カソクキッズ6〜7話:原子が動いたり分子がなかったり……

2018年1月3日

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原子って本当はどんなモノ?

 カソクキッズは、第6話から第2章(RUN2)になった。
 第1章は全体の基本みたいなもんで、2章で素粒子、3章で加速器、4章で宇宙、そして5章でまとめ、という予定だ。

 もっとも、この6話を描いた頃には、まだ5章までははっきり決まっていない。
 4章の内容のいくつかは予定にあったけど、当初の予定では全体で20話のつもりだったから、4章で終わるはずだったんだ。

 それが5章に増え、エピソード数も30話に増え、さらにその後に、それまでを大きく上回るボリュームのセカンドシーズンまで描けたのは、ひとえに読者の皆さんとKEKのおかげだ。本当に感謝している。

 おっと、いかん。
 今回は6話のときの思い出を書くつもりなのに脱線してしまった。

 というわけで第6話。

 このエピソードは6〜7話の前後編で「分子」や「原子」のことを解説している。
 目指すのは、もっと小さい素粒子の世界なんだけど、それを語るためにも、先に分子や原子の世界を語っておくべきと判断したのだ。
 いきなり素粒子に行くと、読者がポカーンとして、ついてこれなくなっちゃうんじゃないかと思ったの。

 それで原子。
 素粒子は聞いたことがなくても、原子くらいなら多少は知ってる人が多いだろうしね。


 さて、原子っていうと、中心に点があって惑星軌道みたいなマークを思い出す人が多いでしょ。

 で、ボクも絵コンテでそういうのを描いたんだけど、藤本先生からツッコミが入った。

 原子って言うのは、原子核を中心にした空間であって、カプセルみたいじゃないんだよ、と。
 フチはもっとボンヤリしているんだ、境界線があるわけじゃないんだよ、と。

 それに飛び回ってる電子は、周囲の空間のどこかに「いる」のであって、惑星の軌道みたいなモンじゃない、とも。

 そ~なんだ!?
 惑星みたいに軌道があると思ってたよ!

 ……いや、お恥ずかしい。


 今では不確定性原理とかも多少は学んで「電子の位置と速度を同時に確認することはできない」とかわかってるんだけど、描いた当時は、そんな基礎的なことさえ知らなかったんだよ。本当に何も知らなかったの。

 で、そういう指摘を受けて困ってしまった。
 だって動いてるのは事実だから、静止画でイメージ図を描くと、ああいう一般的な原子のイメージになっちゃうんだもん。

 でも、そこで思い出した。

 この漫画の連載を始める前に、KEKで、マクロな世界からミクロな世界まで、ず~っとズームしていく映像を見せてもらったことがあったんだ。

パワーズオブテン」という映像で、ビーチシートで寝そべってる人から、ずっとカメラを引いていくと、どんどん離れて大気圏を飛び出し、太陽系を離れ、銀河が遠ざかり……と、宇宙の深淵まで行く。
 逆にズームすると、細胞が大きくなり、その中の分子に突入し、さらに原子、原子核、素粒子と入り込んでいく。

 で、そのとき「はい、ここから分子です」「ここからは原子です」じゃなかったような気がする。

 離れていると分子という固まりに見えるけれど、それは街を遠くから見たら「街」に見えるだけで、近付いていけば個々の建物が見えてくるようなモノ。

 枠があるわけじゃないんだ。
 近づいても街のままで、入るとザッザッザと音がして画面が切り替わるわけじゃないんだ。

 銀河系も、ここからが銀河ですっていう輪郭があるわけじゃない。
 同じように分子や原子や、さらにミクロな素粒子の世界も、そうなんだ。

 分子とか原子とかを「そういうカタチ」として考えやすいんだけど、実はモノの単位と言うより「空間の単位」と思ったほうが近いのかも……。

分子がない物質もある!

 とか思ってたら、藤本先生がメールをくれた。

「原子から下は単位ですが、それより上は様々な組み合わせがあります」

 へ? 単位じゃない?

「分子がないモノもあるんですよ」

 えええっ!?
 だって、モノは何でも「モノ>分子>原子」じゃないのぉ!?

「ダイヤモンドなどは炭素原子(だけ)の集まりだから、分子はないんです」

 そ~だったのか!

 いや、知ってる人にはアタリマエなのかも知れないけど、当時のボクには驚天動地だったのよ。

 もちろん、ダイヤモンドが炭素原子の集まりだってのは知っていた。
 でも、だからって分子じゃないとは考えてなかったんだ。
 炭素原子だけの分子、みたいに思ってたの。

 さらに藤本先生の指摘は続く。

「黒鉛とダイヤモンドの違いは単に結合の仕方の違いだけです。添付の図をごらんください。この配置では炭素は4本の共有結合で、どの方向にも強く結合しているので、原子の間隔を変えようとするいかなる力にも強く抵抗でき、硬いのです。
ところが黒鉛(グラファイト)は図のように3本の手は共有結合により層状に硬く結びついていますが、層と層はファンデルワールス力という弱い力でつながっています。そのため、強い力が加わると層と層の結合が切れてしまうので、柔らかいのです。」

 またまた、そ~だったのか!!

 いやボクだって「鉛筆の芯とダイヤモンドは、どっちも炭素の集まりだ」ということは知っていたんだけど、ボクはダイヤモンドが硬いのは、密度が高いからだと思ってた。
 つまり炭素原子がぎっしり詰まっているんだろうと。

 密度じゃなくて結合の違いだったのか!!

 他の身近なモノでは「塩」も分子がないとのこと。

「1億倍の顕微鏡で塩の塊を覗くと、塩素とナトリウムの原子が規則正しくならんでいるのが分かるが、しかし、水のときのように、塩素原子とナトリウム原子のひとつ、ひとつがくっついて、それが規則正しく並んでいるのではない。塩素はナトリウムから電子をひとつ余分にもらった、塩素イオンという形で、また、ナトリウムは塩素にひとつ電子をとられたナトリウムイオンとう形で規則ただしく並んでいる。塩を水に溶かすと、その塩素イオンとナトリウムイオンの間に水分子が入り込み、規則正しい配列が壊れ、水分子のなかにそれぞれのイオンの形で混じっていく。これが塩が溶けるということだ。水は分子という存在があるが、塩は分子という塊を形成しているのではない。」

 へぇ~~~~~。

 水と氷についても、ボクは勘違いしていた。

「氷か水かは温度で決まっているので(実は液体か固体かは、相が変化するといって、それほど単純ではなく、圧力と温度の両方考えないといけないのですが……)摂氏零度以下で氷だったのが細かくなったからといって、水になることはないです」

 ……水は水、氷は氷ってコトらしい。

 水が固まって氷になるんだから、ミクロな世界で考えれば同じモノなんだろうと思ってた。
 つまり氷をどんどん細かく砕いていけば、いつかは水になっちゃうと思ってたわけ。
 だって、現実ではそうじゃん?

 でも、藤本先生は「相が違うから水になることはない」と。

 ボク、何にもわかってないんだなぁ……。

 きっと同じように勘違いしてる人もいるはずだ。
 だから、ボクは自分の驚きをそのまま漫画に描いた。

 知ってました?

 ダイヤモンドには分子がない!
 塩にも分子はない!

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。