア!!」

 

ED(エンディング)

 二人の叫びに、エキスポ・ダイナモが吠えた。
 フェイス・バイザーからも青く美しい輝きが迸る。
 圧倒的なパワーを秘めた紅の機神が、ついに目覚めた。

「……これが……これが! あなたたちの想いの力だ!!
 時空戦士……イバライガー!!」

 

次回予告

■第3話:未来への挑戦/ミニライガー登場
行き場を失ったシンたちは、幼なじみのマーゴンのアパートに逃げ込んだの。一方、イバライガーは、行方不明になっちゃったナツミさん救出のために、再び研究所跡地へと潜入するんだけど、その頃、マーゴンのアパートには特殊武装をまとった謎の集団が迫っていたんだって!! うわ~、どうなっちゃうんだろ!?
さぁ、みんな! 次回もイバライガーを応援しよう!! せぇ~~の…………!!

(次回へつづく→)

(第1~2話/作者コメンタリーへ)

 


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