広告漫画の制作(5)着色&解像度/採算の合う描き方でないと続かない

2018年1月3日

 カラーの作品はカラーで仕上げて、モノクロの作品はグレースケールで仕上げる。

 まぁアタリマエのことで、それ以上言うことはないのだけど、この項のキモは「ウチでは2色カラーの作品はグレースケールで仕上げてる」ってトコかな。

 今はカラー印刷が安くなったから、カラー作品を2色で掲載するなんてことは、まずない。
 少なくとも広告ではやらない。

 だけど、モノクロで描いた作品を2色で見せたいってことはあるの。
 どうしてもっていうほどじゃなく、できればそうしたいっていう程度なのだけど、そういうことはある。

 広告漫画だからね、
 メインとしてはモノクロの漫画冊子だとしても、他の広報物に一部を流用したり、WEBサイトでも公開したりするときに、せめて2色にできるといいんだけどな~ってコトがあるのよ。

 なので、そういうことにチャチャっと対応できるような仕上げ方をしてるの。

 あくまでもチャチャっとやれる範囲でだけど。

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案件単位ではカラー作品が大半

 一般的な広告漫画のほとんどは、カラーだ。

 これは広告自体がカラー印刷だから。
 ほとんどの広告物がカラー印刷で、その中に漫画も組み込まれるから、漫画だけモノクロだとバランス悪いのよ。

 ただ、そういう使われ方だから、カラー作品の多くは1ページだけといった短いモノが多い。
 パンフなどのページ数がある広告物に盛り込むときは多少枚数が多くなることがあるけど、それもせいぜい6~8ページってトコ。
 しかも1~2ページの短編連作であって、8ページの漫画じゃないことのほうが圧倒的に多い。
 いや、ボクがそういう提案をしがちだからでもあるんだけどね。

 カラー原稿をどう作るかについては、あまり話すコトがない。
 普通にカラーに仕上げるってだけだもん。

 気にするとしたら、デジタル着色における「RGB」と「CMYK」の違いくらいだな。

 ボクは、パソコン上ではRGBモードで着色し、完成後にCMYKモードに変換して印刷用のデータにしている。
 オリジナルデータはRGBなんだ。

 RGB(光の三原色)では、色を混ぜれば混ぜるほど明るくなる。
 一方、CMYKでは色を混ぜると暗くなる。

 こういう性質の違いがあるので、RGBのグラフィックをCMYK化すると、濁るというか、くすむというか、そういう感じになる。
 キレイだった発色が、ガタっと落ちてしまったりもする。

 でも、それは仕方ないとあきらめている。
 できるだけCMYK化しても影響の少ない色を使おうとは思ってるし、CMYK化するときのやり方でも全然違ってくるので、そのへんはね、その手の参考書とかネットのTIPSなどをチェックしてみてね。

 どんな色がどれだけ落ちるのかも、経験で覚えていくしかないと思うので、ここでは詳しく解説しない。
 解説できないわけじゃないんだけど、簡単には語れないし、こういうのは自分でやってみるのが一番だしね。

枚数単位ではモノクロ作品が圧倒的

 広告漫画ではカラーの案件が多いけれど、描いた枚数で言えば圧倒的にモノクロが多くなる。
 漫画冊子描き下ろしとか連載とかね、まとまったページ数のモノになると、ほとんどがモノクロになるからだ。

 ボクが手掛けたカラー作品で一番長いのは32ページのヤツ。
 あ、連載で4ページずつ12話ってのがあるから、それだと合計48ページになる。

 あと、広告用じゃなく、スマホ用の電子書籍でオリジナル描き下ろし連載したときはカラーだったから、あのときは数百枚描いたな。
 なんだ、けっこうカラーもやってたな。
 それでも、やっぱりモノクロの枚数には遠く及ばないんだけど。

 モノクロ作品の場合は最初からグレースケールで描くので、カラーのときのような原画と印刷データの色の違いは考えずに済む。

 一般的な漫画では、グレーの部分もトーンのドットなどで表現していて、本当にグレーなわけじゃないんだけど、ボクは気にせずグレーはグレーで描いている。
 現代の印刷技術なら自分でドットにしなくても問題ないことのほうが多いし、いちいちモノクロ2階調で描いてると採算的にもキツイから。
 そんなわけで、ここで語っているモノクロってのはモノクロ2階調じゃなくてグレースケールのことなんだ。

 そして、フルカラーとモノクロはやってるけど、2色カラー作品は描いていない。

 今じゃカラー印刷が安くなったからね。
 2色って、むしろ割高なのよ。
 2色にするくらいならカラーのほうが安いくらい。

 なので2色印刷って、ほとんどやらなくなった。
 仮に、わざと2色っぽい広告デザインを考えたとしても、印刷は4色でやっちゃうだろうなぁ。
 特色使って色にこだわるのなら2色もアリだけど、そんな凝った印刷物は何年もやってないし、やったとしてもポスターとかだね。
 何ページもある冊子では、そんなコスト高な作り方、そうそう認められないから。

 というか本編の制作費すらギリギリが多いのに、カネのかかる印刷なんて提案できないよ。
 そんなの提案して、こっちの制作費削られたりしたらバカみたいだもん。

モノクロ作品を2色化する

 ただし、2色作品は描いてないけど、2色で見せている作品は多い。

 矛盾してるっぽいけど、矛盾してないのよ。

 冊子描き下ろしや連載の漫画は大抵はモノクロなのだけど、広告・広報用の漫画だから冊子だけじゃなくて、同じものをオンラインでも公開することが多いんだ。
 多くの人に見てもらいたいからね。

 漫画出版社のサイトでもオンライン公開されている作品はあるけど、この場合は漫画出版社じゃなくて、一般企業のWEBページに組み込まれることになる。

 WEBページは、普通はフルカラーだ。
 漫画を公開するページも、他のWEBページと同様のヘッダー、フッター、メニュー、サブコンテンツ、バナーなどが表示されていることが多い。
 つまり色んな色が周囲にたくさんあるんだ。

 そこにモノクロの漫画がド~ンと掲載されると、違和感あるんだよね。
 周囲と馴染まなくて浮いちゃうんだ。

 なので、その違和感を軽減するために、モノクロ作品を2色化するの。

 こうした対応は、ほとんど無料か格安のサービスでやっていることが多い。
 そういうことも安くやってあげられるよと言うことで、客をつかまえてるのよ。

 タダ同然でやるんだから、大したコトはできない。
 無料でやってあげてもいいやと思う程度にしかやれない。

 ボクの場合は、グレースケールだった漫画データをRGBに変換し、その漫画全体にカラーフィルタを乗せるだけ。
 フォトショップの場合だと「新規レイヤー/描画モード:カラー」を作って、そこにエンジとか紺の色を流し込んでから、画像全体を統合するだけ。
 これで2色っぽいモノになる。

 あくまで2色っぽいだけだから、本当の2色カラーとは違う(普通2色ページはカラーで描くしね)んだけど、サービスでやってあげていることだから、ソレっぽいレベルで十分だと考えている。キッチリやれっていうなら、カラー料金請求するしかないんだから。

 ただし、この方法で2色化するために、多少の工夫はしている。
 商売としては格安サービスレベルで十分でも、作者としては少しでもマシな状態にしたいからね。

 例えば、スミ線や文字の上にまで色が乗っかってしまうと、ちょっとヘンな感じになる。
 黒いんだけど、ちょっとだけ色がハミ出てボヤけたような感じになっちゃうんだよね。

 だから、枠線のレイヤーと文字のレイヤーには、色が乗らないようにしている。
 それらのレイヤーより下にカラーレイヤーを作るんだ。

 本当はキャラの主線にも色を乗せたくない(むしろソッチのほうが乗せたくない)んだけど、そこから対処しようとすると作画工程が複雑になってしまい、無料対応のレベルを超えちゃうんで、あきらめている。
 採算割れしてまでサービスはできないから。
 カラー作品作るのと同じだけのギャラもらえるのならやるけど、そんなコトはあり得ないと思うしねぇ。

スミベタを使っていない

 なお、2色化対応する上の工夫は、他にもある。

 ボクのモノクロ作品って、スミベタがほとんどないんだよ。
 スミベタに見えるシーンも、ほんのちょっと濃度を落として、100%のスミじゃないようにしているの。
 100%なのは主線と枠線とセリフなどだけ。

 スミ100%だと色が乗っからないからなんだ。
 そうだからこそフィルタ効果一発で2色っぽくできるわけ。
 正しくは100%にも乗っかるけど、フチがボヤける程度だから、ベタ塗りのシーンだと乗ってないのと同じなっちゃう、ということかな。

 スミベタは最も強い色だから、2色にしたのにソコだけスミベタだと全体から浮いてしまうんだよね。
 モノクロではスミベタで処理する部分でも、カラー原稿ではスミだけでは塗ってないとか、そういうの多いでしょ。
 宇宙とかも、単なるスミベタじゃなくて青っぽかったりするじゃん。

 そういうコトに対処するために、スミベタは可能なかぎり避けているの。

 モノクロだけで考えると、スミベタには画面を引き締める効果があるから、それなりに使ったほうがいいんだけど、広告としての色んな汎用性ってのを考慮すると、ベタを我慢したほうがいいってコトもあるわけよ。

 ただし、そういうふうに原稿作っているけど、最近はモノクロ印刷用のデータにまとめるときに、ホンのちょっと「レベル補正」のスライダーを調整して、黒を引き締めるようにしてから印刷原稿として別名保存するとか、ひと手間加えるようにしている。

 まぁ、これも一律にやっちゃうとオカしくなるコトも多いから、状況を見て、その場その場で判断するしかないんだけど。

ウチの解像度は350dpi

 漫画の解像度は、いつも「350dpi」だ。

 デジタルデータで制作しているほとんどの作家さんは「600dpi以上」でやってるようだけど、ウチはずっと350dpi。
 カラーでも、モノクロでも同じ。
 同業者さんには「そんなに低い解像度でやってんの?」と驚かれちゃうコトもあるんだけど、それで困ったことは一度もないんだもん。

 解像度もコストだからね。
 代価に見合った解像度、実用に耐えうる解像度であれば問題ないのよ。

 美術印刷などなら600dpiでも不安で、800〜1200は欲しいとボクも思う。

 けど普通の商業印刷なら、350dpiで十分だな。
 それより高解像度のデータとの区別がつく人はまずいないと思うし、そもそも一般的な商業印刷で使われているスクリーン線数(175~240線程度)で製版するなら、600でも350でも同じになっちゃうもん。

 広告用に描いた漫画が高精細な印刷で画集になるなんてコトは、まずあり得ないだろうし、ボク自身もそういうのを出してみたいとは思っていない(普通の単行本で出せるなら出したいけど)から、それならファイルサイズが小さくて、サクサク作業しやすくて、バックアップも簡単なほうがずっと効率いいのよ。

 そういうわけでウチでは、漫画もデザイン物も、何でも「A4サイズで350dpi」を基準にして作っている。

 例えばB3ポスターを作るときも、制作サイズはA4。
 それを拡大印刷してもらうだけ。

 A1の大判ポスターだとしても、やっぱり制作はA4。

 そんなの粗くなっちゃうじゃん、と言われるかもしれない。
 確かにA4をA1に拡大したら、相当粗くなる。

 でもねぇ、そんなデッカいのをA4と同じ距離で誰が見る?

 大きくなれば、その分離れて見るでしょ。
 だから「見た目の解像度」は同じなんだよ。

 そもそも、A1サイズで高精度印刷できる機械なんて、普通の印刷会社は持ってないよ。
 そんな出力ができるのは、よほど特殊な印刷所だけだ。

 以前にヨコ5メートルの横断幕のデータを、バカ正直に解像度600dpiで作ったヤツがいて、一度保存してファイルを閉じて、もう一回開こうととしたら重すぎて開けなくなり、何とかして開いたら今度は印刷会社から「そんなの出力できない」って言われてボクに泣きついてきたことがあったよ。
 アタリマエだ。

 道路脇の野立て看板とか、駅のホームから見えるデカイ広告といったモノの解像度は40~50dpiくらいしかないんだよ。
 600dpiの横断幕なんかないんだ。

 だから「A4/350dpi」を拡大して使っても全然問題ないの。

 なお、B3ポスターくらいの拡大だと、よく見れば粒子が粗いことがわかる。
 でもそれも、ポスターを見る距離よりもずっと近くに寄って、しかも粗くないものと見比べれば気付く、という程度だね(あくまでも一般人基準だからプロなら一瞬で見抜くけど)。

 解像度的には200dpiくらいしかないことになるけど、それでも実用レベルでは何の問題もないと判断している。
 気になる人は気にするだろうけど、その分だけ安上がりでもあるんだから仕方ないと。

 採算的にバランスがよくて、クライアントも納得してくれてるんだから、ボクはそれでいいと思ってる。
 芸術家じゃないし、画集とか出版するわけでもないし。

 広告としてOKなら、それでいいと思ってるの。


オンライン公開する場合も「A4/350dpi」で十分だ。
 今ではパソコンの解像度が上がって、WEBサイトなども左右1000~1200ピクセルくらいで作ることが多くなった。
 最初の頃は左右640ピクセルくらいだったのが、やがて800ピクセル前後になり、今では1000ピクセル以上なわけだ。
 だけど「A4サイズで350dpi」は、左右約3000ピクセルくらいあるのだから、ネット上で見せる作品の原画としては、十分すぎる精度だと思うな。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは、子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。